New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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 更新遅くなりました・・・。久々の投稿になります。
   前回までのあらすじ
 夏大会が開幕した。1,2回戦を突破した聖森学園は3回戦で秋にも対戦し勝利した流星高校と激突する。必勝を決意し挑む聖森学園だったが敗北を糧に大きく成長した流星高校に先制を許してしまう。


16  Revenge match~再戦~

3回の聖森学園の攻撃は8番の里田さんがファーストゴロ、9番の大木さんがレフトフライ、1番の風太もレフトフライと阿久津の前に手も足も出なかった。

 一方、3回裏の御林さんは1番の速水に出塁を許し、光原はバントで1死2塁とされるが風間をセカンドフライに打ち取る。阿久津には四球を出してしまうが、星野はセンターフライに打ち取ってスリーアウトチェンジ。

 4回も花川さんは三振、トモはレフトライナー、岩井さんもセンターライナーに倒れる。流星高校は長谷川、石井は三振に倒れ、木村はショートフライでチェンジになった。

 

 一方、スタンドでは・・・、

「むむむ、硬直状態でやんすね・・・」

「相手ピッチャーが前とは見違えてるね~」

「前と全然違う展開だねっ!」

 各々ここまでの感想を述べていく。実際、前回の点の取り合いとは打って変わって投手戦となっている。

「で、でもどちらかというと・・・、押されてるのはこっち・・・、な気がしなくもないです・・・」

「・・・? 確かに1-0で負けてるけど・・・、なんで?」

 雪瀬のポツリと言った呟きに白石が尋ね返した。その問いに答えたのは初芝だった。

「確かに。5回までのヒットを見ても、こっちは2本で相手は7本。こっちはチャンスは1度のみ。流星は3回・・・。雪瀬の言うことも合ってるな」

「それ、冷静に分析してる場合じゃないでやんす! やばいでやんす!」

「確かに昨秋から流星高校がここまで成長するとは予想してなかったね・・・」

 騒ぐ矢部川に補足する彩香が補足した。しかし矢部川の不安は的中することとなる・・・。

 

*      *      *       *       *

 

 両チーム無得点で迎えた6回の裏。流星高校の先頭は6番の長谷川からだったが・・・、

「いてっ!?」

「あっ!? わ、悪い・・・!」

 御林さんのボールはすっぽ抜けてデッドボール。ノーアウトのランナーという流星に最も与えたくないシチュエーションを与えてしまった。

 さらに・・・、

「どりゃっ!」カキ―ン!

「しまった!?」

 盗塁を警戒して続けたストレートを狙われて無死1,3塁のピンチとなってしまった。

「御林さん! 踏ん張りどころですよ!」

「簡単に点取らせるなよ! 御林―!」

 ベンチからも応援が飛ぶ中、打席には8番の木村。

「そう簡単に、点はやらない!」

 御林さんは木村に対し、強気のインコース攻めを敢行。しかし相手もそう簡単に抑えられてくれない。追い込まれながらも木村はファールで粘る。そして6球目・・・、

「くっ!」 カキンッ!

「っ! ショート!」

 やや詰まった当たりはショートの風太の元へと飛んだ。しかしその弱めのゴロを見て3塁ランナーの長谷川は迷わずホームへ突っ込んでいた。結局ゲッツーを狙うも2塁しか封殺できず1点失った上に1死1塁となってしまった。後続は断ったもののこの形で均衡を破られたのは痛い。

「すまない、みんな・・・」

「大丈夫だ! まだまだ逆転のチャンスはある!」

「そうっすよ! ここから一気に行きましょう!」

「そうよ! まだまだここからよ!」

 試合も終盤に突入しようとしているが聖森学園の方もまだまだ戦意は衰えていない。勝つためには阿久津を打ち崩さねばならない。

 

 7回は互いに無得点、迎えた8回表の攻撃前に聖森学園サイドは円陣を組んでいた。

「さて、ここまで阿久津を打ちあぐねてるわけだが・・・、どう思う?」

 岩井さんの問いかけにトモが答えた。

「カーブの質が上がったのと以前は投げてなかったシュートが厄介ですね。それに加えてフォーク、ストレートを織り交ぜてくる。前回よりもはるかに上のレベルの投手・・・、だと思います」

