New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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めちゃくちゃ遅くなりました。そしておそらく50話(甲子園決勝完結)の話はTwitterとかで報告忘れてたので未読の方はそちらからどうぞ!

では今回は最後の夏の戦いを終えた夏穂たちの"その後"のお話です。


夏穂と終わりの後の物語
51 ゴールの向こう側


聖森学園の初出場初優勝で幕を閉じた夏の甲子園からはや1ヶ月ほど。3年生は野球部を引退し、それぞれ次のステージに向け歩み始めていた。

 

松浪はトレーニングのために野球部のグラウンドにやって来ていた。

「おう、頑張ってるな。調子はどうだ? 満」

「あ、松浪さん。今日は取材とかいいんですか?」

「ああ、久々に混ぜてもらうぜ。キャプテン!」

新たに始動したチームのキャプテンに指名されたのは満だった。これは松浪のみでなく、監督、他の3年生、そして百合亜や白石ら2年生からも支持された。松浪曰く、「投手、野手の苦楽を知っててかつ、周りを引っ張れるとすればコイツしかいない」とのこと。

 

「秋大会も間もなく始まるし、先輩たちに恥じないようなチームにします!」

「お、さすが私の弟! 期待してるよ!」

「あ、ねーちゃん! 来たのか!」

松浪と満の元に現れたのは夏穂。夏穂も今後の進路を見据え、トレーニングを積んでいた。

「私も練習参加しようと思って」

「あ、夏穂さん。いらしてたんですね」

やって来た夏穂に続き、百合亜もやってきた。

「百合亜。投手陣はどう?」

「エースナンバーは白石に譲りましたが…、まだ負けたつもりはありません、そして試合になれば皆で0に抑えます!」

「おおー、頼もしいねー!」

「そうだ、ねーちゃん。1回戦の相手結構速球派らしくて、出来れば実践打撃投げて欲しいんだけど…」

「ちょうどいいや! 私もバッター相手に投げたかったんだ! トモ! 久々に組んで実践やろう!」

 

全国制覇を成し遂げ、その決勝戦でサヨナラホームランを放った松浪はそれまでの実績もあって一躍その年のドラフト1位候補となった。何より一番の騒ぎとなったのは大会終了後、人気球団のタイタンズが次のスター候補として松浪の1位指名を名言したのだ。長きにわたり正捕手であった阿藤に代わる捕手が中々現れずポスト阿藤となりえる逸材として指名するとのことだった。

今年は高校生が豊作であると言われており、甲子園を騒がせた選手から県大会で散った隠れた名選手まで指名されると予想されている。

 

その一方で、夏穂には指名するかもしれない、という球団はいくつかあったが、明確に指名する意思を示した球団は無かった。甲子園での活躍はあったがやはりネックとなったのは女性選手という点。早川あおいフィーバー以降、毎年数名の選手が指名されたが頭角を表せたのは幕浜マリナーズの早川、浜須賀ブルースターズの六道、東北仙城イーグルスの橘、といった数名に限られる。入ったときの注目度は高くなりがち、しかし鳴り物入りで入れば期待外れだった時の失望が大きいため、どこの球団も指名を控えやすかった。

夏穂はプロ志望届けの提出を考えていたが、監督の榊原やコーチの花崎からは他の進路も勧められていた。

 

所と時は変わって別の日の授業終わりの教室、恵と姫華、夏穂が話をしていた。

「姫華、リハビリは順調そうだね」

「うん、まーねっ! 松葉杖もすぐ取れたし、もう来週には体育には出れるって!」

「野球はもう辞めるの?」

「まー、高校までって、決めてたしね。進路も考えたし」

「ファッション系の専門学校だっけ?」

「そうっ! そのための受験勉強もしてるし!」

「私も~、勉強してるよ~」

「恵は栄養士目指すんだっけ?」

「そう~、いつかは料理を仕事にするんだ~」

野球部を引退した3年生はそれぞれ受験勉強を始めている。風太と竹原、初芝、そして杉浦は近い内に大学の野球部や独立リーグのセレクションを受けるという話だった。他のメンバーは今は受験勉強、就職活動にそれぞれ励んでいる。

