New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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いよいよ準決勝です!

p.s おかしかった部分を修正しました


41 キズナ、紡ぐ

「鳴響高校! 10年ぶりの甲子園でベスト4進出!」

「初出場ながら旋風起こす聖森学園! 」

これは人気野球雑誌'週刊パワスポ'の高校野球コーナーの見出しだ。

 

某スポーツニュースにて…、

「では今日の特集は高校野球! ワイバーンズで30年間投手を務めた山佐さんの解説です。お願いします!」

「はい。まず聖森学園。創部僅か4年目、今の3年生が2期生という驚きの躍進を果たした高校ですね。要となるのが主に3番を打つキャッチャーの松浪くん。広角に打ち分ける技術と勝負強さ、さらに4人のタイプの異なる投手を引っ張る強気のリード。どれをとっても超高校級の選手ですね」

「聖森は投手陣の良さも話題になってますね?」

「はい。2年生ながら150キロのストレートを投じる白石くん、技巧派サウスポーの久米さん、安定した投球が光る杉浦くん。そして、エースの桜井夏穂さん。特にこの桜井さんは素晴らしい! 打者の反応からして球速以上に見えるであろうストレート、高いレベルの変化球を操り、さらにコントロールも抜群。さらに彼女が投げればチームの雰囲気すら変えられる存在ですね」

「この4投手を監督の榊原監督が上手く継投させてますもんね」

「そして他の野手陣もレベルが高いです。俊足巧打の梅田くん、小技の得意な椿さん、長打力のある竹原くん、空川さん。加えて下位打線も様々なタイプの選手がいて、抜け目がありません」

「では対戦相手の鳴響高校。どう思われますか?」

「そうですね。鳴響高校ですが、吹奏楽で有名なのはご存じかと思います。野球部はここ数年は低迷していましたが今年は粒ぞろいの選手が揃ってますね」

「なるほど」

「はい。野手は攻守に優れたショートの大越くん、外野手の志藤さん。そして今、プロ野球から注目度急上昇中なのがセカンドの宇多くん。類い稀な打撃センスと内野をまとめるキャプテンシー、守備範囲の広さと確実性を兼ね備えた守備。かなりの選手ですね」

「ここまでもたくさんのファインプレーを産み出してますもんね!」

「そして投手、エースは技巧派左腕の伊能くん。緩急自在の投球がウリですね。テンポなども変えて相手打者を翻弄する技術に長けています。」

「では続いて、準決勝のもう1カード…」

 

* * * *

 

「さあ、休養日を挟んでいよいよ準決勝ッ! 今日も、 熱く! お送りして参ります! 熱盛ですっ!」

「おはようございますっ! 響乃こころです! まず本日の第一試合! 10年ぶりの出場からその時以来の決勝進出を狙う鳴響高校、そして対するは初出場初優勝を狙う聖森学園高校! さあ、まもなくスタメン発表です!」

 

先攻、鳴響高校

1番 センター 矢部岡

2番 ライト 志藤

3番 セカンド 宇多

4番 ショート 大越

5番 ファースト 箱崎

6番 レフト 星野

7番 ピッチャー 伊能

8番 サード 平井

9番 キャッチャー 浜崎

 

後攻、聖森学園高校

1番 ショート 梅田

2番 キャッチャー 松浪

3番 サード 桜井満

4番 ファースト 竹原

5番 ライト 空川

6番 ピッチャー 桜井夏

7番 レフト 久米

8番 センター 初芝

9番 セカンド 椿

 

鳴響高校のスタメンはここまでほぼ変化はない。一方の聖森はジグザグ打線を組みつつ、出塁率の高い松浪を2番に、レフトには軟投派に強さを見せる久米が抜擢された。

 

そして両チームが整列し、挨拶が終わる。そしてマウンドには夏穂が上がり、聖森側のスタンドのみならずあちらこちらから歓声が上がる。しかしそれを掻き消すかのように鳴響高校側のスタンドからは圧倒的な迫力の演奏が鳴り響く。コンクールでも度々入賞を果たす鳴響高校の名門吹奏楽部だ。その圧倒的かつ綺麗に揃った音色は聖森への声援に包まれたスタンドを飲み込んだ。

「すっごい応援…!」

「応援の力は侮れねーな…!」

「これじゃまるでアウェーだよ~」

 

