これが今年最後の投稿になりますね。 こうしてみると、自分でもよくここまでヤンこれ作品を書いてきたなとしみじみ感じています。
ただ、まだまだ書いていきたい気持ちはあるので、これからも思いついたら新しい話を書いていこうと思います。
とある一軒の家屋。 2階建てのやや大きな家で、さほど広くはないが庭付きの一軒家。
そこの家主であり、鎮守府の提督を務める男は現在自分のいる居間を見回しながら、ひときわ大きなため息をついた。
「……またか」
提督の実家は自分の仕事場となっている鎮守府からそう遠くない場所にあり、普段は忙しいがゆえに鎮守府に寝泊まりしているが、週末など時間に余裕ができる日は、様子見を兼ねていつも実家へと帰っていた。
両親はすでにおらず一人暮らし。 おまけに提督という役職についてる故、実家の掃除や日用品の買い出しなど、家の管理が出来ないというのが彼のちょっとした悩みだった。
だが、ある日の事。 いつものように実家に帰るとおかしなことがあった。
時刻はすっかり薄暗くなった夜の時間。 提督は廊下を通って居間の電気をつけると目を見開いた。
なんと、居間がきれいに掃除されており、周囲の物もきちんと整頓されていたのだ。
とても丁寧に掃除された居間だったが、提督は喜びより不安が上回った。
何故なら、鎮守府へ行ってから再び実家に帰るまでの間、彼は一度もここへは戻ってきていない。 自分で掃除をする暇はないし、プロのハウスクリーニングに頼んだ覚えもない。 つまり、心当たりが全くなかったのだ。
一体誰が部屋を掃除したのか?
提督はそんな不安を胸に抱えながら日々を過ごしていたが、異変はそれだけにとどまらなかった。
またある日の出来事。
いつものように家路につくと、今度は歯ブラシなどの日用品が新品に取り換えられていた。
例によって、これも自分がやったものではないし、心当たりもない。
しかも、前に自分が使っていた方の歯ブラシなどは見当たらず、一体どこに行ったのかという謎も残っている。
またある時はテーブルに作り主不明の料理が置かれており、提督は戦慄した。
『食べてください』といわんばかりにラップされた料理。 怪しいことこの上なかったが、下手に捨てるのも怖かったので、念のためにと一口だけ食べてみたところ、味はおいしかった。
とはいえ、不気味であることに変わりはない。
家主に何も言わず、掃除や料理をするのは一体誰か?
犯人の手がかりも得られぬまま、今日も提督は鎮守府で仕事に精を出すのであった。
「…本当に誰なんだ? 俺に何も言わず掃除をしたり料理を置いてったり… これじゃストーカーと変わらないじゃないか」
暗く覇気のない表情で、提督は誰にでもなく一人呟く。
今自分がこうしている間にも、もしかしたら何者かが自分の家に忍び込んでいるのではないか? そんな強迫観念に駆られてしまうのだ。
「提督、何かあったのですか? 何やら、ずいぶんお疲れのようですが……」
小声でつぶやいたつもりが、どうやらかすかに聞こえていたらしい。
手前のテーブルで執務を行っていた秘書艦が、心配そうに彼へ声をかけてきた。
「ああ、能代。 すまんな、ちょっと考え事をしてて」
提督は自分へ声をかけてきた艦娘、能代へと顔を向ける。
普段天然な姉を世話しているためか、どうにも彼女の世話焼きな性格がそうさせてしまったらしい。
苦笑いを浮かべる提督へ、能代は不安げな顔を見せる。
「もし何かあるのでしたら、能代が相談に乗りますよ」
胸元に手を置きながら、提督の目を見つめ真剣に話す能代。 しかし、提督は首を振って、
「いや… お前たちには俺も国の人たちも大いに助けてもらっているんだ。 ありがとう能代、そう言ってくれただけでもありがたいよ」
「そう…ですか。 でも、もしもの時は遠慮なく頼ってくださいね。 その…… 能代にとっても提督は大切な人ですから」
そう言って、憂いを込めた表情を浮かべたまま、能代は執務室を後にする。
自分を気にかけてくれる能代の気持ちは素直にありがたかった。
しかし、彼女たち艦娘は人類を襲う深海棲艦達と戦っている海の戦士。