「(そっか、私だけか…。ハッキリと行き先が決まってないのは…)」

夏穂の本音としては更なる高み、プロ野球へと行きたい。しかし指名される保証は無い。一方でいくつかの大学の野球部から推薦が来てるという話も榊原からあった。

「(私は、どうすればいいんだろう?)」

 

* * * * *

 

悩める夏穂のスマホにメッセージが届いた。送り主は聖ジャスミンの太刀川、甲子園直前で会って以降は直接の面会は無かったがこういった連絡アプリでのやり取りはちょくちょく行っていた。

『やっほー。進路は決まりそう?』

太刀川は夏穂の良き相談相手の一人だ。以前からよく会って話しはしたりしていたが、互いに全力で甲子園を懸けて投げ合い、互いに健闘を讃え合って今では腹を割って話せるほどの親友となっている。一昔前のヤンキー物の漫画でいう、拳で語り合って結果的に理解し合うみたいなものだろうか、と夏穂は感じている。

「まだ決まらない、迷ってるところだよ、…と」

夏穂は返信のメッセージを送る。するとすぐさま返事が来た。

『今、時間大丈夫?』

「え、うん。構わないけど…、っと」

そう返すや否や、スマホに着信が入った。電話で相手は太刀川だった。

「もしもし? まさか電話かけてくるとは思わなかったよ」

『うん…、まあメッセージより自分の言葉の方が伝えやすいかなって。進路、迷ってるんだって?』

「まあね。正直なところ、私は行けるところまで行きたい。なんならプロに行ける可能性があるなら…、目標にしてきたあおいさんに近づけるなら、そうしたいと思ってる。…けど今時、色んな事がネットニュースでも伝わってきてさ。甲子園優勝して、プロからも注目はされてるみたいだけど…」

『私も、もしかしたらその手のコラム読んだかも』

「女性選手は成功例が少ない。あおいさん以降、毎年どこかしらが指名して年に1人か2人はプロ入りしてる。けどこの6年間で大成したと言えるのは現状ではマリナーズのあおいさん、キャットハンズの橘みずきさんとブルースターズの六道さんぐらい。あとは数年の内に退団してる選手がほとんど…。厳しい世界だって、監督からもそう言われたよ。野球を続けるなら大学からも声がかかってるし、独立リーグからも話があるらしいし、野球以外の選択肢だってある、そうも言われたよ」

『…確かに厳しいかもしれないね。でも夏穂はどうしたいか、さっき自分で言ってたじゃないか』

「え?」

『夏穂の中では行けるところまで行きたい、始めにそう言ってたよ。なら答えは出てる、悩むまでもないよ!』

「それは…」

『夏穂にはそれを出来る力もある。無責任かもしれないけど、私の知ってる桜井夏穂なら、甲子園大会の前に言ってた夢、叶えられるよ!』

「夢…」

―――私の夢は…、いつか本当に性別関係なく、野球が賑わうこと。私みたいな思いをする女の子がいなくなって欲しい。――

「…そう言えば、言ってたね。確かに夢を叶える近道の1つかもしれないね! …私、決めたよ。志望届け、出してみる! 選ばれなかったら…それはその時考える!」

『夏穂ならそうこなくっちゃ! …あ、プロ目指すなら、サイン第1号は私がもらっていい?』

「えーどうしよっかなー?」

『ひっどーい! 背中押したのは私なのに!』

「あはは、考えとくよ。まずはなれるかも分からないから、志望届け出すだけだから」

 

* * * * *

 

その後、夏穂はプロ志望届けを提出。地元の新聞やローカルニュースなどで少し取り上げられ、スポーツ新聞の端の方に小さく書かれた程度のニュースだったがこの記事を読んで喜んでいたのが何人かいた。

「甲子園優勝の女性投手、プロ志望届け提出! か。これは楽しみだね」

そう言って新聞を読んでいたのは早川あおい。現在マリナーズの勝利の方程式"幕浜の防波堤"の一角を担う中継ぎ投手だ。プロ野球史上初の女性選手であり、彼女とそのチームメイトの活躍によって現在の高校野球、ひいては夏穂たち後続の女性選手の参加につながっている。ちなみに今シーズンで6年目を迎え、成績も今シーズンはキャリアハイを超えそうなペースの成績を記録している。

