New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~ 作:Samical
新入生も入部し、先輩となった夏穂たちは恒例の新入生歓迎紅白戦が行われた。必勝の意気込みで臨むが、剛速球を投じた白石、非凡な打撃センスを見せる夏穂の弟の満や久米といった実力者たちも現れ、苦戦を強いられることに。
3回の裏・・・、
「・・・やんすっ!」カキンッ!
矢部川くんの放った当たりは力なく上がり、ファーストの満のグラブへと収まってスリーアウト。トモのホームラン以降は竹原くんのレフトライナー、恵のライトライナー、初芝くんのヒット、四球などが出たもののゲッツーなどで点は入らなかった。
3回終わって、1得点。ストレートしかないと分かっていても僅か2安打に抑え込まれたことは反省すべきポイントだった。一方で、ストレートのみでその結果を出したあの白石はかなりの戦力になりえる逸材だろう。
「さ、切り替えて守っていきましょう!」
「「「はいっ!!」」」
そして、4回の表。初回以降は杉浦くんは立ち直り、2回と3回は三者凡退に抑え込んだ。そしてクリーンナップ2巡目を迎える。
「さっき杉浦くんに合ってたクリーンナップ・・・、この回は大事だね」
「こ、こっちも打ててないしね・・・」
私と村井ちゃんはベンチから見守っている。打席には先ほどツーベースを放っている白石。警戒すべき相手だが・・・、
「・・・うっ!?」
この打席はバットに掠ることもなく三球三振・・・。3球連続のカーブであっさり打ち取られた。
「変化球にまるで合ってない・・・」
「ス、スイングはものすごく速かったけど・・・」
ベンチへと引き返す白石を見て、松浪はほっと一息をつく。
「(投げては変化球が無いとはいえ快速球を投げ込み、打っては驚異的なスイングスピード・・・、えげつねえ化け物だと思ってたけどここまで変化球に合わなきゃ話は別だな)」
いくらスイングが速くても当たらないと無駄である。それよりも松浪が警戒しているのは続く4番の夏穂の弟の桜井満と5番の久米である。はっきり言ってこの二人は技術面では1年の中でも規格外と見える。
「桜井満とか言ったか? 夏穂の弟らしいな?」
「ええ、そうっすよ。ところで先輩、ねーちゃんはいつ出てくるんですか?」
「もうちょい待ちな。その内来るさ」
「ならあの人からもう一回打って引きずり出しますよ」
「威勢いいなあ、お前。気に入ったよ。でもなあ・・・」
松浪は笑いながらもサインを出し、満も構える。杉浦の投じたボールは・・・、
「うわっ!?」
インコース高めのボール球、いわゆるブラッシュボール思わず満はのけ反る。
「1本出たからって杉浦を攻略できたわけじゃないぜ・・・!」
「これくらい・・・」
続くもインコースのストレート、右投げ左打ちの満にとっては右投げの杉浦からボールが向かってくるように見える。その後もインコース攻めが続いて2-2になってからの5球目・・・、
ズバンッ!!
「っ・・・!」
「ストライクッ! バッターアウト!!」
主審を務める岩井の声が響く。
「悪いが1年にこれ以上打たれちゃ敵わねーから、そこそこマジの配球させてもらった。悪く思うなよ」
「ぐっ・・・!」
インコースのボールを散々見せられた後の、外のストレートに満は手が出なかった。目がインコースに慣れたため、遠く見えたのだった。
「(さて、桜井弟は抑えたがこいつも問題だ)」
続いて左打席に立った久米を見て松浪は思考を巡らせる。
「(さっきは椿のファインプレーに救われたけど、完璧に捉えられていた・・・。ここは
・・・ストレートを胸元に・・・!)」
「(おっし、分かった!)」
杉浦は頷き、サイン通りにボールを投じたが、
「っ!!」キイイイインッ!!
ややタイミングが速かったのかファール、しかしほとんど捉えられていた。
「(・・・あそこまで綺麗に打たれると自信なくすぜ・・・)」
「(大丈夫だ、杉浦・・・、次は“あれ”で行くぞ!)」
「(うおっし!!)」
杉浦は思い切り腕を振るい2球目を投じる。しかし、力みが出たのかボールは真ん中付近へと向かった。
「(ストレートの失投!? もらいます!!)」
久米もそのボールを弾き返そうとフルスイングした。しかし・・・、
「!?」 カキンッ!!
