New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~ 作:Samical
いよいよ準々決勝。聖森学園は設立、創部4年目にして甲子園ベスト8という既に好成績。次第に周りからの注目はより大きなものとなった。
元々ドラフト候補として名前の挙がっていた松浪はドラフト1位候補とまで言われるようになった。そして快進撃を続けるチームを支える夏穂を中心とした投手陣は相手からの警戒の的であった。
そして次の相手は恋恋高校。かつての女性選手のパイオニア、現在もプロで活躍を続ける早川あおいの出身校。それ以降は聖森学園よりも女性選手の参加を推し進め、今では部員全員が女性選手の精鋭部隊となった。
しかし夏穂は知っている。それが新たに就任した木菱監督による軍隊のような野球部となっていることを。夏穂はあのときの自分の、そして助言をくれた伊月さんの判断が正しかったことを証明するために今日は特に勝ちたいと思っている。
「(なのに先発できないとは…。もどかしいなあ…)」
前に倒れたこともあり、今日は先発は回避した。だが負けられないトーナメント戦なので終盤の勝負所では登板させる、とのことだった。
「(でも大丈夫。みんながきっと、勝利に導いてくれるはず!)」
「さあ、今日の注目カード! ここまで快進撃を続け、旋風を巻き起こす聖森学園高校! そして対するは、女性選手参加の先駆け、原点となる恋恋高校! 今大会も高い組織力で勝ち上がってきました! さあ、まもなくスタメン発表です!」
先攻、聖森学園
1番 ショート 梅田
2番 セカンド 椿
3番 キャッチャー 松浪
4番 ファースト 竹原
5番 ライト 空川
6番 ピッチャー 杉浦
7番 サード 桜井満
8番 レフト 初芝
9番 センター 露見
後攻、恋恋高校
1番 センター 相見
2番 ショート 佐々木
3番 サード 夢城和
4番 ライト 新垣
5番 ファースト 米倉
6番 レフト 土屋
7番 セカンド 有村
8番 キャッチャー 広瀬
9番 ピッチャー 譲原
「試合前に俺から言うことは特にはない。普段通りやって、実力を発揮してこい。 …では、松浪」
「はい。さて、相手のデータだが…。繋ぎのバッティングを徹底してくる。4番の新垣でさえホームランは無い。その代わり1~8番まで抜け目がない打線だ。そしてエースの譲原(ゆずりはら)だが…」
「独特の高速シンカー…、いわゆる'マリンボール'の使い手の右のアンダースローの投手、だよね…」
譲原はその投球スタイルと茶髪ながらおさげにした髪型から'あおい2世'とも呼ばれている。
「ああ。マリンボール以外の球種をどれだけあれを打ち崩せるかにかかってるぜ。…よし、今日も勝つぞ!」
「「「おおお!!」」」
一方の恋恋高校側のベンチ…、
「いい? あなたたち。向こうのような中途半端な女性選手推進の野球部など、私たちの完璧な野球で叩き潰しなさい。認められるためには結果を出すしかないのよ」
「「「はい!」」」
そして監督の話の後、先発の譲原はベンチでグラブのヒモを結び直すある選手に声をかけた。
「優花。悪いわね。今日も私が先発で。まあ、1番背負ってるのは私だし、当然だけど?」
優花、と呼ばれたのは夢城優花。スタメンで呼ばれた夢城和花(のどか)の姉で、背番号11を背負う投手である。優花はその譲原の方をチラリと見やるが、また結び直しの作業に戻り、そのまま答えた。
「そうね。頑張りなさいよ。…まあ、監督に媚売って手にした1番がそんなに誇らしく思えるメンタルがあるなら大丈夫なんじゃない?」
「! なんですって…! 私をバカにしてるの!?」
「してないわよ? あくまでも私がそんな監督にへつらって出してもらうくらいなら自分のスタイルで確かな実力を磨きたいと思ってるだけだから」
「ふん。あんたに出番なんかないわ。私のマリンボールは誰にも打てないんだから」
