New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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 続きを気にさせておきながらまた1月近く空いてしまった・・・。
 いよいよ夏穂が出陣です!!

   ここまでのあらすじ
 激闘第一相手に好投してきた御林が遂に捕まった。無死満塁で打席に4番羽生を迎えた絶体絶命のピンチに榊原監督はリリーフとして夏穂送り込むことを決意する。


18  Surprising settlement ~意外な結末~

 スパ――――ン!!

 

 夏穂の投じた渾身のストレートが小気味よくミットを鳴らした。その瞬間、ざわついていたスタンドが、ベンチが、聖森学園の面々を除いて静まり返った。そしてしばらくして再びざわめきだした。

「い、今の何キロなんだ?」

「思ってたより速えぞ! あの子のボール!」

「見かけによらねえもんだな・・・」

 そんな風にざわめくスタンドを余所に松浪はナイスボール、と声をかけてボールを返す。そして打席に立つ激闘第一の4番、羽生は今のストレートに微動だにしなかった・・・、いや、動けなかった。

「(なんだ、今のは? 体が反応しなかった・・・?)」

 一度羽生は打席を外し、何度かバットを振り再び戻る。

 松浪は夏穂にサインを出し、夏穂は頷きセットポジションへ。全身の力を込めたストレートが再び投じられる。羽生は今度こそ打ちに行くが糸を引くように進むそのボールはまたもミットに突き刺さる。

「ストライクッ、ツー!!」

「くっ、そっ・・・」

 これで2ストライク。夏穂は3球目もテンポ良く投じる。投じたのはまたもストレート。

「(くそっ、なめるなアア!!)」

 羽生の鋭いスイングが今度こそボールを捉えた。しかし、快音を残した打球は痛烈なゴロとなり、セカンドの里田のグラブに収まった。

「バックホームッ!!」

「よし来た!!」

 里田は松浪の指示を聞きすぐさまバックホーム。ホームはフォースプレーでアウト。そして、松浪が強肩を活かし、1塁へと転送。これもアウトとなり、あっという間に2死2,3塁となった。

 羽生はベンチへと向かいながら信じられないといった様子で夏穂の方を見た。

「(捉えたはずだ! だが、差し込まれた・・・? 今のボールに俺は振り遅れていたのか・・・? タイミングは合わせたはずなのに・・・!?)」

 そして夏穂は続く少豪月に対し自慢のスライダーを投げ込む。少豪月は初球は空振り、2球目のスライダーは見逃したが2ストライク。松浪は打席に立つ少豪月を見やる。

「(・・・そろそろ変化球ばっかり投げられて自分のバッティングが出来ず、イライラしてるな・・・。ストライクはいらねえ。ここで勝負だ!)」

「(OK!! バッチリ決めるよ!!)」

 サインに頷いた夏穂が投じたのは渾身のストレート、しかしコースは少豪月の頭の高さほど。だったのだが、

「ぬおおおおっっ!!」ズバンッ!!

「ストライクッ!! バッターアウト! スリーアウトチェンジ!!」

「いよっしゃーー!!」

 高めの釣り球に少豪月は釣られ空振り三振。夏穂はマウンドで右手を突き上げ笑顔を輝かせた。こうして夏穂は0死満塁のピンチを完璧に抑えて見せた。

「ナイスピー!! 夏穂ちゃん!!」

「夏穂、やるじゃのいのよ!!」

「大した奴だなー、オイッ!!」

 ベンチに帰ってくるなり、メンバー全員から手荒い祝福を受けた。

「よっしゃあ!! 辰巳、桜井が頑張ったんだ!! 打線! 打ち勝ってやろうじゃねえか!!」

「「「おおおっ!!!」」」

 夏穂の投球と笑顔、岩井の発破がチームの士気を一気に上げた。

 

 一方の激闘第一側・・・、

「す、すんません・・・」

 少豪月は監督に謝った。

「全員、切り替えていけ。相手がリードしてるわけでは無い。同点だからな」

「「「うっす!!」」」

 監督の言葉を聞き、ナインがグラウンドに散らばっていく。しかし、激闘第一の監督の藤中は豊富な経験から感じ取っていた。高校野球特有の、たった一人の選手が試合の流れを変えてしまう恐ろしさを。

「(去年、まさに黒塚がそうだった。鶴屋が2年生エースと目されていた中、鶴屋が打ち込まれたときにマウンドに上がった黒塚が抑え、やがては逆転した。そこからチームは流れに乗った・・・)」

 相手ベンチで休んでいる夏穂を見て、藤中はふと思った。

「(羽生・・・、もしかすると我々はとんでもない奴を勢いづかせてしまったかもしれないぞ・・・)」

 

 8回の裏は1番の梅田から。その梅田だったが、

「このっ!」カキン!

