New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~ 作:Samical
オーダーは前の話を見返してみてください!
小気味良いミットの音が球場に木霊した。
「ストライークッ!」
夏穂の投じたストレートはいきなり140キロをマーク。これには球場もどよめいた。そして打席に立つ東出も思わず息を飲む。
「これがウチの夏穂だぜ」
「ああ、太刀川にも負けないいい真っ直ぐだ」
「…まさかこんなとこで会うなんてな。シニアの全国大会準優勝チーム、阿左美が丘シニアのキャプテン、東出太陽《ひがしでたいよう》」
「ああ、覚えててくれたんだ」
「決勝も見てたからな、俺たち」
「'夢尾井の知将'に知ってもらえてるのは光栄だね」
「よく言うぜ。…でもなぜお前がこんなところに?」
「それはこっちのセリフだよ。…まあ、今はそんな話してる場合じゃないけどね」
「ああ、そうだな…!」
松浪は夏穂に次のサインを出し、夏穂は頷く。そして投じられたのは再びストレート、それもインローの厳しいコース。だったのだが、
「もらった!」カキーン!!
「「!!」」
そのストレートをジャストで捉え、センター前へ運んだ。
「(あんな簡単に私のストレートを…!)」
「(ちっ、流石と言うべきか…!)」
続く小山は送りバントを決め、1死2塁のチャンス。前の関明大附属と同じパターンだ。
だが松浪は迷うことも躊躇うことも無く手を打った。
「おーっと! 松浪くん。ここで立ち上がりました! どうやら敬遠のようです! 初回にして、3番の美藤さんを歩かせました!」
「ふむ、松浪はどうやらかなり肝が座っておるな」
「どういうことでしょうか? 平野さん?」
「このパターンは前の準決勝の得点パターンと同じ、それ以前の試合でも数多くの点を稼いできたパターン。それを敢えて敬遠という形で崩したのだな。だが、まだ初回で大事な先制点がかかった場面。この策を取るのははっきり言ってハイリスクなのだが…」
「ボール! フォアボール!」
歩かせて1死1,2塁の場面となる。
「(4番の大空はジャスミンにとって貴重な長打が打てる打者だけど、打率に関して言えばこのチームのスタメンでも低い方だ。そして…、)」
「ミヨちゃんに勝負を挑むとは~、いい度胸ですね~?」
と、大空からはほんわかした感じからは考えられない怒りのオーラが見える。
「(力が入ってくれれば儲け物だ! 夏穂! 初球から勝負だ!)」
「(オッケー!)」
夏穂はセットポジションから足を上げて、ボールを投じる。その球種は…、
「ストレート! なめないでくださ…っ!?」
ストレートのようなスピードで来たのは今日初めて投じる高速スライダー。松浪の目論み通りに強振したバットに引っ掛かった。スイングスピード故にそれなりの勢いのあった打球だったが飛んだのはセカンドの姫華の正面。捕るや否や風太に転送し、風太もファーストの竹原へ送球し、ゲッツー完成。あっという間にスリーアウトチェンジとなった。
「これは聖森学園の好プレーです! 初回のピンチ、ゲッツーで切り抜けました!」
「よっしゃ! 凌いだぜ!」
「ナイスピー! 夏穂!」
「トモ! 何するつもりなんだって焦ったよ!」
「いや、あいつらは東出、小山でチャンスを作って美藤が返す。この形で多くの得点を上げてたからな。大空の方が打率も低いし。……まあ、確かに博打だったけど」
「博打って、まだ初回でやんすよ!?」
矢部川が松浪を軽く咎めた。しかし松浪はケロッとした様子で答える。
「まだ初回も何も。この作戦に俺はリスクは無いと思ったぜ。点を取られても向こうからしたらいつも通り。だけど点を取れなかったらそれはプランを崩されたことになる。出鼻を挫くってのはこのリスクに見合う成果があるっと俺は思ったまでだ」
「それは……」
「それに、普通にやって勝てるほどこの試合は甘くない。少しでも失敗を恐れたら逆に泥沼だぜ」
「要は失敗しなきゃいいのよねっ!」
「そうだ、俺たちはただベストを尽くすのみ…!」
松浪の言葉に姫華、竹原が頷く。
「わかったでやんす。松浪くんの言葉、信じるでやんすよ!」
「よっしゃ! みんな、ここからガンガン行こー!」
「「「おおおっ!」」」
松浪、夏穂の言葉に全員の緊張がほぐれ、雰囲気も明るくなった。
その様子を見ていた東出はマウンドに立つ太刀川に声をかける。
「太刀川! 安心して打たせよう! 今までの守備練の成果、見せるところだ!」
「分かってるよ、東出。アタシもベスト尽くすよ!」
「さあ、守ります聖ジャスミンの先発投手は太刀川さん! 球威抜群のストレートにカーブ、シュート、スクリューを操る本格派左腕! 中学からの親友の小鷹さんとの黄金バッテリーです! 一方、聖森学園打線も強打者というより好打者の並ぶ打線! 果たして太刀川さんをどう攻略するのでしょうか!」
先頭の打席には1番の風太が立つ。
「なんとしても出塁する!」
「出てくれ! 切り込み隊長!」
