New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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サクスペで作ったやつパワナンバー無いじゃん…
パワプロ2018で頑張って夏穂の再現したいところです


31 迷い、それを超えてここに立つ

カキン! バシッ!

「アウトー!」

「よっし!」

3回表。東出にホームランを浴びた後に小山にもヒットを打たれたが、なんとか美藤はセカンドライナーに打ち取った。しかし、大きな先制点が入ってしまった。

さらに4回…、

「よっ!」シュッ! バシッ!

「アウト!」

「今のも捕るのか…!」

初芝の三遊間の打球も平然と捌かれ、

「今のも…!」

百合亜のボテボテの打球も素手で拾ってそのままランニングスローでアウトにして見せる。

「(ショートを抜ける気がしねえ…! なら…!)」

風太は思いきって引っ張り一二塁間を抜きにかかったが、

「ふっ!」バシッ!

小山がスライディングで捕球し、

「ほむほむ!」

「ナイスキャッチっスよ!」パシッ!

セカンドゴロに倒れてしまう。

「(くそっ、東出の守備範囲が広い分、セカンドが寄ってやがった!)」

一方の夏穂も小鷹にヒットは浴びたが4番からの打順は無失点で切り抜けた。それだけに東出1人にこのゲームを支配されているような雰囲気が漂い始めてきた。

「(やべえ、流れ変えねーと!)」

松浪が少し焦りを感じたその時だった。

カツッ!

「「セーフティー!!」」

先頭打者の姫華が三塁線に転がした。

「ミヨ! 触っちゃダメ!」

「えっ? は、はい!」

チャージを仕掛け処理をしようとした大空だったが小鷹の声に手を引っ込めた。しかし、

「! き、切れない…!?」

打球は線の上でピタリと止まった。

「(バントだけは誰にも負けないくらい練習したもんねっ! …まあ、ここまで上手くいくとは予想外だったけどっ!)」

「姫華! ナイスバント! 」

「これはデカイでやんす!」

完璧なセーフティーバント。これでノーアウトのランナーが出る。ここで迎えたのは松浪。

そしてその初球、

「走ったッス!」

「走らせないわ!」

いきなり姫華はスタートを切った。そしてそれをある程度見越していた小鷹もウエストのサインを要求しており、すぐさま刺しに行こうとした。

…が、

「ちょっと、不用意だった、な!」カキン!

「えっ!? ちょっと!?」

そのウエストボールに無理やり松浪がバットを合わせる。

「(前の試合までを見てて、盗塁警戒のウエストが全部甘かったからな! 狙わせてもらったぜ!)」

打球はセカンドベースに入ろうとしていた小山の元いた定位置に転がり、ライト前へ。これで一気に0アウト、ランナー1、3塁のチャンスが訪れた。

バッターは4番の竹原。

「(ボールの球威、そして東出を始めとした固い守備にここまでやられている…。俺のパワーなら突破口を作れる!)」

「(このバッター。確かにパワーはあるけど、他のバッターに比べれば確実性に欠けるわ。…インコースのストレートを打たせて詰まらせて内野フライ! これがベストね!)」

小鷹はある程度プランを立ててサインを出す。太刀川も頷いてボールを投じる。外角にカーブ、スクリューと変化を集め、カウント1-1。ここで太刀川が投じたのは、

「(インコース真っ直ぐ! 迷わず、打つ!)」

ガキンッ!と鈍い音が響き、打球はフラフラと上がる。

「(よし、打ち取った! …って、あら?)」

計算通りに打ち取ったと確信した小鷹だったが打球はあまり落ちてこず、結局レフトの柳生の元まで飛んだ。そして捕球を確認すると3塁ランナーの姫華は迷わずスタート。返球もカットまでに留まり、聖森学園が同点に追い付いた。

「っしゃー! ナイス竹原!」

「しっかり最低限っ! いい仕事だねえっ!」

「打った身としては犠牲フライ止まりなのが少し複雑だが…」

「それでもナイスでやんすよ!」

しそて続く恵も初球攻撃を仕掛け、外角低めのスクリューに思い切り転がした。打球は三遊間を抜けると思われたが…、

「よっ!」バシッ!

