GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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18話 笑顔の意味

 

 

外部居住区。

そこは暖かい家庭の光が、夜の闇を優しく照らす街。

日々激しい戦いを繰り広げるゴッドイーター達が、その命をかけて守り続ける、大切な光だ。

 

その中の一軒に、藤木コウタの家族が住んでいる。

彼の父親が装甲壁の監視警備員をしていた為、家族は外部居住区に住居を確保できていた。

だが、3年前に荒神の強襲により、装甲壁の一部が崩落。コウタの父は、崩落に巻き込まれ、命を落としたのだ。

[フェンリルに属する者の家族以外は、居住区には居られない]

それが、フェンリルのルールである。ただ、コウタの家族の場合、亡くなった父の手前、3年の居住保証の猶予が持たされていた。しかし、たかが3年。時間なんて、あって無いもの。妹もまだ小さい。

 

そしてコウタは、ゴッドイーターとなり、家族を守る事を選択した。

 

 

「ノゾミね、今日も1番だったんだよ!もう、ミッちゃんもタケル君も、ノゾミには敵わないんだから!」

「そっかー!流石は俺の妹!可愛いだけじゃ無いんだなー♪」

「あらあら」

「・・・・」

コウタの実家の夕飯に呼ばれたレンカは、懐かしい気持ちと優しい気持ちが織り混ざった、とても心地よい気分に浸っていた。

彼にとっても、『家族』というものは、特別な意味をもっているのだ。

「ん?どうしたー、レンカ?」

「あ、いや。何でもない」

自分がボーッとしてたのを、今更気付いたのが照れくさくなり、レンカは恥ずかし気に笑う。

「んー、ノゾミの話、つまんなかった?レンカ君?」

「いや、そんなことは無い!」

「じゃあ、口に合わないものでも、ありました?」

「いえ、どれも凄く、美味しいです!・・・本当に」

「そっかー」とまたはしゃぐノゾミに場はまた和み、楽しい食事は再開した。そんな中、レンカの様子をコウタは少し、気にかけていた。

 

 

深夜の居住区はシンッと静まり、星の明かりが優しく包む。欠けた月は、こんな世界を、どんな気持ちで見つめているのだろう。詩的なことを考えているレンカに、コウタが数歩前で立ち止まり、声をかけた。

「なぁレンカ、ちょっと付き合えよ!」

「あ、あぁ」

突然の誘いに戸惑いながら、コウタに引っ張られるように来た場所は、装甲壁の監視塔だった。

監視警備員にコウタが2、3言話すと、警備員達は席を外した。

「悪い悪い!待たせたな!」

「・・・良いのか?ここ開けて貰って」

「あぁー、そこは、ほら!俺らゴッドイーターの第一部隊って言ったら、特別に席を外してくれたよ!」

悪びれもなくコウタが言うので、レンカもつい笑ってしまい、二人はしばらく笑い合った。

 

遠くの空を眺めながら、コウタが口を開いた。

「レンカ、あれ、見えるだろ?ドーム型になってるやつ」

「あ?あぁ。確か・・・エイジス」

レンカの答えに、コウタは深く頷いてから続けた。

「この世界の全ての人類を収容出来る、巨大シェルター。あれが完成すれば、もう誰も荒神なんかに怯えて過ごさなくても良いんだよな」

「荒神の、いない世界・・か」

それからコウタは、頬かきながら、思い切ってレンカに疑問をぶつけた。

「なぁ、レンカ。今日、つまらなかったか?」

「・・・いや、そんなことはないが、急にどうした?」

「俺さ、馬鹿だからレンカの気持ちとか特に考えないで、誘っちゃったかなーって」

申し訳なさそうなコウタに、レンカはフッと笑ってから、ポケットに大事にしまってあるコンパスを取り出した。それに興味を覚えたのか、コウタは物珍しそうに覗き込む。

「これはな、・・・死んだ姉さんの形見なんだ」

「え?」

それを聞いた瞬間に、コウタは余計に凝縮してしまった。自分が家族を紹介したが為に、レンカの過去の傷を抉ってしまったのかと。

「・・・ごめん、レンカ。マジで、ごめん!」

必死に謝ってくるコウタに、レンカは肩に手を置いて顔を上げさせ、月に目を向け話し始める。

「俺が、外から来たのは、知ってるよな?」

「えっ、あ、あぁ」

「俺はな、父さんと母さん、そして姉さんと。フェンリルに入れて貰えなかった人達が、かたまって暮らす廃ビルで暮らしていたんだ。・・・決して裕福じゃなかったけど、俺は、家族と居られれば幸せだった」

