GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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11話 ロシアの戦姫

 

 

朝方、司令室に呼ばれた第一部隊は、ツバキの到着を待っていた。

ここ暫くは大きな任務も無かったので、司令室なんて大仰な所に無縁だったので、ユウやリンドウは妙に落ち着かないでいた。

「もう、二人共。そんなウロウロしないで、少しは落ち着いたら?」

「いやー、久々な感じがして、こうかしこまった場所は苦手でして」

「ユウ君、わかるよ。俺もこういった、なに?お偉いさんの匂いがするような場所、苦手なんだよな〜」

いつもの様に頭を掻きながら、「面倒」を隠す気もなく大欠伸をするリンドウ。そんな姿に呆れたのか、言っても無駄と思ったのか、溜息を吐いた後、サクヤも口出ししなくなった。

「それで、今日はなんで呼ばれた」

ソーマの質問に、リンドウはニヤリと笑う。

「喜べ〜、皆の衆。仕事量に見合わない第一部隊に、ありがたくもお偉いさん方が重い腰を上げなさったそうだ」

その言葉に、皆目を丸くする。今の面子になってから早半年。忙しさに追いまわされていても、見ないフリを決め込んできたフェンリル上層部が、増員を、しかも第一部隊に斡旋したのだ。驚きは隠せない。

「それは嬉しいですけど、何人?」

「なーんと、三人もだそうだ!」

「えっ?三人も?それ誰の権限?やっぱり支部長なの?」

サクヤの質問は的をえているが、リンドウはあえてトボけた反応見せた。

分かっていても、あえて口にはしない。大人の世界なんて、そういった化かしあいの場でもある。雄弁は銀だが、沈黙は金である。

「皆、待たせたな」

声の主をツバキと確認し、皆は整列を始める。列が整った所で、リンドウが目で合図をする。

「今日はお前達に紹介する者達がいる。入れ!」

幾つかの足音が後ろから前に回り、第一部隊同様、横一列に並ぶ。その顔を確認し、

「ほぅ〜」

「あら♪」

「あ、あ〜」

「ふん」

それぞれ違った反応を見せた。

 

「これからお前達の配属される、第一部隊だ。これからは訓練とは違う、本当の戦場だ。三人共、気を引き締めて任務に当たる様に」

「「「はい!」」」

「ではまず、お前達から挨拶しろ。新人」

「お前からだ」と促され、当の本人は一歩前にでる。

「本日より、第一部隊に配属となった、藤木コウタです!よろしくお願いします!」

一礼し、退がったコウタと入れ替わりに次の少年が、一歩前にでる。彼にとっては、願ってもない部隊。

「本日より、第一部隊に配属となりました、空木レンカです!よろしくお願いします!」

そして、また入れ替わりに一人、一歩前にでる。

「本日より、フェンリル ロシア支部より転属となりました、アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。よろしくお願いします」

三人の自己紹介が済むと、再びツバキが口を開く。

「以上三名を、本日9:00分より、第一部隊に配属となる!まだ右も左もわからぬヒヨッコ揃いだが、希少な新型を二人も預かるのだ。明日からの任務より、しっかりと面倒見る様に。良いな!」

「「「「了解」」」」

そのままツバキはリンドウに視線を移し、「わかっているな?」と目で訴える。

「では、後は隊長の雨宮リンドウに任せる。以上だ!」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

 

ツバキが去った後に、軽い自己紹介をと皆を止まらせ、リンドウは軽く咳をし喋り始める。

「あー、簡単な紹介は受けてると思うが、・・・まぁ形式上、な!」

そう言ってから三人の新人を見回し、大きく頷き再度話し出す。

「俺の名前は雨宮リンドウ。この第一部隊の隊長ってのをやってる。まぁ、お互い死なない程度に頑張ろうや」

軽く笑いながら、手を上げる。その軽い様子に、アリサは目を細めて不快を示す。

その様子を見ないフリをしたのか、リンドウはそのまま下がりサクヤに次を促す。

「私は橘サクヤ。この部隊で副隊長をやってるわ。新人さん達、期待しているわね♪」

軽くウィンクをして手をふるその仕草に、コウタは目を奪われる。サクヤと交代に、動こうとしないソーマに軽く息を吐き、ユウが前に出る。

「神薙ユウです。僕もこの部隊ではまだまだ新参者だから、余り大したことは教えられないかもだけど、これから・・」

「あなたが、世界初の新型ゴッドイーターですか」

ユウの自己紹介に被せて、急にアリサが口を開いた。しかもその目は、まるで仇敵を見つけた様に、真っ直ぐ睨みつけている。

「あー、うん。そうなるのかな?そう聞いてるし」

「あなたが、どれ程の実力を買われてるのか知りませんが、同じ新型として、一言言わせていただきます。今日までのあなたへの賞賛、全て忘れて下さい」

「!!おまえ・・!!」

突然の言動と態度に痺れをきらせ、レンカがアリサに突っかかろうとしたが、それをユウが制する。

「よく、分からないんだけど、どうして忘れなきゃいけないのかな?」

その言葉に、まるで躾けられていない犬を見る様に冷たい目を向け、アリサは溜息をつく。

「・・・ドン引きです。わからないんですか?」

「・・・・・教えてくれる?」

再度溜息をつき、アリサは不敵に笑いながら答える。

「今日から、私が最強の新型ゴッドイーターとして、君臨するからです。あなたの居場所なんて、もうありません」

「・・・・」

完全に頭に血が上ったレンカを、コウタが必死に抑える。サクヤは「あらー」といった感じで苦笑し、リンドウは面倒くさそうに頭をかく。当のユウも頬を掻きなが、「えーっと、」と困った感じで対応を考えている。