「「「!!」」」

またしても東出がそれを阻む。そして、

「セカンド!」

逆シングルの捕球からジャンピングスローで小山へと転送。そこから1塁は間に合わなかったが、またもヒットを損した。そして続く夏穂も快音は響いたがセンター正面のライナーに倒れた。

 

 

5回表は8番の矢部田からだったが、夏穂の調子もどんどん上がってきた。矢部田、川星をストレートで三振に打ち取り、ここでここまで大当たりの東出を迎える。

「(さっきはヒットOKで行って打たれた。今度は出塁すらさせない!)」

夏穂は初球から切り札を切る。

「! これは…!」

初球に選んだのはフルブルーム。かなりのスピードを保ったまま、変化する魔球。夏穂の磨きあげた最高の変化球だ。

「確かに打ち難いね、これは…」

「さあ、どうする?」

「打つさ、どんなボールにも弱点はある!」

「へへっ、フルブルームの恐ろしさはまだ分かってないみたいだな」

「打って見せるよ…、じゃなきゃこちらに勝ち目は無い」

しかし、続く2球目。東出はここまで打ってきたストレート、その高めのボールに手を出し、空振り。

「!! …なるほどね。そういうことか…!」

フルブルームは高速であり、変化も大きく、切れ味も鋭い。球質が軽いのが難点ではあるが、それを補い余る威力を持つパワーカーブである。夏穂の繊細で器用、しなやか、かつ強い指の力があって初めて投げられる。

単体でもかなりの驚異になるが、さらに恐ろしいのは他の球種とのコンビネーションだ。腕の振りが弛まないので、夏穂の持ち球、ストレート、高速スライダー、チェンジアップとの区別をしにくいこと。これがフルブルームをさらに引き立てている。

「(でも、これを打たなきゃ、勝ち目は…!)」

ここで、3球目に夏穂が投じたのはチェンジアップ。東出は完全にタイミングを外され、スイングは手だけになった。しかし、

「当てる…!」カッ!

泳ぎながらもなんとかバットに当て、打球は力なくショートの前へ、

「やべえ、風太! 勝負かけろ! 間に合わないぞ!」

「うおっ! マジかよ!?」

慌てて風太はチャージをかけてボールを素手で拾い、送球したが東出の足が勝り、セーフ。内野安打となった。

「打ち取ってもヒットにしちゃうか…」

「わりい、夏穂。セーフにしちまった」

「大丈夫! あれも東出くんの武器な訳だし…。この後はしっかり抑えるよ!」

「お、おう!」

続く小山はレフトフライに打ち取り、この回も無失点。とはいえやはり東出の独壇場は続いた。

「(ダメだ…。このままじゃ、あの時と同じだ…。あの時と…)」

 

 

 

――――、話は東出の中学時代に戻る。

小学校でも野球をしていた東出は中学に上がると、地元のチームである阿左美が丘シニアに入団した。阿左美が丘シニアは特別強いチームではなかったが、東出の代にはたまたま優秀な選手が集まった。そして、東出はその中心にいた。

当時は投手と内野手を務めていた東出は投げては中学3年にして144キロをマークしたストレートを武器にし、打っては左右にどんな球も自在に打ち返し、走ってはチームどころか全国トップクラス、陸上部からも声が掛かるほどで、投げないときに守っては巧みなグラブ捌きと驚異的な守備範囲を誇る。つまり、最強の選手だった。

彼を中心に、阿左美が丘シニアは東出の代が3年の年の大会で快進撃。東出が警戒されようとも、他の選手たちも東出に負けじと積んできた努力が実を結び、結果を残す。全国に行ってもその勢いは衰えなかった。

だが注目が集まるほど、東出は納得が行かなかった。取り上げられた記事のほとんどは、

「140キロ超え右腕東出! 投打に大活躍!」

「天才中学生東出、チームを優勝に導くか!」

そこには東出の名前ばかりが取り上げられ、他のチームメイトは申し訳程度の伝えられ方だった。

「…僕の力だけでここまで来たんじゃない…! みんなの力があったから! ここまで来たんだ!」

「でもよー、太陽の力があったからこそ、俺たちも頑張れたんだし、お前のお陰だよ」

「ああ、太陽がいれば負ける気がしないよ」

だが東出はそれが嫌だった。まるで自分がいれば、他のメンバーの努力は無くたって勝ってきたような言われ方が、自分のせいで仲間たちが認められていないような感じがしたのだ。

