もうグダグダじゃよ! 何度書こうともグダグダじゃ!
ヤツはストーリーの破壊者だ……(ストーリーの予定が)みんな殺される……
夢の断片を見た二人は何を馳せるか
あ━━━貴方、知ってるよ。リンドウだ。
ん━━━キミ、知ってる。スズラン。
知りたいな。知りたい。貴方はだぁれ? キミはだれ。
私、スズラン。ボク、リンドウ。
また会えるよね? また会いたいよ。
━━━で、貴方/キミ、誰だっけ? どこかで見た事、あったんだけど。
◆◇◆
まだ春の暖かさが残る五月晴れの頃。今日の気温は20℃を下回っている。
道中の生徒達が寒さ対策のためにしっかりとブレザーを着込んで歩いている。
そんな中でブレザーを脱いで腰に巻いている少女、鈴蘭はニシシ、と笑いながら並走する木場と一誠、アーシアの三人に目をやってから、木場の方に話し掛けた。
「木場きゅん木場きゅん」
「なにかな境界さん。あとなにその呼び方」
「んー? えっとね、おんなじクラスの人が木場きゅんを木場きゅんって呼んでたからかな? ひょーどーX木場はいい感じだーって」
それは多分兵藤×木場だ。断じてエックスじゃない。でもできれば俺はエックスであって欲しい。
兵藤 一誠は静かに呟いた。
「そっか……できればきゅんはやめて欲しいんだけど」
「馴れたからむりー。あと特に用事はなかったり!」
「そっか」
適当に鈴蘭をあしらいながら木場は一誠に話し掛ける。誰かが気付くかもわからないくらいに小さく少し、重たげに。
「イッセーくん、なんだか悩ましげな顔をしているけど。僕でよければ相談に乗ろうか?」
「ん? んー……ああ、乗って欲しい。ちょっと、部長が変で」
「変って?」
真剣そうな表情をしている二人を尻目に「あっつー」と言いながら手で顔を仰いでいる鈴蘭は一誠の顔を覗き込むようにして視界に入ると、こう呟いた。
「おっぱい縮んだ?」
「そんな事になったら俺が死ぬ! いやそうじゃなくて、なんか変だよな。ハッキリとはは言えないけど、何か悩んでるみたいで……木場も気付いてるだろ? 何か知ってるなら教えてくれ」
「……部長の悩み、か。それだったら多分、グレモリー家の事じゃないかな。僕も詳しくは知らない」
「ぶちょーのおうちってあれでしょ? すっごいとこなんだよね? じゃ、お金持ち特有の悩みかにゃ?」
「多分悪魔関連だと思うんだけど」
めんどっちーから運んでって木場きゅん! と言うと鈴蘭は木場の背中に乗っかる。木場も特に嫌な反応をせずに彼女を背負う。この光景を見た女子達の感想はさらがら、兵藤×バツイチ子持ち木場だろうか。間違っても本人達には言えない事なのだが。
「朱乃さんなら知ってるかな」
「そうだね。朱乃さんは部長の懐刀だ。
「そうか……うーん、どうしたものか……」
「はいはい妙案!」
「一応聞くけど、なに?」
「ひょーどーくんがぶちょー関連の何で悩んでるかはわかんないけど、ぶちょーに聞けばいいと思いまーす!」
「はいはい反論」
「なんでしょう!?」
「それができないから悩んでるの、わかる?」
「しまった! それを失念していた!」
やだ私ったらうっかり! なんていつものノリに慣れた彼は木場らと共に部室へ向かう。
「……そういえば鈴蘭さ、入部拒否してたよな。なんで馴染んでんの?」
「そりゃあーた、あれですよあれ。ソファがふかふかで気持ちいいからですよ」
「ああ、うん、そっか」
彼女の突拍子のない発言にいちいち付き合っていてはこっちの精神が磨り減ると関わる機会が多くなってから嫌という程知った一誠はおよそハーレム計画を企てている少年とは思えないようなめんどくさそうな対応をしている。
いや、実際鈴蘭は部的にも貢献している。はぐれ悪魔達はオカ研の耳に入る前に消し飛ぶおかげで被害も余計な労力も使わずに済んでいるし、よくわからない複製能力で部費についてもかなり助かっているというのが現状だ。
