New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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大変騒がしい世の中ですが、そんな中ようやく完成しました。2カ月近く空いてしまいましたが…


53 新しい世界へ!

夏穂たちルーキーが動き出すのとほぼ同時期…、

 

場所はアメリカ。こちらでは夢を目指すアマチュアの選手たちがこぞってトライアウトに参加していた。メジャーリーグはルーキーリーグ、1A、2A、3Aと傘下に多くのチームを抱えている。このトライアウトで合格すればルーキーリーグからスタートし、遠いメジャーリーグの舞台を目指すことになる。とはいえこのトライアウトそのものも狭き門であるのだが。 

「レッドエンジェルズもダメだったか。なかなか上手くいかないもんだなぁ」

「おいおい、おかしいだろ? なんで実践試験で6人を完璧に抑えたお前が落ちるんだよ?」

ここに遥々日本からトライアウトに挑む一人の男、そしてその付き添いの男がいた。愚痴を言ってるのは付き添いの方だ。

「僕はベストを尽くした。だからダメだったら仕方ないさ。結果より内容を見られてたんだろうさ」

「でもよお、わざわざアメリカまで来て成果無しで帰るのかよ?」

「確かに美留田の親戚のおじさんにお世話になってまで結果が無いのはちょっと申し訳ないけど…」

「あ、町男の叔父貴が呼んでるぜ。次の場所に移動するってよ。明日はセイクリッズのトライアウトだったな」

「そうだったね。今度こそ合格することを祈ろう」

彼は緩井、昨夏の甲子園では優勝候補筆頭の天空中央高校を破り、惜しくも聖森学園に敗れた一芸大附属のエース。そして付き添いは同じく一芸大附属で主砲だった美留田。

緩井は引退後もプロ入りを目指し練習に参加、プロ志望届けを提出。しかしどこからも声はかからず。…いや、厳密には声はかかった。タイタンズからの育成指名、ただしその身体能力を見込んで野手としての指名だった。緩井は迷わずその誘いを断った。投手にこだわる緩井らしい、と監督の赤井は笑っていたが。その後、独立リーグなどから声がかかったりしたがそれも野手としてだったため断り、美留田が親戚のおじを頼って渡米することを聞きつけそれに着いてきたのだ。そしてここまで3球団のトライアウトを受けいずれも不合格。打たれたわけではないので恐らく理由は…

「やっぱり遅すぎる、かな」

「とはいえやれる限りのトレーニングはしたんだろ? だったら持ち合わせでやるしかねぇよ」

緩井は高校生離れしたコントロールと緩急自在、そして熟練のマウンド捌きを誇る。唯一の欠点である球速の無さを補うための努力だが…。

「やっぱり130キロ台前半じゃ限度があるか」

「らしくねぇこと言いやがって…。だが確かに何事にも限界はあるかもしれねぇが。ま、チャンスがある内はチャレンジしようぜ!」

 

その翌日、トライアウト会場となるセイクリッズのキャンプ地のサブグラウンド。遠投で少々評価を落としながらも実践テストに進んだ緩井は同じテスト生のバッターと対戦していた。

自慢の緩急で130キロのストレートさえ振り遅れさせる投球術に球団の試験官も感心していたが…

「ふむ、あの日本人。面白いピッチングするじゃないか」

「確かに、だがあのスピードではな…」

試験官たちは興味を示しながらもリストの名前の欄の不合格にチェックマークを付けようとしていた。

「ん? なんだ? あのピッチャー、不合格にするのかい?」

試験官の後ろから一人の男が現れた。

「え? あ、あなたはミスタージェイソン! どうしてここに!?」

「そりゃ、ダイヤの原石を探しに来たのさ! どこに転がってるか分からないからな! なぁ、あの日本人。不合格にするなら、俺のところに預からせてくれないか?」

 

「ここもダメ、か。」

「ポテンヒット1本、落ちるような内容ではないと思うがな…」

緩井はやはり不合格。いよいよ受けるところも無くなってきたため決断が迫られてきた。

「そろそろ日本に帰らなきゃいけないかもな…」

「ああ…、だがここまでチャレンジしたんだ。恥ずべきことじゃねえよ」

「そこのジャパニーズ! ちょっといいかい?」

流石にショックを受けつつあった緩井と美留田の前に一人の男が現れた。

「えっと、あなたは…、球団の関係者?」

「てか、日本語上手すぎないか!?」

「おっと、自己紹介がまだだったな。コイツを受け取ってくれ!」

そういって男が差し出したのは名刺。英語だったが緩井もある程度は読める。

「えっと、GJベースボールアカデミー責任者、ゴーワン・ジェイソン…、ゴーワン・ジェイソン!?」

「え、有名人なのか?」

「ゆ、有名人も何もこの人は…、世界最速171キロをマークしたメジャーリーグの伝説のサウスポー、ゴーワン・ジェイソンさん! どうしてこんなところに!?」

ゴーワン・ジェイソン。メジャーリーグでセイクリッズ一筋19年。4年目にメジャーデビューしてから9年は先発として94勝を積み上げ、引退までの7年間は守護神として189セーブをマークした。最大の武器は170キロ超のストレートと鋭く曲がるスライダー。全盛期の頃から常々「100マイル(160キロ)投げられなくなったら俺は辞める。100マイルを超えられないストレートを投げるゴーワン・ジェイソンなんかファンに見せられない」と豪語しており、平均球速が100マイルを切った年に本当に引退して話題となった。