深海棲艦と戦えない自分たちに代わって海や人々の平和を守ってもらっているというのに、ストーカーに困っているから何とかしてほしいなんて、とてもじゃないが言えるわけがなかったのだ。
執務を終え、時刻は昼過ぎ。
気分転換を兼ねて、一人鎮守府の中庭を散歩していると、寮の前にある玄関で榛名に会った。
「あっ、提督。 お疲れ様です」
「おう、榛名もお疲れ……って、すごい荷物だなそれ…」
提督は目を丸くしながら榛名の手に注目する。
寮へ戻ろうとしていた榛名の両手には、スーパーで買ってきたのであろう食材がたくさん入った袋がぶら下がっていた。
呆然とする提督に、榛名ははにかみながら言った。
「実は榛名、最近料理に凝っているんです。 いつも料理を食べてくれる人が残さず食べてくれるので、それでつい張り切っちゃって」
「なるほど。 確かに、残さず食べてもらえるなら、作る側もやりがいがあるな。 きっと、その相手も榛名に料理を作ってもらえて幸せだろう」
提督がうんと頷くと、榛名はその言葉が嬉しかったのか目を輝かせながら、
「提督にそう言って頂けるなんて、榛名も嬉しいです! それじゃ、次はもっとおいしい料理を作りますね♪」
「ああ、そうしてやるといい。 相手も、きっと喜んでくれるぞ」
鼻歌交じりに寮へと戻っていく榛名を、提督は一人見送っていく。
ただ、あんなふうに楽しげに過ごす彼女たちを見ては、増々自分の悩みについては言い出しづらくなった。
数日後、いつものように家に帰り居間を見ると、今回は掃除はされていなかった。
流石にそう何度も来ないか、と提督は胸をなでおろし自宅に寝泊まりする。
そして、朝になり2階の寝室から1階の居間へ下りてくると、
「…なんてこった。 まさかここまでやるとは……」
頭を抱え、今の入り口に佇む提督。
その視線の先には、綺麗に掃除が成された居間が見えていた。
いつものように朝の執務に取り掛かろうにも、ストーカーの事が気になってなかなか仕事が進まない。
公私混同するのはよろしくない事は分かっている。 しかし、今回は家主である自分が寝入っている隙に家に入ってきたのだ。
もはや、不気味を通り越して身の危険さえ感じる。
ぼんやりとした様子で執務をこなしていると、
「提督、どうしたのですか? 先ほどから、筆が進んでいませんが…」
ふと、自分を呼ぶ声に提督が顔を向けると、そこには今日の秘書艦を務める大和が心配そうに声をかけてきた。
「ん… ああ、すまん。 ちょっと、ぼんやりしてた」
「昨日も能代さんが心配してましたよ。 もし何かあるのでしたら、どうかお話ししてください」
「…いや、本当に何でもないんだ。 最近、働き詰めのせいか気分がすぐれないのかもな…」
提督は笑ってその場をごまかした。
大和もそれを察してか、これ以上深く追求しようとはしなかった。
「…提督、差し出がましいことを言うようですが、あまり仕事ばかりに気を向けず、たまには気分転換をするのも大事ですよ」
「気分転換……か」
提督が言葉を返すと、大和も微笑みながら話を引き継ぐ。
「実は、大和も最近気分転換を兼ねて、部屋の掃除を行っているんです。 やっぱり綺麗な部屋の方が、自分にも他の方にも気持ちよく過ごせますから」
「確かに… なるほど、そう言ったちょっとしたことでも気が晴れるな。 ありがとう大和、俺も俺で何か良い方法を考えてみるよ」
提督はそういうと、大和と共に執務を再開。 執務を終えると大和は一礼して部屋を後にしていった。
残された提督は執務椅子に座り込むと、「ふう…」と深い溜息を吐き、
「……さすがに、このままあいつらに余計な心配をかけるわけにはいかないな。 よし、今度は俺も動くぞ!!」
がばっと立ち上がると、提督も部屋を出ていった。
それから提督は監視カメラを購入し、居間と洗面所、そして寝室に取り付けた。
初めはこういった撮影関連に詳しい青葉に協力を仰ごうと思ったが、万が一にでもストーカーに監視カメラの存在を知られ、相手の怒りを買わないとも限らない。
