New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~ 作:Samical
「「・・・・・・」」」
キーンコーン、カーンコーン・・・
「よしっ、テストここまで!」
「「「よっしゃー!!」」」
「「「終わったぞー!!」」」
「こらこら、早くテスト回収するんだ」
おそらく今年最後の難関であった期末テストも終わった! これで今年ももう終わったようなもんだね!
「夏穂ちゃ~ん、テストどうだった~?」
「今回はまあまあ出来たと思うよ。・・・あ、姫華は・・・」
「・・・ふっ」
「えっ、何どうしたの姫華!?」
「なんだか姫華ちゃんがセンチメンタルだ~!?」
普段は子供っぽい姫華がなんだか大人びてる!? すると姫華がついに喋りだした。
「・・・テストはね・・・終わったんだよ・・・」
「いや、確かに終わったけど・・・」
「終わったことはね・・・、どうこう言っても仕方ないんだよ・・・」
「なんだか姫華ちゃんが深いこと言ってるよ~」
姫華がいつもの調子とは程遠いのでこれ以上は触れないようにしよう、うん。
・・・それはさておいて、この後は練習だよ、練習!
「ところで恵、お昼どうする?」
「練習あるからしっかり食べとかないとね~。食堂なら今日は部活の人しか使ってないから空いてるだろうし~」
「そうだね、行こうか!」
練習は基礎強化練習だけどこれが結構ハードだからね。しっかり食べとかないとバテちゃうんだよね。
「テストは終わっ・・・」
「ほら、姫華もいつまでもボーッとしてないで行くよ!」
* * * * *
「ほら! あと、1周! ちゃんと僕についてきてよね!」
「ちょ、き、きついっす・・・!」
「うう~! 御林さん、体力あり過ぎですよー!」
「み、御林・・・、待ってくれー!」
今は投手陣は基礎練の一つ、ランニング中。ウチの投手陣は現時点で投手は4人。でも、実際は激闘第一戦の時の最後の1回の金村さんを除いてほぼ御林さん一人で投げてる。最後には御林さんが捕まり、後続も打たれて負けた。このチームが強くなるには御林さんに続く実力の投手が必要となる・・・。
ただ、ランニングするだけでも御林さんの実力が抜きん出ているのは明らか。とにかく私たちは必死に御林さんの背中を追わなきゃいけないんだ。今はまだまだだけど・・・。
そして私たちは無事残り1周を終わらせた。
「ぐあー! もう無理だー!」
「うん、疲れたよね・・・」
「杉浦、桜井、お前ら、随分、きつそう、じゃねえか」
「いやいや、剛。君もじゃないか」
そんなことを言い合っていると、彩ちゃんがドリンクを持ってやって来た。
「みなさーん! ドリンクですよー!」
「ありがとう! 彩ちゃん!」
「うおー! 助かるぜー!」
「わざわざありががとうね」
「いえいえ、皆さん頑張ってますから!」
寒くなっていく冬の日、投手陣はこうしてメニューをこなしていった。
* * * * *
一方の野手・・・、
ブンッ! ブンッ! ブンッ! ピピーッ!!
「はい、終了でーす! 1時間経ちましたー!」
「かー! きついぜー!」
「にしても素振り1時間って・・・」
「メニューの内容の素振り、回数じゃねえのな」
「そっちの方が分かりやすいのにな・・・」
「おう、お前ら。このメニューの意味、分かってるのか?」
田村と初芝が話しているところに岩井がやってきた。
「い、岩井さん!」
「メニューの意味、っすか?」
「ああ。今日のメニューが素振り300回、じゃなくて1時間、ってなってた理由だ」
「い、いえ・・・」
「・・・自分のペースでやれってことですか?」
「うーん、初芝の答えはちょっと惜しいな」
「というと、なんなんですか?」
岩井は素振りに使っていたバットを実際に振って説明を始めた。
「自分のスイングをしっかりと見つめ直すためだ。回数で終わり、ってすれば回数をこなせばいいって思うやつが出てくるもんだ。スイングの1回1回に集中してそのたびにスイングを見つめ直し、もう1回振る。それを繰り返すんだ。そうなると間を空けて振る事になる訳だがそこで楽しようとするかどうかはそいつ次第だ」
「た、確かに・・・」
「回数だとどうしても早くやろうとするし・・・」
「ああ。それでフォームが崩れたら意味ねえしな。・・・よし、素振りも終わったし、次はランメニューだ。寒さも吹っ飛ばすぐらい走るぞ!」
「「うっす!!」」
素振りを終えた野手陣も下半身強化の走り込みへと向かって行った。
こうして聖森学園野球部は冬の地道な練習をこなしていった。来る来年の夏の大会、次はもう負けの許されない戦いを目指して。
* * * * *
月日が経つのは早いもので気づけば今年も終わろうとしていた。聖森学園に入学してから早8か月、本当に短かった気がする。28日まで練習して、29、30日と野球部のみんなやクラスの友達と遊びに行ったりして、部屋を片付けたりしていたら結局大晦日の夕方ぐらいになってしまった。