「知ってくれてるとは嬉しいね。さて、本題に入らせてもらおう。君をスカウトしたいんだ。」

「スカウト…?」

「ああ、俺の開設したベースボールアカデミー、GJベースボールアカデミー。そこに君を招待したい。それだけの才能を君には感じたのさ」

「俺をですか?」

「ああ、一度見てもらいたいんだ。それから答えを聞かせてくれないか?」 

 

* * * * *

 

ゴーワンの熱意に押され、緩井はGJベースボールアカデミーへとやって来た。保護者として美留田のおじ、美留田町男が美留田と共に付いてきてくれている。そこにあった光景は…、

「これは…!」

「まるでうちの高校みてーだな!」

多くの選手が自分のやりたい練習をしている。延々とフリー打撃をする選手、ノックを受ける選手、トレーニングをし続ける選手、とにかく自信がある分野を磨き続けてるのだろうか、みんな楽しそうに練習に取り組んでいる。

「コイツらはウチのセカンドランカーズ…、日本で言うところの1年生みたいなもんだ。とにかく長所を磨く。もちろん万能を目指すやつもいるが大多数はまず自分だけの武器を磨いてる。次はこっちだ」

そしてもうひとつのグラウンドに移動するとそこにはさらに洗練された動きの選手たちがいた。

「これはすごい…!」

「ほとんどプロみたいなプレーしてやがる!」

「自信を付けたやつらは次にここで弱点の解消にトライする。平均レベルまでとは行かなくても、最低限はこなせるようにな。こいつらはファーストランカーズ。ここで認められたやつは満を持してメジャー球団に売り込みをかけに行くんだ」

「なるほど…」

「うーんと、おい! バレル! ちょっと来てくれ!」

ゴーワンに呼ばれて一人の選手がやって来た。

「なんだいミスター? おっと、そっちのジャパニーズは?」

「テスト生だ。少しばかり相手になってくれないか? お前にとってもいい経験になるはずだ」

「オーケーミスター。 で、アンタ名前は?」

バレルは英語だが極力分かりやすく緩井へと話を振ってくれた。どうやら配慮の出来る男のようだ。

「緩井、だ。よろしく。…テストですか?」

「ああ、君にとっても良い経験になるぜ」

「わかりました、やらせてもらいます!」

「と言うわけだ。バレル、頼んだぜ?」

「オーケー、どんなボール見られるか、楽しみにしてるぜ!」

 

そしてアップを済ませた緩井は打席に立つバレルと向き合う。右打者で非常にガタイが大きく、どう見てもパワーヒッターだろう。

キャッチャーとのサイン交換の後、緩井は振りかぶってからボールを投じる。128キロの速球がアウトローに決まる。

「エクセレント!! 素晴らしいアウトローへのファストボールだ!!」

緩井の完璧なコントロールにゴーワンも喝采を送る。

「遅すぎて手が出なかったぜ! 次はスタンドだぜ?」

「やれるもんなら、やってみなよ!」

次に投じたのはスローカーブ。これもアウトローにバッチリと決まり、バレルは戸惑ったように見逃した。

「ほう、面白いなお前!」

一球速球を外してカウント1-2から4球目、ストレートと全く同じリリースからチェンジアップが投じられる。

「おっと!?」

しかしバレルの方が上手だっだ。タイミングを外されながらも腕の力だけでスイング、なんとかカットしてみせた。

「今のをカットしてくるか」

「今の、お前のウイニングショットだろ? さあ、どの球でもかかってこい。打ち返してやるぜ!」

緩井はキャッチャーとのサイン交換を終え、再び振りかぶる。撒き餌は十分に撒いた。本命はむしろこっちだ。

「ふっ!」

「なんだファストボールか…! って何だと!?」

速球、ただし先ほどのストレートに偽装したカットボールとは違う。正真正銘のフォーシームだ。それがやや立ち遅れたバレルのインローを襲う。

「くっ、こんのぉぉぉ!!」

「なっ…!?」

完全に差し込まれたタイミングだったがバレルは強引にバットをフルスイングで振り抜いた。鈍いバットの音を残し、打球はライト前へと落ちた。

「ふぅ…、やるなお前! まさかのあのスピードのファストボールに振り遅れることになるとはな!」

「いや…、君も大したもんだよ。あのコース、あれだけ差し込まれて打ち返せるのは日本人にはいないさ」

緩井とバレルは互いの健闘を讃え合う。

「どーだいユルイ。ウチの選手は」

「素晴らしいです。バレルから感じられる打撃への自信。あれが高いパフォーマンスに繋がってる…」

「そうだろ? …さて、ここから本題に入りたい。ユルイ、君もウチのアカデミーで学ばないか?」

「俺が、ですか?」

「ユルイの卓越したコンビネーションピッチング、素晴らしい。エクセレントだったよ。あの芸術的な投球ならウチに入ってもすぐにファーストランカーズからだ」

「ですけど俺のストレートは…」

「分かっているさ。あれだけの投球術を身に付けてるのだから、今までトレーニングしてこなかった訳ではないだろう。だがウチの課題克服トレーニングのメソッドを、日本のものと同じとは思わないでもらいたい」