「早川、そろそろアップ始めるぞ。…ん? その記事、例の優勝投手か」

「あ、船越さん。そうです、ボクも県大会で話題になってたときから注目はしてたんですけどね。…まあ、母校は負けちゃいましたけど」

「ああ、恋恋にも勝ってたな。…それで、どんな気持ちだ?」

「え?」

「お前の勇気ある行動が、高校野球界を変えた。そしてお前の、早川あおいの後を追って何人も甲子園、プロ野球を目指している。お前がずっと願ってきたことだろう?」

「…そうですね、少しずつ理想に近づきつつあります。でもまだまだ壁はあります。現に、プロの壁にぶつかった選手もたくさんいますし…。とはいえ、勝負の世界、厳しいものなのはみんな同じで、まずは同じ土俵に立ててることは進歩だと思いますよ。それと…」

あおいは立ち上がって荷物を持つ。

「ボクはまだまだ先駆者でいないと、ボクのこと応援してくれるファンのためにも…! 行きましょう、船越さん!」

「おう、まだまだ優勝争いしてるんだ。気合い入れて行こーぜ!」

 

* * * * *

 

「お、そろそろ始まるね」

「さて、新チームはどんなもんかなっと」

場所は県営の野球場。夏穂や松浪、加えて恵や姫華などのOB、OGたちは休日を利用して秋季大会の応援にやって来ていた。

「監督も面白いオーダー組んでるな」

「1年生もちらほらいるもんねっ!」

 

聖森学園高校、スターティングメンバー

1番 ショート 冷泉

2番 ファースト 久米

3番 ピッチャー 白石

4番 サード 桜井

5番 レフト 大森

6番 センター 露見

7番 セカンド 田村

8番 ライト 内海

9番 キャッチャー 雪瀬

 

再びショートに戻った冷泉が1番、そして甲子園経験組で2~4番を構成している。そして大森は元々サードだが満の定着と打撃面の成長によりレフトへとコンバートされている。そして内海は1年生ながら背番号9を背負う。

「内海…、確か内海由羅(うつみゆら)だっけ? 自己紹介で面白いこと言ってたやつか。確か…、『希望ポジションはピッチャー! 中学まで外野手でしたけど、バッティング苦手なんで高校から投手やりたいと思います!』って言ってたな」

「その時こだわりの強い百合亜ちゃんが一瞬ムッって顔してたよね~」

「その後入部してから私たちの引退までずっと基礎練習ばっかりしてたよね。よく秋でスタメン取れたなぁ…」

 

試合が始まるとスタンドがにわかにざわつき始める。

マウンドに上がったのは夏の甲子園で少ない出番ながら150キロをマークするなどインパクトを残した白石。おそらく偵察であろう他校の生徒もカメラを構えていた。

「…この番号を背負うからには、無様な姿は見せられない!」

今日の対戦相手、山ノ宮高校は中堅校だがこの白石のストレートには手も足も出なかった。ストレート主体の投球の前に3者連続三振を奪う白石。一方の山ノ宮の先発、真鍋も140キロ台のストレートを武器とする速球派。負けじと経験豊富な聖森の上位打線を抑え込んだ。

しかし白石の圧倒的な投球に気圧され始めた山ノ宮。4回、ここまでパーフェクトの真鍋から冷泉がヒット、さらに久米がエンドランを決めチャンス到来。さらに白石がストレートを左中間に弾き返し先制に成功、0死2,3塁で打席に満を迎えた。

「良いところで満に回ってきた!」

「高校でやってた練習試合でも感じたけど、4番でキャプテンになってから自覚が芽生えたんだろうな。夏の時よりどっしり構えてる雰囲気があるぜ」

松浪のその言葉通り、満は夏までは相手投手に気圧されることが多々あったが、キャプテンと4番というチームの柱となる位置任され、良い意味で自信を付けた。そしてそれは精神面の成長、期待に応えるべく技術面でも練習を積んで大きく成長した。

カッキーーン!!!

