New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~ 作:Samical
「朝日監督! 即戦力を狙ったドラフトにする、と言っておいてこの指名で良かったんですか? とてもそうは見えないんですが…」
ここは夢ヶ咲タイガースの本拠地内の監督室。球団職員と首脳陣、そしてスカウトが集まってドラフト会議の結果について話し合っていた。
「俺としては納得できるドラフトをしたつもりですが、何か気に入らない点がおありで?」
「そりゃ文句があるという訳ではないけどねぇ…」
朝日は何か言いたげなスタッフ…、というよりタイガースの持ち会社の幹部の見るからに苦言を呈したがっている顔見てやれやれと内心息をついた。
「(幹部どもはアイツを獲れコイツを指名しろとうるさく言うくせに、こっちの要望には対して金を出してくれない。だから今回は現場の独断で指名していったんだが…)」
「朝日監督、まず1位についてだね。なぜ松浪や虹谷などの高校生に行かなかったんだい? 彼らなら即戦力になりえるはずだし、話題性もあると思うんだが」
「お言葉ですが…、高卒の投手がいきなりローテーションを守れるか、さらにたった一人しか出られないキャッチャーをいきなり任せられるか、となると今年の目玉の彼らでも簡単ではないでしょう。高校生とプロには明確に高い壁があります」
「それにしても大学生の内野手と言うのは…」
「中窪こそ即戦力の内野手だと俺は思いますがね。海東学院大学に一般生として入部して2軍から這い上がり、3年の秋、4年の春の2シーズンで首位打者、最多打点、ベストナイン、MVPを獲得し、さらに全国大会でも打率8割をマークして日本一に貢献…。豊作と言われる高校生の影に隠れてはいますが、彼はここ数年と比較してもナンバーワンの大学生だと思いますが」
毅然とした態度で理由を並べた朝日の剣幕に気圧された球団幹部は多少納得は行ってないようだが次の話題に移った。
「…分かったよ。では、次は2名。2位の桜井と5位の志藤、この女性選手二人の指名はどういうつもりだ。ウチは女性選手など受け持ったことは…」
「前例が無いなら作ればいいでしょう。そんな後手後手だからトラックマン(数値計測システム)の導入も他球団より遅れたんですよ。まあ、確かに寮の設備の改装などはお願いすることになりますが…」
「まー、その辺りは注目されてる以上、蔑ろにできんが…、だが本当に大丈夫かね? 女性選手は…」
「俺は女性選手だから指名したのではありません。桜井という投手と、志藤という外野手を指名したんです」
「それに、高卒は即戦力は難しいとさっき君は言ったじゃないか」
「この二人を含めた今年のドラフト、チームのニーズに合わせて決めたものです。俺は必要と感じたまでです」
「…やれやれ。君は監督に就任したときはもっと素直な男だと思ってたんだが…。まあいい、結果を出して見せると君は就任時から言ってきていたね。来年が3年目だ。そろそろその結果とやら、出してもらいたいねえ。では、私はこれで」
そう言うと幹部は監督室を後にした。幹部が出ていった後、朝日は深いため息をついた。
「結果、ねえ。10年も5、6位が定位置だったチームを2年でAクラスを争えるチームにまでしたってのに、随分酷い言われようだな」
朝日の愚痴にヘッドコーチである岩辺が応える。
「1年目こそ5位だったものの、今年はリーグ最終戦までもつれ込んでの4位、0.5ゲーム差でCSは逃したものの、来年にはAクラス入りも夢ではない…、ってとこなんですがね」
「…今に見てろよ、数字と金しか見ない幹部どもめ。現場を知る者の眼力ってやつを見せてやる。なんせ…」
朝日はドラフトの指名選手の一覧に再び目を通した。
ドラフト会議 交渉権獲得選手
1位 中窪 翔一 内野手 海東学院大学
2位 桜井 夏穂 投 手 聖森学園高校
3位 吉永 晴久 投 手 独立リーグ、ガッチリーズ
4位 園原 洋介 投 手 黒龍館大学
5位 志藤 玲美 外野手 鳴響高校
6位 奥居 紀明 外野手 バス停前高校
7位 向井 孝四郎 内野手 慶塩専修大学