「ずいぶんな自信ね」
「ええ。なにせ、'私の'最高の武器なんだから。あ、そろそろ整列ね。行くわよ」
「そうね」
促され優花も整列するためにベンチ前に出る。その中であることを思っていた。
「('私の'、ね。よくもまあ、人の真似事を自分のモノと言い切れるわね。そのメンタルだけは評価するわ)」
「? 姉さん。どうかしましたか?」
「いいえ、何でもないわ。和花」
「そうですか。…姉さん、いつでも行けるように準備の方をお願いしますね」
「あら、どうしてかしら?」
「大声では言えませんが…、譲原さんが打たれることは想像に難くありません。なので…」
「和花、あなたサラッと酷いこと言うのね」
「? あくまでも予測ですが、確率は高いかと」
「ふっ、そうね。あなたはそういう子だったわ」
「さあ、まもなくプレーボール! マウンドには恋恋高校のエース、譲原美咲! かつてのエース、早川あおいと同様にアンダースローからのマリンボールを武器とする技巧派右腕! その巧みな投球で聖森学園を翻弄できるのか!?」
1回表の先頭打者は風太。狙うのは初球。
「(マリンボールを決め球にされると厄介だ。早めに仕掛ける!)」
譲原の初球から振りにいく。
カキン!
「えっ!」
初球、風太はアウトローに入ってくるスライダーを難なく捉えた。打球はセンターへと抜ける。さらに続く姫華もインコースに入ってきたスライダーを捉える。
「ちょっと!?」
「(マリンボールが決め球なら、カウント稼ぎではスライダーだよねっ!)」
打球はライト前に転がり風太は三塁を狙う。ライトが前に来ているは知っているが自分の足なら行けると踏んで狙った。しかし、
「ボール、カットまで繋いで!」
「低く行くよ!」
「オッケー! 行くよ和花!」
ライトからセカンド、セカンドからサードへと無駄の無い中継プレーがつながった。
「アウトー!」
「マジかよ…!」
風太は三塁でアウト。走塁死ではあるがこればっかりは相手の連携を褒めるべきだろう。
「譲原さん。ワンアウトです」
「ええ、ありがと」
「お礼は新垣さんと有村さんに言ってください。それと同じ打たれ方は繰り返さないでください」
「え…、ちょっ…」
ボールを譲原に渡しに来た和花だったが言いたいことを言うとさっさと自分のポジションに帰っていった。
「(…好き勝手言われてるけど、あの娘の言うとおりね…。よし…!)」
続く松浪への初球。譲原はキャッチャー広瀬のサインに首を振る。そして次も首を振る。そしてまた次も。広瀬が慌ててサインを出し直し、それに譲原は頷いた。
「(出し惜しみなんて、できる相手じゃないよね!)」
譲原が投じたボールはかなりのスピードで松浪のインコースへ食い込む。そこからさらにスピードを落とすことなく沈んだ。
「ボール!」
「くっ、振らないか!」
「(振らなかったんじゃねえ。振っても当たる気はしねえ。これがマリンボールか…)」
続いてアウトローのストレートでストライクを取られ、スライダーをファールにしてカウントは1-2。
「っ!」シュッ!
アンダースロー特有の少し浮き上がる軌道。そこから沈むマリンボールと踏んで見逃す松浪だったが、
「ストライク! バッターアウト!」
「ストレートか…!」
続く竹原もマリンボールに空振りの三振に倒れ、初回は無得点に終わった。ストレートと独特の軌道を描くマリンボール。さらにアンダースローという類をあまり見ない投げ方は相当に苦しめられるかもしれない。
「うおおらああ!!」
対する杉浦も気合いが入っていた。エースである夏穂が先発回避、代わりを任された3年生として不甲斐ない投球をするわけにはいかない。
初球から2種類のカーブを使い分けてカウントを稼ぐ。しかし恋恋の1番打者は手強い。
「(相見ライラ。ナイジェリア人の父を持つハーフで高い身体能力を誇るらしい左打者。足の速さを生かすためにバットに当てる技術を磨いてて、特にカットは…)」
カッ!