「え…?」

「ここにはVDBからドライブライン、その他フィジカル強化メソッド。メジャーリーグの中でもまだ普及しきっていない最新鋭のトレーニング設備が整ってる。お前の今までのトレーニングを凌駕する結果をもたらすはずさ!」

「それは…、でもお金とか。俺はまだ高校出たところなので…」

「その心配はいらない。この設備…、というかこのアカデミーの運営費はほとんどが俺のポケットマネーさ。アカデミーの生徒は寮も食費も道具も支給してるのさ」

「ええ…!?」

「もちろん、俺についてくれているスポンサーからもある程度は出ているけどな!」

ゴーワンのアメリカらしいスケールの大きさに驚いているとバレルも口を挟んだ。

「ユルイ、ここのアカデミーに入るにはな。ミスターにスカウトされないと入れないんだぜ? ミスターが将来性を感じた選手に投資してくれるんだ」

「将来性を…」

「ああ。そして俺たちはいずれメジャーリーグの舞台で活躍して見せる。そしてその時に、俺たちはGJベースボールアカデミーで育ったんだ! って言ってやるのさ! それが一番の恩返しさ!」

「ハッハッハ! バレル、嬉しいこと言ってくれるじゃないか! …ユルイ、君はベースボールが好きかい?」

「…はい」

「ここで成長すれば、メジャーリーグでもNPBでも好きな世界で暴れてくれて良いんだぜ? 見返してやろうぜ、君をこれまで評価してこなかった奴らを、君の可能性に気づけなかったことを後悔させてやろうぜ!」

熱く語るゴーワンの瞳、そして熱意。緩井はそこに自分の恩師でもある赤井監督の姿が重なって見えた。

 

最後のチャンス、決して楽な道のりではないことも分かる。それでも緩井は、誰よりも、ピッチャーだった。 

 

ーーマウンドに立って、あらゆるバッターを抑えたい。その可能性があるなら、そこに賭けてみたい…!ーー 

 

「ゴーワンさん。ここで、このアカデミーで、俺を鍛えてもらえませんか!」

「その言葉を待ってたぜユルイ!! よーし、ならば早速チームメイトに紹介しないとな!! ヘイ、エブリワン!! 俺たちのアカデミーにクールでエクセレントなニューカマーの登場だぜ!!」

 

かくして緩井はGJベースボールアカデミーに入学、メジャーリーグ最速の男の指導のもと、最新鋭のトレーニングと体作りに取り組むことになった。数奇な道を歩む男の生きざまは…いつかどこかで語られるのかもしれない。

 

* * * * * 

 

場所は戻ってきて日本。夢ヶ咲タイガースの春季キャンプのオープニングとなる紅白戦。ルーキーたちがプロの洗練を浴びるなか、ついに7回。夏穂がマウンドに上がった。

「(観客自体は甲子園の方が多かった。けど…)」

なんといっても相手はプロ、というか自分もそうなのだが。これまでとは緊張の度合いが違う。高校野球とはまた違った緊張感が夏穂を襲う。

投球練習を終え、打席には途中から入った5年目の内野手、福島。長打力に定評のある右打者だ。当たり前の話ではあるが、高校生とは打席での雰囲気が違う。そして向こうは決して夏穂を舐めてかかってこない。福島自身も1軍生き残りのためにはルーキーに後れを取るわけには行かないのだ。

「…行きます!!」

キャッチャーのサインに頷き、投球動作に入る。サインはアウトローへのストレート。夏穂らしさを示すためには持ってこいの配球だ。

「…ふっ!!」

ズバッ!!

「ストライクッ!」

スピードガンの表示そのものは134キロ、プロとしては遅い部類だろう。ただその美しい軌道にはスタンドのファン、そしてベンチで見守る首脳陣や選手にも同じ感想を抱かせた。

 

――もっと速かったのではないか――

 

福島もへぇ、といった様子で見送った。物怖じの無い腕の振り、最後まで指のかかりきった、柔軟な腕から繰り出される球持ちの良いストレート。スピードガン以上に速く感じさせる要素が揃っている。

「(だがこっちも大人しくやられる訳にはいかねぇんだよ…!)」

続くストレートを福島はバックネットに当たるファールを打った。早くもタイミングは合わせてきたようだ。

「(さすが…、プロともなればすぐに対応してくる…!)」

ならば、と夏穂が投じたのは必殺の魔球、フルブルーム。高速で曲がるパワーカーブに福島のバットは空を切った。

「おおおっ!」

「すげー! 良い球投げるじゃん!」

「甲子園優勝投手は伊達じゃねぇな!」

スタンドもルーキーの好投に盛り上がる。続く3番に入った猪俣は高速スライダーを引っかけさせてサードゴロ、同じく途中出場の本間も三振に打ち取る。

「ほう、やっぱり俺の目に狂いはなかったかな」

「相手はファームにいることの多いメンツとは言え、あれだけ物怖じせず投げられれば合格点ですね」

夏穂の快投に笑みを浮かべるのは朝日監督、そしてヘッドコーチの岩辺だ。

「ま、次の回も凌げれば、だけどな。…それにしてもアイツが抑えると盛り上がるな」

「見た目にも華がありますし、投げっぷりも良い。テンポも良いのでリズムを作ってくれそうですね」

 

