その日エントランスに集められたレンカ、コウタ、アリサは、新人同士仲良く・・・とはいかず、不自然なぐらい黙って待っていた。
この状況に当然落ち着かないのは、お騒がせパーティー男の藤木コウタ(自称)である。
そもそも、[黙って座るのは30分]をもっとうに生きてきた愛すべき全力馬鹿は、他の部隊の人間より、第一部隊の人間との会話がない。一番話すレンカでさえ、「あぁ」とか「そうだな」とかしか答えが返ってこないのだ。体と一緒に口もひたすら動かしたいコウタにとっては、こういった沈黙はとても耐えられない。
と、いった事から、コウタは我慢出来ず口を開いた。
「あっ、のさー、・・・今日って、俺らだけー、なー、のー、・・・かな?」
「ん?そうだな。俺は昨日サクヤさんからそう聞いてる」
「・・・同じく」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・会話終了。
「くぅ〜〜〜っ!!!!」
奇声を上げながら、コウタは頭をかきながら足をバタバタさせる。その様子を二人共気にはしたが、触れないでおこうと捨て置いた。
「お待たせ〜♪」
結局サクヤが来るまで沈黙が続き、スッと立ち上がったレンカとアリサとは対象に、コウタは少し疲れた様子でノソッと立ち上がる。
「ん?コウタ、何か疲れてる?」
「・・・いえ、ちょっと・・・沈黙の要塞に・・・・・」
「??・・そ、そう。まぁ、いいか。今日三人に集まって貰ったのは色々と報告が有るからなの」
「報告、ですか?」
「新しい任務か何かですか?」
サクヤは首を振って、ふぅっと息を吐き三人を見つめる。
「昨日雨宮三佐より、人事があったわ。私、橘サクヤは副隊長から、隊長をへの昇進が決まりました。以後は、私がこの第一部隊を率います」
「え、ええぇ⁉︎」
「と、突然、ですね」
「・・・リンドウは、どうなるんですか?」
この知らせに、レンカだけが即切り返し、質問してきた。
「リンドウは今、支部長直轄の特務が忙しいの。だから、私が隊長の任を引き継いで、リンドウには第一部隊に籍は起きつつも、特務に専念して貰うって事らしいわ」
「成る程〜、それでリンドウさんは最近いなかったのか〜」
「じゃあ、隊長にサクヤさんが。空いた副隊長の席は誰なんです?やっぱり、ユウですか?」
その質問に首を振り、それからレンカに視線を動かす。
「後任の副隊長は、レンカ。あなたよ」
「え?お、・・・俺、ですか?」
「えぇ。今日の任務終了後に、三佐から出頭の命が来ると思うから、そのつもりでね」
「俺が、・・・副隊長。・・・」
「やったじゃんレンカ!出世じゃーん!!」
「あ、あぁ」
騒ぐコウタに比べて、微妙な反応しか示さないレンカ、それに納得行かないような顔で黙っているアリサ。それも含めて想定内と、サクヤは話の続きを言い出す。
「レンカを副隊長に推したのは、ユウだそうよ」
「えっ⁉︎」
「まさかっ!!」
「ユウさん?・・・ええぇ!!!」
「そうよ」
もう理解したであろう三人に、詳しく説明を始める。
「実はリンドウ以外に、ソーマとユウの二人にも、優先的に特務をこなすようにと御達しがあったの。それで今回の人事移動で、・・・みんなの御察しの通り、ユウに副隊長への移動の話があったの」
「なら、どうして俺なんかに!!」
「・・・聞いて」
レンカの気持ちを落ち着けるよう、手を前に出し制すると、サクヤは続ける。
「ユウ自身が蹴って、レンカを推薦したの。この近辺一帯の地理地形の把握や、逃げる時の冷静な判断から、だそうよ。私には、すぐに激昂する熱血少年に見えるんだけど、ユウはそう判断するそうよ」
ニコッと笑ってから「どう?」と言った感じでレンカの返事を待つ。
「ユウさんが、そこまで俺を・・・」
それでも納得いかない雰囲気を出し続けるレンカに、溜息まじりにアリサが隣に立った。
「良いんじゃないんですか?ユウの推薦なら。それに、悔しいですけど、今の私よりは空木さんの方が副隊長に向いているのは事実ですし・・・」
「そうだよ!ユウさんもさ、お前だから任せるって託したんじゃねぇーの?受けろよ、レンカ!副隊長!」
「・・コウタ、・・アリサ」
同期の言葉に後押しされてか、尊敬するユウの思いを汲んでか、レンカは一度深呼吸をし、サクヤに一礼する。
「サクヤさん!副隊長、喜んでお引き受けします!至らないところは、遠慮なく言って下さい!」
「はい、よろしくされました♪」
そこで、ようやくモヤッとした雰囲気を払拭し、いつもの第一部隊の空気となった。
「それじゃあ、今日の任務、パパッとやっちゃおう♪」
そう言ったサクヤにダブって、リンドウの姿を見た三人は、急に笑い出した。
「サクヤさん!リンドウさんの真似っすか〜!」
「あら、似てた?」
「『パパッと』なんて台詞、リンドウさんぐらいしか使いませんよ!」
「そ、そうかな〜、私、うつってきたのかしら?」
「・・・いいと、思いますよ」
そんなやり取りをしながら、神機保管庫へと足を進める四人であった。
棄てられた工場跡地。
その一画に、ソーマは息を潜めていた。コンビで動くときには、いつも『眼』となって標的を捕らえるユウの連絡を、こうして静かに待つのが、二人の基本戦術だ。とは言ったモノの、標的発見後は、戦術らしい戦術は無いに等しいが・・・。
「・・・・」
『・・・ソーマ、標的発見。15秒後にそこを通過予定』
「・・・了解」
静かに答え、ソーマは神機を持ち直し、飛び込む構えを取り頭の中でカウントを取る。
(12・・13・・14・・っ!!!)