 SFFをなんとかバットに当てたが、ボテボテのショートゴロ。しかし、当たりが弱いのが幸いした。垣内が前進し、拾い上げて1塁へランニングスロー。間一髪で梅田の足が勝り内野安打に。すかさず続く里田はバントの構えを見せる。その初球だった。

「! スチール!!」

「させるか!」

 鶴屋が足を上げた瞬間に梅田はスタートを切った。里田もアシストのために遅れて空振りをした。中岡はすぐさま2塁へ送球するも判定はセーフ。そしてその後、里田はきっちり送って1死3塁のチャンスとなった。打席には松浪が立ち、そしてネクストには岩井が出てきた。

 岩井との勝負はなるべく避けたい激闘第一のバッテリー。そのためにはなんとしても松浪を抑えなくてはいけない。

「(外野フライでも梅田の足では帰ってこられちまう。・・・鶴屋、徹底して低めだ)」

「(・・・わかってるさ)」

 鶴屋はセットポジションからまずストレートを投じた。しかし低めに外れてボール。2球目もスライダーが外れボール。そしてSFFもワンバウンドしてボール。

「(おいおい・・・! 何してる! しっかりしろ!)」

「(わかってる! わかってるけど・・・!)」

 鶴屋は精神的にも追い詰められていた。肉体的にも疲労がたまっている中、勢いづいている相手サイドからのプレッシャー、打者松浪のプレッシャー、そしてネクストに控える大会屈指の好打者岩井の存在感。さらにこの中で要求されるのはこれまで以上に繊細な1点もやってはいけない投球。もともとハートの強い鶴屋でさえ、限界を迎えつつあった。

「ボール! フォア!!」

 最後もストレートが大きく外れ、ストレートのフォアボール。これで1死1,3塁とピンチが広がり、さらには4番岩井を迎えた。

 中岡は慌ててマウンドに向かった。

「大丈夫か? 鶴屋」

「ああ、すまない・・・」

「・・・そんなことで一々謝ってどうする」

「羽生・・・」

「お前は“エース”なんだ。堂々としてろ。・・・ここで負けたら先輩たちに合わせる顔がないだろう?」

「・・・」

「激闘第一に数多くいる投手の中でお前が選ばれてるんだ。シャキッとしろ!」

「! ああ、サンキュー羽生。」

「よし、守るぞ!」

「「「おう!」」」

 激闘第一の内野陣が再び散らばる。個人個人が改めて結束した。今まで優位に立ち続けていた者たちが今までにない集中力を発揮し、守ろうとしていた。鶴屋もそれに応え、強気にストレートで攻めた。

「ストライク!!」

「くっ・・・!」

 鶴屋は先ほどよりも気持ちが軽くなった気がした。後ろを今まで以上に信頼し、ボールが投げられる・・・。

 

 

 そのせいか否か、鶴屋は気づくのが遅れた。

 3塁ランナーの梅田がスタートし、打席の岩井が“バントの構えをしている”ことを。

「スクイズ・・・!?」

「だと・・・!?」

カツンッ、という音と共にボールは3塁線の内側を転がった。羽生が拾い上げるもホームは間に合わない。諦めて1塁に送り、岩井はアウトにした。しかし、勝ち越しの1点が入ってしまった。

「岩井が、スクイズ、だなんて・・・」

「クソッ、失念していた・・・!」

 鶴屋、羽生をはじめとして、激闘第一に動揺が広がる。続く、御林に投じたストレートは高く浮き、逆らわずにレフト方向へと打ち返される。2塁から松浪が悠々と生還。

 その後に、激闘第一は何か糸が切れたように精彩を欠き始めた。続く竹原にはフォアボール、そして、小道のショートゴロを垣内がファンブルし、慌てて1塁に投げるもやや逸れた送球を松尾が取ることが出来ずに御林も生還した。桜井は三振に倒れたものの8回の裏に大きすぎる3の文字が刻まれてしまったのだった。

 

 そして結末はあっけなかった。

 先頭の三船はストレートを続けられ三球三振。

「くっそおおお!!」カキンッ!