そんな異様な雰囲気の中、プレーボールがかかる。

「せいっ!」

「やんすっ!?」

初球からインコースのストレート。ボールとなったが右打席の矢部岡は思わず体を引いてしまう。そして2球目もインコースにストレートを投げ込みこれでカウントは1-1。

「っ!」

3球目は外角へのチェンジアップ。矢部岡は完全に泳がされたスイングとなりボテボテのサードゴロ。俊足の矢部岡だったが満の素早い送球もあり、アウト。

「2番、ライト、志藤さん。背番号9」

ここで警戒する打者の一人、志藤玲美(しどうれみ)。左投げ左打ちの外野手。鳴響唯一の女子選手でもある。

「(こいつは走攻守に抜け目がない。いい選手だぜ…)」

「(そうだね。でも、負けないよ!)」

初球、インコースにボールゾーンから入る高速スライダーでカウントを取る。さらにインハイのストレート、ボール球だったが少なからずバッターの目に焼き付いたはず。3球目に投じたのはチェンジアップ。ブレーキの効いた外角低めへのボールにタイミングを外されかけた志藤だったが、上手く溜めを作って逆方向へと打ち返した。

カキーン!

「うわっ!?」

「今のに合わせるかよ!?」

続いて右打席に入った宇多には外を狙ったスライダーが甘く入った所を捉えられライト前へ。その間に志藤は三塁を陥れ1アウトランナー1、3塁のピンチとなる。

鳴響スタンドの応援の声がますます大きくなる。

「すっごい迫力…!」

「(少なからずこっちの集中力は削がれてるみてーだな…! ここから踏ん張れよ!)」

打席には4番の大越。スイッチヒッターだが長打力のある打者だ。ここでは左打席に入った。

「(外野フライ打たれると厄介だがここは中間守備でできれば0点で切り抜けたい!)」

聖森は中間守備のシフトを取る。そして夏穂が投じた初球は低めへのフルブルーム。

「っ!」

想定より低くワンバウンドしたが大越はスイングし、空振り。松浪が体を張ってボールを止めたが、さりげなく宇多はディレイドスチールを決めてきた。これで1アウト2、3塁。

「ちっ、走られちまったか」

「切り替えて守ろう!」

松浪は内野を前進、外野も定位置より前に守らせる。

「(長打だけは避けてえ。となると低めに…。いや、低めのストレートならオーバーを打つだけの力持ってるバッターだ。…となると)」

松浪のサインに夏穂は頷く。

「(相手の応援に惑わされちゃダメ…! 集中!)」

出されたのは再度低めへのフルブルーム。今度こそ要求通りのコース。しかし大越は意外な策に出た。

「えっ…、スクイズ!?」

「なっ!?」

いかに捉えるのが難しいフルブルームでもバントなら話は別だ。大越はしっかりと3塁側へ転がした。

「くっ、姉ちゃん! 任せろ!」

チャージをかけた満がボールを拾い上げすぐさま1塁へ送球。しかしその直後に松浪はあることに気付いた。

「! 大! バックホーム!」

「な、なにっ!?」

2塁から早めのスタートを切っていた宇多は迷わず3塁を蹴ってホームへと突入していた。竹原はバッターランナーと被るため少しグランドの内側に寄ってから慌ててホームへと返球した。際どいタイミングだったが宇多は松浪のタッチを掻い潜り2点目のホームを踏んだ。

「な、なんとー!? 先制は鳴響! 初回からツーランスクイズ! セカンドランナーの宇多が迷わずホームに突っ込んでいましたァ! いやー、素晴らしい走塁。熱盛こういうの大ッ好きですッ!」

 

「お見事な走塁です、先生!」

「うん、ありがとう。…ところで志藤さん、その'先生'っての止めてくれないかな?」

「いえっ! 先生は先生です! スランプになっていた私を救ってくださったアドバイスの恩は忘れることなどできません!」

「そ、そうか」

宇多としては気付いたことを言ってみただけなのだったのだが、ここまで敬われるとは思わなかった。

「と、とにかく。好投手の桜井から初回に2点取れたのは大きい。こっちは必死に食らいつくしかないからね」

「そうですね!」

「バントはなんとか出来たが、打つとなると難しいだろうしな」

 