攻撃の方はあっという間に終わり、8回表の守備。

「紅組、選手の交代をお知らせします。バッター、増川に代わりまして、大友。背番号31」

この代打のコールにスタンドからはどよめきが起きる。

大友隆介、6年目で強肩と強打を誇る右投げ左打ちの外野手。ルーキー時代から試合出場を重ね、3年目には一時期4番を任されるほどに成長。しかし4年目のシーズン中にケガで離脱。5年目のシーズン中にも指の骨折などで長期離脱とケガに悩まされている。だが本来の実力を発揮すれば不動のセンター候補である、と評価されている。

 

この場面での代打は昨年の8月以来の実践の場となる。夏穂にとっても強敵であった。

「大友、初実践の相手、ルーキーピッチャーの中なら一番調子良さげだぜ?」

打席に立つ大友に声をかけたのは途中からキャッチャーに入ったベテランの佐川だ。

「そうみたいですね。だけどこれぐらい打てなきゃ、ここから開幕スタメン取るなんてサラサラ無理っしょ…!」

「…ま、そうだな。だがこっちも大事なルーキーのリード任されてんだ。打たせるわけにはいかんのよ」

佐川は夏穂へとサインを出し、夏穂は頷いて投球動作に入る。サインはインローへの高速スライダー。思いきりの良いリリースから投じられたスライダーは佐川の構えたコースにしっかりと投じられ、判定はストライク。次もスライダー、今度は外から入ってくる軌道だったが外れてボール。そして3球目…、

「! これは…!」

投じられたのはストレート。今度は右投げの夏穂から左打者の大友へクロスファイヤーの角度で入ってくるインハイのストレートだった。大友はこれには手が出ずストライク。これでカウントは1-2と追い込まれた。

「(ストレートと変化球、どちらもリリースはほとんど同じ…、球速こそ無いが質でカバー出来てるし判断しづらい。やるじゃないかルーキー…!)」

追い込んでからバッテリーが選択したのは決め球フルブルーム。高さはバッチリ、ストレートに近いスピードでアウトコースから真ん中低めのボールゾーンへと沈む空振り三振を狙うコース。

「ちっ!!」

しかし大友も流石だった。このフルブルームに反応し、なんとかバットに当ててファールにして見せた。

「(うっそー・・・、今の当てるの!? 完璧なコースだったのに・・・!)」

「(大友の動体視力はウチのチーム、いや球界でもトップクラス。とはいえ今のコースを当てられるとなると、リードするのも大変だな・・・)」

 佐川は次なるサインを出し、夏穂もそれに頷く。サインはアウトローへのストレート。夏穂が最も得意とするボールだ。

「行けっ・・・!!」

抜群に指にかかったストレートが投じられた。そのストレートは鋭いバックスピンがきれいにかかり、球速以上の印象を見るものに与えた。まさに理想的なフォーシーム。

—―ただひとつ、ボール1個分高く、ボール半個分内に入ったことを除けば—―

「っ!!」

カ――――ンッ!!

大友の振りぬいたバットから快音が響く。完璧に弾き返された打球はきれいなアーチを描いてバックスクリーンへと飛び込んだ。

「おおお!! 流石大友だぜーー!!」

「やっぱり本調子になればセンターのレギュラーはアイツだよなあ!」

悠々とダイヤモンドを一周する大友を夏穂は呆然と見つめた。

「(ほんの少し、力んだ分甘くなった。それだけで・・・!)」

「桜井、まあ今のは事故みたいなもんだ。気にすんな。確かに気持ち甘く入って持って行かれたが、ありゃ大友をほめるべきだ。良いボールは来てるし、切り替えていけよ!」

夏穂を気遣ってマウンドへやってきた佐川が声を掛けた。

「は、はい! 次から切り替えていきます!」

「おう、その意気だ。この回、最少失点で行こうぜ」

ある程度言葉を交わして持ち場に戻る佐川だが、長年の経験から夏穂の状態にある程度見当がついていた。

「(うーん、思ったよりダメージが来てたな。良いボールが来てた、って言ったのは逆効果だったかもしれない。1イニング目にスイスイ言った分、2イニング目の先頭に一発かまされたのはちょっと痛いな・・・)」

佐川が懸念してるのはこの失投・・・、と言っても失投というほど失投ではないのだが、これを引きずることだ。自信のあるボールを打たれたという事実は少なからず影響があるかもしれない。 

 

カキーン!!