 7番の松尾もストレートに食らいつくが差し込まれてレフトフライに倒れる。そして代打で登場した碓井も夏穂のストレートの前に手も足も出ず空振りの三振。終わってみれば4-1、聖森学園はついにベスト4に名を連ねた。

 

*       *       *        *

 

 試合後・・・、羽生はミーティングでチームメイトの前で深々と頭を下げていた。

「・・・情けない、弱いキャプテンで済まなかった。あれだけ大口を叩きながら、甲子園どころか、ベスト4にすら残れなかった・・・」

しかし、鶴屋や中岡がそれを否定する。

「・・・羽生、確かにお前は厳しかったよ・・・。だけどそれは、偉大な先輩たちが抜けたこのチームを立て直すためだったんだろう?」

「そうだぜ、お前の口は悪かったけど、いなかったらそれはそれで俺たちはセンバツすら行けなかったかもしれないんだ。・・・恨むなら凄すぎる先輩たちを恨みな・・・」

 羽生はチームメイトから飛んでくる文句ではなく励ましに驚いていた。そして思った。自分が相手を潰そうと頭を使い、腕を磨いていたのはなんだったのか。そしていつからだろうか、“野球をする”ことを楽しまなくなっていたのは。

「(そうか、蛇島さんは・・・、闇雲に勝利を目指していたんじゃない・・・。他人に厳しかったのも、技を磨いていたのも・・・、“誰かを蹴落とす”ためじゃない、“試合で活躍し勝つため”。あの人は冷徹なようで、誰よりも熱かったのか・・・)」

 羽生は涙を流しながらも後輩を励ます同期のメンバーを見て、キャプテンとして最後の仕事を果たす。

「新キャプテンを発表する。新キャプテンは坂上、お前に任せる。お前なら少豪月や大塔たち曲者も扱えると、期待している・・・」

「はいっ!」

 

 一方、聖森学園高校の面々。

「よっしゃベスト4だ! あと2つ!!」

「ここまできたら一気に駆け抜けようぜ!」

「「「おおおお!!」」」

 盛り上がる中、松浪は夏穂に声をかけた。

「よっ、今日のヒーロー!」

「ちょっとちょっと、やめてよ、もー」

「ノーアウト満塁のピンチを切り抜けた上に2回3奪三振の勝ち投手が何言ってんだ」

「そ、それは、まあ、そうだけどさ・・・」

「・・・完璧にものにしつつあるな、あのストレート」

「トモのおかげだよ。半年以上、努力した甲斐があったよ」

「そりゃ、良かった。・・・次も頼むぜ?」

「出番がない方がこのチームにとって望ましい展開だけどね」

「ま、そりゃそうか」

 こうしてベスト4が出揃い、聖森学園は準々決勝で木之美学院を破った関明大附属との準決勝を行うことになった。

 

全国高校野球選手権大会 県大会準々決勝

 激闘第一 000001000 1

 聖森学園 01000003× 4

 

 

*       *      *       *       *

 

 あくる日の準決勝、場所をプロも使用することのある地方球場に移して行われる。

 第1試合の大筒高校と文武高校の1戦は大筒の守備のミスなども絡み、文武が7-2で快勝した。そして第2試合、聖森学園と関明大附属の1戦が始まろうとしていた。

 

 聖森学園ミーティング・・・

「関明の要注意人物は2人、エースの3年生渡部久信(わたべひさのぶ)と2年生で主軸に座る中之島幸宏(なかのしまゆきひろ)の2人ね、彩ちゃんお願い」

 木寄に話を振られ、データをまとめていた彩香が皆の前で報告する。

「はい。渡部さんの武器は何といってもスライダーですね。それも似たような軌道から2種類の変化をします。大きく空振りを奪いに来るスライダーと小さくカウントを取りに来るスライダー。幸い、他の球種はそれほど脅威ではなさそうですけど、真っすぐも速そうなので簡単には打てないかもしれません」