快音は響くことなく力ない打球がセカンドへと転がり、椿はこれを難なく捌きツリーアウトチェンジとなった。
ベンチに戻りながら久米は引き下がっていく松浪を見据えた。
「(ツーシーム・・・、打ち気を読まれてたんですね。流石です)」
「えっと、久米さん惜しかったよ。1打席目もファールもいい当たりだったし」
久米がベンチに着き、守備の準備をしているとぱっと見女子のような男子生徒・・・美田村智明が声をかけてきた。
「百合亜(ゆりあ)でいいよ、美田村くん。それより次のピッチャーは君だよね?」
「あ、うん・・・。僕、白石くんみたいにすごいボール投げられないから打たれると思うけど・・・、守備よろしくね」
「大丈夫よ、点とられなきゃピッチャーは仕事を果たせてるんだから、打たれても要所きっちり締めて0に抑えれば問題無し! ね、白石?」
「・・・それは僕に対する皮肉・・・? まだ投げたかった・・・」
「嘘ばっかし。随分お疲れモードじゃないの」
「そ、そんなことは・・・」
「ベンチで寝たりしたらダメだからね?」
「するかそんなこと・・・!」
その返しを聞かずに久米はベンチを飛び出していった。
* * * *
杉浦くんがクリーンナップを三者凡退にした後の4回の裏の2年生チームの攻撃、この回から守備が変更になった。ピッチャーの白石に代わりあの美田村智明がマウンドに上がった。・・・やっぱり女の子にしか見えないよね。すごく可愛らしいもん。
「この回は松浪くんからでやんすからなんとか点を取りたいでやんすね」
「そうだね。あと美田村くんがどんなピッチングするかだね」
トモは2巡目だけど投手は代わっている。それでも打てくれると期待したいね。
「い、いきます!」
「よっしゃ、来い!」
美田村はセットポジションから素早いフォームでボールを投げ込んできた。
バシッ! 「ストライク!」
トモは、なるほど、といった様子で見送った。美田村の投じたボールはそれほど速くない。ただし、ランナー無しからクイックフォームで投げてきた。テンポ良く投じた2球目はゆったりとしたフォームからシンカー、これもトモは手を出さず追い込まれてしまった。
そして、続く3球目は・・・、
「うおっ!?」カツンッ!
デローンとした軌道で沈むいわゆるパームボールを引っ掛け、トモはサードゴロに倒れた。続く大もパームを泳がされて打ち上げ、センターフライに倒れた。
「いやー、あそこまで緩いと思わず手を出しちまうな・・・」
「同じく。待ちきれずに振ってしまった」
「パーム投げるなんて珍しいもんね…」
と、思っていた矢先だった。
「と~!!」 カッキ――ン!!
「「「えっ!?」」」
恵がそのパームをフルスイング一閃。右中間を真っ二つにした。打った恵は悠々2へ到達した。さすが恵、迷わず自分のスイングを貫いたんだ! そして初芝くんもシンカーを上手く拾い、2塁から恵が帰りタイムリーヒット! 2年生は待望の追加点を得た。
* * * *
5回の表は大森がヒットで出塁するも後続を断たれ無得点。一方、2年生チームは元木くんのサード強襲ヒット、代走の田中くんの盗塁と姫華の送りバントで1死3塁のチャンスを作り、風太のライトフライで1点追加。3-1とリードを広げた。矢部川くんはショートフライに倒れてチェンジ。そして、いよいよ・・・。
「よーっし! 私の出番!」
「俺も出番だぜ!」
「わ、私も・・・」
6回の守備から予定通りに選手交代。大に代わって田村くんがファーストに(そういえば1年にも田村っているからこっちは田村信という登録になるかな?)、レフトの初芝くんに代わって村井ちゃん、代走で出た田村くんがサードに、そしてピッチャーに杉浦くんに代わって私が入った。
1年チームは1番の露見から。
「女性投手ですか・・・、さすが聖森ですね!」
「夏穂をその辺の並のピッチャーと一緒にしない方がいいと思うぜ・・・!」
トモが出したサインはストレート。当然、首を振る理由が無いよね!
よしっ、行くよっ!!
「はあっ!!」
「っ!?」スパ―――ン!!
よーし、絶好調! ストレートの走りがここ最近で一番だ!
2球目も外角のストレート。露見はこれも見逃しカウント0-2。
「(これだけ合ってないならストレート一本で十分だな・・・、よし)」
「(オーケー!!)はあっ!!」
「うわっ!?」
露見はなんとかスイングしたものの高めのストレートにタイミングも合わず三振。続く田村もバットに1度も掠ることなく三振に倒れ、代打で出てきた池野も三振!