「俺と千家、両方の意見が合った選手ばかりを指名したんだ。俺たちの選手見る目、これだけは自信を持って誇れるからな」
現・夢ヶ咲タイガース監督、朝日輝政。元ノーザンフォックスで投手として活躍し、FAでタイガースに移籍。派手さは無いがクレバーな投球で現役17年を大怪我無く勤めきった後、解説者などを経て一昨年のシーズン終了後から監督に。監督就任後は球団の保守的な体質を改善すべく半ば強引に改革を進めてきた。そして千家も選手見る目を買われている男。若くしてスカウト長に任命されたのも朝日が強く推したからである。この二人の意見が合うということは必ず輝く何かがあるということだ、と朝日は自信を持っている。
「さて、来年辺りで蒔いた種を収穫していきますか…!」
* * * * *
ドラフトから2ヶ月ほどが経ち、各チームのルーキー達の入団会見が行われていた。そのニュースはオフシーズンの野球ファンの数少ない楽しみである。
夏穂はネットニュースでその手のニュースを見ていた。夏穂は対戦経験のある選手達の行き先もチェックしていた。一度は互いの全てを懸けて戦ったのだ。どうしても気になったのだった。
まず聖森学園でプロ入りしたのは松浪と夏穂の二人。松浪はタイタンズ1位、夏穂はタイガース2位。上位指名二人、しかも高校初のプロ入りというのもあってしばらく学校は大騒ぎだった。
県大会で当たった中で指名されたのは戦国工業の常磐田がノーザンフォックスから6位指名、聖ジャスミンの東出もノーザンフォックス1位といったところか。
甲子園で戦った中では鳴響から宇多がワイバーンズ4位指名、志藤がタイガース5位指名だった。そして開拓からは十三村はスワローズから2位指名を受けた。
一方、その頃…、
「納得いかないなぁ、十三村が2位指名だなんて…」
「おいおいユウキ。そんなの愚痴ったって仕方ないだろ? それよりお前なんでプロ志望届出さなかったんだよ」
十三村の自宅で話をしているのは雨崎優輝。元・混黒高校の正捕手で天才スラッガーである。県大会決勝で中学、そして高校でも一時期はチームメイトだった十三村との因縁の対決で敗れ、甲子園は逃した。しかしその打撃センスは折り紙つきでドラフト上位指名間違いなしとも言われていたが…
「ははは、君に負けたからね。もう一度一から鍛え直すことにしたんだ。大学に行くよ。それからでも君と戦うのは遅くない」
「…そうか。お前が決めたなら仕方ないな」
「それより君の方こそ本当にドラフト1位じゃなくて悔しくないのかい?」
「仕方ないさ。大ケガしてたことがリスクだったらしい。でも…、プロに入れば順位なんて関係ないさ。活躍しなきゃドラ1だろうと育成出身だろうと生きていけない世界なんだからな。それにユウキが来るまでに俺も腕を上げなきゃな」
「なるほど…、十三村らしいね。俺も追い付いて…、いやいつか追い越して見せるさ」
* * * * *
夏穂はというと、入団会見に望んでいた。ルーキー達が一同に会し、ユニフォーム姿と背番号がお披露目となる。ちなみに夏穂の背番号は29。夏穂はなかなかいい番号が貰えたのではないかと考えている。もちろん会見でもっとも注目を浴びたのはドラフト1位の中窪。背番号も7と一桁を貰っている。ちなみに夏穂と再会し改めて意気投合した志藤は背番号52、下位指名ながら無名校からのプロ入りとなり注目された奥居は背番号91となった。ユニフォームを着て、ルーキー全員で集合写真を撮っている中で夏穂はより実感した。
「(私、遂にプロ野球選手になったんだ! でもここがゴールじゃなくて、ここからがまたスタート…! 頑張るぞ!!)」
* * * * *
それからは何度も取材を受けたり、他の生徒たちからサインを求められたり、終業式で全校生徒の前で表彰されたりと、いつもよりバタバタとした年末を過ごし、迎えた年明け。
「はーっ! やっとゆっくり出来るよー! 取材とか、学校でのイベントとか色々ありすぎだよー!」
「おい、ねーちゃん! 自主トレ行くぞ!」
実家のリビングで好き放題ダラダラしようと目論んでいた夏穂の元にはスポーツウェアを着こんだ満が。
「ええっ! 今日ぐらいゆっくりしようよ!? 年末に録り溜めた番組見ようかと…」