「ありがと、彩ちゃん。聞いた通り、渡部はストレートも140キロを超えてくるから、しっかりと狙い球を絞っていきましょう。じゃ次、松浪くん」

「うっす。打線の方ですけど、小技はあまり得意じゃなさそうですね。その代り、ガンガン打ってきます。バッターもパワー型と技術型の選手が混在している厄介な打線です。

 特に3番の中之島、コイツは塁に出すと積極的にホームを狙ってきますね。それにヒットを打つことに関しては関明では右に出るものはいないでしょう。他にも1番の片尾の足、4番の永村のパワーには警戒すべきですね。」

「ん。ありがとね。ま、ベスト4まで来たし、当然楽な相手じゃないわ。でも、全力でぶつかっていきましょう!」

「久美の言う通りだ。気負うことはねえ。目の前の1戦にベスト尽くすぞ!!」

「「「「おおおお!!!」」」」

 

 そしてしばらくして両チームノックを終え、スタメンが発表された。

 

  先攻、聖森学園高校

1番 ショート   梅田

2番 レフト    花川

3番 キャッチャー 松浪

4番 サード    岩井

5番 ピッチャー  御林

6番 ファースト  竹原

7番 センター   小道

8番 ライト    大木

9番 セカンド   里田

 

  後攻、関明大学附属高校

1番 セカンド   片尾

2番 ライト    倉山

3番 ショート   中之島

4番 サード    永村

5番 レフト    佐藤

6番 センター   青田

7番 ピッチャー  渡部

8番 ファースト  辻野

9番 キャッチャー 伊藤

 

 そして間もなく決勝進出をかけた試合が始まろうとしていた・・・!

 




 激闘第一撃破! 大塔? 出番を与える余裕なかったですね。あの状況であんな赤得パラダイスのピッチャー使わせられないですよ。
 そしてついに準決勝、ここで本家のキャラ中之島登場です(厳密にはまだ出てきてないですが)。今回の選手紹介は3年として集大成の3年生トリオの紹介です。

 岩井健太(3年) 右/右
 集大成を迎えた聖森学園の大黒柱。趣味は野球以外のスポーツ(本人曰く野球は趣味と考えてはいけないらしい)であり、特にバスケットボールはバスケ部から誘いが来たこともあるほどの腕前。意外にも勉強は中の上と言った所。好きな食べ物は鶏肉料理、嫌いな食べ物はカボチャ。どうも甘すぎるのが苦手らしい。あと2つ年上の兄がいて兄は大学でバスケットをやっている。

 弾 ミ パ 走 肩 守 捕   守備位置
 3 B A E B C C   三C 遊D 一D 捕E
 パワーヒッター 広角打法 チャンス◎ 粘り打ち 威圧感 高速チャージ 盗塁△ ムード○ 積極守備 選球眼 

 御林辰巳(3年) 左/左
 聖森学園不動のエース。後輩たちが増え、3年生として、エースとしての自覚を持ちさらに成長した。趣味は料理(特にお菓子作り)でその腕前はマネージャーたちがうらやましがるほど。ただ女々しいと言われることを気にしている。好きな食べ物はあんこを使ったもの。嫌いな食べ物は柿とゴーヤ。渋いものが苦手。2人の姉と妹が1人おり、お菓子作りなどはその影響を受けた結果だそうだ。
 球速  スタ コン
142km/h  B   B  
 ⇙ スラーブ 3
↙ ドロップカーブ 3
 ⇘ サークルチェンジ 3
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕   守備位置
 3 B C D C C D   投C 一D 外D
 ピンチ○ 対左打者○ 逃げ球 寸前× 流し打ち チャンスメーカー ミート多用

 木寄久美(3年) 右/右
 肩を壊してからは代打専門で練習することになった。非力ではあるが、経験と元・捕手としての配球読みで勝負強さを見せる。趣味は意外なことにゲーセン通いで、オンラインの戦略ゲームやリズムゲームがお気に入り。好きな食べ物、というか飲み物はコーヒー。嫌いなのは甘すぎるカフェオレ。3つ年下の弟と4つ年下の妹がいる。弟は演劇、妹はダンスをやっている。
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 2 C E E G B B  捕B 一C
 キャッチャー◎ チャンス○ 送球△ 初球○ 代打〇 いぶし銀 走塁△ 慎重走塁 積極打法

 では、次回でまたお会いしましょう!

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)
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