「よっしゃ!」
「ナイスピッ!!」「さすが夏穂っ!」「ナイスピッチ~!」「しびれるなあ、おい!」
2年生メンバーも口々に讃えてくれた。今日は打たれる気がしないね! すると1年チームにも動きがあったみたいだ。
「・・・いよいよ来たね・・・」
「あれが夏穂ちゃんの弟、満くんでやんすね・・・」
1年チームのマウンドには私の弟、満が上がった。ファーストには先ほど代打で出た池のが入り、他も何人か交代したようだ。
先頭打者はまたもトモである。
「また代り端(かわりばな)とかよ・・・。ついてねーな・・・」
「それは巡りの都合があるからしゃーねーだろ?」
「他人事みたいに言うなよ、風太・・・。なあ夏穂、アイツの特徴ってあるか?」
「うーん、確か持ち球はストレート、フォーク、チェンジアップ・・・、くらいじゃなかったかな?」
「まあ、それが分かればなんとかなるかな」
そういってトモは打席に向かった。
「いきなり松浪さんか・・・、大変だね、これは」
「さあ来いよ、桜井弟!」
「さっきの借りは、返させてもらいます、よっ!」
バシッ!!
「へえ、良い球投げんじゃん」
「まだまだ行きますよ!」
「・・・って、しまった!」パシッ!
2球目はフォークに空振り。フォークあるよって言ってたのに・・・。
「・・・やっちまった。フォークのこと忘れてたよ」
「ねーちゃんに持ち球聞いてたんすね」
「まあな。さ、次は何でくるんだ?」
「追い込まれてるのに強気ですね、っと!」
「! っと!」カツッ!!
ファールで1球粘った。カウントは尚も0-2。おそらく次はチェンジだろうな・・・。
「(・・・おそらく次はチェンジアップかな)」
「(チェンジアップ、って思ってんだろうけど。それでも投げる!)」
「(・・・! 来たチェンジアップ! って何っ!?)」
トモは明らかに体勢を崩され空振り。そして結果は三振・・・。
「・・・チェンジアップあるって言っといたじゃん!」
「思ったよりも来なかったんだよ、あのチェンジアップはかなりのもんだな」
「まったく・・・、って、あっ」
見てみると田村くんも打ち損じてサードフライに、そしてその後は恵もライトフライに倒れた。
気を取り直して守らないと!
で、7回の先頭は満。ここまでは2の1。流れを渡さないためにもここはしっかり締めたい。
「待ってたぞ、ねーちゃん! 今日は打つ!」
「満、まだまだお姉ちゃんには敵わないことを教えてあげるよ!」
初球はもちろんストレート。
「ふーっ。・・・はあっ!」
スパ――ン!!
「ぐっ・・・、やっぱし速い・・・!」
続く2球目もストレートで空振りを奪い・・・、
「やあっ!!」
「このっ!」スパ――ン!!
「ストライク! バッターアウト!」
最後も高めのストレートで押し切り、空振り三振。まだまだ弟に負けるわけにはいかないんだよ! 4者連続三振だけど、次の打者は・・・、
「久米、か・・・」
「厄介なバッターが来たなー」
「参ります・・・!」
久米はそう言って独特の振り子打法で構えた。
「(初球はこれで・・・)」
「(よーし! 真っ向勝負!)」
スパ――ン!!
「くっ!?」
ここまでほとんどのボールに対応していた久米が空振りした。
「(見かけ以上に打席だと手元で伸びて見える・・・!?)速いんですね、思ってたより」
「ああ、こいつのストレートはな。そこらのピッチャーとはてんで違うぜ」
「ノビのあるストレート・・・、うらやましい限りです」
「? どういうことだ」
「いえ・・・、こちらの話です」
「ふーん、そっか」
トモはひとしきり久米と話すと再びサインを出す。
「(じゃあ・・・、これで)」
「(りょーかい!) ふっ!」
「っ!? ス、スライダー!?」バシッ!
2球目はスライダー。フォームを改造し、球持ちも良くなったから副産物でスライダーもより球速が上がり、ストレートと判別がすぐにはつきにくくなった・・・、とかトモは言っていた気がする。とにかくこれでカウント0-2と追い込んだ。しかし相手はここまでノーヒットではあるものの、手ごわいことには違いない。
続いて投じたのはボールへと逃げるスライダー。しかし久米はこれにピクリと動くも見逃してボール。ここでトモが出したサインは・・・
「(・・・チェンジアップ、ね)」
「(さすがにこれにはタイミングを外されるはずだ・・・。)」
「(ん、わかった!)」
小さく振りかぶってストレートと同じ腕の振りから繰り出すチェンジアップ、これで打ち取れるはず・・・、
「! この・・・!」カキン!!