「よっしゃ!」

「これは行ったねっ!」

「すごーい! あっさりビックイニングだ~!」

不用意に外角に取りに来たストレートをしっかりと芯で捉えた上で逆らわずにレフト方向へと流し打ってホームランとした。この成長に驚きと感動を隠せないのが姉である夏穂だった。

「ホントに…、立派になっちゃって…」

「お前はオカンかよ」

「姉だよ!」

「わかってるよ!」

この後もコツコツと点を重ね、6回裏終了時点で9-0と大量リードを奪った聖森。6回の表には背番号10を背負った美田村が登板、パームとスローカーブを駆使した緩急自在の投球で白石の速球を見ていた山ノ宮打線を翻弄。そして7回のマウンドには…、

「ピッチャーの美田村君に代わりまして川井くんが入り、ライト。ライトの内海さんがピッチャーに入ります。」

「え、由羅がピッチャー!?」

「ブルペンで投げてるとこも見たことないな。ってことは投げ始めたのはつい最近…」

この内海という選手、入部して4ヶ月は基礎練習を徹底して行い、3年引退後にようやく投げ込みやバッティング、走塁練習などを始めたのだが、監督である榊原をも驚かすレベルのセンスを見せつけたのだ。良くも悪くも独創的なプレーを次々繰り出す。そのセンスは久米や冷泉に匹敵するだろうと榊原は感じ取ったのだ。

「ふふふ、まさかこんな早くデビューする日が来るとは! さあ、いきますよ!」

その内海の投球スタイルとは…、

ズバッ!!

「ストライク!」

「!! アンダースロー!?」

「しかも体が軟らかいのか、かなり沈みこんで投げてるな。球速は120キロも出てないだろうけど、あの軌道じゃかなり打ちにくいだろうな」

内海はカットボール、高速シンカーを武器に打たせて取ってあっさりと、1回シャットアウト。

「いえいっ!! これが私、内海由羅の実力ですよ!」

「…はしゃぎ過ぎ。あともうちょっと落ち着いて投げなさい」

「痛っ!? ちょ、百合亜さん! 無言で連続チョップするのはやめてほしくてそれに顔が、というか目が怖い! せっかくのかわいいお顔が台無しですよ、って痛たたたっ!!??」

「百合亜は今日投げられなくてストレス溜まってるんだよね?」

「ちょっと環! 余計なこと言わないの!」

「わー!? ケンカしちゃダメだよー!?」

 

「あはは、意外と百合亜って負けず嫌いだからね…」

「感情が表に出やすくなるぐらいアイツらには心許してるってことだな」

「さてっ! 後輩たちに活躍を讃えに行こうかっ!」

「行こう行こ~う!」

 

その後も新生・聖森学園は快進撃を続けるのだがそれはまた別のどこかで語られるのかもしれない…

 

 

* * * * *

 

そして月日は流れて10月中旬…、

ある日のスポーツニュースには特集が組まれていた。

『ドラフト会議直前大予想!! 注目のあの選手はどのチームに!?』

そこではプロのOBであるキャスター達が各々の予想を並べていた。

「なんといっても今年は高校生が豊作ですね! 投手では天空中央高校の虹谷、覇堂高校の木場、そして野手ではこちらも空中央高校の天羽、瞬英高校の才賀、そして既にタイタンズが1位指名を明言している聖森学園の松浪! これらの選手がドラフト1位を占めるかもしれません! 大学生では特に投手が…」

当事者である夏穂は自分の名前が注目選手として出ないことに、分かってはいたが少しガッカリしつつ、各チームの現有戦力からのドラフト展望を流し見ていたのだが…、

「そしてもうひとつ注目なのが、期限ギリギリでプロ志望届を提出した女性選手、十六夜瑠奈選手ですね」

「! 十六夜、瑠奈?」

夏穂は初耳だったのだが、番組の司会のアナウンサーが話を進めていった。

「この十六夜瑠奈選手、異色の経歴を持っているんですね。中学ではソフトボールで日本一に、高校では甲子園出場は叶いませんでしたが、その後に独立リーグ、アマゾネスに入団するとその実力とルックスもあって一躍人気選手になりますが2年目終了時に退団、その後1年間はチームに属すことなく活動を続け、今年はなんとNPB入りを目指すとのこと。この人からも目が離せませんね!」