「俺も小春も年明けからちょっとしたら練習始まるし、何よりねーちゃんはプロ野球選手! 今月末から合同自主トレだろ!」
「それに夏穂おねーちゃん、大晦日にも似たようなこと言ってたよー! ほら、着替えて着替えて!」
「ぎゃー! やめて小春! 着替える! 自分で着替えるから!」
こうして夏穂のダラダラタイムは実現すること無く終わった。
「よーし、まだまだ飛ばせるよ!」
「くそっ、やっぱり体力あるな!」
「二人とも、待ってよー!!」
そして3人でランニングに出かけたのだが、やはり夏穂の持久力は大したもので満と小春に大きく差を付けていた。
「(とは言っても満はなんだかんだ食らい付いてきてる…。前ならもっと突き離せたのに…)」
満は主将として臨んだ秋大会で見事地方大会へ進出、聖森学園は白石、久米の2枚看板に美田村、内海が控える高い投手力を武器に勝ち上がり、地方大会ベスト4。今はセンバツの候補として連絡を待つばかりである。この秋大会を通じて満は打率6割をマーク。オフシーズンはフィジカル強化に力を入れてるらしく、夏よりも一回り大きくなった印象だ。
一方の小春、夏以降は大きく戦力ダウンした聖ジャスミンで野球部に専念。持ち前の技の打撃で活躍したがチームは県大会ベスト8止まり。今は夏に向けて地力を固めている段階だ。
「(二人とも、立派になってきたなぁ…)」
「? ねーちゃん、どうしたんだよ?」
「ん? いや、別に。満はセンバツ行けるかもしれないんだよね?」
「まあ運が良けりゃな」
「私たちは行けなかったからなぁ」
「それよりねーちゃんももうすぐ新人合同自主トレだろ?」
「うん。それが終わったら春季キャンプ。…もう学校に行けるのもあと少しか」
「ウチのみんなの希望なんだぜ? 松浪さんとねーちゃんは。頑張ってきなよ!」
「ふふ、分かってるよ!」
「ねー、二人ともー、疲れたから帰ろーよー!」
「お、もうこんな時間か。ダウンしながら帰ろっか!」
「「おおー!」」
桜井家の3人もそれぞれの道を進む。…夏穂たちの父親が夏穂が2月から遠征に行くことを知って驚愕した(今更)のはまた別の話。
* * * * *
その後、聖森学園野球部は無事センバツの代表として選ばれたとの連絡をもらい、満たちは2期連続出場を果たした。
そしてまもなく自主トレ、キャンプに向かう夏穂と松浪はクラスメートに一足早い別れを告げることとなった。…この時、夏穂が二人にそれぞれ渡された寄せ書き(クラスメートと野球部のメンバーからの2枚ずつ)を貰って感動のあまり大号泣したのはしばらく松浪からイジられるネタとなったのだが。
程なくして二人はそれぞれ自主トレに出向くことになり、夏穂はタイガース2軍施設、夢ヶ咲セカンドパークに。松浪はタイタンズ2軍施設、タイタンズ球場へと向かった。
夢ヶ咲セカンドパーク。夢ヶ咲タイガースの2軍施設、とは言っても近年育成に力を入れる監督の方針に従い最近になって再整備が進んでおり、1軍選手も調整に利用するほどに設備は整っている。聖森も高校としては新しく設備もそれなりに揃っていたがそこはやはりプロの球団の施設。様々なトレーニング機器にデータ分析設備、そして綺麗なグラウンドには夏穂も目を丸くした。
「やあルーキー諸君。俺は2軍監督を勤めている島辺(しまべ)だ。そしてこちらが…」
「どうも。1軍監督をさせてもらっている、朝日だ。まずは指名を受け、我が球団に来てくれたことに感謝する。共に優勝、そしてファンを喜ばせることを目標に励みたいと思う。君たちも是非その力を貸してくれ」
「「「はいっ!!」」」
「よし、良い返事だ。…そうだな、まずはそれぞれ自己紹介と行こうか。名前、出身チーム、ポジション、そしてアピールポイントとあとは自由! 学生っぽいやり方だが、まずはドラ1から!」
「はいっ! 海東学院大学から来ました、中窪翔一!! ポジションはセカンド! 自分の長所は打撃、そした内野全ポジションをこなせる守備力です! 開幕1軍、いや、スタメンに名を連ねて見せます!」
「ふむ、大きく出たな! だがそういう気持ちでいるのは悪くないぞ!」
