New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~ 作:Samical
さてさて、ようやく3話。今回は会話多めです。夏穂にも課題は山積みなんですよね・・・。
追伸
梅田風太の顔を追加
「では今日はここまでだ。自主練するのは自由だが、21時までには完全に引き上げるように。以上、解散!」
「「「はいっ! ありがとうございます!!」」」
監督の話が終わると練習は解散となる。授業は16時までには終わり、16時半から練習開始となり19時半には全体練習終了、そこからは自主練するも、休息を取るも自由となっている。それが聖森学園高校野球部の日常だ。紅白戦をやってから2週間が経ち、私達1年は練習にも少しずつ慣れてきた。
「夏穂ちゃ~ん! これから一緒に帰ろ~」
「あ、うん。いいよ。今日は帰ろうと思ってたとこ」
一緒に帰る誘いをしてきたのは空川さん・・・改め恵だった。今日は金曜日で明日、明後日は週末練でハードだから今日は追い込まないつもりだったんだよね。
「あ! 私も! 私も帰るからちょっと待って!」
すると、姫華も慌ててやってきた。この2週間で仲良くなった2人とは下の名前で呼び合ってる。元々私は親しい同級生とか下級生、クラスメートとかは下の名前で呼ぶことが多い。かといって苗字で呼ぶから仲が悪い訳でもないけどね。もしくはあだ名を使うこともあるけど。
「姫華~、先に更衣室行ってるからそんな急がなくてもいいよ!」
「分かった! でも、一応急ぐね!」
姫華はそういうとパタパタと片づけを始めた。一足先に更衣室へ向かった私と恵は部屋に入るなり着替えを始めた。
「いや~、今日もきつかったね~。週末練がまだあると思うと大変だよ~」
「まだ大丈夫な方だよ。ここは女子選手にとって良い設備は揃ってるからね。普通、女子用の野球部用更衣室とかないよ。シャワーもあるしさ」
「推奨してるだけあるよね~」
そういうと恵はシャワーを浴びようと練習着を脱いでいくのだが・・・
「(じーっ)」
「? 夏穂ちゃんどしたの?」
「い、いや、なんでもないよ! わ、私もシャワー浴びよっと!」
私もシャワーを浴びようと服を脱いでいく。・・・恵ってば、スタイル良すぎでしょ・・・。まあ、身長相応というかなんというかだけどさ。なんか同じ女性として自信無くすよ・・・。
シャワーを浴び終え、制服に着替えて待っているとしばらくして姫華が戻ってきた。
「ごめん! 今すぐ着替えるから!」
そう言って姫華は練習着を脱ぐとすぐに制服を着ようと・・・って、
「シャワーぐらいは浴びなさい!」
「ええ! いや、でも早く帰りたいし、待たせちゃ悪いし・・・」
「それくらい待つから! 女の子なんだから身だしなみにも気を配んなきゃダメだよ!」
「う、うん。分かった」
そういうと姫華もシャワーを浴びに行った。まったく、姫華も少しは身だしなみに気を使わなきゃダメなのにね。そして、すぐさま上がってきた姫華は制服を着こみ、
「ごめんね、お待たせ! さあ、行こ・・・」
「ちょっと~、姫華ちゃん! 髪も乾かさなきゃダメだよ~。ほら、私がついでにブラッシングしたげるから~」
「え、や、ちょ、恵! 力強い! 強いって」
今度は恵に捕まった。恵って意外とそういうとこ気にするんだね。ほんわかしてるようで何かとしっかりしてるんだよね。野球のプレイスタイルは結構豪快なんだけど。
半面、何かとやんちゃで元気っ子な姫華だけどプレイスタイルは足の速さで相手をかき回しこそするけど、基本はバントとか守備とかが武器の堅実な選手なんだよね。
そうこうしてる内に結局時間は8時半に迫っていた。
* * * * * * *
気づけばもう5月の中旬、私達はいつものように練習を終え、全員が集合。監督がいつも通り締めの話を始めた。
「今日も無事練習を終えたな。今日は大事な話がある。・・・夏の大会についてだ」