「なるほど…、色んな人がいるんだねぇ…」

とにかく今は他人のことを考えている場合ではない。明日、自分の運命が決まるのだ。…とは言ってもできるのは待つことだけなのだが…、

「寝よっか、明日はきっとバタバタするだろうし」

そうして夏穂はベッドに入るのだった。

 

そして翌日、授業も終わった木曜日の放課後。

普段ならグラウンドで練習してる野球部員たちも今日は部室に集まっていた。

「この机、どこに置きますか?」

「それはもうちょい壁に寄せてくれ。そんな広い部室じゃないし、あとテレビはもっと見やすいところに…」

部室はバタバタと慌ただしかった。指揮しているのは満と百合亜。

「松浪さんはドラフト1位は確実。だから体育館で記者さんをたくさん入れてるんだって。そっちには監督と部長の芦原先生、校長先生が松浪さんと一緒に並んで座るんだって。で、この部室で…」

「姉ちゃんのためのスペース作ったわけだ。幸いテレビはあるし、パワテレのネット放送をテレビで映せるように白石が準備してくれた」

「さすが白石、この手の知識に強いのは助かるわね」

「ねえ、環? いつまで目隠しすればいいの?」

「大丈夫です。私の手を離さずに付いてきてもらえれば…、はい、着きましたよ!」

「もう、一体何のつもり…、って部室!? しかもこれは…!」

露見に目隠し付きで連れてこられた夏穂は飾られた部室、そして待ち構えていた元チームメートたちを見て驚いた。

「夏穂のために、現役のみんなが準備してくれたんだってっ!」

「私たちは呼ばれただけだよ~」

「トモの方にも行ってやりたかったんだけどよ、あっちはあっちで大変そうだしな」

「だからまずは夏穂、お前の指名を待とう…、ということになった訳だ」

風太と大も松浪の元へ行きたかったのだが、取材が忙しそうとのことだった。

「監督と部長さんは松浪くんの方に行ってしまってるから、私があなたの指名を見届けるわ」

「花崎コーチ…、みんな、選ばれるかも分からない私のために…」

「夏穂さん、大丈夫ですよ。きっと夏穂さんなら選ばれますよ。根拠は無いですけど」

「百合亜が根拠なく何か言うの、珍しいね。でも、なんだか少し気が楽になったかな。まあ、待つだけだしね」

「そうですね、呼ばれるときは呼ばれますし、そうじゃないときはそうなります」

「うわー、きびしー」

 

ガヤガヤとした感じのままいよいよドラフト会議が始まる17時を迎えた。部室も少し静まり返る。

 

そして迎えた、ドラフト1位発表のとき。

『第一巡選択希望選手、阪戸バッファローズ、木場嵐士、投手、覇堂高校』

「バッファローズは木場さんか…」

「いつも社会人とか大卒投手指名が多かったんだけどな」

百合亜と満がそれぞれ感想を口にする。

『第一巡選択希望選手、シャイニングスワローズ、雲海和也、投手、星英スポーツ』

「あんまり聞いたこと無い選手だな」

「社会人の選手ね、即戦力ってことかしら」

『第一巡選択希望選手、幕浜マリナーズ、十六夜瑠奈、投手、アマゾネス』

「(!! 十六夜瑠奈! まさかドラフト1位とは…!)」

これには流石に夏穂も驚きを隠せない。それだけ評価が高かったのは驚きだった。その後、中部ワイバーンズは虹谷を、東北仙城イーグルスも虹谷、夢ヶ咲タイガースは大学生の内野手、中窪を指名。そして続く北海ノーザンフォックスが指名したのは…、