その時、彼女に怒りの矛先を向けられる恐れがあることを考えると、ヘタな協力を仰ぐわけにもいかない。
提督は他の子達にはこのことを告げず、一人で準備を整えた。
そして、いつものように週末を家で過ごし起きてくると、やはり居間には誰かが掃除をした痕跡が残されていた。
「…案の定か。 だが、今回はカメラで中を撮ってある。 誰がやったか知らないが、今夜その化けの皮をはがしてやるからな!!」
時刻は夜。 鎮守府にいた艦娘たちは皆寮へと戻り、執務室には提督が机にパソコンを広げていた。
パソコンには監視カメラが撮った映像を見れるようにしてあり、あとはそれを確認するだけだが、
「……。 さすがに、いざとなると緊張するな」
今まで自分をつけまわしてきた相手を見るのかと思うと、少々尻込みしてしまう。
中々思い切りがつかず迷っていると、
「提督、どうしました? こんな時間まで執務室に残って」
「あ、赤城っ! お前、なぜここへ…?」
今日の秘書艦を務めてくれた艦娘、赤城が執務室へと入ってきた。
突然の赤城の登場に動揺を隠せない提督。 対する赤城は、事情が飲めずきょとんとした表情を見せる。
「私は、寮へ戻ろうとしたら執務室の窓から明かりがついてるのを見て引き返してきたんです。 提督こそ、どうして?」
「む… そ、それはだな……」
赤城の思わぬ登場に、口ごもる提督。 しかし、赤城の方は続けて質問をかける。
「提督、そのパソコンは一体何でしょう? いつもは執務にそのようなものを使ってないですが…」
「………」
流石にこれ以上隠し通すのは厳しい。
そう悟った提督は、深いため息とともに赤城に一連の出来事を打ち明けた。
「…本当、なんですか? 提督が、ストーカー被害にあってただなんて…!」
「ああ、俺も驚いているよ。 まさか、俺を相手にそんな真似をする物好きがいたなんてな」
「だが、それも今日で終わりだ。 実は家にこっそり監視カメラを取り付けておいてな、昨夜の家の様子を録画してあるんだ。 これから、そのストーカーの正体を暴いてやる所だ」
そう言いながらも、やはり提督自身は不安の色を隠せない。 マウスを握る手が小刻みに震える。
だが、赤城は提督が不安を抱いているのを察してか、提督の肩を叩くと自ら進言してきた。
「提督… もしよければ、私もご一緒します。 流石に提督一人にこのようなことをさせるのは、秘書艦として見過ごせません」
「赤城…」
突然の提案に戸惑うも、自分を気遣ってくれる赤城の気持ちは素直に嬉しかった。
提督は、真っすぐに自分を見つめる赤城の目を見ると、
「すまない… よろしく頼む」
「はいっ!」
こうして、赤城も提督と一緒に執務室に残ることとなり、提督はゆっくりとパソコンを操作して、昨夜の録画した映像を再生した。
まず、居間に置いたカメラの映像が再生される。
初めは灯りのない薄暗い室内が映し出されるだけ。
しばらくは音もない居間が映し出されていたが、時間が11時を過ぎた頃。 鼻歌を歌いながら居間に入ってくる影が映し出された。
そして、その影の正体を認識した二人は、思わず絶句した。
「や…大和……?」
鼻歌交じりに部屋に忍び込んできた人物、大和は薄暗い部屋の明かりをつけると周りを見回して、
『うふふ… それじゃ、今日もちゃんとお掃除をしなきゃ。 提督の奥さんとしてね。 ふふっ♪』
大和は顔を綻ばせながら、音もたてずにテキパキと掃除をこなしていく。
監視カメラ越しに映るその光景を、提督は体を震わせながら見続けていた。
「そんな…まさか…! 大和が、ストーカーの正体だったのか…!?」
一通り掃除と片づけを終えた後、大和は部屋を去っていった。
震える提督を見て、赤城は提督に声をかける。
「提督… 事実を受け入れるのは辛いと思われますが、この件については明日大和さんに確認しましょう」
これ以上見せるのは辛いだろうと、赤城はカメラを止めようとパソコンに手を伸ばすが、提督は冷や汗を流しながらも赤城を引き止める。
「待て、赤城…」
「提督?」