中窪翔一、海東学院大学で野球推薦ではない一般入学組から努力で這い上がり、4年時にはキャプテンを勤めて春秋の2期連続優勝に大いに貢献した。最大の武器はその打撃、一発の魅力もありながら確実性もある。例年なら競合間違い無しの即戦力大学生野手である。
「じゃあ、次!」
「はい! 聖森学園高校から来ました、桜井夏穂です! ポジションはピッチャー! 私の持ち味はストレートです! どんな形でもチームの勝利に貢献して見せます!」
「おう、期待してるぞ! さあ、どんどん行け!」
「ガッチリーズ出身、吉永晴久! ポジションはピッチャー! バッターに自分の打撃をさせない投球に自信があります! プロの世界でもガンガン打ち取っていきます!」
吉永晴久、独立リーグのガッチリーズという堅守で有名なチームから指名された。高校も南港埠洛水産という伝統的に堅守を誇るチームでエースを務めてきた。チームの堅守を最大限に生かす、カットボールとツーシーム主体で低めに集める投球が持ち味の右腕である。
「黒龍館出身、園原洋介! ポジションは投手! 気合いと根性なら今年のルーキー、いや他の選手にも負けないつもりッス!! 押忍!!」
園原洋介、強豪の黒龍館大学から指名された投手。左腕でありながらMAX152キロを誇る。一方で変化球と制球に課題が残り、4位指名となった。
「鳴響高校から来ました志藤玲美です! ポジションは外野手、母の教えである強く、可憐に、慎ましくプレーしたいと思います!」
志藤玲美、鳴響高校で夏穂とは甲子園でも対戦経験のある女性外野手。巧みなバットコントロール、俊足、堅守と三拍子揃った選手である。
「奥居紀明、バス停前高校から来ました! 技術的にはまだまだですけど、いずれは絶対にスター選手になってみせます!」
奥居紀明、初戦負けの常連だったバス停前高校でエースで4番として県大会ベスト8まで導いた。投手としてはMAX145キロのストレート、打っては最後の夏に4試合で打率7割5分、ホームラン4本を記録している。タイガースは外野手として指名、育成する方針で本人も納得している。
「慶塩専修から来ました、向井孝四郎です! プロの世界に入ったからにはドラフトの順位に関係なく、1軍の座を奪い取って見せます!」
向井孝四郎、こちらも強豪の慶塩専修大学で3番打者として活躍。確実性にはやや欠けるが長打力には光るものがある。3年までは投手だったことを考えると伸び代に期待がかかる打者。
「よし、じゃあ自己紹介も済んだところでアップを始めてくれ! くれぐれもケガのないように、入念にな! アピールしたい気持ちは分かるがまずは春季キャンプに向けて体を作ってくれ!」
「「「「はいっ!」」」」
こうして新人合同自主トレがスタートした。
各々がキャッチボール、ティー打撃、走り込みなどを行っているところを朝日はじっと見つめていた。
「朝日、どうだい? 自分の目を信じて選んだルーキーたちは?」
「島辺さんこそ、どう思いますか?」
「そうだな、まず中窪。ありゃ即1軍で良さそうだ。スイングの鋭さ、ありゃあ大学生レベルじゃねえなぁ。そんで桜井だったか、あのピッチャーの女の子。キャッチボールだけでも肩肘がかなり柔らかいのが分かる。あれだけしならせりゃ良い球投げられるわけだ。」
「桜井、吉永も1軍で勝負させても面白いかもしれませんね」
「あと外野手の女の子も中々完成度は高そうだが…、鍛え甲斐がありそうなのは園原、奥居、向井だな。あいつら、上手く行けば大化けするぜ?」
「そこは俺たち首脳陣の腕の見せ所でしょう。…まあ、今年は新しい試みもキャンプでしますから、それも踏まえてルーキーたちにも早めに自分の力を発揮できるよう調整してもらいたいですね」
* * * * *
新人合同自主トレはあっという間に終わりを迎えた。投手陣は全員ブルペンで投げ込み、野手陣もかなり本格的に調整したようだ。というのも…
「キャンプ初日にいきなり紅白戦…、ルーキー・中堅以上チームと若手チームの対戦だそうですが…」
「玲美ちゃんたちももう打撃投手の人に投げてもらって打ってたんだってね。私たちも1イニングは投げるそうだよ」