「ファール!」
「こいつ、しぶてえなあ!」
カーブ、ツーシーム、大きなカーブ、カーブと全てカット。
「さあ、まだまだ粘るヨ!」
「先頭出したくないぞ! 根負けするなよ、スギ!」
「おうよ!」
8球目。松浪のサインに頷いた杉浦は相見のインコースに渾身のストレートを投げ込んだ。相見は振り遅れると予想しカットしにかかった。
「ストライク! バッターアウト!」
「しゃ!」
バットには当たらず三振。続く佐々木は相見に情報を聞く。
「どうだったの?」
「いヤ~、もっと荒いピッチャーかと思ったケド、あの成りでコントロール良さそーだネ」
「球種は?」
「カーブとツーシーム。あ、だけどカーブは2つあるヨ」
「ん、わかったわ」
しかし佐々木はカーブを見せられた後にストレートに詰まらされ打ち取られた。そして3番の夢城和もツーシームをショートゴロにしてしまいスリーアウト。杉浦も上々の立ち上がりを見せた。
ここからは投手戦。譲原は丁寧に低めにボールを集め、マリンボールを惜しみ無く投じていく。杉浦は小さなカーブ、ツーシームを見せ球に大きなカーブ、ストレートで打ち取っていく。
気づけば互いに5回まで0行進。しかし6回に聖森はチャンスを作る。先頭の露見が出塁するとすかさず風太が送り、1アウト2塁のチャンスを掴む。
カキン!
「くっ!」
「よしっ! 抜けたっ!」
姫華は真ん中低めのカーブをピッチャー返し。打球は二遊間を破りセンター前へ。
「! ストップ! 露見ちゃん、ストップ!」
「え? は、はい!」
三塁を回ってホームに向かおうとした露見を三塁コーチャーの村井が普段出さない大声で止めた。するとセンターの相見から素早く、正確な送球が返ってきており、それをファーストがカット。それを見て二塁を狙おうとした姫華も慌てて一塁へと戻った。
「…やっぱり、センターの相見さんの肩は恋恋の中でも群を抜いてるし、中継プレーも早い…」
「行ってたら刺されてましたね…。ナイス判断です、村井さん」
しかしこれで1アウト1、3塁のチャンスとなり、打席にはチャンスに強い松浪を迎える。
「そろそろスギに援護点やんねーとな…!」
「(ここで打たれてたまるもんか! 絶対抑える!)」
初球はカーブが外れボール。外に逃げるスライダーで空振りを取ると、続くマリンボールは見逃されボール。次のインローへのストレートには手が出ずストライク。
これで2-2の並行カウント。
「決める!」シュッ!
「! マリンボールかっ!」
ストレートが頭をよぎり、松浪は手を出してしまうが止まらない。それに気付いた松浪はとにかくボールに食らいついた。
カッ!「ファール!」
「ふー、助かった…」
「(まずいな…、美咲のマリンボールが初回ほどキレてない…。ここはこれで行きたいけど、納得するかな?)」
譲原とバッテリーを組んできた広瀬は譲原がマリンボールに強く拘ってるのを知っている。それだけにここでこのサインに納得してくれるか不安だった。
「(コクッ)」
「(…? あれ、頷いた?)」
驚くほどあっさりと譲原は頷いた。
「(私だって鈴奈(広瀬の名前)を信用してるんだから! そのサインに全力で応じる!)」
「(オーケー。全力で来なさい!)」
譲原は渾身の一球を投じた。そのコースは、早川あおいがマリンボールと同じくらい武器にしていた、サブマリンならではの必殺のボール。
「「(インハイへのストレート!!)」」
サブマリン特有の浮き上がる軌道で内角の真ん中から高めのゾーンへ食い込んでくるボール。
「っ!!」
しかし松浪も、プロから注目を浴びるほどの好打者。マリンボールがキレていないのを見たときからストレートを待っていた。だが見たことのない軌道にアジャストできない。
カキン!