「……確かに、掃除をしたのは大和だった。 だが、大和がやったのは掃除だけ。 なら、料理と日用品のすり替えは一体誰がやったんだ?」
そう、大和は確かに部屋に忍び込んできたが、あくまで彼女は部屋の掃除を行っただけ。 掃除用の道具以外は何も持ってきてはいなかったのだ。
「まだ、それを確かめるまで止めるわけにはいかない。 このまま続けてくれ」
顔を青くしながらも、凛とした顔つきで話す提督に、
「……分かりました」
赤城も短い返事をしてパソコンへと向き直った。
大和が去った後の画面を、二人はずっと見続けている。
しばらくは変わり映えしなかったが、再び扉を開ける音が聞こえた。
そして、居間へと入ってくる人影をカメラが映し出す。 そこにいたのは……
「は…榛名……?」
ラップをかけた料理を手に、榛名が居間へと入ってきた。
そっと周りをうかがうと、榛名は音もたてずに暗い居間へと入り、テーブルの上に料理を置いていった。
『提督、今回も榛名の手料理を食べてくれたのですね。 嬉しい♪』
『それにしても、こうして料理を用意してあげるなんて、まるで提督の恋人になったみたい… きゃっ、恥ずかしいー///』
料理の前で一人もじもじしながら恥ずかしがる榛名。
嬉しげな彼女とは裏腹に、提督は目の前の映像にただ口を開けることしかできなかった。
「ま、まさかあれをやったのが榛名だったとは…… そういえば、最近料理を作っていると話していたが、まさかこのことだったのか…!?」
提督は頭を抱え、項垂れる。 赤城は、流石にこれ以上はやめましょうと言うが、
「まだ…まだだ。 ちゃんと、最後まで真相を見届けなければならない。 途中で逃げ出すわけにはいかないんだ…!」
歯を食いしばりながらも正面の映像に向き合う提督に、赤城も渋々引き下がる。
さらに続きを流していると、居間に着けてあったカメラが録画した映像は終わり、今度は洗面所のカメラの映像に切り替わる。
カメラの時刻は深夜1時に差し掛かるころ。
暗いままの洗面所に天井とは別の明かりが中を照らし出す。
それは携帯用の懐中電灯の明かりで、その懐中電灯を持っていたのは……
「……お前、だったのか。 能代…」
スーパーの袋を下げ、こっそり家へと侵入してきた能代の姿が映っていた。
カメラ越しに見える能代は、音を立てないよう慎重に洗面所へと入ってくる。
歯ブラシなどが置かれている洗面台へとやってくると、使い込まれていないか一つ一つチェックし、取り換える必要がありそうなものがあった時は、袋から新品の物を取り出し、それと取り換えていった。
『これで良し…っと。 なんだか最近、提督も疲れているようだったから、能代がこうして身の回りのことをしてあげないとね』
『でも提督、疲れている割には居間の掃除とかちゃんとこなしてるんだ。 あまり無理しないでほしいな… 能代に言ってくれれば、いつでもやってあげるのに……』
『……提督の使った歯ブラシ。 …後で能代のほうで使おうっと♪』
顔を綻ばせながら自分の使っていた歯ブラシを持ち去る能代の姿を見て、提督もただ絶句するしかなかった。
「な、何てことだ…… 前から皆が俺を慕っていることは知っていたが、まさかここまでとは……」
提督は両手で顔を覆い、その場で俯いた。
自分の家に忍び込んでいたストーカーがほんとは三人、それも全員自分の信頼する部下だったという事実はあまりにもショックが大きすぎた。
これにはさすがに赤城も黙っているわけにはいかず、提督の肩をゆすった。
「提督、お願いですから今日はもう切り上げて部屋で休んでください! これ以上見続けるのは提督の精神が持ちません。 三人には明日、私が事情を問い詰めますから、どうかこれ以上は無理をしないでください!!」
涙を流しながら必死に懇願する赤城。
その姿に提督もこれ以上赤城に余計な心配をかけるわけにはいかないと感じたのか、
「…分かった。 それじゃ、今日は鎮守府の私室に泊まっていくことにするよ。 帰るには遅い時刻だし、何よりこれを見た後だと戻るのが恐ろしいからな…」
