GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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16話 ボーダーライン

 

 

「気分は、どうだい?」

「・・・はい。凄く、良いです」

「そうかい。じゃあ、こちらでの生活が、あっているのかな?」

「・・・わかりません。でも、」

「でも?」

「・・・嫌いでは、ないです」

「それは、凄く良いことだね〜」

「・・・・」

「じゃあ、もっと調子の良くなる、おまじない。しておこうか?」

「・・・はい」

「さぁ、これ、これだ。この世界の、人類の敵、荒神だ」

「・・・荒神」

「そう。こいつらは君の、ここでの楽しい生活を、壊そうとやってくる。君の、以前の、幸せな生活を、壊したのも、こいつらだ」

「・・・許、さない」

「そうだ。許せないね〜。殺さなくちゃ、ね〜」

「・・・はい」

「・・・だから、引鉄を引くんだ・・・。恐れることはない。君が、強くなる・・・言葉、・・・アジン・・」

「・・・ドゥヴァ」

「「・・・・・・・トゥリー・・・・」」

 

暗く、閉ざされた医療棟の1室にて行われる、"おまじない"。誰にも知られぬよう、ひっそりと、忍ように・・・。

そして、極東支部のGOD EATER達の物語に、一雫の異物が投じられる。

 

「良く出来たね〜、うん。・・君は、・・・良い子だ、・・・・アリサ・・・」

 

 

極東支部作戦司令室。

ここでは極東支部全域を守護するため、日々監察を行い、戦うゴッドイーターに最大限の情報と対策を与えている。常に人が出入りを繰り返し、ありとあらゆる所から声と音が反響する。ただでさえ忙しいフェンリル極東支部の中で、決して休まない空間である。

 

比較的落ち着いていた昼時前に、サクヤは司令室へと脚を踏み入れる。いくつかの人の群れの中、目的の人物を目に捉え、その人の前まで行く。

「・・・ん?そうか、もうそんな時間か。すまん、もう少し待ってくれ」

「はい」

サクヤの探し人の雨宮ツバキは、そう伝えると手早く指示を出し、取り巻きのオペレーター達は頭を下げ、持ち場に戻って行く。書類を軽く整え、「ふぅ」と息つき額に手をやりながら、ツバキは改めてサクヤの目の前に立つ。