「確かにそうだな・・・」

 そこに木寄さんも補足する。

「緩いカーブのよる緩急、ストレートと思わせてからのシュート、大振りしてきたところにフォークと、キャッチャーの光原もいいリードをしてるわ」

「あと2イニング、どう攻めるかだな・・・」

 そこまでの会話を聞きつつ、監督が一言告げた。

「木寄、準備しておけ。この後で代打で行くぞ」

「! はい!」

 

*       *        *        *

「聖森学園高校、選手の交代をお知らせします。バッター、竹原君に代わりまして、木寄さん。バッター、木寄さん。背番号12」

「おお! 木寄さんだ!」

「ここで代打でやんすか!」

「確かにここまで竹原は当たってなかったしな・・・」

 8回の先頭打者の竹原に代わって出てきたのは木寄。その姿を見て、阿久津はふと思い出した。

「(誰かと思えば秋の正捕手じゃねーか。この終盤で出してくるってことはそれなりに自信がある一手って訳だな)」

「(・・・代打のやつは気合入ってるはず・・・。初球はストレートに似せた真ん中よりのシュートで打ち取るか)」

 光原はそう考えサインを出し、阿久津も頷いた。

「(この試合に勝ってリベンジを果たし・・・、俺たちは甲子園を目指すんだ!)」

 阿久津は目いっぱい腕を振り抜く。ストレートと変わらない腕の振りから投じられるシュートは力みがちな代打の選手には打てない・・・。バッテリーはそう考えていたが、

この木寄は経験豊富な選手であり・・・、

「(なめんじゃ、ないわよ!)」

 肩を壊してから、ただひたすらにバットを振り込み、打撃、それも代打の1打席という限られたチャンスに練習の全てをかけてきた。だからこそ甘いストレート、という罠にはかからない。ここまで味方が苦しんできたシュートを狙っていた。

 カキ――――ン!!

「「(な、なんだとー!!??)」」

 インコースに入ってきたシュートを完璧に捉え、ライナー性の打球で左中間を真っ二つにした。木寄は悠々2塁へ到達した。これでノーアウト2塁のチャンスとなった。

「ナイバッチ!!」

「さすが木寄さん!」

「続け続けー!!」

 俄然聖森学園ベンチも盛り上がった。代走に中野が起用され、続く打席には8番の里田。出されたサインは送りバント。里田はきっちりと初球で決めて1アウト3塁とすると、

「聖森学園高校、選手の交代をお知らせします。バッター、大木君に代わりまして、野村君。バッター、野村君。背番号13」

 榊原監督はここでも動き、9番の大木の所にも代打を出した。

 野村は元々、竹原がスタメンになるまでは主軸を張っていた打者だ。代打として申し分ない打力の持ち主であり、聖森の代打の切り札である。

 両チーム共に、いや、おそらくこの試合を見ている面々は感じているだろう。この回の攻撃がこの試合の結末を決めるだろうと。

 打席に入った野村もそれを感じて阿久津を見やる。

「(この大事な場面、任されたからにはどんな形でも1点を取らないと!)」

 一方の阿久津もここが勝負どころだと気合を入れ直し、ボールを投じた。

 初球は外角への緩いカーブ。これを野村は見逃し、1ストライク。さらに外角のストレートを打ちに行ったがうまく捉えられずファール。これでカウントは0-2と追い込まれる。阿久津の持ち球はストレート、フォーク、カーブ、シュート。このうちで決め球となるのはフォークか打ち取らせるシュート、この2つ。野村が絞った球種は・・・、

「(ここは三振が欲しいはず・・・! 加えて阿久津が最も自信を持つフォーク!)」

 阿久津が頷き投じたのは、ストレートよりやや遅く、手元で沈むフォーク・・・、阿久津が兄から教わった最も自信のある決め球だ。

 

 

*      *      *        *        *

 

 抜け方、かかり方は完璧、そしてスピード、キレも納得できるものだった。コースも低めにギリギリボール球になるぐらいの完璧なコースだった。投じた阿久津自身も確信していた。このフォークなら打ち取れる、三振が取れたと。阿久津は今でも鮮明に覚えている。

 兄が甲子園に向かう日の前の日を。激戦区のこの地域で初出場を成し遂げた兄の代を。高校の全生徒がこぞって応援していた1回戦を。その時の甲子園の大歓声を。そして・・・、