「「なっ・・・!?」」
と、思ってたんだけど久米は上手く堪えてチェンジアップを引っ張りライト前にして見せた。なんという打撃センス・・・。
しかし、久米にはヒットを許したけどその後はスライダーとストレートを効果的に織り交ぜて打ち取り無失点で7回を終えた。
* * * *
そして8回の裏にマウンドに上がったのはなんと久米だった。あれほどの打撃センスを持つ選手だ。はたして投手としてどのような投球を見せるのだろうか?
打席には途中から守備で入った村井ちゃん。しかし・・・、
バシーン!!「うっ・・・」
中々速い! 白石ほどではないけど1年女子、しかもサウスポーとしてはかなりの快速球だろう。それでも2球目のストレートに村井ちゃんは食らいついてファールにした。そして3球目・・・、
「っ!」バシッ!
釣り球のスライダーにはなんとか手を止めた。さらに・・・、
「っと!」バシッ!
またも誘ってきたフォークにも手を止めた。今のフォークといい、さっきのスライダーといい、変化量、コントロール共にかなりのものだ。それに手を出さない村井ちゃんの選球眼もすごい。5球目のストレートをカットしたが、6球目のフォークには合わせることが出来ず、空振り三振に倒れた。
「ストレート、捉えていたのに上手く飛ばなかったんだよ・・・」
私が打席に向かう前に村井ちゃんが小声で伝えてきてくれた。
「上手く飛ばなかった?」
「うん・・・、なんだか少し動いた・・・かな?」
「動いた・・・、か。うん、村井ちゃん、アドバイスありがとね」
「これくらいしかできないから・・・」
ともかく情報はもらったし、打たなくちゃ!
「(どうせ変化球は打てない。なら狙うは・・・、ストレート一本!)」
久米はノーワインドアップからスリークオーターのフォームから投じたのは予想通りのストレート!
「(クセ球のことを加味して・・・、少し下を叩く!)」
ここならジャストミート!
・・・のはずだったんだけど・・・。
コキンッ! ってあれ? サードフライ?
今のは普通のストレート・・・。村井ちゃんの目が間違ってることはないと思うんだけど・・・?
続く田中も打ち取り、久米は一息ついてベンチへと戻る。そんな久米を見て、雪瀬は改めて感心した。
「(質の高いスライダー、フォーク、さらにはシュート。それに加えてストレートとムービングファストを投げ分けることが出来る器用さ・・・。さらには打撃センスにも優れる・・・。)」
恐ろしい才能の持ち主。これまででこれほどの才能あふれた選手には会ったことがない。
「・・・久米さん、ナイスピッチ」
「ありがと。雪瀬・・・、ううん。氷花もナイスリードね。・・・私のことも百合亜って呼んでよ」
「う、うん。ありがとう。百合亜ちゃん!」
結局この後も1年は夏穂を打ち崩すことはできず、紅白戦はゲームセットとなったのだった。
1,2年生 新入生歓迎紅白戦
1年 100000000 1
2年 10001100× 3
強すぎる1年生軍団の登場です。・・・2年生たちがスタメンの座を守れるのか心配ですね・・・。
今回の紹介選手は1年生たちです。夏穂の弟の満、天才野球少女の久米を紹介します!
桜井満(さくらいみつる)(1年) 右/左
夏穂の弟。負けん気が強いが、自分に足りないところなどを理解しており、自他の実力もある程度推し量ることもできる。選手としては、投手ではフォークとチェンジアップを駆使して抑える技巧派、野手では高い対応力とパワーを併せ持つ好打者。姉の夏穂のことが大好きであるが、恥ずかしいので人前では言わない。
球速 スタ コン
135km/h E E
⇒ スライダー 1
⇓ フォーク 1
⇓ チェンジアップ 3
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
3 E D E D E F 投E 一E 外E
打たれ強さ〇 緩急〇 一発 変化球中心
連打〇 窮地〇 慎重打法
【挿絵表示】
久米百合亜(くめゆりあ)(1年) 左/左
センスあふれる女子選手。やや小柄で可愛らしい顔をしているがプレーする姿は天才と呼ぶにふさわしい。だがその才能を鼻にかけることは無い。性格は一見クールでドライなようだが、仲間に気配りのできる子である。趣味は雑誌を読むことで野球雑誌からファッション誌まで幅広く読んでいる。
球速 スタ コン
128km/h E D
⇑ ムービングファスト 1
⇒ スライダー 2
⇓ フォーク 2
⇐ シュート 1
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
2 D F E E D E 投D 一F 外E
キレ〇 リリース〇 ノビ△ 打たれ強さ△ 変化球中心
チャンス〇 粘り打ち ミート多用
【挿絵表示】
才能あふれる二人の活躍にもご期待ください!
次回もお願いします!
この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)
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桜井夏穂
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松浪将知
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空川恵
-
久米百合亜
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ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)