「赤城、ここまで付き合ってくれてありがとう。 お前がいなかったら、俺は最後まで真相を見届けることはできなかった。 お前のおかげで、俺もストーカーの正体を突き止めることができたよ」
「…いいんです、提督。 私もまた、貴方をお慕いしてる者の一人ですから、これで貴方のお力になれたというのであれば、これほど嬉しいことはないです」
「赤城… お前のような部下をもって、俺は幸せ者だ。 何かお礼をしたいんだが、希望はないか?」
提督がそう言うと、赤城は一瞬驚いた様子を見せ、その後急にもじもじしだした。
その姿に、「どうした…?」と問いかけようとしたが、先に赤城の方が口を開いた。
「…で、でしたら、その…… ケッコンカッコカリの相手に私を選んではもらえませんか?」
「ケッコンカッコカリ…… ああ、そう言えばまだ相手を選んでなかったんだったな。 だが、あれは単なる任務の一環だが赤城は本当にそれでいいのか?」
「も、もちろんです! むしろ、それがいいんです!! ……あっ、すみません。 つい興奮して…」
「…分かった。 それじゃ、この件が終わったらケッコンカッコカリを行おう。 いいか、赤城?」
「はいっ! 楽しみにしてますね、提督♪」
満面の笑みを浮かべる赤城の顔を見届け、提督は「後はよろしく頼む」と言い残して執務室を後にしていった。
後片付けは赤城がやると言っていたので、今回はその行為に甘えようと思ったからだ。
扉が閉じ、一人残された赤城はほっと胸をなでおろした。
「良かった。 提督が休んでくれて」
「流石にこれ以上は提督に見てほしくなかったし、本当にほっとしたわ」
赤城は再生されたままの監視カメラの映像に目を向ける。
映像は洗面所を映していた分が終わり、最後の寝室を撮影した画面に切り替わった。
1時過ぎまでは提督が一人寝息を立てる姿が映っていたが、2時を回った頃……
『ウフフ… 提督ってば、今日もぐっすり眠っていますね。 それでは、今日も失礼します♪』
そう言って、寝ている提督に近づき口づけをし、その後提督の布団に潜り込む赤城の姿が映っていた。
実は、赤城もまた三人と同様に提督の家に忍び込んでいた。
初めは深夜にこっそり提督の寝顔をうかがうだけだったが、それも日が経つにつれ徐々に欲望が強くなっていき、ある日我慢できずに寝ている提督の唇を奪ってしまった。
その時は自分はなんてことをしてしまったのかという罪悪感に囚われていたが、提督はそのことに気付かず、いつものように赤城に親しく接してきた。
そんな彼の姿を見て、赤城はどこか言い知れぬ背徳感を感じていった。
もっと愛しい人と触れ合いたい。
欲望が暴走した赤城はそれからも提督と口づけを交わす行為を続けてきた。
だが、それさえ満足できなくなったある日。 彼女は実家で寝ている提督の元へやってきて、直接肌を重ねる行為にまで及んだのだ。
好きな人と触れ合い、眠っていながらも快感を感じている提督を見るのが、赤城にとって週末の楽しみだった。
しかし、昨日は監視カメラが仕掛けられていたことに気付かずに事を起こしてしまい、偶然提督が執務室にいたことを確かめ監視カメラの事を知ることができた。
結果、どうにか自分がしでかしたことについては提督にばれずに済んだのであった。
「それにしても、まさかあの三人も提督にちょっかいをかけていたなんて、知りませんでした。 あとできつくお灸をすえないとですね」
「心配しないでください、提督。 私がいる限り、貴方を他の女の手にかけさせたりなんかしません。 夫の身を案じるのは、妻の役目ですから」
「それに…… んっ…!」
赤城は急にお腹を押さえる。
服の上からではわからないが、少し膨らんだお腹をさすりながら、彼女は呟く。
「…この子も早く提督に会いたがっているようです。 最近急に活発になり出してきましたから、この子が来るのもそう遠くなさそうです」
「今はまだケッコンカッコカリでも構いませんが、いずれちゃんとした結婚をしましょう。 ねっ、あなた……」
そういうと、赤城はにっこりと笑う。
新しい命が自分のお腹に宿っていることを感じながら、彼女は一人そこに佇むのであった。