「くっ・・・!」

続く前原にもヒットを浴び、途中から入っている福井はライトフライに打ち取るが同じく途中出場の木原にツーベースを浴び、ランナーの生還を許してしまった。その後の2アウトまでこぎつけるもランナー2,3塁のピンチとなった。

「はあ・・・、やっと2アウト。何としてもここで切る・・・!」

「(ここまで打たれたのはストレート。最初ほどの勢いはない。ばてたわけじゃないと思うが・・・。ただここは変化球で躱す方が得策だな・・・!)」

打席にはこちらも途中出場の左打者、門脇。打撃に秀でた若手内野手だ。甘い球なら容赦なくスタンドに持っていくだろう。バッテリーは初球にスライダーを外から入れた。門脇はこれを悠々と見逃したが、この反応だけでベテランの佐川には狙いが手に取るように分かる。

「(露骨なまっすぐ待ち。そりゃ前のバッター達が気分よく打ってるんだ。アピールしたい立場としては自分も打ちたいよな…!)」

佐川は1度インコースにボール球のストレートを見せ、3球目でチェンジアップを要求。そして…

「(思いっきり腕振れ。真ん中でも構わねえよ…!)」

「(!! はいっ…!)」

夏穂はサイン通り、チェンジアップをコントロール度外視でストライクゾーンへと投げ込んだ。

「うわっ…!?」

門脇は豪快に空振り。これで追い込んだ。

「(さて…、門脇の特徴として追い込まれるとボールを引き付けて対応するようになる。コイツの武器のひとつはこの粘り強さだ。…だがここで勝負かけるぜ)」

佐川は夏穂にサインを出す。サインは、ストレート。

「(これも甘くてもいい、だが思い切り腕だけは降ってこい!)」

投げ込まれたストレートは門脇のインコースへと突き進む。だが高さは打ち頃のほぼ真ん中。

「もらった!」

門脇は待ってましたとばかりに引き付けて対応、芯で確実に捉えに行った。

カーーン!!

「くっ!?」

打ち返されたことに夏穂は一瞬動揺した。だが佐川はこの時点で確信した。

「よし、よく投げきったな」

打球は力無く上がり、セカンドの中窪のグラブに収まった。

「今の一球、良かったな」

「ええ、この回は少し捕まりましたが…それでも吉永と並んで内容は悪くなかったですね。どうします、ルーキーたちの1軍2軍の分け方」

夏穂の投球にある程度納得した様子の朝日監督に岩辺へッドコーチが尋ねた。

「そうだな…、中窪は1軍で決まりだな。次点で吉永と桜井だが、この二人はもう少し2軍で経験を積ませる」

 

「すいません! 点差広げられちゃいました!」

現在、7-5と紅組がリード。と言っても白組の得点のほとんどはベテランたちの働きによるもの。そして8回裏の攻撃は紅組のマウンドに上がっている若手のリリーバー韮野が好投し、三者凡退となった。

「…あれ? 9回は誰が投げるんだろ?」

「夏穂さんは2イニングの予定なので、もう交代ですよね…?」

ルーキーたちが疑問に思っているとベンチの裏から一人の男がやってきた。

「まったく。いくらルーキーたちに緊張させんためとはいえ、ワイだけ別のところでアップからブルペン入りまで…。まあ、テストされる側やから文句は言えんけどな」

その男はそのままマウンドへと向かってベンチを出ると、スタンドのファンもどよめいた。

「おいおい、なんでワイバーンズのユニフォーム着たやつがここに?」

「あれ誰だっけ? なんか見覚えあるんだけど…」

「ああ! あいつだよ! 阿畑! 阿畑やすし! 去年確か中部をクビになってた!」

 

阿畑やすし。昨シーズンまでは中部ワイバーンズに所属していた投手。高校時代は代名詞でもあるアバタボールと自称するオリジナルのナックルを武器に後にプロ入りする二宮、当時2年生の猪狩守を擁するあかつき大附属を苦しめた。そしてその時注目を集め、ドラフト5位でプロ入りしたのだ。だがプロ入り後は先発と中継ぎどっち付かずの不安定な投球が続き、6年目のオフについに戦力外通告を受けたのだ。

「(…ほんま、こんなことになるなんてな。とにかく、ここで結果出さなあかん…!)」

合同トライアウトを受験するも声は中々かからず、ワイバーンズからは球団スタッフとしての椅子は用意していると伝えられていたが、阿畑は現役にこだわった。まだやれる、アバタボールを完成させるまでユニフォームを脱ぐわけにはいかない。だが同時に守るべき家族もいた。そんな狭間で揺れる阿畑に声をかけたのが朝日監督だった。 

 

リリーフした阿畑は若干の異様な雰囲気の中、投球練習を終えて打者と対峙する。先頭の畔上に対しては初球からインコースへのシュート、そして外角へのスライダーを投じて追い込んだ。そして最後はカーブを打ち上げさせてワンアウト。簡単に打ち取った阿畑だが見ていた人の多くが同じ感想を持った。なぜ得意のアバタボールを使わないのか…?