「夏穂ー! 早くお風呂入ってしまいなさい! 夕飯前に入ってしまってよ!」
「はーい、りょーかーい!」
部屋でまったりしているとお母さんが下の階から大きな声で伝えてきた。なんでも昔はソフトボールをやっていたらしく、声がほんとうによく通るんだよね、ウチのお母さん。
その後、お風呂も済ませて食卓のあるリビングに向かうと先に待っている二人がいた。
「ねーちゃん! 久しぶりじゃん!」
「夏穂おねーちゃん、帰ってきてたんだね!」
「おーおー、私のかわいい兄弟たちじゃないか! 元気にしてた?」
「とーぜんじゃん!」
「私は寂しかったよー」
「おお、小春(こはる)は嬉しいこと言ってくれるね!」
「お、俺は寂しくなんかなかったし!」
「またまた~、強がっちゃって~。かわいいなあ、満(みつる)も!」
「つ、強がりなんかじゃねーし!」
「はいはい」
「子供扱いするなー!!」
この二人は私の愛する弟と妹、小春と満。どうやら今日は二人とも出かけていたみたいだ。私が帰る時間は伝えてなかったし、さっき帰ってきたのだろう。
小春は中学2年生でソフトボールをやっており、新チームでは主軸を打つほどの実力者でポジションはほぼ全てという器用さを持っている。それと非常にお洒落さんである。私の服のことまでとやかく言ってくる。そして満は中学3年、中学の野球部ではキャプテンも務め、ポジションは投手と外野。ピッチングもバッティングも優れている好選手である。ただ、女兄弟に挟まれていたのと中性的な顔立ちのためかよく女子に間違えられるという。
「あらあら、満はものすごーく寂しがってたじゃないの」
「してないって!」
「ささ、晩御飯にするわよー」
「って、ちょっと! しれっと流さないでよ!」
お母さんに茶化されて起こる満。ほんと、かわいいなあ。
そんなこんなでその後、お父さんも加わって久しぶりの自宅での夕食となった。
「夏穂、学校で元気にやってるの?」
「うん、友達もたくさんいるし、野球部の練習も楽しいし」
「大丈夫なのか? ケガとかしてないか? 一人暮らしは・・・」
「「「「お父さんは心配し過ぎ!」」」」
「う、いや、しかしだなあ・・・」
私のお父さんは仕事場ではしっかりもの(らしい、部下の人がこの前家に来て話していたのを聞いた)だけれども、私や小春、満のことになると超が付くほどの心配性な、親バカお父さんなんだ。
「大丈夫だよ。私はもともと家事得意だもん」
「夏穂おねーちゃん! 彼氏はできたの!?」
「「ぶはっ!?」」
小春の強烈な不意打ちに思わず吹き出してしまった。というかなぜお父さんまで吹き出しているのか。そして小春、そんなキラキラした目でこっちを見ないで・・・。
「い、今は野球一筋! 白球が恋人なの!」
「えー、夏穂おねーちゃん。かわいいからモテると思うのになー」
「小春と満の方がかわいいよ!」
「もー、夏穂おねーちゃんったらー!」
「ちょっと待ってよ! なんで俺も入ってるんだよ!」
「事実じゃん?」
「違うってば!」
こんなやり取りができるのも久々だなあ。やっぱり実家っていいよね!
* * * * *
年も明け、私たちは家族でおばあちゃんの家へ行ったりしてゆっくりと過ごしていた。
おばあちゃんの家の近くにはとても広い公園があって・・・、
「ねーちゃん! 今年こそは打つ!」
「みっちゃん(小春の満の呼び方)も毎年毎年よくくじけないねー」
「俺だって毎年進化してるんだ!」
「それは夏穂おねーちゃんもだと思うんだけど・・・」
という感じで、毎年この時期にこの公園で満は私に勝負を挑んでいるのだ(私の5勝0敗)。ただ、今の私は・・・、
「(フォーム改造は一応去年で終わったから新年の練習再開した後のフリーとかでお披露目の予定だったんだけど・・・)」
事前にトモと木寄さんには事情を話してあるので投げる分には許可ももらってるし・・・。
「ふふっ、お姉ちゃんだって進化してるってことを教えてあげるよ!」
まあ、初めて改造フォームの投球を見せるのが愛する弟と妹ってのもいいんじゃなかな! そして、バッターは満、小春がキャッチャーとして準備を終え、対決が始まった。
「な、なんなんだよあのボール! ねーちゃん! どーなってんの!?」
「私もちょっと捕るの大変だったー。フォームもすごく変わっててびっくりしたよー」
「わ、私も自分でびっくりしたよ! 打者相手に投げたのは初めてだったから・・・」
結局、3打席でバットに掠りもしなかった。相手が満とはいえ手を抜くのは失礼だと思って全力で投げたんだけど今までとは全然感覚が違った。同時に手ごたえも掴んだ気がする。
「二人とも、ありがとう。何か掴めた気がするよ」
「ううん、すごいよ、夏穂おねーちゃん! これならきっとすごいピッチャーになるよ!」
「こんなボール投げるの見れたんだし! やっぱりねーちゃんはすげーや!」
二人も喜んでくれてるならいいかな? でも、この手応えなら本当に通用するかもしれない!