打球はフラフラとレフトの定位置まで飛んだ。そして捕るのを見て露見がスタートを切った。レフトの土谷からショートの佐々木へと流れるように中継を繋ぐが間に合わずホームイン。遂に聖森が先制した。
「遂に先制した!」
「さすがトモ! やるねぇ!」
「あれ、打つんだ。参ったね…」
「美咲、ツーアウトだよ。ここで切ろう」
「オーケー!」
しかしマリンボールがやはり思うようにキレず、竹原には芯で捉えられる。打球は左中間に落ちる。相見が俊足を飛ばして抑えるがこれで2アウト1、3塁のピンチ。
ここで5番の恵。
「ここで打つよ~!」
「ふぅ…、まだまだ、これから…!」
初球、アウトローへのストレートでストライクを稼ぐ。もう一度ストレートを投じるがインローのボールは外れる。さらにアウトローのスライダーも見逃されボール。
「(美咲! 踏ん張って!)」
「(分かってる! こんなところで…!)」
自分はエースナンバーを背負っている。かつて早川あおいも背負った恋恋のエースナンバー。それに相応しくあるためにここで打たれるわけにはいかない。
「っ!」
譲原はインハイへとストレートを投じる。浮き上がる軌道のストレート。しかし恵は高めはストレート一本に絞っていた。
―――よくする話だ。
「なんでみんなはこの野球部に来たの?」
聖森学園の女子部員たちにとっては入部した後や、合宿の時などのよく上がる話題。
'自分の力を試したい'、'ここの設備が一番良い'…、色々あったが、
「甲子園に行きたい!」
と言った夏穂の他に甲子園を口にした部員がいた。
それが空川恵だった。その理由を聞いて誰もが少しポカンとして、それから'恵らしいや'と笑った。
その理由は…、恵の夢。――――
「甲子園で、大きなアーチを描いてみたいな~って、思ったんだ~」
カッキーーン!!!
「「やばっ!?」」
インハイへとノビるストレートにフルスイングで応じた。恵のフルスイングの原点、お手本はプロで活躍するある選手のもの。体全体の力を全てボールに伝える、豪快なフォロースルーを生むフルスイング。
そして風も味方する。甲子園球場特有のライトポール際でボールを運ぶ風。その風に乗った打球はポールの根っこギリギリに当たり、グラウンドに戻ってきた。
「ホームラン! ホームランです! 聖森学園の5番打者、空川の豪快なフルスイングで打ち返したボールは! なんとライトポールに当たるスリーランホームラン! …ん? な、なんと! 熱盛の手元の資料に寄りますと! 甲子園大会での女性選手のホームランは史上初ッ! 歴史的瞬間となるホームランでしたァ!」
実況の熱盛もますますヒートアップ。これで4-0と聖森学園が大きくリードした。
しかしまだ木菱監督は動かず。続く杉浦はフォアボール、満にはセンター前ヒットを浴び、初芝にまたしてもフォアボール。再び満塁のピンチを背負ってしまう。
「くっ…、てやっ!」
「! マリンボール!?」カキン!
しかし露見をマリンボールでショートゴロに打ち取り、追加点は許さなかった。
6回裏は杉浦が、7回表は譲原が苦しみながらも粘る。そして7回裏。先頭は夢城和花。チェンジ直後の打席へと向かう前に和花は譲原に声をかけていた。
「譲原さん」
「…な、なに?」
「譲原さんは聖森にもっと早く捕まってしまう…、私は試合前はそう思ってました」
「え、ちょ、あんたね…」
淡々と失礼なことを言ってのける和花にツッコミを入れようとした譲原だったが和花は続けた。
「ですが訂正します。あなたはそんな投手ではなかった。まさにエースナンバーを背負うに相応しいほど…。…謝罪の意味も込めて、この打席。必ず結果を出します」
「和花…」
「きっとお姉様も、同じ意見のはずです」
そして打席に立った和花。ストレートとツーシームで簡単に追い込まれたがカウント1-2から投じられた大きなカーブを狙い打つ。
キイイン!!