ルーキーたちに故障者はおらず、全員が紅白戦に参加する運びとなった。キャンプ地へ向かう飛行機で並んで座った夏穂と志藤はその紅白戦の話をしていた。
「しかし初日からサバイバル紅白戦とはね…」
「なんでも、1・2軍関係なくホテルは同じで、グラウンドだけが違うそうです。他の球団よりも入れ替えが激しいのもそれが理由だそうですよ」
「厳しいんだね~、まあ私たちルーキーにもチャンスがあるからには頑張らないとね!」
「そうですね! 頑張りましょう!」
そして夏穂たち、夢ヶ咲タイガースはキャンプイン。多くのファンが注目する中、1軍の練習場となるグラウンドでは早速サバイバル紅白戦が始まろうとしていた。
紅組、若手チーム
1番 ショート 畔上
2番 ファースト 唐沢
3番 指名打者 増川
4番 サード 橋元
5番 ライト 井村
6番 センター 江村
7番 セカンド 伊沢
8番 レフト 馬場
9番 キャッチャー 竹沢
先発投手 春日井
白組、ルーキー、中堅以上チーム
1番 セカンド 中窪
2番 センター 志藤
3番 ライト 正津
4番 指名打者 長谷
5番 ファースト C.ベッケス
6番 サード 向井
7番 キャッチャー 城
8番 ショート 金森
9番 レフト 奥居
先発投手 甲賀
「うわぁ…、去年1軍で活躍されてた方々も出てますね…」
「あっちもこっちもテレビで見てた人たち…、まあ当たり前だけど…」
夏穂と志藤も想像以上にガチのメンバーに驚きを隠せない。まず若手チーム、畔上は昨シーズンに全試合出場を果たしたショート。5年目23歳とまだ若く「虎のプリンス」と呼ばれタイガース女性ファンの一番人気である。そしてキャッチャー竹沢も昨シーズンに自己最多となる96試合に出場、売り出し中の若手キャッチャーである。
そして何よりの驚きは白組。4番に座る長谷は13年目32歳のシーズンを迎えるベテラン外野手。1年目から1軍で活躍し、首位打者1回、最多打点3回という超一流選手。選手からも慕われており、グッズの売り上げも6年連続1位と超人気選手でもある。加えて2年目のシーズンを迎える助っ人ベッケス、昨シーズンは前半戦に打率3割、ホームラン12本と活躍したが死球を受けた際に負傷し、残りシーズンを棒に振った。今シーズンこそは、と奮起している。そして先発はタイガースのエース甲賀。右のサイドハンドから繰り出す、右打者の内を抉り、左打者からは逃げていくシュートが武器の投手。今シーズンが9年目、8年間で70勝を積み上げたエースである。
ルーキー投手陣は中継ぎ待機、若手相手とはいえプロで初めての登板なので結果にこだわらなくて良い、と首脳陣からは言われているが…。
「やるからには、抑えたいよね!」
「私も何とか打ってみせます!」
そして紅白戦が始まった。先攻は若手チーム、マウンドにはいきなりエースの甲賀が上がった。
「タイガースのエース甲賀さん…、どんなピッチングするんだろ…!」
その甲賀は先頭の右打者、畔上に対しアウトローのストレートから入る。スピードガンは140キロと表示されてるがこの時期としてはかなり仕上がってると言えるだろう。そこから外に逃げるスライダー、チェンジアップなどを駆使し畔上を追い込んだ。そして…、
「…っ!」
カウント2-2からの6球目、一瞬真ん中へのストレートに見えたボールだったが畔上のスイングを掻い潜るように膝元へと食い込んだ。空振りの三振、スタンドの観客もワッと沸いた。
「(凄い。空振りを奪えるレベルのシュートを投げる上に、それを右対右の対決でバッチリ決める…。調整段階でこのレベル、やっぱりプロは凄い…!)」
甲賀は続く唐沢、増川も打ち取って三者凡退。攻守が入れ替わりマウンドには大卒3年目の左腕、春日井が上がる。春日井は180後半の長身から投げ下ろす角度あるストレートが最大の武器であり、昨シーズンは3勝。今シーズンこそローテーション定着を狙う。
『1番、セカンド、中窪。背番号7』
期待のルーキーの初の打席にスタンドのファンも沸き上がる。即戦力と称される中窪にとって1軍でも通用するストレートを投げる春日井はどれくらい通用するかの指標とする最高の相手である。
春日井は大きく振りかぶってから自慢のストレートを投じる。
カーーーン!!!