「よっし! じゃあ、帰ろっか! おばあちゃんがお昼ご飯作ってくれて待ってくれてるよ!」
「「うんっ!!」」
改めて思った。やっぱり兄弟姉妹はいいものだよね!
そして3ヶ日も終わり、5日から練習が再開するので私は下宿先へと帰ることになった。
「それじゃ私、戻るね」
「気を付けてね」
「ねーちゃん、もう戻っちゃうのか?」
「もう少しいてよ、夏穂おねーちゃん!」
心配してくれるお母さんと、戻ってほしくなさそうな満と小春の両名。
「私ももう少しいたいんだけどね。でも練習も始まるし、しょうがないよ。また今度帰ってきたら一緒にお出かけしてあげるから」
「ほんとっ!?」
「約束だよー!」
「うん、約束するよ!」
お出かけでそんなに喜んでくれるなら姉冥利に尽きるものだよ・・・。
「そうだ、満」
「? なに?」
「行く高校決めたの?」
「ん~、それはもうちょっと秘密かな!」
「もう、もったいぶっちゃって・・・。あ、もうこんな時間だ! じゃ、またね!」
「「「「いってらっしゃーい!」」」」
さあ、休みは終わり。また野球の日々が始めるよ!
* * * * *
練習が再開し、3学期も開始してはや2か月。3月になってようやく暖かくなってきた。
「じゃ、今日から通常練、再開しまーす!」
そして3月の練習の一発目、花﨑コーチが宣言した。
「おお、ついに!」「待ってました!」「打てる、打てるんだ!」
と、部員たちのテンションも急上昇。私もひっそりテンションは上がってるけどね!
「で、早速今日は実践打撃するんだけどピッチャーは・・・」
「はいっ!! 私やりたいです!」
いの一番に私は手を挙げた。
「桜井が投げるのか!?」「ずっと今までブルペンでしか投げてなかったよな!?」
「フォーム改造、終わったからね」
私は満との勝負で得た手ごたえをこの2か月で確信に変え、フォームは完成した。早くバッター相手に投げたくて仕方がなかったんだ!
「じゃ、桜井さんにお願いするわ。じゃ、準備始めてね!!」
「「「「はいっ!」」」」
「さ、実践打撃開始!」
「よろしくお願いします!」
最初に打席に立ったのは小道さん。ピッチャーは私で、キャッチャーはトモ、審判は花﨑さんが務める。そして、グラウンドにいるみんなが私に注目してるのが分かる。
「(さあ、来い夏穂。初球は低めへのストレートだ。みんなを驚かせてやろうぜ)」
「(OK! 行くよ!)」
私は小さく振りかぶり、左足を真っすぐに上げる。そのまま軸足に体重を乗せ、重心を下げる。そしてそこから・・・、
「(一気に前に踏み込む!!)」
軸足をバネのように使い、全身の力をボールに伝える! そして、腕をしならせて振り抜く!! そして、投じられたボールはまっすぐにミットへと吸い込まれた。
スパ――ン!! と小気味いい音がミットを鳴らす。
「っ!?」
「すげえ!!」「前の時と球速が段違いじゃねえか!!」
小道さんは明らかに驚いた表情をしており、周りのみんなも驚きを隠せない。
「ナイスボール!!」
トモはそう言いながらボールを返してくる。その後も私は新フォームで快投を続け、今日は打者6人にヒットを打たせなかった。上出来だったけど、コントロールが少し甘かったかな。次はもっと修正しなきゃね!
* * * * *
監督の榊原は今日の練習を振り返りつつメモを取っていた。これは榊原がここの監督になってからずっと続けてきた習慣であり、その日の練習の気づいた点などを事細かにまとめており、非常に膨大な数のノートを作っていた。
「(今日の桜井のピッチング・・・、まさに生まれ変わった、とでも言うべきか・・・)」
榊原は夏穂の投球のことを主に印象として残していた。御林は上々の出来だったし、杉浦も荒れていたがボールは走っていたし、金村は調子が悪かったなりに打たせて取っていた。その中で6人の打者をシャットアウトした夏穂は榊原にとっても予想外の活躍だった。
「(昨年から取り組んでいたフォーム改造が実を結んだ、か・・・。元より手元で伸びる質の良いストレートを投げていたが・・・、そこに柔軟な体を活かした全身の力を無駄なく伝える、それでいて無駄に力が入らないフォーム。これからが楽しみだな・・・)」
榊原はある程度メモを取ると、ノートを閉じた。
夏穂覚醒です! どうしても高校野球の冬場ってイベントが少ないんですよね。という訳でサクサク行ってしまいました。次ぐらいで待望の新入生&2年目突入の予定です!
読んでいただきありがとうございました。感想なども良ければ、また次回もお願いします!
この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)
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桜井夏穂
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松浪将知
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空川恵
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久米百合亜
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ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)