「マジかよ!?」
「あのカーブをわざわざ狙い打つとは大したもんだな!」
松浪が毒づくのも束の間、続く新垣、米倉にもヒットが飛び出し、米倉の当たりで一気に和花が生還。あっさりと1点を返された。
「チクショー、めちゃくちゃ打つじゃねえか!」
「これが恋恋の打線が長打が少ないのに恐れられる理由だな」
恋恋最大の特徴は'欲張らない打線'。決して長打は無理して狙うことはなく、確実にボールを捉える。特に中盤以降は相手の得意球をしっかり見極めて捉えていく。この打線の中でも和花、新垣についてはずば抜けたミート力を持つためこの両名は今の杉浦のカーブのような相手の決め球さえも捉えられる。そしてこれは相手にとって嫌な印象を与える。
「(3連打…、その内の2本はスギの大きいカーブを捉えて来た…。まさかあれを狙われてるのか…?)」
「(人の決め球ポンポン打ちやがって…! 自信なくすぜチクショーが!)」
カキン!
「なっ!」
松浪が大きいカーブを狙われてると感じ、代わりに出したツーシームを土屋が捉え、これで2点目。バッテリーはもはや何を狙われているのか分からなくなった。
さらに続く有村には粘られた末にフォアボールを出してしまった。
「行けるか? スギ」
「ああ…、まだ大丈夫だ」
慌ただしくなるブルペンを見て杉浦はふう、とため息をつく。
「情けねえぜ。まったくよ」
「…そう卑下すんな。お前も良いピッチャーだ。俺が保証する」
「…おう。リードは頼むぜ、相棒」
「任せな!」
尚もノーアウト満塁。差は2点。打席には有村。
「うおおお!!」
杉浦は気合いを入れ直し、ストレートを投じる。フォアボール後に際どいコース。有村は見逃したがストライクの判定。
「(うっそ! フォアボール怖くないの!?)」
さらに小さなカーブもコーナーに決めこれで2ストライク。
杉浦は女子部員の多いこの野球部で数少ないパワー型のプレースタイルに徹してきた。それこそがこのチームで輝く手段だと思って選んだ道だ。だが松浪は試合で杉浦のボールを受けるうちにある考えに至った。
「(スギは本来、技巧派タイプの投手かも知れねえ。前は強く投げようとしてコントロールがバラついてたけど、長いイニングを投げようと脱力して投げてる内に良い感覚を掴んだんだな)」
カーブとツーシームを内外に投げ分けられるようになったのはそれによる大きな成長だ。
「うおらっ!」
「くっ!」
ストレートを見せられた後に大きなカーブを投じて有村を三振に打ち取る。
ここで木菱監督が動いた。
これは少し前の出来事。反撃の気運が高まる恋恋側。木菱監督は打撃は不得手な譲原に代打を出すつもりでいた。
「宮崎。準備はできてるわね?」
「はい…。ですが監督。優花も…」
「夢城姉は使わないわ。次はあなたよ」
「監督。優花の実力はみんな知ってます。監督が優花を嫌ってることも知ってます! でも、それでも優花を…」
「あなたが行くつもりがないなら構わないわ。橋本。代わりに準備を…」
「私からもお願いします!」
木菱の前にそう言って出てきたのは譲原だった。
「監督…。本当は優花の方が実力は上なのに。それでも私を起用したのは、優花が監督に逆らったことを未だに引きずってるからですよね!」
「譲原…! 何を…!」
「あれは…、入部して半年立った頃でしたよね…」
――――2年前、恋恋高校に入学した1年で頭角を現していたのは2人の投手。譲原と夢城優花だ。譲原は右、優花は左。どちらもサイドハンドからのシンカー、スクリューを得意とする投手。
その年の秋。そんな2人に木菱が声をかけた。
「あなたたち2人をわざわざ呼んだのには理由があるわ。これを見なさい」
見せられたのは甲子園で躍動するおさげのサブマリン投手…、早川あおいだった。
「この早川が書き残した野球ノートにはね。後輩のためにと、早川の魔球、マリンボールの投げ方が記してあるわ」
「マリンボール…!」
「それで、私たちを呼んだ理由はなんです?」
対称的な反応を示す2人に木菱は提案をした。
「近年、女子選手が増える中、その先駈けである恋恋高校は遅れを取りつつあるの。それを打開するにはただ結果を残すだけではダメ。何か象徴が必要よ」
「象徴…?」
「そう。つまり、'あおい2世'。と言ったところかしら」