夏の大会、当然高校球児の誰もが目指す最大の大会だ。予選を勝ち抜き、甲子園を目指す戦いは日本の夏の風物詩ともいえるだろう。・・・にしても何の話なんだろう? 監督は続けた。
「前回の紅白戦やここの所の練習の様子を見て、花﨑コーチと共に相談して決めたことだが・・・。今回の夏の県大会は棄権しようと思う」
「ええ!」「棄権!?」「どうして!? ・・・ですか!?」「なんでなんすか?」
部員たちがざわめく。そうなることは想定済みだったのだろう監督は話を続ける。
「今のウチの実力では夏の大会を戦い抜くのは厳しいだろう。経験することも大事だろうが、今の間は基礎も重要だと考えている」
「照準を今年の秋に合わせるってことよ。夏の大会直後の夏休みの冒頭の時期を利用して合宿を行うことも考えているわ。それに1年生はまだ体が出来上がっていないし、秋になれば他校と同じ条件・・・、今の2年生が最高学年という条件で戦えるしね。去年、1年生だけで大会に出た結果、分かったのは体力不足とシンプルな実力不足。夏には無理でも秋ならば長期スパンの調整ができる・・・、というのが私と監督、それに岩井くんと木寄さんで相談した結果なの」
監督の言葉に花﨑コーチが長い補足を加えた。
「そのためこれからの練習はしばらく体力作りが中心となる。実戦が0になる訳では無いが、本格的な実践中心の練習は7月末から合宿ぐらいからだと思っていてくれ。俺たちの判断で甲子園に行くチャンスをみすみす捨てているように見えるかもしれんが、どうか理解してほしい。残されたチャンスで甲子園に行くためにも」
そう言って監督はなんと頭を下げた。それに合わせ花﨑コーチも頭を下げる。監督コーチにここまでされて文句を言うやつはいないだろう。それに全て私たちのことを考えてのことだし、みんな分かっているのだろう。
「「「はいっ! ありがとうございます!!」」」
選手一同も礼をしたのだった。
* * * * * * *
「よおし! 次、真っ直ぐ! 右バッターのアウトローねっ!」
「あいよっ、さあ腕振って来い!」
6月に入った日、今日はブルペンでの投球練習、なんだか調子が良い気がするよ! ストレートも走ってるし、変化球もキレてる。いつもの投球動作から腕を全力で振るう。投じられたボールは真っ直ぐにミットに吸い込まれていき、スパーンッ! と心地いい音を立てた。
「ナイスボール!!」
「よっしっ!」
いやあ、いい球投げると気分がいいからついつい顔がゆるんじゃう。
「うわあ、あの笑顔、たまんねーな!」
「あ、ああ! ずっと見てられるよな!」
ブルペンを遠くから眺めてた男子生徒たちが何か言ってるんだけど遠くて聞こえない。もしかして野球が好きなのかな?
「桜井、ちょっと話があるんだがいいか?」
松浪くんが一度マスクを取って聞いてきた。
「話って? ピッチングのこと?」
「ああ、結構重大な話だと思うけど・・・」
松浪くんはマウンドの方へと歩み寄って来て本題を告げた。
「お前、フォーム改造してみようって気はないか?」
「フォ、フォーム改造!?」
「ああ、お前のフォームは確かに綺麗だ。正直、これほどまでに完成されたお手本のようなピッチングフォームは見たことねえ。」
こ、ここまで褒められるとなんだか照れるね。でも・・・、
「そこまで褒めてくれてるのに、どうしてフォーム改造を勧めるの?」
「お手本通り、といえば聞こえがいいけど、つまりはカタログスペック通りの実力しか出せないってことだ。体格に恵まれた奴ならこのフォームで戦い抜けるだろうけど・・・」
「・・・私じゃできない、と」
「ぶっちゃければそうだ。特にお前は身長も平均ぐらいだし、手足も華奢だ。カタログスペック通りじゃ、他には敵わねえ」
「それは、そうだけど・・・」
身体的に男子には敵わないってことは良く分かってる。どうあがいたって男女の筋肉量や体格の差を埋めることは並大抵の話じゃない。それでも、私は今のフォームをあまり変えたくない。
「でも、私はサイドとかアンダーになるつもりはない。あくまでも今の投げ方にこだわりたいんだ!」