結局チームは準優勝し、東出はチームメイトと健闘を称えあった。そして、全国津々浦々の高校のスカウトたちが東出と話をしたいと訪ねてきた。その中で東出は比較的実家から近く、強豪で有名であった九里塚(くりつか)商業の練習に体験参加した。豪速球を披露し、ノックで華麗な守備を見せた後で対戦形式の打撃練習に混ざり、打席に立ったときだった。

「うわっ!?」

あわや顔面直撃となりかねない危険なボール。そして、それは1球に留まらず何度かあった。

そして練習終わり。着替え終わった東出は選手たちのある発言に心を痛めた。

――「アイツ、ちょっと上手いからって調子乗りやがって…」

「へっ、どうせメンタルは弱いだろうよ! ウチに来たらちょっと絞めて言うこと聞くようにしてやるぜ!」

「なんなら今日のアレにビビって来なきゃ良いよな~。来たら俺たちの立場が危ういしよお~」―――

 

「…そうか。きっとどこに行っても僕はそう見られるのかな…」

嫌気が差した東出は強豪からの推薦を全て蹴った。でも大好きな野球からは離れたくなかった。

「(そうだ。トレーナーを目指そう。僕の経験を活かせるし、野球に関わっていられる…)」

東出はスポーツ科学系で有名で、かつ自分の中学時代を知る人が少なそうな元・女子高の聖ジャスミン高校に進むことにした。阿左美が丘シニアのメンバーも両親も東出の決意には残念がりながらも納得してくれた。

 

そして、入学してからのことだ。

「本当に女子だらけ…、というか男子は僕だけか」

元・女子高とは聞いていたがここまでとは東出は思っていなかった。そんな時に突然声がかけられた。

「ま、まさか! ほ、本当にあの東出くんッスか!」

「えっ?」

声の主はツインテールが特徴的な、小柄な女子生徒だった。

「えっと、誰?」

「自分は川星ほむらって言うッス! 東出くんはあの、阿左美が丘シニアの東出太陽くんッスね!」

「! 知ってるの?」

「当然ッス! 投げては最速140キロオーバー! 打ってはヒット量産! 守っては…」

「ストップ! ストップ! ちょっとあっちで話そうか!」

マシンガントークを始めたほむらを一旦止めて、人通りの少ないベンチに揃って座った。

「で、なんで僕に声をかけたのさ?」

「実は頼みがあるッス。野球部に入って欲しいッス!」

「野球部? ここには無いはず…」

「作るんッスよ! 新しく! まあ、女子ばっかりッスけど…」

「だとしてもごめんね。僕は野球辞めたんだ」

「ど、どうしてッスか?」

「僕1人のせいで、チームを滅茶苦茶にしちゃいそうでさ。僕の実力は、チームメイトを不幸にするかもしれない。その内、野球が嫌いになりそうで怖いんだ」

「…。では、こっちも事情を話すッス。1人の選手を助けてあげて欲しいッス」

「助けて?」

「彼女はすごい野球が大好きで、この高校の校長は、野球部を作って彼女を迎え入れようとしたッス。だけど部員が足りず、彼女も入学したものの、このままだとソフトボールしかできないッス!」

「転校は、できないの?」

「校長はどうしてもウチでやって欲しいらしくて、野球が無理ならソフトボールを…、っていう約束らしいッス。でも、野球部の部員さえ集まれば…。」

「…わかった。でも、」

「どうしたッス?」

「勝負」

「えっ?」

「1打席勝負だ。僕が勝ったら、この話は無かったことにしてくれ。負けたら…、野球部に入るよ」

「…! 話してみるッス」

 