そんな中、傍観に徹していたと思ったソーマが、低く笑い出す。そんな、レアな光景に皆驚き、知らぬアリサは眉間にシワを寄せて声をかける。

「何が可笑しいんですか?」

「くくくっ、コレが笑わずにいろと?現場もろくに知らない新人が、くくっ・・・!」

笑いを止めないソーマに、遂には苛立ちを露わに、アリサは食って掛かった。

「何なんですか!さっきから!誰なんですか、あなたは!」

その瞬間、今まで笑っていたのが嘘の様に冷酷な眼を向け、ソーマはゆっくり前に歩き出した。

「・・・ソーマ・シックザール」

「!!!・・・・・あなたが、地上最強の、・・・ゴッドイーター」

その答えにはさして興味がないのか、ゆっくりとした歩みをユウの横に止める。

「そんな称号に興味はないが、物知らずなお前に教えといてやる」

そう言ったソーマは、トンッとユウの肩に手を置く。

「今お前が喧嘩を売ったこいつが、第一部隊最強だ」

「へ?」

ソーマの突然の啖呵に、ユウが間抜けな声を出してしまう。その様子を、意外そうな目でレンカとコウタは見つめる。

「まさか、・・・」

目を大きく開き驚くアリサを他所に、リンドウとサクヤは吹き出しながら、ユウの周りに集まる。

「くくくっ!そうだな、ソーマ。確かに、今の内のエースは、間違いなくこの神薙ユウ大先生だ!」

「そうね、ふふふっ!」

「ちょ、ちょっとー、サクヤさんやリンドウさんまで。勘弁して下さいよ」

その仲間の友情ごっこのような様を、気に食わなかったのか、アリサが再び声を荒げる。

「ふざけてるんですか!!こんな緩い、なよなよした人なんかを庇って!ゴッドイーターとしての自覚が足りないんじゃないんじゃないですか!!」

力一杯の怒号に、少し後ずさったが、リンドウは「やれやれ」と子供を窘める親の様に、優しく答えた。

「アリサー、だっけか?こいつの実力、信じられないか?」

「えぇ。絶対にありえません。そのぐらい、見れば判ります。馬鹿にしないで下さい」

「そかそかー。んー・・・、じゃあ、」

そう言ったリンドウは、今度は面白い悪戯を思いついた子供の様に、アリサに言った。

「俺と賭けようか?」

「はっ?」

「もし俺達の言う通り、ユウの実力が内のエースに遜色ないのなら、俺の勝ち。逆に〜、アリサの言う通り、ユウがやっぱり見た目通りなら、お前の勝ち。どうだ?」

「ちょっと!リンドウさん!何もそんな事しなくても・・・、て言うか、リンドウさんも見た目はなよなよしてるとおもってたんですか?僕の事!」

「良いから、黙ってろ〜。で?どうだ、アリサ?」

少し伏目に考えてから、アリサはリンドウに目を向ける。

「私が勝ったら、どうするんですか?」

乗って来たのを確信し、リンドウは楽しくなってきた。

「そうだな!じゃあ〜〜、第一部隊をお前にやるよ」

「・・・はい?」

「だから、隊長の座をくれてやるって言ってるんだよ」

「・・・・・・・ふざけて、無いんですね?」

「あぁ。申請は隊長の俺直々の推薦で後押ししてやる。乗るんだろ?」

その言葉に挑発を感じ取ったのか、フンッとアリサは踵を返し出て行こうとする。そして扉の前で足を止める。

「ちなみに、そちらが勝った場合は?」

「あぁ、簡単だ。皆んなと仲良くやるように!以上だ」

「・・・わかりました。明日、真実を教えて差し上げます。お疲れ様でした」

賭けの成立を最後に、アリサは一人司令室を後にした。

 

 

「はぁ〜〜」

「・・・もう、なんなの急に。久しぶりに顔を出したと思ったら、溜息ばかりついてさ。何かあったの?」

「いや〜〜〜〜、・・・はぁ」

解散した後、ユウはリッカの所に顔を出していた。今リンドウ達と顔を合わせると、小言を言いそうだからだ。リッカのいる開発局には、ゴッドイーターも滅多にこないから、隠れるために逃げ込んだのだった。