兄たちが初戦敗退した姿を、甲子園出場という栄光を掴んだのに、悲しき結末を迎えた兄たちの代のメンバーの姿を。

その翌年の春、阿久津は中学2年の時に、地方の大学へ行くことになり家を出ることになった兄に阿久津は言われた。

「隼人、甲子園行きたいか?」

「・・・」

「行きたいなら、覚悟を持ってやれよ・・・。本気で甲子園を目指すってことは、泣かずに終わるためには全部勝つしかないんだ。甲子園を目指してる時点で負けて満足なんてできない、いばらの道だ・・・」

「・・・中学卒業したら俺も流星に行くよ。流星で兄貴が果たせなかった夢を果たしたい・・・!」

「そうか、頑張れよ・・・。そうだ餞別じゃないけどこいつを・・・、俺の決め球、フォークを教えてやる」

「え、マジで!」

「ま、これだけじゃダメだったけどな。お前はいろいろと投げろよ。お前は少なくとも俺よりセンスあるはずだしな」

 

 あれから努力してカーブやシュートも覚えた。高校の方針である走塁のみでなく、打撃も磨いた。全ては兄の無念を晴らすため・・・。

 だが打席の野村も、この夏にかけてきた男だった。

「うおおおお!」カキ―――ン!!

 野村はボール気味のフォークをフルスイング。やや詰まっていたが振り抜いた分、打球は前進していた内野の間を抜き、レフト前ヒットとなる。

「ナイバッチー! 野村さん!」

「うおっしゃー!! きたー!!」

「1点差だー!!」

 一気に盛り上がる聖森ベンチ、しかしまだ阿久津たち流星は簡単に崩れない。阿久津も気迫の投球を見せた。その後の梅田をボテボテのファーストゴロで2アウト2塁としたのだが、

「ボール!! カウント、3ボール2ストライク!」

 2番の花川に対して追い込んだものの粘られ、フルカウントとしてしまった。エースとして、4番として、この試合を戦い続けている阿久津には肉体的にも精神的にもかなり疲弊していた。花川は際どいコースに食らいついて球数を稼ぎ、結局フォアボールで出塁した。これで2アウト1,2塁。迎えるのは・・・、

「ここでお前か、2年坊主・・・!」

「そろそろ引導渡させてもらいますよ・・・!」

3番の松浪、ここまではノーヒットだがこの打者が勝負所に強いことは阿久津も感じ取っていた。実際、秋にも痛い目を見させられている。

「(次はあの岩井・・・、ここで切らねえと・・・! それにコイツには借りがあるしな!)」

 松浪に対する初球はインコースのストレート、これを松浪は振っていき空振り。続くインコースへのシュートは見逃してボール、3球目はインハイへのストレートだったが松浪は打ちに行ってファール。これでカウント1-2。

「(阿久津、どうする・・・)」

「(ここが勝負所だ・・・、どれで勝負する? 光原、お前を信じるぜ・・・)」

「(ならこれだ。布石は打った! あとは投げ切るだけだ! 阿久津!)」

「よしっ・・・、うおおおおお!」

 阿久津は渾身の1球を投げ込む。対する松浪も全力で迎え撃つ。

「(ここまで3球内角、外にはいつくるか、決め球のフォークはいつ使う?)」

 あれこれと松浪は考えるが松浪は決断した。

「(阿久津は好投手だ・・・! だからこそ・・・!)」

 松浪は思いっきり外に踏み込みバットをすくい上げ、アウトローいっぱいのストレートを完璧に捉えた。

「(きっとフォークに見せたストレートを低めいっぱいに投げてくるはずだ!)」

 カッキ―――ン!! と快音を響かせ打球はライト線を破った。

「ぐ、バカな!?」

「よっしゃあああ!! いっけ―――!!」

「回れ、回れー!!」

 右中間を破った打球をライトの石井が掴み返球するも、2塁ランナーの野村はホームイン。松浪、花川もそれぞれ2、3塁に到達した。ピンチが続くまま、打席に岩井を迎える。松浪には打たれたが、阿久津は岩井もリベンジを果たすべき相手だと考えていた。今日はここまで3打数の1安打。決着をつけたいところではあったが・・・、

「敬遠か・・・」

「まあ、そうだよね・・・」

 1塁は空いている。その上で1点もやりたくない場面でチーム最強打者の岩井と勝負する理由はない。だが、阿久津は悔しかった。

「(これじゃあ、逃げたみたいじゃねえか・・・、だが勝つためには仕方ねえ・・・)」

 2アウト満塁として5番の御林を迎える。

「(とはいえこいつも強敵だ、気合入れねえと・・・!)」

 阿久津が投じたのはフォーク、それを御林は強振し、空振りする。

「(・・・健太に打者として劣っているのは分かってる・・・)」

 中学の時もそうだ。頻繁に自分の打席は岩井との勝負が避けられてやってくる。親友である岩井が他チームから認められているのは嬉しい。だが・・・、

「(流石にこうも毎回だと、流石に黙っていられないっ!!)」カキ――ン!