 

ーー「はい、もしもし、阿畑です!」

 

『もしもし。私、夢ヶ咲タイガース監督の朝日と申します』

「タ、タイガースの朝日監督…!?」

『阿畑くん、まだどこからも声はかかってない…かな?』

「ええ、はい。もう年も明けたってのにどこからも話は無いですね…。独立リーグからはいくつかあるんですけどね」

『そうか…。阿畑くん。2月の頭、その時までに実戦で投げられる状態に仕上げられるか?』

「!! もちろん、チャンス頂けるんでしたらなんぼでも調整します!!」

『…もし、アバタボールを諦めろ、と言っても君はそれに従えるかな?』

「…っ!!」

『君はアバタボールとやらにこだわり過ぎている。高校時代から君のことは見させてもらっていたが、変化球の研究をしているか中で、他の球種も投げられないことは無いんだろう?』

「それは…」

『ナックルは確かに強力だ。だが先発でそれ一本でやっていくレベルには、アバタボールは至っていない。そして安定感の求められる中継ぎでナックルという不確定要素の大きな球種は使う側も難しいのさ』

「せやから、アバタボールは封印して、他ので勝負せえ、ってことですか…」

『チャンスは1イニングか2イニングの予定だ。そこで内容もそうだが結果も見る。どうかな?』

「…行かせてもらいます。そのテスト、受けさせてください!」ーー 

 

続く唐沢もシュートを引っかけさせて打ち取りツーアウト。阿畑は1ヶ月で磨きをかけたシュート、スライダー、カーブにある程度の手応えは感じていた。元々変化球の研究に余念の無かった阿畑にとってこれらの球種は投げられないことは無かった。だがそれよりもアバタボールという自分だけの魔球を完成させたかった、それが阿畑の目標であり、夢だったのだ。

打席には先ほどホームランの大友。インコースのスライダーをファールにし、カーブで追い込んだ後のストレートもファール。

「(なんや、寂しいやないか…!)」

アバタボールが無くとも、経験で磨かれたコントロールと投球術、そして球種。これでもある程度は戦える。だが…、

「(おそらくコイツには打たれる。こんなその場凌ぎじゃアカン。コイツ打ち取るには…、コレしかない!)」

阿畑は大きく深呼吸して、ボールを握る。封印しろとは言われながらも改良を重ね続けてきた、魔球アバタボールの握りを。キャッチャーの佐川のサインに何度か首を振ってサインを引き出した。

(「(見といてくださいよ、朝日監督! これが、男・阿畑の生きざま! ワイは打たれたくないんや!!)」

 

アバタボール。その最大の特徴は通常のナックルよりも大幅に速いことに加えて、そのリリースの特異性である。通常ナックルというものは指を折り曲げた独特の握りで、ボールを投げる際には腕を振るというよりも押し出すような感覚で投げる。そうやって極力投げるときのバックスピンを抑えつつ、指を開いてボールにトップスピンをかけることでスピンを打ち消して無回転のボールを投じることを可能としている。こうして無回転で投じられたボールは空気抵抗をモロに受けて、不規則な変化や揺れを生じる。阿畑は何度も研究を重ねた結果、ストレート等と同様の通常のリリースでナックル、アバタボールを投げられるようになったのだ。つまり、リリースで判別がつかないためにストレートとのコンビネーションという通常のナックルでは不可能な運用を可能としている。

 

阿畑が投じたアバタボールは大友のバットを潜り抜け空振り。そしてその不規則な変化も佐川はなんとか捕球、見事に空振りの三振で打ち取った。

「へへっ…、やっぱコイツ投げんとスッキリせんわ…!」

守っていた野手とグラブを合わせながらベンチに戻ってきた阿畑を待ち構えていたのは、ここまでバックネットの方で見守っていた朝日監督だった。

「すんません、朝日さん。やっぱりワイはコイツと戦わなアカンみたいですわ」

「…ふっ。合格だよ、阿畑。明日からは、ウチのユニフォームを用意して練習に参加してもらおう」

「え? でもアバタボールは封印する約束…」

「俺はお前に気づいてほしかったのさ。お前の仕事は何なのか。それは完璧なボールを投げることじゃない。抑えることだ」

「抑えること…」

「お前は大友との対戦で、これしかないと思ってアバタボールを選んだんだろう? それだよ、ピッチャーの本来あるべき姿だ」

「…そうか。ワイはいつの間にか目的がすりかわっとったんやな。…これからは抑えられる投手、目指していきますわ!」

「ああ、俺は戦力と見込んで呼んだんだからな」 

 

「よっしゃ、阿畑さんが持ってきてくれた流れに乗って反撃だ!」

「「「おおお!!!」」」

向井の言葉にルーキー達が奮起する。

だがその雰囲気を打ち消したのは観客のどよめきだった。

「おい、マジか…!」

「これ、紅白戦だぞ!?」

「アピールとかいらないだろお前!」

どよめきの原因は紅組のマウンドに上がったピッチャー。

『紅組のピッチャー、韮野に代わりまして、菱本。ピッチャー、菱本。背番号97』

「おいおい、こっちはテストやってのに、アイツは調整登板…、えらい差開けられたなぁ…」

「あ、そっか。阿畑さんと菱本さんはあおいさんや猪狩守さんの1つ上の世代だ!」

菱本優希也。夢ヶ咲タイガースでクローザーを務める左投手。夏穂の後輩である百合亜の憧れの投手であり、クローザーとしては珍しく、コントロールと多彩な変化球、そしてムービングファストを武器とする軟投派である。阿畑と同世代、だが高校時代はほとんど無名。しかし最後の夏に、猪狩守擁するあきつきを最も苦しめた男、として有名になりドラフト6位でタイガースに入団した。昨年はクローザーながら82登板という鉄腕ぶりを発揮した。

 

「で、でもきっと調整登板だぜ! オイラたちでも付け入る隙は…」

「そのことなんだがな、アイツはマジだぜ。ルーキーたちに洗礼浴びさせてやる、って気合い入ってたし…」

朝日監督がそういうと同時に

ズバーーン!!