15秒目を数えず、ソーマは駆け出し、標的のサリエルを射程に捕らえ、一気に切り上げる。
ザシュッバキィッ!!!
それに合わせて、上からユウが頭に神機を叩き入れ、当のサリエルは腰を仰け反った形で地面に落ちる。
相手が倒れたのを確認し、二人は同時にプレデターフォームに変型、そして、
グァブゥッ!!!
「こちら神薙、エリア内の全標的、討伐完了です。榊博士、他は大丈夫です?」
『そうだね。今いるエリア内の新種の荒神、サリエルは狩り尽くしたようだね。う〜ん、ついでだから廃工場内に、コンゴウが3体程確認できる。それも一緒に、良いかな?』
軽い口調で追加を申し出る榊博士に、黙っていたソーマが「ちっ」と舌打ちをする。
「おい、ガキの使いじゃねぇんだぞ?命懸けの仕事を、簡単に増やしてくれんじゃねぇよ」
「まぁまぁ、ソーマ」
「てめぇは、てめぇで・・・」
そんな会話を、死地で軽くしているものだから、無線越しに榊博士は「ククッ」と笑いを堪えた。
『いやいや、そんなつもりじゃないよソーマ君。ただ、君達二人なら、わけ無い相手だろ?』
「・・・ふん。持ち上げたつもりかよ」
「あー、まぁ、了解しました。状況を確認し、危険が無ければ討伐します」
『うん。よろしく頼むよ♪』
無線が切れた後、立ち上がろうとしたユウに、ソーマが水筒を投げつける。受け取ったユウが、ソーマに目を向けると、ソーマはゆっくり乾パンをかじっていた。
「ソーマ?」
「本来の任務は終わってんだ。俺はもう少し休む」
相変わらず表情は硬いが、ソーマはユウに休めと言っていたのだ。当然、二人での任務が主になっていたユウは察している訳で、クスリッと笑って水筒に口をつけた。
「・・・っはぁ!・・ソーマってさ、根は優しいから女の子とかにもてそうだよね」
「はぁ?何言ってんだ、お前?」
「いやいや〜、『マブダチ』としては気になるじゃない?そういうのも♪」
そんなやり取りに嫌気がさしたのか、ソーマは舌打ちしながら神機を担ぎ、黙って廃工場に入っていく。その行為に慌てて、ユウも神機を手に取りソーマの後を追う。
「なに?怒ったの、ソーマ?」
「そういう話には興味がねぇ」
「えー、気になる女の子の話は、男同士の嗜みだってリンドウさんが・・・」
「また、あいつか。ユウ、お前いい加減リンドウの言うこと、真に受けるなよ」
「そうかな〜」
「・・・そういうお前は、いるのかよ?」
「えっ!!・・いや、・・う、う〜ん。・・・何というかー」
「お前の方が、いい反応するじゃねぇか」
「あぁ!笑わないでよ!!」
二人の会話は、暗い工場内に溶け込んでいき、5分後には、コンゴウの断末魔が木霊した。
かつて『電車』という乗り物が走っていたという。各街や村の中心辺りに、乗り場を作り、そこから乗り込み街から街へと移動する。電気を使うようだが、こんな時代の電気はかなり希少なので、使えやしない。もっとも、作ったところで、荒神の良いオモチャになるだろうが・・・。
そんな乗り場、『駅』の前で、リンドウは煙草を吸いながら待っていた。本部からの連絡では、間違いなくこの近辺に現れるというが・・・。
何本目かの煙草に火を付けたところで、無線から信号が来る。
『リンドウ、お待ちかねの待ち人だ。失礼の無いようエスコートするように』
「了解。待ちくたびれましたよ、全く」
そう言って煙をもうひと吹きしたところで、
グァッシャァーーンッッ!!!
地面を持っていかれたかと思う程の衝撃と共に、禍々しい姿の巨大な荒神が、触手のような脚をうねらせながら姿を表す。
『リンドウ、待ったなどと相手に口にするなよ?デートでは男は待っていても待っていないと言うのが鉄則だ』
「胆に銘じときますが、姉上。こいつには必要無いでしょう」
そしてリンドウは煙草を捨ててから、神機を構える。
「こいつに、聞く耳なんて無いでしょう」
そしてリンドウは、巨大荒神ウロヴォロスに向かって走り出した。
こんな感じで、第一部隊は3つに分かれましたが、ちゃんと第一部隊!
次はどこら辺を書こう?