 阿久津の投じたストレートを確実に捉えて弾き返した。

「やった! センター前!」

 花川は悠々ホームイン、そして松浪も3塁を蹴ってホームへと突っ込む。

「この、まだ終わってねっーー!!」

 しかし、センターの速水は打球をワンバウンドで抑えるとホームへと返球、真っすぐに帰ってきた送球は松浪よりも先に到達した。

「アウトッーー!! スリーアウトチェンジ!!」

「くっそ、ミスった・・・」

「と、とにかく勝ち越しだよトモ! ナイスバッティング!」

「ああ、決めたの御林さんだけどな」

 これで3-2と聖森が勝ち越しに成功した。8回裏は勝ち越し打を放った御林が無失点に抑え、試合は最終回に突入した。

 

*       *        *       *        *

 

 「ストライク! バッターアウト! ゲームセット!!」

 最後の打者、石井が三振に倒れ試合終了となった。御林の一打が決勝打となり、聖森学園が勝利を手にした。夏穂と松浪はメンバーと共に勝利を喜ぶ中、相手のベンチが視界に入った。清貧の時もそうだったが、誰もが高校野球の終わりを悟り、涙を流し顔を伏せていた。ただ一人、阿久津だけは涙を流しながらも真っすぐにこちらを見据えていた。そして阿久津は涙を拭い、岩井の元へ歩み寄る。

「・・・お前ら、俺たちに勝ったんだ・・・。ただ絶対甲子園行けよ、なんて無責任なことは言わねえ・・・。でもな、絶対に諦めるなよ。簡単に諦めるんじゃねえぞ!」

「ああ、当然だ! 俺たちは最後まで足掻いて見せるし、甲子園にだって言ってやるさ!」

「・・・そうこなくちゃな、がんばれよ! ・・・じゃあな・・・あと・・・、」

「なんだ?」

「最後に、もう一度だけお前と勝負したかったぜ・・・」

 そういって阿久津は去って行った。

 それを見届け、岩井はチーム全員に告げた

「甲子園、行ってやろうぜ」

「当然、そのつもりよ」

「負けることなんて考えてませんよ!」

「そうそう、全力で戦うだけっすよ!!」

「そーだぜ!」

 聖森のメンバーも口々に同意する。そしてこれで聖森学園は3回戦を突破し、準々決勝に駒を進めた。

 

  全国高校野球選手権大会 県大会3回戦

聖森学園 000000030 3

流  星 010001000 2

 




 ちょい役のつもりだった阿久津に長々と時間をかけてしまいました・・・。そして今回は夏穂視点がほぼ無いという・・・。試合だと個人視点にしてたらバッテリーやバッターのセリフが使いにくいという問題があって難しいんですよね。
 では今回のおまけは阿久津とまだ紹介してなかった彩ちゃんこと草篠彩香を紹介します。

 阿久津隼人 (3年) 右/左

 流星高校のエース。秋大会で聖森学園に敗れ、リベンジと甲子園を目指し猛練習を積んだ。その結果、チームは急成長し、特に阿久津はその成長が著しかった。ややバカっぽいが熱意にあふれる好青年である。そのためチームメイトからの人望も厚い。

 球速  スタ コン
144km/h A   E
 ⇓ フォーク 5
 ⇘ カーブ 2
 ⇐ シュート 2

 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 3 C B A C C D   投C
不屈の魂 闘志 対強打者〇 根性〇 走塁〇 初球〇 チャンス〇 対エース〇 
チームプレイ〇 積極走塁 積極打法 

 草篠彩香 (2年)

 聖森学園野球部のマネージャー。緑の髪を片方だけくくって、少し長めのボブヘアーに伸ばした髪が特徴的な小柄な少女。元々元気で明るいのだが初めて会う人にはあまり話しかけることが得意では無い。実家はスポーツジムで幼いころから様々な治療法や調整法などを目にしてきたので知識は豊富。ただ熱中し過ぎて時折暴走してしまうことも。

 阿久津はまさに覚醒と言うべき成長っぷりでした。マネージャーは出番を作り辛い・・・。では次回もよろしくお願いします!

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)
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