程なくして、ほむらからはその女子生徒が勝負を受けたことを聞いた。その生徒、太刀川広巳が投手ということで東出は打者として勝負することになった。

「太刀川さん? だったっけ。ルールはシンプルに1打席勝負打球を見て川星さんに…」

「ほむらでいいッス!」

「…ほむらに判断してもらう。フェアに判断してよ?」

「当然ッス。ほむら、野球に嘘はつかないッス」

「う、うん。分かったよ…」

一方のマウンドに立つ太刀川は、非常におとなしいように東出は感じた。

「(野球好きなほむらが本当にそこまで絶賛する投手なのかな…?)」

「プレーボールッス!」

その声で東出は完全に集中する。太刀川やほむらには悪いが、東出は野球をするつもりは無い。

「(この勝負、僕は負けない)」

だが太刀川も雰囲気が変わった。足を上げ、投じた初球に。東出は反応できなかった。

「ストライク、でいいッスね?」

「ああ…、驚いた…」

「…やっぱり。バッターに投げるのって…、楽しい!」

先ほどまでとは打って変わって、太刀川の表情はとても明るかった。続く2球目もストレート。東出はスイングしたが、ファール。

「(こんな投手が…、陽の目も浴びずにいたのか…)」

東出の脳裏には、どんなに活躍しても、自分のせいで注目されることの無かったチームメイトの顔が浮かんだ。彼らが優しかっただけで普通なら九里塚の選手のような考えを持っていたかも知れない。

「(! しまった!)」

余計な考えが東出の集中を邪魔した。3球目もストレート。だが東出の実力は、この集中の乱れにも負けなかった。

カキーーーン!!!

「「あっ…!」」

センター方向に打ち返された打球は外野で弾んだ。

「あはは、負けちゃった…。…でも、東出くん。勝負受けてくれてありがとうね。楽しかった」

その言葉に東出は迷いが生じた。本当に、こんなに野球が大好きな少女から野球を奪って良いのだろうか。でも、自分が野球をすれば、また誰かを不幸にするのかもしれない…。迷った挙げ句。東出は決めた。

「…いや。僕の、負けだ」

「えっ…?」

「今の打球、外野には飛んだけど、多分いいセンターなら追い付いて捕る。センターフライ。だから太刀川さんの勝ちだよ」

「じゃ、じゃあ…!」

「入るよ。野球部に。でもほむら」

「なんッスか?」

「僕は、ショートをやる。太刀川さんがピッチャー、エースだ」

「それで、いいんッスか?」

「構わない。それより…」

「「?」」

「部員、集めなきゃね」

 

こうして、聖ジャスミン野球部は始動した。経験の有無を問わず様々な選手を集め、なんとか部になった。

 

――――――、そして今。

カキーン!

「絶対捕るー!」バシッ!

満の流し打った線際の打球をサードの大空が横っ飛びで掴む。

「はあああああ!」シュッ! バシッ!

「アウト!」

「くっ、これでもダメか!」

起き上がってすぐさま送球し、アウトにする。

続く初芝にはヒットを浴びたが、百合亜のレフト線への打球はレフトの柳生がフェンスを恐れず懸命に追ってダイビングキャッチ。

そして風太の打球はほむらが抑えてスリーアウト。

「(いや、杞憂だな。僕がいなくたって、きっとみんなは戦える!)」

東出はそう確信し、ベンチに戻る。

「よーしっ! みんなナイスプレーだ! 勝ち越し点、取りに行こう!」

「「「おおー!」」」

 

全国高校野球選手権大会 県大会決勝

ジャスミン 00100

聖森学園  00010

(5回裏終了)




東出の回想が思ったより長くなってしまいました…。次はちゃんと試合進めようと思います。今回のおまけは聖森メンバーの能力その2です!

杉浦智也(3年) 右/右
球速  スタ コン
142km/h B  D
 ↑ 2シーム
 ↘️ カーブ 5
↘️ カーブ 2 
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 2 E C D B E E 投E 外F
 四球 力配分 打たれ強さ○ 根性○ 闘志

田村信 (3年) 右/左
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 3 E B E B E E  三E 一E
 三振 対左投手△ 初球○ プルヒッター 強振多用

初芝友也 (3年) 右/右
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 3 C C D C D D  外D
 粘り打ち バント○ アベレージヒッター ミート多用

元木久志 (3年) 右/右
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 3 E D C C D E  外D 三E 一E 捕E
 走塁○ エラー キャッチャー△ 送球○


田中則之 (3年) 右/両
※2年から野手に専念した
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 2 D E E D B B  三B 遊B 二C 一C 外D 
 調子安定 バント○ 守備職人 慎重打法 

村井綾 (3年) 左/左
 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 1 D F C F C C  外C 一D
看破 チャンス× バント○ 送球△ 盗塁◎ 粘り打ち 選球眼 慎重打法  ミート多用 

次回もよろしくお願いします!

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)
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