そうこうしているうちに部室に辿り着く。扉前に立って扉を開こうとした時、木場が何かに気付いた。
「……僕がここまで来て初めて気付くなんて……」
目を細めた彼を怪訝に思いながらも一誠は構わず扉を開く。
室内にはいつもの三人にもう一人、銀髪の女性が立っていた。
「おー、知らない人がいるね。新入部員?」
「いや、あの人はそうじゃなくて……」
「……全員揃ったわね。でも早速だけど鈴蘭」
「ほいな」
「少し席を外してくれるかしら? ちょっと、眷属じゃない貴方には面向かっては言えない話だから」
「ふぇ? ……あいさわかったぶちょーさん。じゃ、ちょちょいと私はお外の空気でも吸ってますぜ~」
リアスの言葉に少しだけ溜めるような待ちを挟んだが、比較的素早く了承した鈴蘭はドアに手を掛けて部屋を後にした。
◆◇◆
そしてその直後。
「にゃしし、ぶちょーは面向かって言えないって言ってたよねん。だったら面向かわず正々堂々と聞き耳を立ててあげましょうじゃないの」
魔法少女らしくねん、と言いながら部室の屋根にまで移動した鈴蘭は杖を取りだし、それについた水晶に映像を映す。
オカ研の部室だ。その部屋には鈴蘭が出て三十秒と経たない間に見知らぬ男性が一人増えていた。
「こ、これはもしや私リストラ的なアレだったり……? ま、まさかね。にゃははは。ないない」
まさかそんな温情あるリアスぶちょーがそんなことするわけなかろうという確信めいたよくわからない信頼を覗かせながら彼女は遠慮なく覗く。恥も外聞もないのだ。
『……最強の女王と称される貴方にそんなことを言われたら流石に怖いな。バケモノ揃いのサーゼクス様の眷属は相手にしたくない』
「……痴話喧嘩ですかね。これが私が出てく理由なら……ちょっと変だわさ。いや、ぶちょーも皆もこの人の事をよく思ってるようには見えないね、眷属には伝えられた部外者には言えない、加えて木場きゅんは『家庭の事情かもしれない』って言ってた」
ふーん、ほーん、と噛み砕く。この少女、やってる事や考える事はアホの極みだがその実脅威的なまでに頭がいい。理解力もあるし、回転も早い。ただ問題なのはそれを勝手に自己完結させてぶっ飛んだ回答を出すという事なのだ。
その点で言うなら今日の鈴蘭は不思議と冴えていた。頭のなかにぐちゃっと並べたパズルのピースが適当に嵌めていったら驚くような速度で嵌まって行く、とでも表現しようか。
「察するに、ぶちょーの婚約者か何かかにゃ? そこまでは行かなくともぶちょーのおうちと深く関わりがあって、ぶちょーとは反目しあっている……というより、ぶちょーが敵対視しているってところかな」
『こうなることはサーゼクス様も旦那様も、フェニックス家の方々も重々承知でした。正直に申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。これで決着が着かないのなら、と最終手段を取り入れる事にしました』
『どういう事、グレイフィア』
グレイフィア、とリアスに呼ばれた銀髪の女性は頷くと、淡々とその最終手段について語り出す。
『お嬢様、ご自身の意思を押し通すというのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着を着けるのは、いかがでしょう』
『━━━ッ!』
グレイフィアの言葉にリアスの顔が固まる。その表情から察せられるのは高揚、不安、期待、覚悟……様々な感情がないまぜになっている。
『お嬢様もご存知の通り、公式な『レーティングゲーム』は成熟した悪魔にしか参加権がありません。ですが非公式の純血悪魔同士であれば、半人前にも参加資格はあります。この場合の多くは━━━』
「『身内のいがみ合い━━━』かにゃ?」