球場にいきなり響いた快音、打球はかなりの速度でセンターの前で弾んだ。
「ほう…、春日井のストレートを初見でしっかり弾き返したか。まあ明らかにストレートを張っていたが」
ストレートが武器の春日井に対してそのストレートを初球から狙い打つ。ルーキーながら強気な打撃に朝日監督も笑みを浮かべた。
「っ! 速い…!」
続いて打席に立った志藤だったが春日井の力強いストレートに圧されていた。
「(球速だけなら甲子園でも同じぐらいの人はいましたが…、質が圧倒的に高い。それに、私は木製バットにはまだ対応できてない…)」
高卒の選手が一番プロで苦しむと言われているのが木製バットへの対応である。高校野球で主に使用されるのは金属バット、経済面での理由の方が大きいのだが飛び方も全然違う。多少芯を外されても飛ぶ金属バットに対して木製バットは芯を外すと飛ばない、もしくは折られてしまう。高卒で期待されたスラッガーが大成できるかはここに懸かってくる。
「あっ…!」
ストレートにタイミングを合わせようと思うあまり、投じられたチェンジアップに反応できず志藤は三振に倒れる。
その後正津がゲッツーに倒れ、得点ならず。2回には向井が打席に立ったものの三振。3回には若手チームは2番手として高卒3年目、鈴貝がマウンドに上がった。逢坂翔陽高校で春夏連覇、4球団競合の末入団し、1年目から5勝、昨シーズンも9勝と次期エースと期待されている。その鈴貝からヒットを放ったのはなんと奥居だった。2球目のストレートを見事流し打ち、ライト前ヒットとなった。
「奥居さん、やりますね。あのスピードボールを打ち返すなんて…」
「ホントに、すごいね!」
その後の試合は鈴貝から長谷、ベッケスの連続長打でルーキー・中堅以上チームが先制、しかしルーキー・中堅チームの2番手、吉永が3回からマウンドに上がるが自慢のコントロールは鳴りを潜め、フォアボールから連打を浴び1失点。2イニング目には落ち着いたのか持ち前の打たせて取るピッチングを披露し無失点に凌いだ。後を受けた3番手園原。投球練習からスピードガンは146キロをマークするなどスタンドを沸かせた。だったのだが…、
「ボール、フォアボール!」
速いは速いのだが、まともにストライクが入らず。暴投もあったりの4つのフォアボール。途中内野フライで1つアウトを取ったもの、タイムリーも浴びて既に3失点。しかしここで開き直ったのか真ん中目掛けて力強いストレートを投じ始め、球威で押してその後はゼロに抑えた。2イニング目もフォアボールから甘く入った変化球を捉えられ1点失うが、後続は断って2回4失点。課題はハッキリとしていた。
そしていよいよ夏穂の出番がやって来た。ブルペンで準備を終えた夏穂は気合い十分でマウンドに向かう。
「よーし、行くかー!」
『白組、ピッチャー、園原に代わりまして、桜井。背番号29』
「頑張れよー!」「夏穂ちゃーん! ファイトー!」「期待してるぞー!」
アナウンスされると同時に期待のこもった暖かい声援を受け、夏穂は投球練習を終えて打者と向かい合う。
「(さあ行くぞ…! これが私の、デビュー戦だ!)」
「俺たちの冒険はこれからだぜ!」みたいな締め方になってますが、なんとまだ終わりません。まさかエピローグ的な話に3話以上(次で終わる保証もなし)かかってしまうとは…。
少しプロの世界に触れてから終わろうとしたのに、ここに来て新キャラが増える一方。何としてもキレイに終わらせなければ…、ここまで読んでくれた方々にも悪いので…。
今回のおまけはプロ入りしたメンツの能力を。注意してもらいたいのは夏穂たちの能力はここでは"プロ基準"となってます。弱くなってるように見えるけど気にしないでください。
◯桜井夏穂 (高卒ルーキー、ドラフト2位) 右/右
夢だったプロ野球選手になった夏穂。首脳陣からは柔軟な肩肘を生かしたキレのあるストレートとコントロール、そして物怖じしないメンタルを評価されている。大成した選手の少ない女性選手のため評価は分かれているが、朝日監督は高く買っている。尊敬する選手は早川あおい。
球速 スタ コン
143km/h E C
➡️ Hスライダー 1
↘️ フルブルーム(パワーカーブ) 3
⬇️ チェンジアップ 2