「(バッターに集中し過ぎた…!)」

聖森メンバーはどこか浮き足立っている。夏穂は段々と頭が熱くなってきているのが分かっていた。だが…、

「(…いや。ここで熱くなってもなにもない! 腕はしっかり振って、最後までボールに意識を傾ける!)」

2アウトランナー無しとなって5番の箱崎を左打席に迎えるが、夏穂は気持ちをりっかり切り替えて勝負を挑んだ。

「えいっ!」

「おらああ!!」

箱崎はインローに来たストレートに豪快に空振り。スイングはかなり力強い。

「オッケー夏穂! 良いところ来てるぞ!」

2球目のストレート、インハイのボールだったが箱崎はバットに合わせる。

「(ストレートに合わせてきたな。ここでもう1回見せとくか…?)」

「(オッケー!)」

夏穂はサインに頷き、フルブルームを投じる。

「!? 何だよこれ!」

箱崎は驚きながらもなんとかバットに当て、ファール。

「! フルブルームにいきなり合わせた!?」

「良い目をしてんな!」

フルブルームを初見でスイングして当ててきたのはこの箱崎が初めてだ。

 

「さすが箱崎。あれを初見でバットに当てたか」

「うむ。さすがはボクシング経験者だな」

宇多と大越はベンチで感想を述べる。箱崎は父親の影響でボクシングのトレーニングを積んでいた。今でもノックで打球が来ないときはシャドーボクシングをしている。それで身につけた動体視力は力強いスイングと相まって箱崎を2年生ながらクリーンナップを支える強打者にした。しかしチェンジアップにはタイミングが合わず三振。

「さあ、守備しっかり行こう!」

宇多はナインに呼び掛け守備に向かう。鳴響の先発投手はエース、伊能。変化球主体の投球を得意とする左腕。そして聖森の先頭打者は風太。

カッキーン!!

「おっと!?」

「(緩急利かしてくる奴には初球攻撃!)」

初球は低めいっぱいの難しいコースのストレートだったが風太は積極的に打ちに行く。打球はレフト線ギリギリに落ち、一気に2塁を陥れる。

ここで迎えるのは今日2番に座る松浪。

「(取られた分は、取り返す!)」カキーン!

カーブでストライクを取られた後のSFFを捉えて右中間に弾き返す。あっという間に風太が帰り、タイムリーツーベースとなった。続く満はライトへとフライを打ち上げて松浪は進塁。竹原の内野ゴロの間に生還し同点とする。その後、恵が出塁するも夏穂はレフトライナーに倒れスリーアウト。

「(松浪を除けばプロレベルとも言える打者はいない。だけど右打ち、ゴロゴー、狙い球の絞り方…。そういった決まりごとを徹底して守ってるな、聖森は)」

ベンチへと戻る宇多はそう考えた。投手力に注目されがちな聖森学園だが、それは攻撃の卒の無さにも理由がある。ホームランを打ったり、怒濤の連打は少ない。その代わりに多いのは進塁打、犠飛といったケースバッティング。多くのケースバッティングの手札を持つことで相手にノーアウトでランナーを出したくないプレッシャーを与えている。

「(とは言えまだ試合は始まったばかりだ…! ここから…)」

と考えていた矢先。

「ストライク! バッターアウト! スリーアウトチェンジ!」

星野、伊能、平井の三人は三振、一ゴロ、三振と抑え込まれる。2回裏は久米がヒットで出塁するも無得点に終わり、伊能も流れを持っていかれぬように奮闘するが、夏穂はここから加速し始めた。

ズバッッ!!!

「ストライク!! バッターアウト!」

「さ、さっきより速くなってるでやんす!?」

浜崎、矢部岡を連続三振に切って取る。さらに先ほどヒットの志藤にはフルブルームでカウントを稼ぐと決め球にはアウトローいっぱいのストレート。

「! しまった…!」

球速差の少ないフルブルームとストレートに翻弄された志藤は見逃しの三振に倒れる。その裏の回、

カッキーーン!!