「第一巡選択希望選手、北海ノーザンフォックス、東出太陽、内野手、聖ジャスミン高校」

「!!」

「これは…」

「サプライズ指名…ね。粟山(あわやま)監督の好きそうなことだわ」

粟山監督とは北海ノーザンフォックスの監督、現役時代はお世辞にも結果を出したとは言えなかったがコーチ就任後から着々と結果を残し監督に就任、様々な名選手を育て上げ、また前例の無いような起用なども積極的に行う個性派の監督である。

その後に浜須賀ブルースターズは木場を指名。迎えたキャットハンズの指名は…、

『第一巡選択希望選手、キャットハンズ、松浪将知、捕手、聖森学園高校』

「ま、松浪さん呼ばれたぞ!」

「遂にアイツやりやがったな!」

「出来れば同じ場所に居合わせたかったが…」

松浪の指名に盛り上がる部員たち、夏穂も少しホッとしていた。そして頑張パワフルズは木場、猪狩カイザースは虹谷を、タイタンズは宣言通りに松浪を指名。そしてこの時点で雲海、十六夜、東出、中窪の交渉権が決定。抽選の結果、虹谷はワイバーンズに、木場はバッファローズ、そして松浪はタイタンズに決まった。その後もいわゆる"外れ1位"が次々呼ばれるも夏穂の名前は呼ばれず、通常の地上波放送はここで終了した。

「このあたりは流石パワテレといったところね」

「毎日どこかしらの試合を試合終了まで生放送してるぐらいだからな」

そして2位指名が始まった。今シーズン下位だったチームからウェーバー方式で指名されていく。

「(雑誌とかの情報だと私は呼ばれるのが微妙なライン、まだここでは…)」

『第二巡選択希望選手、夢ヶ咲タイガース、桜井夏穂、投手、聖森学園高校』

「…え?」

「い、今…」

「夏穂の名前が…」

「呼ばれた…っ!?」

あまりに突然の出来事で、理解が追い付かない者が何人かいたが、それでもみんなの感情は爆発した。

「「「「夏穂(さん)もプロ入りだーーーー!!!」」」」

どこからとなくクラッカーを持ち出した者、とにかくバンザイをする者、とりあえず近くの誰かと握手したりする者、色々いたがただ一人、夏穂だけはまだ今一つ状況を飲み込めてなかった。

「え? わ、私? 私が、2位指名?」

「凄いよ夏穂っ! 呼ばれちゃったじゃんこんなに早くっ!」

「さ~、みんなで胴上げだ~!!」

「め、恵さん!? それは多分後でやるやつ…」

 

 

この後のことは夏穂はよく覚えていない。胴上げされたり、今までに無いくらい記者に囲まれたり、写真を取られたりインタビューされたり…、

だが間違いないのはこの日、夏穂の歩む道にプロの世界という新たな戦うべき舞台が出来たということだった。




ここまで書いてて驚きました。終わりませんでした。実は後少しだけ続くんです。できるなら綺麗にまとめたいですからね…、せっかく50話以上やってきたので。

という訳で次回に続きます。まさかのアフターストーリー2話目突入です。出来るだけ早く上げたいですが、年内を目処に頑張ります!
今回のおまけはアフターストーリーにして新登場の後輩キャラ、内海です。

◯内海由羅(うつみゆら) (1年) 左/左
聖森学園期待のルーキー。入部時の自己紹介で高校からやったことの無いピッチャーを始めることを宣言したある意味大物。非常に柔軟な体と持ち前のセンスで短期間でメキメキと上達。遂には秋でレギュラーの座に付き、アンダースローのリリーフピッチャーも務める。怖いもの知らずでお調子者、そして独創的なプレーを連発するので味方も彼女のプレーには驚かせれ続けている。百合亜に懐いているがよく怒られている。
球速    スタ コン 
120km/h  E  E
⬅️カットボール 3
↘️高速シンカー 3
弾 ミ パ 走 肩 守 捕  守備位置
2 F E D E C C 投C 一C 外C
ケガしにくさ◎ ピンチ◯ 打たれ強さ◯ クイック△ 逃げ球 球持ち◯ シュート回転 チャンス◯ 三振 ローボールヒッター 強振多様 速球中心

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)
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