「溜息、止めてくんないかな。私がユウ君を落ち込ませてるみたいで、何か妙な罪悪感がわいてくるんだけど・・」

「あ、ごめんね。リッカが悪いとかじゃないから」

「はいはい、信じますよ」

軽口を叩きながらも気になったのか、リッカはゴーグルを外して作業をやめ、ユウの隣に座る。

「で、どうしたの?」

「えっと、・・・うん」

「話しにくい事?」

「うーーん、人が絡んでるから。リッカに変な心象与えないかなって」

苦笑いを浮かべ、頬を掻きながらユウは気まずそうに下を向く。

「別に。私は基本自分の見たものしか信じないから。ほら、一応科学者の端くれだしね!」

「うん、そっか」

「・・・私が、一番話しても当たり障りないから来たんでしょ?」

そう言われて、ユウは慌てて首を振る。

「いや、そういうんじゃないって!一番話しやすい相手ではあるけど、ここに来たのは、ちょっと、・・・あまりリンドウさん達と顔を合わせたくなくて」

「喧嘩でもした?」

「そうじゃないよ。ただ、・・・・・・」

「・・・・」

「・・・リッカ、話すね」

「うん」

返事を聞いてから、ゆっくり頭の中を整理し、ユウは言葉を選びながら話した。

「今日、第一部隊に新人が入ってきて」

「あぁ、今日だっけ?コウタ君とレンカ君でしょ?後はー、ロシア支部から転属してきた・・・」

「うん、アリサって言うんだけど、」

「ちょ、ちょっと待って?ロシア支部の転属者って、女の子?」

「えっ?そうだけど、リッカは知らなかったの?」

「いや、私は送られて来た神機の調整ぐらいしか・・・、ごめん、続けて」

「あ、うん。そのアリサとね、・・・ちょっと揉めたというか、うーん、明日勝負する事になっちゃって」

「勝負⁈何を?じゃないか。何で?」

何故かあたふたするリッカに首を傾げながら、ユウは続ける。

「うん。何かどっちが、最強のゴッドイーターかー、って」

「・・・・なーーーんだーー!!」

「えっ、何が?」

「いえ、何でも。それで?大方リンドウさん辺りが賭けようとか何とか言ったんじゃない?」

「え、よく分かったね。リッカ凄いね!」

「まぁ、さっきリンドウさんの名前が出たから、なんとなくね。でも、それなら別に気にする事ないんじゃない?適当に勝負つけたらさ」

その受け答えが、当たり前だ。単なる勝負なら、ユウも簡単に受けたかもしれないが、なにしろリンドウが賭けたのは、

「リンドウさん、自分の隊長の座を賭けたんだよ。僕に」

「・・・・・はぁ、リンドウさんらしいというか、何というか。ユウ君の性格的には、少し重いかもね」

「はぁー、負けたらどうしよう」

そんな、ユウに少しばかり可愛いらしさを感じて、リッカは軽く頬を染めたが、真剣なユウにちゃんと答えようと、軽く頬を叩き立ち上がる。

それに驚いたユウの目の前に立ち、ずいっと右手の人差し指を伸ばす。

「ユウ君!『負けたら・・』なんて、考えちゃダメだよ!『勝つ』でしょ?」

「えっ、・・・あっ」

少し戸惑ったユウに、笑顔を向け、リッカは左手を腰に、右手でドンと胸を叩く。

「大丈夫!だって、ユウ君は・・・、私達の明日を切り開いてくれるんでしょ?」

「あっ・・・」

「・・・・・ねっ!」

その言葉は、彼の覚悟。彼の願い。そして、皆んなの希望。

「うん、そうだね。今僕達の部隊をバラバラには、出来ないよ。僕には、まだまだやらなきゃいけない事があるから。そしてそれには、皆んなが必要なんだ!きっと、アリサも。・・・リッカ、ありがとう!」

「うん!やっぱり、ユウ君は落ち込んでるより、笑ってる方が似合ってるよ!」

「うん!本当にありがとう、リッカ!」

そう言って立ち上がったユウは、また自然とリッカの頭を優しく撫でていた。

「うっ、・・・おぉ・・おぅ・・・・・ふぅ」

抵抗しようか迷いながら、やっぱり気持ちいいので思い止まったせいか、リッカの口から変な声が漏れた。

「でも、まだリンドウさんに会ったら小言いいそうだから、もう少しここにいていい?」

「・・・お好きに。・・・・作業、戻るね」

「うん!」

スッとユウから離れ、作業台に向かったリッカは、この時間をもう少し楽しめる事に、喜びを隠せず顔が綻んでいた。

 

 

 

「ところでさ、彼女は何を賭けたの?」

「あぁ、大したものじゃないよ。何か、仲良くなろうってやつ、だっけ?」

パキンッ!

「ん?リッカ、変な音したけど、大丈夫?」

「ん、うんー。大丈夫、大丈夫。はははっ、仲良く、ね」

「??うん」

「・・・・・・・・最悪だ〜〜」

「???」

 

 

 

 




アリサ さん、極東にいらっしゃいませ!
と、いう訳で次はユウVSアリサの対決!
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