「あおい2世…!」
「監督、単刀直入にお願いします」
「あなたたちにはアンダースローに転向して、マリンボールを習得してもらうわ。もちろんそれが出来ればエースの座は確約してもいいわ」
「下らない。私はやりません」
「何ですって?」
「人の真似をしてまで掴もうとは思いません。私はとにかく腕を磨きたいんです。…失礼します」
そう言って優花は帰ってしまった。
「木菱監督。それをマスターすれば、私はエースに…?」
「ええ、約束するわ…」
その日から譲原はアンダースローに転向、1年の猛特訓の末、本家ほどでは無いものの、強力なマリンボールを手にした。
約束通りエースナンバーを手にした譲原。マリンボールを武器に甲子園まで勝ち上がったが…、どことなく心は晴れなかった。――――
「'あおい2世'。それになることを受け入れなかっただけで、優花の実力を認めながらも使わないなんて。そんなのおかしいです!」
「監督の指示に逆らったのは事実でしょう。あなたも逆らうなら…」
「監督、いいですか」
そこに渦中の優花がやってくる。
「宮崎、橋本。本当に私にマウンドを譲るつもり?」
「ええ。私はあなたの実力を知ってる」
「私もです。優花さんの方が良いに決まってます」
「あなたたち、勝手なことを…!」
「認められるには結果を出すしかない。監督、そう仰られましたよね?」
「…!」
「ならば結果を出して見せるわ」
「…好きになさい」
木菱は諦めて譲原に出す代打を告げに行く。
「恋恋高校選手の交代をお知らせします。バッター、譲原さんに代わりまして、石原さん。背番号13」
代打の切り札、石原が告げられる。勝負強い左打者でストレートに強いというデータがある厄介な打者だ。
そしてここで榊原監督も動いた。
「主審! ピッチャー交代!」
ブルペンへと伝令が走り、それを聞いた次の投手がマウンドへと駆けていく。
「くそー、1アウト満塁で降板とは情けねー」
「いや、十分投げてくれたぜ。あとは後ろに任せな」
「…ああ、任せるぜ。後はよろしくな!」
杉浦とハイタッチを交わし、マウンドに上がったのは…、
「聖森学園高校、選手の交代をお知らせします。ピッチャー杉浦くんに代わりまして、久米さん。背番号10」
どうも自分の傾向としてクズなキャラはとことんクズになるという風潮があるみたいです。流石にバカ過ぎることしてるときがあるので気を付けないと…。
今回のおまけは'あおい2世'の譲原です。またリクエストがあればできるだけ答えるようにしようと思うので感想のところにでも出して下さい!
○譲原美咲(ゆずりはらみさき) (3年) 右/右
恋恋高校のエース。夢城優花に対しては上から物を言うことがあるが、自分を貫き通すストイックな優花のことは尊敬している。
特技はUFOキャッチャー。余談だがあおいとは違って料理は得意らしい。
球速 スタ コン
128km/h C B
➡️ スライダー 2
↘️ カーブ 3
↙️ マリンボール 4
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
1 F F D C E F 投E
低め○ ノビ○ クイック○ 変化球中心
更新が遅くなるかもですが、次もまたお願いします!
この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)
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桜井夏穂
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松浪将知
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空川恵
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久米百合亜
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ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)