鈴蘭とリアスの呟きは殆ど同じタイミングで重なった。ただしそれは前者が楽しいものを見るように、後者が苛つき混じりであるように見受けられるが。
『っ、お父様方は私が拒否したときの事も考えて、ゲームで婚約を決めようという腹なのね……どこまで私の生き方を弄り回せば気が済むの……!』
『……では、お嬢様はゲームも拒否すると?』
『いえ、まさか。そんな好機は二度とないわ。ゲームで決着を着けましょう、ライザー』
リアスの挑戦的な口調に気を良くしたのか、ライザーは高笑いをしながらそれを受け入れる。
『そうか、受け入れるか! ならいい、俺もしっかりと相手をしなくちゃあな』
そうしてライザーとリアス達はやいややいやと話し合いを続けていくうちに鈴蘭は杖を仕舞う。
そして異法の力を右足に籠めると、パンツとかそういうのを無視して右足を天高く掲げ、トン、と左足で軽く跳ねる。
そして着地と同時に彼女はその力を踵の一点に集約させて━━━
「いーーーーーーれーーーーーーてぇーーーーーーー!!!!」
屋根を蹴り壊しながら、部室の中に入ってきた。
「なっ━━━」
「━━━はぁ」
突然の出来事に戦慄するライザーと破天荒過ぎる行いに覚えがあるようで頭を抱えるリアス。
当の鈴蘭は死ぬほどスッキリしたような表情でツカツカと先程までソファに座っていたリアスとライザーの間に挟まって、机の上に遠慮なく座った。
「面白そうなお話ばっかりしてた我慢できなくなりました! いーれーて!」
「……正直どれだけこっちが有利になるとしても入れたくないわ……」
「謙遜なさるなよぶちょー! 私強いよ? ちょー強いよ?」
「知ってるから嫌なのよ」
「ガーン! 私のみりきがわからないなんて、ぶちょーの美的センスもダメダメね……」
「……あー、あー……少し落ち着いてくださいますか?」
そうやってリアスと鈴蘭が漫才をやっていると、やがてグレイフィアが態と喉を鳴らして二人を制止させた。
「……お嬢様、状況を鑑みるに、その少女が」
「……ええ、オカ研の実質的な新入部員よ。神器も宿さないにも関わらず教会の戦士を二人まとめて相手取り、撃退した少女」
「……そうですか。お話は聞いていましたが……正直に言うと侮っていました」
「別にいいわ。この子の酷さは口頭で伝えられる自信がなかったもの」
それだけ無茶苦茶をやっているだけに部やリアスに貢献できているという事実に腹が立つ。いい意味で。
「……リアス、なんだ。この、頭のネジが全部弾け飛んでそうな幼女は」
「弾け飛んでそうならどれだけ苦労しなかったか……諸事情があって協力、監察している人間の女の子よ」
「……そうか。体つきや人間であることはともかく、なまじ顔が好みなだけに色々ガッカリだぞ」
「ガッカリよ、この子は。この世のありとあらゆるガッカリ要素を闇鍋に入れたかのようなガッカリ具合よ」
ライザーが若干リアスに同情しかけていると、今度は鈴蘭がライザーにビシッ、と指を指す。不思議なポーズを取りながらゴゴゴゴゴ……という擬音もついでに出ている。
「そういうわけなので、話はだいたい盗み聞きさせてもらいました! れーてぃんぐげーむっていうの超面白そうだから私も混ぜて!」
「お、おう……今更人間の女が一人増えたところでこっちは負けるつもりはないからな、俺は構わないぞ」
なんかもう台無しになった空気でライザーが必死に威厳を保とうとしている。
「えっと、じゃあそっちのパツギンチャンネーは?」
「サーゼクス様は『万が一例の人間の少女がリアス側につくというのなら決して止めてくれるな』と仰っていましたので、構いません」
よっしゃ! とガッツポーズを決めながら鈴蘭は立ち上がる。その右手にはいつの間にか杖が握られており、まるで彼女の心境を代弁するように嵌められた水晶が光っている。
「境界 鈴蘭、楽しそうなのでリアス・グレモリーの緊急眷属として登録されまっす!」