「まずい…」

若干甘く入ったサークルチェンジを松浪は逃さなかった。真芯で捉えられた打球は軽々とレフトスタンドを越えていった。

「入りました! ホームランッ! 女房役の松浪がエース桜井の好投に応える特大の勝ち越しアーチ! 豪快な一発でしたァ!」

これには実況の熱盛もヒートアップ。しかしその後は続かず1点止まり。

反撃に出たい鳴響だったが…、

「ストライク! バッターアウト!」

「チクショーがっ!!」

4回表は宇多、大越、箱崎とクリーンナップが三者連続三振に倒れる。続く5回も星野がセカンドゴロの後に伊能、平井は連続三振。一方の伊能も松浪のホームラン以降は粘りを見せ、5回を乗り切った。

 

ここまで5回打者17人に対して三振を11個。アウト15個の内の11個なので凄まじいペースだ。だが松浪は一芸大付属戦のこともあるため、夏穂を心配していた。

「夏穂、無理してないよな?」

「ん? うん、大丈夫。今日はあと10イニングは投げれるね!」

「そうか。ま、本当に無理してる様子はねーし、いけそうだな」

「夏穂、絶好調だねっ!」

「エヘヘ、姫華は打球来なくて暇そうだもんね」

「なっ! そんなことないやいっ!」

 

その後も夏穂は快投を続ける。6回も浜崎、矢部岡から三振。志藤はセンターライナーに打ち取った。6回裏、再び松浪からの打順。

カキーン!

「このバッテリーに好き放題されてるな、これ!」

宇多が嘆く通り、松浪は今日このライト前ヒットで猛打賞。雲行きの怪しくなりつつあるが、鳴響にも意地がある。

続く竹原の痛烈な一二塁間の当たりを宇多は飛び付いて捕った。

「清亮!」

膝をついた体勢のまま、カバーに入った大越に転送。さらに大越が一塁へ転送しゲッツー成立。さらに、

「とりゃ~!!」カキーーン!!

空川の引っ張りこんだ右中間の打球、抜けるかと思われたがライト志藤が俊足を飛ばし、ジャンプしてボールを掴んだ。なんとか耐え抜いた形だが流れは取り返せたとは言えない。

 

鳴響側のアルプススタンド。徐々に追い詰められる鳴響野球部を心配する吹奏楽部のメンバーがいた。その顧問であるのが神成拓斗。元野球部のOBで前回甲子園出場時のメンバーである。ちなみに天空中央の神成とは従兄弟の関係だ。

「先生…、野球部のみんな大丈夫ですかね?」

「そうですよ。このままじゃ…」

不安がる部員たちに向け、指揮棒を握る神成は声をかけた。

「俺たちにできるのは、信じてやること。そして…、全力でその思いを演奏として奏でることだ。…次の回の演奏でアレをやるぞ」

「! 分かりました!」

吹奏楽部部員たちは楽譜のページをめくり始める。神成も指揮棒を上げ、指示を出す。

「やるぞ。'鳴響のキズナ'! 俺たちの思いを、今戦っているあいつらに届けるんだ!」

「「「「はいっ!」」」」

'鳴響のキズナ'。鳴響高校吹奏楽部が野球部の試合で度々披露してきたオリジナルの楽曲。名門の吹奏楽部が奏でるそれは高校野球ファンの間で話題となっていた。

 

鳴響高校野球部と共に戦う吹奏楽部の思いが勝利を呼ぶといわれる、勝利への希望となる曲。そして対戦相手からはこう呼ばれていた。

 

――'魔曲'と。




鳴響サクセスってなんか王道な感じがしてアプリのサクセスの中でもかなり好きな方です。ちゃんと野球してるし。あとメンツが良い人ばっかりだし(伊能、大越、志藤、音吹、神成先生)。箱崎は大越とコンボある所属無しイベキャラなので助っ人になってもらいました。
今回のおまけは鳴響高校キャプテン、宇多です。

○宇多響(うた ひびき) (3年) 右/右
鳴響高校野球部のキャプテン。10年前に甲子園に出場した鳴響高校に憧れ入部したが、すっかり寂れてしまった野球部に失望しつつも、矢部岡、志藤、音吹と共に吹奏楽部顧問の神成の協力を得て野球部を立て直した。
伊能や大越、志藤、マネージャーの音吹などの吹奏楽部と兼部している面々から慕われているなど非常に人望のある男。
部室で伊能や音吹と様々な楽器(宇多は簡単な楽器)でセッションすることが密かな楽しみ。
選手としては盗塁はあまりしないが隙を見つければすかさず走る。ベースランニングの速さは一級品。

 弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
 3 B C A C B S  二B 遊C 外D
チャンス○ 対左投手○ アベレージヒッター 走塁◎ 内野安打○ 守備職人 積極走塁 慎重盗塁   

次回もよろしくお願いします!

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)
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