「・・・うん」

「でも、俺と母さんが同時に病気になった時、俺達家族には・・・ワクチンは一つしか無かった」

「っ!!それって!」

コウタの驚きに、レンカは目を閉じた。

「俺が意識を取り戻した時には、母さんは死んでいた。家族は、適性テストに通っていた俺を、生かす決断をしてくれたんだ」

「なっ!なんでだよ!!お前が適性テスト通ってるなら、家族でフェンリルに!!」

「駄目だったんだ!!」

コウタの叫びを遮り、レンカは思い出したのか悔しそうに、叫んでいた。

「・・・俺は、父さん達家族と、血が繋がっていなかったんだ」

「そん、な・・」

「俺は、そんな事も知らず、そんな大きな想いに気付けず、この歳まで生きてきたんだ。暮らしていた近辺を荒神に襲撃された時に、自分を置いて逃げろと言ってくれた父さん。フェンリルまであと一歩という所で、怪我をした自分は足手まといになるからと、自ら命を断ってまで背中を押してくれた姉さん。俺は、大切な、家族を、・・・踏み台にして、ここに来たんだ」

「・・・うっ・・うぅっ・・!」

何時の間にか泣きじゃくっていたコウタを見て、今度はレンカが申し訳なさそうに苦笑するはめになった。

 

コウタの嗚咽が落ち着いてきた所で、レンカは再び話し始めた。

「コウタ、俺は今日お前にお礼を言いたかったんだ」

「・・え?・・」

思わず伏せていた顔を上げたコウタに、レンカは優しく微笑んだ。

「今日、コウタの家族に会って、自分の中の幸せな記憶を思い出せた。そして、思ったんだ。・・・俺は、コレを守りたいんだってな」

「レンカ・・・」

「俺は、託された命を使って、荒神を倒す事しか考えてなかった。ただ倒して、倒して、倒して、そうすれば、死んで行った家族が報われるって、そう思っていたんだ。けど、あの日ユウさんに叱られた時、俺は、人を守る事を口実に、荒神を倒す事しか考えてない自分は、命を繋いでくれた家族への裏切りだと気付いた。だから、自分の中に明確な答えを欲していたんだ」

それからもう1度空を見上げて、レンカは穏やかな顔でコウタに言った。

「コウタ、今日お前がくれたんだ。お前の大切なモノが、俺に答えをくれたんだ。だからコウタ、何度でも言わせてくれ。・・・・ありがとう」

「うっ、・・あっ、あぁぁ・・あぁ!!」

レンカの感謝は、コウタの心を揺さぶった。優しい心が、共鳴しあったように・・・。

泣き崩れたコウタの肩を抱き、レンカはあの日の姉の言葉を思い出し、そして強く、強く胸に刻んだ。

 

『"生きなさい"、レンカ。強くなって、こんな世界で神様なんかに祈らないで。・・・そしていつか、・・この世界を・・・覆して!』

 

 

一晩明けてから、コウタは寝惚け眼をこすりながら、昨夜のレンカを思い出した。

(外で生きるって事は、簡単に荒神に襲われるって事、だよな)

レンカと暮らしていた周辺の人達は、おそらくは全滅とレンカは言っていた。他にも、そういった人達がこの世界には溢れている。そんな外の世界の現実をまざまざと見せ付けられ、コウタはレンカとどんな顔をして会おうと、膝を揺すり出す。

「んーーー、んーーーーー、んーーーーーーーーーーーーーー、がぁーーーー!!!」

元々考えるのが苦手なコウタは発狂し、手早く着替えを済まし部屋を出た。

 

しばらく歩いていると、急にポンッと肩を叩かれ、振り返った。

「やっ!お疲れ、コウタ!」

「ユウさん!」

驚いて挨拶も半ばに、二人は並んでエントランスに向かった。

暫く歩いてから、コウタはユウも外から来た事を思い出した。そうなってくると、昨日のレンカの件で後ろめたさがあるのに、聞かずにはいられなかった。

「あ、あのー!ユウさん!」

「ん?どうしたの?」

「ユウさんも、レンカと同じで、外で暮らしてたんですよね?」

「うん、そうだよ。それ、どうかした?」

「あ、あのあの、ユウさんも、たい、へん、でした?でありますか?」

段々緊張してきたコウタは、妙な汗をダラダラ流しながら、声をうわずらせて変な質問をしてしまう。

それに気付いた瞬間、やっちまった思いが顔を出来損ないの心霊写真の様に変形させてしまう。一方ユウはと言うと、そんなコロコロ変わるコウタの表情に、思わず吹き出してしまった。