「突破口開けー!」
まず太刀川が投じたのはストレート。それは小鷹のミットに突き刺さる。夏穂のストレートとは異なりその音はズドンッ!! という重い音だった。スピードガンの表示は136キロ。そして・・・、
「(夏穂ほどじゃないけど・・・、このボール。ノビてくるな)」
太刀川のストレートもまた球速表示以上の体感球速を伴うストレートだった。
「(この梅田は出塁率はそこまでだけど、足が速いから厄介ね・・・。ヒロ! ここはインコースで詰まらせるわ!)」
「(うん!)」
続くサインに頷き、ボールを投じる。コースは内角。風太はそのストレートにやや遅れるも腕を畳んでコンパクトにミートした。しかし・・・、
「(お、重い!?)」
ガンッという鈍い音と共にボールは力なく転がった。しかし、これが逆に吉と出た。
「サ、サード!」
「お任せですー!」
サードの大空が突っ込んできて捕球し1塁へ送球するも、ボールよりも先に風太が1塁に到達し、出塁に成功する。そして続く姫華が送りバント成功。そして迎えるのは・・・、
「さあ! 打席には注目の打者の1人! 松浪くんです! 得点圏打率が非常に高く、この場面でも期待がかかります!」
「ピンチを凌いで同じようなチャンスを作り返したましたな。ここで先制できると聖森に勢いがつくかもしれませんな」
右打席に入った松浪は一旦状況を再確認していた。
「(1アウト2塁。できればここで2、3点欲しい。そのためには…。いや、欲張るな。まず1点だ。ヒット、もしくは最低でも進塁打。相手からしてみれば簡単には打たせたくないはず)」
そして注目の初球…、
「うおっ!?」ズバッ!
「ボール!」
インハイ、しかも当たりそうなコースすれすれのストレート。
「くっ!」バシッ!
さらにもう1球、インハイへのブラッシュボール。小鷹の「踏み込んでくるならぶつける」と言わんばかりの強気のリードにスタンドもざわめく。
「(おうおう、やってくれんじゃねえの…!)」
続く3球目はインコースのボールゾーンからストライクに入るシュート。さらに4球目は再びストレート。これをファールにしてカウント2-2。
「(ここが勝負! ヒロ!思いきって投げなさい!)」
小鷹は次なるサインを出す。太刀川も頷き、ボールを投じる。ボールはアウトコース、そこから逃げながら沈む、スクリューだった。そしてインコースを散々見せられた松浪からは遠く見える、
…はずだったのだが。
「! 踏み込んできた!?」
「この攻めは前の試合で散々やられたからな!」
カッキーン!!
迷わず踏み込んできた松浪はスクリューを上から強く叩き、打ち返した。痛烈な打球は一二塁間を破り、ライト前へ。
「回れ回れー!」
「よっしゃー! 行くぜ!」
三塁コーチャーの田村快は迷わず腕を回す。風太もホームへと迷わず突っ込んでいく。
ライトを守る美藤は打球へと猛チャージを仕掛け捕球、そして、
「私たちの守備を、甘く見ないでもらおうか!」
「ちーちゃん! こっち!」
「ちーちゃんって、言うなあああ!」
美藤は送球を中継に入った小山に繋ぎ、
「ホーム!」
小山は無駄の無い動きでホームへ転送する。
「! 速い!?」
「ホームは踏ませないわ!」
風太は回り込んでホームベースに触れようとするがそれを小鷹のミットが阻んだ。
「アウトー!」
鍛え抜かれた守備連携にスタンドは歓声とため息に包まれる。
「今のアウトにするのか。参ったな」
「力が足りない分、埋める努力してきたしね。…にしても、しれっと2塁にいる君も抜け目無いね」
松浪のぼやきに東出が答える。送球間に松浪は2塁を陥れていた。これでまだ2アウト2塁のチャンスが続く。
打席には4番の竹原。そして待っていたのは初球のストレートだった。
「逃さん!」カッキーーン!!
「「!!」」
捉えた打球は痛烈に三遊間を破る・・・、
と、思われたのだったが。
「抜かせない!」バシッ!
その打球を東出は驚異的な守備範囲でスライディングキャッチで抑えた。そしてそこからすぐさま立ち上がりノーステップで1塁へ送球した。その送球はまるで矢のような送球。ファーストの川星のミットに吸い込まれるように収まり、
「アウトーー!!!」
竹原はショートゴロに倒れた。スリーアウトチェンジ。俄然盛り上がったのは聖ジャスミン側のベンチとスタンドだった。
「驚異的な守備範囲に凄まじい送球! 東出くん、素晴らしいプレーでした!」
「ふむ、今のは非常に素晴らしい。彼のプレーは本当に1級品ですな」
「いい感じで攻めてたんでやんすけど…」
「あっちの守備、想像以上にいいね…」
「みなさん! まだ1回! 点は入ってないんで! しっかり行きましょう!」
「…そうです。まだ始まったばかり…!」
百合亜と白石の言葉を聞いて全員が気を取り直した。
「よーっし! この回も0で行くよー!」
「「「おおっ!」」」
2回表の先頭打者は5番の柳生。だが柳生に関して言えば前の試合までに弱点は見えていた。
「むっ…!」カツッ!