菱本のストレートがミットを小気味良く鳴らす。そのストレートは144キロと表示されている。菱本の自己最速が146キロなのを考えると…、

「アイツは毎年キャンプで万全の調子に仕上げてそれを1年キープする。今日もバチバチだぞ」

「ま、マジかぁ…」

そう言いながらも先頭打者として9番の奥居が向かう。

「(打ってやるぜ…。ガチで来てくれるってならそれを打ってアピールしてやる!)」

そう思った奥居への菱本の初球はクロスファイヤーのストレート。左腕から投じられたストレートが右打席の奥居のインコースを突いた。そして奥居は思わずのけ反ってしまった。

「ストライクッ!!」

「(ッ! マジかよ、一瞬当たるかと思ったら内角ギリギリ…!?)」

菱本はマウンド上ではプレートの1塁側を踏み、踏み出す右足はさらに1塁側、所謂インステップで投じてくる。その角度は左打者にとっては背中側からボールが来る感覚となる。右打者からは入って来るような感覚で

見易い、打ちやすいと言われがちだが…

「(内角ギリギリを突かれるとどうしてもその軌道が焼き付いて恐怖心に繋がる…!)」

続く2球目はインコースに意識が行った奥居を嘲笑うかのような外角のボールゾーンから入って来るスライダー。菱本の武器の1つ、横滑りのスライダーだ。あっさりと追い込まれた奥居は一旦考えをリセットする。

「(落ち着けオイラ! あれこれ迷ったら負けだ! 来た球を打つ!)」

迷いの無くなった奥居の面構えを見て菱本は笑みを浮かべる。そして投球動作に入り、ボールを投じる。しかしそのボールは真ん中へとやってくるストレート。

「(! 真ん中、失投か!? もらった!)」

奥居は躊躇わずにフルスイングで応じ、バットから快音が響いた。しかし打球はワンバウンドしてから菱本のグラブに収まっていた。

「え? あれ!?」

奥居はピッチャーゴロに倒れワンアウト。そしてここでスタンドのファンが再びざわつき始める。

「こりゃ見ものだな! ゴールデンルーキーと守護神の一騎討ちだ!」

「案外中窪が打ったりしてな!」

「いやー、無理だろ! 菱本ってクローザーなのに100イニング近く投げて防御率1点代だぜ? 簡単には打てねえよ!」

打席には1番の中窪、今日はここまで2安打して実力を見せつけている。

「チームを代表する投手とやれるのは貴重な機会です。絶対打ってやりますよ…!」

「へぇ…、俺から打つってかゴールデンルーキー。…悪いけどお前らルーキーに厳しさ教えるのが…」

サインを交換した菱本がボールを投じる。

「俺の役割なんでね!」

投じられたのは外角低めのストレート。中窪は初球から狙って仕留めに行ったが打球は後ろへとゴロで飛んでファール。

「(ボールの上を叩いた…? そうか、今のがムービングファスト…!)」

菱本はクローザーだが150キロのストレートも分かっていても打てないような絶対的なウイニングショットも無い。持ち球は140キロ台中盤のストレートに横滑りのスライダー、スローカーブ、ムービングファスト、そして…

バシッ!!

「ストライク、ツー!」

「くっ!? 今のが…!?」

バットをするりと避けるように沈むスクリューボール。これを磨きあげられたコントロールで操るのが菱本の投球スタイル。さらに、

「(ランナーがいなくてもクイックを使い分けてくる。それだけじゃない、この人の投球フォームは常にコンマ単位で変わる…!)」

2段モーションかそうでないか、足をゆっくり上げるのかサッと上げるのか、そうした細かい変化で打者を惑わせながらも抜群の安定感のあるパフォーマンスを発揮する。それが菱本という投手である。

低めに外れたスローカーブを見逃してカウントは1-2。中窪はスクリューに警戒しながら全球種に対応すべく待ち構える。

「行くぜっ…!」

「さぁ、来い…!」

菱本が投じた4球目は外角低めへのストレート。中窪は一度見た軌道だとスイングする。 

 

しかしバットは空を切った。

「ストライクッ! バッターアウト!」

「なっ…!?」

中窪は困惑する。ストレートが加速したように見えたのだ。ジャストミートはせずとも空振りはするはずはないと踏んでいた中窪にとってはそう感じたのだ。

「初球、お前が見たのは回転の乱雑な"動くストレート"、つまりムービングファストだ。俺のは意図的に回転をずらして投げてるから当然スピードも所謂ノビってやつも劣る。最後に投げたのはフォーシーム。一般的なストレートってやつだ。こっちは回転とかこだわってるからな。同じストレートと思わない方が良いぜ…!」