「そう言うと思ってたよ。だから、根本は変えない。」
「・・・え?」
「俺だって、お前のあの綺麗なスピンのかかったストレートを無くしたはない。だからリリースはそのままに腕の使い方と全身の使い方を変えるんだ」
「リリースをそのままに?」
「そう、リリースの瞬間の手の角度はできるだけ変えずに腕の持ってき方を変えるんだ。お前は体がすごく柔らかいから相手打者から出所を見にくくできると思う。今よりも腕をしならせてボールにより力を伝える」
「じゃあ、全身の使い方は?」
「軸足に乗せた体重をできるだけ前にぶつけるんだ。極端な話、前に向かって飛ぶくらいの勢いでな。この体重移動とリリースのタイミングがかみ合えばおそらくお前のストレートにより磨きがかかる」
「なるほど・・・」
一体松浪くんはいつの間にそれだけのことをシミュレーションしていたのだろう? あくまでこの理論は体が柔らかく、体重や力の劣る投手のためのもの。つまり、ほぼ私のための理論とでも言えるものだ。それに今よりも質の高いストレートを投げられるというのは魅力的な話だ。
「もちろん、いいことばかりじゃねえ。一番に心配なのはコントロールの低下だ。もしもリリースと体重移動のタイミングが合わなかったら力は伝わらない上に制球も難しいという欠陥だらけのストレートになってしまうし、今のフォームを失ってしまうことになる」
「今のフォームを失う・・・」
「容易に後戻りできないんだ・・・、お前にはその覚悟があるか?」
「私は・・・」
「随分と大掛かりな話をしているのね」
突然声のした方をするとそこには木寄さんがいた。
「松浪くん、フォーム改造とは思い切った提案ね。・・・でも、それは桜井さんの選手生命を左右することになるのよ? 」
木寄さんがいつになく真剣な顔で松浪くんに尋ねる。
「・・・はい、十分わかっています。その上で俺はフォーム改造を勧めました。桜井には素質があります。チームの“エース”となる素質が。それにこの1カ月半の練習で桜井が今のレベルで終わる選手じゃないと思います。俺はこいつの努力を信じたいです」
松浪くんはそう言い切った。それって、本人いる前で言っちゃっていいのかな? それにそれだけで私を信じてくれるんだ。私の実力をここまで認めてくれた人がいただろうか?
「・・・じゃあ、桜井さんはどうしたいの? 当然、決定権はあなたにあるわ。あなたがあなた自身のことを決断するの」
木寄さんは私の方に向き直り尋ねた。
「私は・・・」
今を捨てて高みを目指すのか、今のフォームを磨くのか・・・。私はしばし考えて、決めた。
「やります。フォーム改造!」
「・・・本気なのね? 後戻りは簡単じゃないわよ?」
「はい、確かに怖くないと言えば嘘になります」
でも、と私は一呼吸おいて続けた。
「松浪くんが信じてくれる。そう言ってくれたんで、私も松浪くんを信じます。私の投手としての運命を」
「俺が言うのもなんだけど、本当にいいのか?」
「ピッチャーがキャッチャーを信じれなかったら何に従って投げるのさ! 私は松浪くんを・・・トモを信じようと思う!」
「・・・トモ?」
「そう、梅田くんたちがそう呼んでたからさ。私もそう呼ぼうと思って! あ、私のことも夏穂って呼んでよね!」
「・・・ああ、わかったよ、夏穂。これからがんばろうぜ!」
「オッケー!!」
私は松浪くん・・・トモとがっちりと握手をした
「ピッチャーがキャッチャーを信じる・・・ね、逆もまた然りってことかしら。じゃあ、私も夏穂って呼ぼうかな?」
「木寄さんもですか!? わあ、なんか嬉しいなあ!」
先輩にまで名前で呼んでもらえるとかなんかテンション上がるね!
「まあ、わたしもできることは協力させてちょうだい。私も自分なりに理論は持ってるから少しは約に立てると思うしね」
「はい! 是非お願いします!」
こうして私のフォーム改造が始まったのだった。全ては秋以降の戦いで今よりさらに上のピッチングをするために・・・!