「お疲れですか、三佐?」

「いや、・・・まぁな。少し、睡眠不足か」

最初は否定しようとしたが、相手がサクヤと見ては、隠す気も失せたのだ。

「最近、装甲壁が度々破られてる、件ですか?」

「そうだな。壁の外は、荒神達が闊歩する庭だ。そこに珍しい公園、いや・・・、お菓子の家かな?置いてあれば、アリでも食いつく」

「ですが、その為の装甲壁では・・」

その疑問にまたも頭を抱えるツバキは、何かを納得したように頷きながら、疑問に答える。

「物資不足、だそうだ」

「・・・え?」

「最近、また荒神の偏食傾向に変化が見られる。だがそれに対応し、強化に用いる物資が、圧倒的に足らないそうだ」

その言葉に一度は驚きを露わにしたが、すぐに切り替えサクヤはツバキに詰め寄った。

「お言葉ですが、皆日々充分過ぎるほど物資を回収してます!装甲壁の強化に回せる、新種の荒神の素材なら、第一部隊でいくつも回収してます!なのに・・・!!」

「わかっている!」

手を前に憤るサクヤを制し、ツバキは悔しげに話し出す。

「・・・エイジスだ」

「っ!!・・・それって」

「お前も聞いているだろ?この世界に生き残る全ての人類を収容する、巨大シェルター。本部のお偉方の後押しがあってか、新種のコアや素材は優先的に回されていく」

「そんな・・・」

「改修班の連中の抗議から、1度文句を言いに行ってみたが・・・。そんな時に限って、上層部の連中が視察に来ていてな、何を言っても右から左、何も出来なかった」

「・・ツバキさん」

軽く嘲笑し、目を閉じたツバキ。その姿は、泣いているようにも見えた。

「駄々をこねる子供が、大人の都合で欲しい物が手に入らない気持ちとは、あぁ言った気分なんだろうな。何も出来ず、ただ恨めしく睨むしかなかったよ」

「・・・すみません、何も知らずに。軽率でした!」

頭を下げてきたサクヤに、ツバキは優しく笑みを見せ、肩に手を置いた。

「サクヤ、ありがとう」

「ツバキさん」

「こんな不甲斐ない私や、リンドウと一緒に居てくれる。こんな鉄面皮の私には、それが何よりの宝だ」

「・・・ぅ!」

少し涙ぐんだ目尻を拭って、サクヤは笑顔を作りツバキに伝える。

「これから先、何時までも一緒に、お二人の側に居ます!」

「・・・そうか」

目を閉じ、この優しい時間を守る為に、ツバキはいつもの鉄の仮面をかぶる。

「話が逸れたな。・・いや、全く無関係とは言わんが、・・」

「どういう、ことでしょう?」

「まぁ、良い。必要な事を全て話していこう」

改めて気を引き締め、ツバキがサクヤに上司として命を下す。

「橘サクヤ!本日より、お前を第一部隊隊長とする!以後は、お前が第一部隊隊長として、皆を導くように!」

「・・・・え?」

「それにあたり、雨宮リンドウ隊長は遊撃手とし、特務に専念して貰うつもりだ。後任の副隊長には、新人だが空木レンカに任ずるつもりだ。私としては神薙ユウが良いと思ったのだが、本人の希望と推薦により、空木へと・・・」

「待って、下さい」

「それと、ソーマ・シックザール及び神薙ユウは、開発局からの特務を主に動いて貰うため、基本はレンカ、コウタ、アリサとの四人編成で動いて貰う。その際に・・」

「待って下さい!!」

嘆きのような叫びが、司令室に響き渡る。その場にいた皆が、何事かと手を止め、それを発したサクヤに注目する。それを良しとしないように、ツバキは野次馬に睨みを聞かせ、サクヤの手を取り外へ出る。

「待って下さいツバキさん!お願いします!私達はリンドウが隊長だからこそ!」

「黙ってついてこい!」

そのまま廊下を早歩きで、進んでいった。

 

 

「・・・それで、どうしてここなんだい、ツバキ君?」

「申し訳ありません」

ツバキがサクヤを引っ張って来たのは、開発局研究棟のペイラー・榊博士の研究室であった。研究報告書をまとめていた榊博士は、キーボードの手を休めることなく二人に話しかけていた。

「少々、場所をお借りしたくて。・・・例の件、余り聞かれたくありませんので・・・」

「あぁ、アレの事かい?まぁ、私も無関係ではないし、かまわないよ」

「感謝します」

「・・・あの、お二人は何を、仰って・・」

連れて来られるまで騒ぎたてたせいか、サクヤは冷静になったが故に疑問を投げていた。ただニコニコと笑いながら今だ手を動かし続ける榊博士と1度頷き合い、ツバキはへたり込んでいるサクヤに話し始めた。

「本当は、公の場で手順を済ませ、それからと思ったが・・・、お前の気持ちを考慮しなかった私のミスだ。まずは、それを謝ろう。・・すまなかったな、サクヤ」

「あの、ツバキさん?」

一息ついてから、ツバキはゆっくり立ち上がる。それに合わせて、サクヤもゆっくりと立ち上がる。

「今回、この様な話を強行したのには、ちゃんと理由がある。それが、私の愚痴に繋がるのだが・・」

「ほぉ、ツバキ君が愚痴をね・・」

「その話は、今は結構です」

「おや、失敬」

榊博士にちゃちゃを入れられたのを一蹴し、軽く咳をしてから話を戻す。

「私はエイジス計画を否定するつもりはない。が、エイジスにばかり物資を回されては、ここで暮らす者達の安全を確保出来ない。それは、ここに暮らす者達を護るゴッドイーター、それを護る私としては全てを掌握しかねる。なので、上を納得させつつの計画を、榊博士の協力の元行うことにした」

「・・・そう、何ですか?」

サクヤは視線を榊博士に移すと、博士は笑顔で応えた。

「現在、リンドウは支部長直轄の特務に駆り出されている。表向きにはエイジスに最優先で必要な物資の確保・・となっているが、実際はどうなのか私も把握していない。まぁ、それはこの際詮索はしない。なので、支部長に媚びを売って、こちらも裏で色々動いてやろうと思ってな」

「・・・ツバキさん」

「先程言った通り、サクヤには第一部隊の隊長となってもらい、レンカ、コウタ、アリサを連れて今迄通り、最前線で荒神討伐の任務にあたって貰う。勿論、必要に応じては、リンドウ、ソーマ、ユウを同行させる様にする」