「…手厳しいですね、本気も本気じゃないですか」

「当たり前だ、打たれてもあんまり気にするタイプじゃないけど、抑えるときはビシッと抑えるのが仕事なんでね」

中窪も三振に倒れて2番の志藤が打席に入る。

「玲美ちゃん! 頑張れー!」

「あー、あの娘には悪いけど、多分無理やで」

「え!?」

「あの菱本な、高校最後の夏は県大会決勝で負けとるんやけど…、その大会中に左バッターからヒット打たれてないねん」

「…ええ!?」

「元は左キラーとして有名になったんや、今でも左は滅法得意。あの娘にはちょい難しすぎる相手やな」

阿畑がそう言うと同時に志藤はスライダーを2つ、その後に内角低めへとスクリューを落とされ空振りの三振。そして紅白戦は終了した。

 

* * * * * 

 

「結局1軍合流は中窪さんだけだね」

「そうですね、あの人だけはスバ抜けてましたし…」

紅白戦の翌日、1軍2軍の振り分けが発表された。ルーキーからは中窪のみが1軍合流となった。夏穂も志藤も2軍キャンプだった。

「とにかく、今日から1軍目指して頑張ろう!!」

「ええ、頑張りましょう!!」

「オイラもやるぜー!!」

「奥居くん、いたの!?」

「ひどくねーか、それ!?」

 

そうこうして向かった2軍のキャンプ用の野球場、早めに向かったルーキー組だが先客がいた。

「あれは…、ひ、菱本さん!?」

「…ん? ああ、確かお前らは新人の」

「どうしたんッスか!? まさかケガですか!?」

「違う違う。俺はマイペース調整なんだ。ここ2,3年それなりに結果出して、やりやすいようにやっていいってさ」

「な、なるほど…」

「突然だけどさ、お前ら、目標あるか?」

「え? それはまず1軍に…」

「そんなちっさいのじゃないよ。もってデカイ目標だ」

「え、えっと…」

「オイラはスターになることです!!」

答えに困る夏穂と志藤をよそに奥居は即答する。

「まあそれでもいいけど、もっと具体的にさ。例えば…、アイツには絶対に負けない! …とか」

「アイツ…?」

「俺たちの世代はな、『喰われた世代』なんだ。スワローズの二宮とか阿畑もそうだったし、いい選手はたくさんいた。だけどな…」

菱本はどこか寂しそうに笑って続けた。

「猪狩守、山口賢、大西=ハリソン=筋金、そして百瀬幸大と早川あおい…、所謂『猪狩・百瀬世代』。アイツらの多くが2年から活躍して俺たちの世代は霞んじまった。俺はギリギリ引っ掛かった形でプロ入りした。…皮肉にも当時2年の猪狩守擁するあかつきにあと一歩まで迫ったことで有名になったおかげでな。」

猪狩守、名門あかつき大附属で1年からレギュラーを務めた投打に優れた左腕、山口は大学に帝王実業、帝王大学でフォークボールを武器にエースに君臨した右腕、大西はアンドロメダ高校という当時無名だった高校から現れた速球、変化球共に高い実力を持つ左腕。そして早川あおいは夏穂の憧れの投手、恋恋高校でエースだったアンダースローの女性選手、そして百瀬は同じく恋恋高校で早川あおいとバッテリーを組んでいた、そして世代屈指のスラッガーである。現在はパワフルズで内野手にコンバートして活躍している

「じゃあ菱本さんが負けたくないってのは…」

「猪狩・百瀬世代だけには負けねえ! ってやってきたのさ、俺は。…まあ今はとにかくファンの期待に応えることが一番だけどな。でも、プロとしてやる以上は誰かに勝ちたいって目標は必須だと思うぜ? ライバル、ってやつさ」

「ライバル、かぁ~」

「わ、私もあまりそういうのは意識したこと無いですね…」

奥居と志藤が悩んでいるのと同時に夏穂も考える。負けたくない選手…、ライバル…

「います、ライバル。向こうはどう思ってるか知りませんけど…」

「ほう、そりゃ良いことだ。片思いだっていい、頑張れる原動力になるならな」

「はい、いつか、勝ってみせます。それに、他に目標もありますし…」

「良いじゃないか、次々叶えちまいな。なんかお前なら出来そうな気がするよ…、っと。そろそろアップ始めないとな、お前らもしっかりやるんだぜ?」

「「「はいっ!」」」

 

練習の準備へ向かう中、夏穂はある人物を2人思い浮かべた。

「(まずはトモ! 対戦した暁には絶対に三振とってやる! 打たせてあげないもんね! …それから、あおいさん。いつか超えてみせます! それから野球をやってる女の子たちに、勇気を与えられる存在になってみせる!)」

夏穂のプロ野球選手として道はここからがスタート。

この先にどんな壁が待ち受けているとしても、彼女はこれまでそうしてきたように、新たな自分の力を手に入れて乗り越えていくだろう。仲間、ライバル、そして自分自身と共に夏穂は突き進んでいく!




ここまで読んでくださった方も、この話だけ読んでくださった方もありがとうございました。
最後ということで書きたいこと、出したいキャラを出していきました。そのためとても長くなりましたが…。
一応この作品は完結という形となります。まだまだ全てのことを書ききれてないと思いますが、思いつきで始めたことをここまで形にできたのは良い経験になったと思います。

では最後に改めて、ありがとうございました!
感想の方にコメントいただけたらできるだけお答えしたいと思ってるので、気軽にどうぞ!
また、何か書く機会があれば頑張ろうと思います。

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)
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