「サード!」
「オッケーっす!」
典型的なハイボールヒッター。振りは確かに鋭いが軌道が基本的に強引なダウンスイングであるため、高めに浮いた球は打てても低めに対応するのは難しいはずだ。
「うわっ!?」
続く小鷹にはストレートを続けてからのフルブルームで手玉に取る。さらに7番の太刀川にもストレート、フルブルームのコンビネーションで空振りの三振に抑えた。
「(これが私のボール! ヒロ! どんなもんよ!)」
「(うーん。やられちゃったか。でも負けてられないね!)」
太刀川も気合いを入れ直し、2回の表の先頭打者の恵に対して、アウトコースのスクリュー、カーブでカウントを作り、
「たあああ!」ズバーーン!!
「ストライク! バッターアウト!」
「むむ~、これは手強いな~」
インコースに渾身のストレートを投げ込み、空振り三振。さらに6番の夏穂もカーブを続けられた後にストレートの釣り球に空振り三振に倒れる。
そして7番の満が打席に立つ。
「(前の回とは一転して変化球主体。だけどストレートにはかなりの球威がある…。ここは真っ直ぐに絞る!)」
ストレートが武器である以上は必ず投げてくる。そして満の読みは的中した。カーブ、シュート、カーブと変化球を続けたカウント1-2からの4球目。アウトローの真っ直ぐを逃さずに叩く。
「おっと!?」
打球は鋭く、太刀川の足元を抜いてセンターへ。
…誰もがそう思ったが、
「うおおお!」バシィィ!
これを阻んだのはまたも東出。今度はダイビングキャッチで打球を掴むと、起き上がってすぐさま送球。満もまたショートゴロに倒れてしまった。
「(今のを捕るのかよ…!?)」
「(満の当たりは普通ならヒットなのに…! シフトも敷かずにアウトにするなんて!)」
次の回、8番の矢部田、9番の川星を簡単に打ち取り、ここでトップバッターの東出に回る。
「(最悪出塁されても2アウト…。夏穂思いきって行け!)」
これならジャスミンお得意の得点パターンは封じられた。夏穂はフルブルームとストレート、スライダーを使い分けてカウント2-2とする。そしてアウトローに渾身のストレートを投じた。
「ホームランってのはさ…」
東出はこのストレートには対して、強く踏み込んだ。
「力があれば打てるってもんじゃないのさ!」カッキーン!!
「「なっ…!?」」
その打球の軌道はホームランのそれではない。ただ、真っ直ぐに。弾丸ライナーでバックスクリーンに飛び込んだ。
センターバックスクリーンへの先制ホームラン。
あまりの打球速度に一旦は静かだったスタンドだったがその事実を認識し、一気に沸き上がった。
「(打球を飛ばすのに、必要なのは力だけじゃない。ボールが一番飛ぶような角度で、かつ真芯で捉えれば、力だけに頼らずとも打てる!)」
「(はは、やっぱりこいつ化け物だな…)」
松浪だけでなく、聖森のメンバーの誰もが戦慄する。間違いなくこの東出という男は、彼らが戦った中でも、最強クラスだろう。身体能力、野球センス、そして技術は群を抜いていた。
それだけに松浪は思う。
「(でも、お前…。なんで'投手'をやってないんだ…?)」
いよいよ出て来ました、今のところ最強キャラ、東出太陽。彼はかなり強いです。今回は先に能力をおまけとしてお見せしておきます。
東出太陽 (3年) 右/左
聖ジャスミンの唯一の男子部員にして、キャプテンを務める。非常に穏やかな性格ではあるが、芯は強く、強気な小鷹や美藤にも怯まずに応じる。選手としても、高い対応力と'飛ばす技術'を併せ持ち、俊足、強肩、そして華麗な守備と抜け目が無い。
中学でも松浪たちと同様に活躍していたが彼もまた、'ある理由'でここに来た。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
3 S C A S S D 遊S 二S 三S
チャンス◯ ケガしにくさ◯ アベレージヒッター 広角打法 流し打ち メッタ打ち 走塁◯ 盗塁◯ 送球◎ 粘り打ち バント◯ 一球入魂 切り込み隊長 サヨナラ男 気迫ヘッド いぶし銀 守備職人 意外性 エースキラー 連打◯ ローリング打法 情熱エール
盛りだくさん過ぎてすごいですね。この東出、サクスペで作成しました! 次の話でパワナンバーなりを公開しようと思います!
では次回もよろしくお願いします!
この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)
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桜井夏穂
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松浪将知
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空川恵
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久米百合亜
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ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)