「はい」

「普段四人で動いて貰う間、ユウとソーマには開発局長である榊博士直轄で任務を発行して貰い、二人に・・・改修班に不足している物資を、可能な限りかき集めて貰う」

「えっ?」

それは、ある意味フェンリルという組織の目を欺く、限りなく黒に近い行為。物資の流通を、捻じ曲げるのだ。

「でも、そんな事が上に知れれば・・!!」

「わかっている。ばれた時には、最悪私が博士を脅し、お前達を命令に屈させ、勝手に一人で強行したということにする。そうすれば、お咎めは私しか受けない」

「っっ!!そんな⁉︎」

「サクヤ君」

説得の言葉を発する前に、榊博士がそれを制した。もう報告書が出来たのか、PCを横に避け、真剣な顔を向ける。

「ツバキ君は、自分の身をかける覚悟で、君達に協力を要請してるのだよ。・・・正直に言おう。私の予想では、このまま何も対策を打たなければ、装甲壁は1ヶ月も待たずに、全て突破される」

「そ、そんな!!」

後1ヶ月。既にここで暮らす人達の命は、神様の天秤にかけられていたのだ。その無情な真実に、サクヤは唇を噛む。

「しかし、私とツバキ君の考える計画を遂行すれば、・・・そうだな。ソーマ君とユウ君の実力なら、1週間も経たずして半年分の安全確保が可能だろう。勿論、1週間件の特務につきっきりという条件下の話ではあるが・・・。どうだろうか?」

悩むサクヤの頭には、リンドウの顔が浮かぶ。

「でも、・・・リンドウが」

「リンドウには、もう話を通してある」

「えっ?じゃ、じゃあ、リンドウはなんて?」

溜息をついてから、ツバキは苦笑しながら言った。

「『サクヤなら大丈夫でしょう。結構な計画じゃないっすか、やるなー姉上。でも、姉上が責任被ることは無いですよ。なにしろ、』」

1度言葉を切ってから、ツバキはサクヤを見つめ、言った。

「『俺達は、極東支部の第一部隊。失敗はあり得ないっすよ』」

その言葉は、間違いなくリンドウのもの。だからこそ、迷っているサクヤの心に深く響いた。そしてリンドウの覚悟に、サクヤも同調していく。

「・・・当然、ユウもソーマも、納得済みなんですよね?」

「そうだね。ソーマ君はいつも通りだが、ユウ君は『ノリノリ』、と言った感じかな」

「そうですか」

そして落としていた視線を、サクヤは前に向けた。確かな覚悟を持って。

「第一部隊隊長、しかと承りました。今後は、私が新人達を導きます!」

その覚悟に、ツバキと榊博士はフッ軽く笑いながら、一礼する。

「ありがとう、サクヤ」

「いえ、上に従うのは、ゴッドイーターとして当然です」

その反応に疑問符を浮かべた榊博士は、しばらく思慮した後に、急に笑い出した。

「サクヤ君、別にここではかしこまらなくても良いよ」

「いえ、そういう訳には、」

「誰にも聞かれてないし、見られてもいないよ」

「・・・・え?」

その反応に合点がいったのか、続きツバキも笑い出した。

「そうか、そうか。くくくっ!」

「な、何なんですか?」

サクヤが一人狼狽していると、榊博士は少し息を整えて説明してくれた。

「サクヤ君、この研究棟・・・と言うより、この私の研究室は完全傍受してるのだよ。盗聴システムも監視カメラも、私の都合のいいように改竄済みさ。つまり、フェンリルでもっともセキュリティが強固な場所という訳だよ」

「・・・・・そ、そんなー!」

「あんな危ない計画の話を、堂々とする訳がないだろう。全く・・・くくっ」

よく考えればそうなのだが、少しテンパっていたサクヤは、そんな単純な事にも考えが及ばなかったのだ。

少し剥れるサクヤに、一つ咳込み、ツバキは改めてサクヤの前に立つ。

「では、改めて申し渡す!橘サクヤ!本日より、お前を第一部隊隊長に任命する!異論なく・・・、受けてくれるな?」

サクヤも、顔引き締め敬礼する。

「橘サクヤ!第一部隊隊長、拝命いたします!これからも、よろしくお願いします」

二人ともクスッと笑い合い、緊張を解く。

「安心しろ。ご執心のリンドウを支部長にくれてやるんだ。少々は目を瞑って貰うさ」

「はい!あ、でもリンドウ、支部長が苦手なんですよね」

「気の抜けてる愚弟には、丁度良い薬だ」

そんな会話に同調してか、榊博士も含め、三人は笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 




サクヤさんを第一部隊隊長にしてみて、物語を動かしてみます!

リンドウさん、クビ!!(笑)
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