* * * * * * *
雨が続いて地道なトレーニング中心の雨練をやり通し、気が付けば天気予報も梅雨明け宣言を発表して7月を迎えた。この時期になれば全国各地で甲子園を目指す戦いが繰り広げられていった。早々に大会を棄権することを決めていた聖森学園高校野球部は秋季大会に照準を合わせ、練習に取り組んでいた。
「よしっ! センター! ラスト一本!」
「お願いしますでやんすっ!」
カーン! と金属音が響き、監督が放った鋭い打球がセンター前へと飛ぶ。センターに着く矢部川くんはワンバウンドで捕球すると流れるようにダイレクトでホームへ返球する。ワンバウンドでその送球はキャッチャーの木寄さんのミットへと吸い込まれた。
「矢部川、ナイスボール!」「肩意外と強いんだ~」「うっしゃーでやんすっ!」
各々の反応をして外野ノックは終了、内野ノックに移った。監督によってテンポよく放たれるノックは内野手陣の動きをもよくしていた。
「・・・やっぱり岩井さんと梅田くんの守備力は抜きんでてるな・・・」
私は率直に感じたことを口にした。岩井さんはやはり攻守においてこのチームの柱だと実感する。そして梅田くん、広い守備範囲と魅せる守備は1年生ながら内野手でもっとも目立っている。流石は“夢尾井トリオ”といったところだね。次点では2年生のショートの山田さんとセカンドの姫華の女子選手たち。山田さんは送球こそ不安が残るけど守備範囲も広く、梅田くんより安定感を感じる守備だ。姫華も守備範囲は広い。だけど、その分エラーも多いというのがやや残念なところだった。それでもエラーしても恐れず打球に向かってく姿勢は他の誰も持ち合わせていない積極性は流石だと思う。この前の紅白戦のメンバーがおそらく2年生のベストメンバー。はたして秋の大会では何人が入れ替わるのだろうか、2年生が意地を見せるのだろうか・・・。もっとも、私はそれどころじゃないんだけれどね。フォーム改造に取り組み始めて1カ月。未だに投球は安定しない。制球に苦戦しているのが最大の要因だ。まだストレートの質が上がっていることが救いなんだけどね・・・。
「おい夏穂、フォームチェックするだろ?」
「あ、うん。当然だよ」
そういって私たちはブルペンへ向かう。ひょっとすると秋には間に合わないかもしれない。でも、焦ったって仕方ない。そう自分に言い聞かせる。じゃなきゃ今すぐにでも以前のフォームに戻そうとしてしまうから・・・。
「それに・・・、このくらいの我慢。いつだってしてきたじゃないか・・・」
「ん? なんか言ったか?」
「い、いや、なんでもないよ。・・・絶対にこのフォームをモノにするんだから!」
「おう、そうだな! その意気だ!」
思わず口に出してしまったけど、私は信じる。乗り越える壁が大きいほど、得られる成果も大きいってことを。
少し夏穂の本心が見え隠れする今作となりました。ちなみに夏穂もスタイルは十分いいんですよ! 恵がすごすぎるだけで・・・。
読んでくれている人は少ないかもですができるだけ早い次話投稿を目指したいです! あと感想もお願いしますね!
さて、今回のおまけの選手能力紹介今回は矢部川と梅田の紹介です!
矢部川昭典 (1年) 右/右
家が近いのと女子選手が多いという噂にひかれて入部した牛乳瓶の底のような眼鏡が特徴の選手。某あの人と名前も顔もそっくりである。普段こそお調子者で女の子に目が無いのだが、選手としてはなかなか優秀であり特に足と守備には定評がある。なぜか左投手が苦手。どんな人にも憎めない奴だと感じさせてなんだかんだで仲良くなれるのは一種の才能かもしれない。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
2 F E C D D E 外D
内野安打○ 盗塁○ 走塁○ バント○ 対左投手△ チャンス△ 調子極端 積極盗塁
梅田風太 (1年) 右/左
”夢尾井トリオ”の一人で松浪と共にある目的をもってやってきた。くすんだ金髪に優男風の雰囲気をした男。一見チャラく見えるが野球に対する熱意は本物であり、とくにその守備範囲と華麗な守備はかなりのもので複数のポジションも高いレベルでこなせる。打撃はそこそこだが走塁技術は矢部川にも引けを取らない。松浪と竹原とは親友同士であり、互いにトモ、風太、大と呼び合う仲。松浪が飛ばす毒舌に苦労させられている被害者の一人。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
2 E E C E C D 遊C 二D 三D
走塁○ 盗塁○ 守備職人 ミート多用 積極守備 積極走塁 慎重打法
【挿絵表示】
似たタイプの2人ですよね。この2人もどう成長するのか注目です!
この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)
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桜井夏穂
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松浪将知
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空川恵
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久米百合亜
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ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)