ピンチ◯ ノビ◎ 球持ち◯ 軽い球 ケガしにくさ◎
◯志藤玲美 (高卒ルーキー、ドラフト5位) 左/左
先生(本人がいっているだけ、鳴響高校の宇多響を指す)に勧められプロ入りを目指し、見事指名される。野球部と吹奏楽部を兼部していた。が、野球センスには恵まれている一方で音楽の才能はゼロに等しい。女性野手の成功例は少ないため夏穂よりも評価が割れている。夏穂とは性格は逆だが気が合うようだ。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
1 D F C E C D 外C
走塁◯ 守備職人
◯中窪翔一 (大卒ルーキー、ドラフト1位) 右/右
プロ養成学校とも呼ばれる海東学院大学に推薦ではなく一般枠で入学、長い2軍での下積みを経て1軍でキャプテンにまで登り詰めた男。『素振りと守備練は裏切らない』を信条にしている。彼の打撃はセンスだけではなく、努力で培ったものである。趣味は野球ゲームで、ここでも配球の勉強するなどかなり野球に対しては貪欲である。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
3 C C E C C C 一E ニC 三D 遊E
初球◯ 粘り打ち アベレージヒッター
◯吉永晴久 (社会人ルーキー、ドラフト3位) 右/右
独立リーグからプロ入りを果たした投手。契約金はどうするか、という取材での質問に、貯金しますと即答する手堅い男。だが性格は結構フランクであり、他のルーキーとも打ち解けている。趣味はビリヤード。
球速 スタ コン
145km/h D C
⬆️ ツーシーム
➡️ カットボール 4
↘️ スラーブ 2
打たれ強さ◯ クイック◯ 一発 シュート回転
◯園原洋介 (大卒ルーキー、ドラフト4位) 左/左
荒削りな大卒投手。投げるボールは素晴らしいが荒削り過ぎて中々指名されなかった。豪快過ぎる性格であり、志藤は彼に対しては接し方が分からないそうだ。意外なことに料理が得意らしい。
球速 スタ コン
152km/h D G
⬅️ スライダー 2
⬇️ フォーク 2
ピンチ◯ ノビ◯ 四球 クイック△ 乱調 調子極端
◯奥居紀明 (高卒ルーキー、ドラフト6位) 右/右
無名の高校を率いて勝ち上がり注目を浴びた。その実力は指導者がいなかったため我流で身につけたようであり、その荒削りな才能は無限の可能性を秘めている、とは担当スカウトの千家の評価。お調子者でスター選手になってモテモテになることを夢見ている。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
2 E D D D D E 外D
(特殊能力なし)
◯向井孝四郎 (大卒ルーキー、ドラフト7位) 右/左
慶塩専修大学からプロ入りした内野手。3年までは二刀流をしていたが野手に専念し、打撃に磨きがかかった。実績が少ないため注目度は今一つだったがパンチのある打撃は魅力。素振りが好きな練習であり、中窪と気が合うらしい。趣味は釣り。
弾 ミ パ 走 肩 守 捕 守備位置
3 F C D B F F 三F 一F 外F
三振 プルヒッター 送球◯
続きも頑張って早い内に形にしたいと思います…!
感想などもよろしくお願いします!
この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)
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桜井夏穂
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松浪将知
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空川恵
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久米百合亜
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ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)