「あの、のののの、ゆ、ユウ、さん?」

「あはははっ!あー、ごめんごめん。コウタは面白いなー。思わず本気で吹いちゃったよ」

「イエ、コンナボクデワラッテイタダケレバ、ホンモウデス」

怒られる覚悟をしていた分だけ、ユウの軽い対応に、コウタはロボットのような片言になってしまった。

「あー、本当にごめんね。笑った笑った。それで、さっきの質問の答えだけど・・・」

「ハイ。・・・て、えええぇぇ!!答えちゃうんですか?」

「えっ?駄目なの?」

「いえ、いえいえいえいえ!質問したの俺っすから、そりゃー答えていただけるなら・・・、でも、」

その様子に、ユウはフッと軽く息を吐いた。

「レンカと何かあったの?」

「うえぇ!!どうして、それを・・」

「あっ、やっぱり」

「っ!!!!」

つい墓穴を掘ってしまったコウタに、ユウは後ろ頭に腕を組み喋り出す。

「さっき『ユウさんも』って言ってたでしょ?だからコウタの近しい相手で外から来た人と何かあったかなーって、考えたらレンカぐらいかなと、カマをかけてみたら大当たり♪」

「うぅ、レ、レンカには黙ってて貰えます?」

「そうだね。レンカの過去は、あまり触れ回っていい話じゃ無いもんね」

その返しに、コウタは思わずユウを凝視した。その反応に、ユウは「あー」と、手を振って答えた。

「大丈夫。レンカから直接聞いた訳じゃ無いよ」

「えっ、じゃあ、どうして?」

「フェンリルに入る時に、結構深い所まで踏み込んで質問してくる面接、あったでしょ?」

「あっ、はい」

父の死を、もう1度見せ付けられたような気分になり、コウタは酷く落ち込んだ事を思い出した。

「それはフェンリル諜報機関にきちんと情報として残されてるんだよ。勿論、それなりの権限を持たなければ、容易に閲覧なんて出来ないけどね」

「じゃあ、なんでユウさんは・・」

疑問でいっぱいの顔を向けるコウタに、ユウは少し真面目な顔になり話を続ける。

「以前レンカの命令違反の事件、あったでしょ?」

「あ、はい。確か、1週間ぐらいの謹慎だったような・・」

「本当はね、上層部はレンカの事を、5年の拘留の後、フェンリルから解雇っていう刑を下そうとしてたんだ」

「っ!!そんな!!」

「拘留後に、解雇なんて都合の良い言い訳さ。拘留の間・・は或いはだけど、解雇した後は?僕達ゴッドイーターは定期的に偏食因子を投入しなければ、自らのオラクル細胞に侵され、暴走し・・・」

「・・死ぬ・・」

コウタの呟きに、ユウは首をふり、苦い顔をする。

「・・・荒神に、なる」

「ひっっ!!!」

その言葉にコウタは、自分が荒神になっていくのを想像してしまい、壁に手をつく。そんなコウタの背中を、ユウは優しく撫でてやる。

「つまり、フェンリルは御大層な御託を並べて、レンカに死刑を宣告したも同じなんだ。いや、本当はもっと酷い!」

「そ、それって・・」

「上層部の査問会前の会話を、榊博士が盗聴して聞かせてくれた。あの人達は、レンカの、新型ゴッドイーターの貴重なサンプルとして、解剖しようとしてたんだよ!」

少し怒気を強め、ユウは声に力を込めた。

「・・・そんな、でも、じゃあ、どうしてレンカは?」

その言葉に、自分が厳しい表情をしてるのに気付き、ふと緊張を解いた。

「僕達、第一部隊が証言台に立ったんだよ」

「えぇ?」

優しく頷き、ユウは続ける。

「そんな非人道的な事を、榊博士は止めたくて僕達を招集し、知恵を貸してくれたんだ。僕達は現場にいたから、1番良い証人になると踏んでの一手だったんだろうね。その為に、1度彼の過去を知り、その想いを汲み取っての言葉が必要だったのさ。だから、榊博士の権限を使い、レンカの過去を、知ったんだ」

「そう、だったんですか。俺、その時のこと、何も知らなくて・・」

少し落ち込むコウタを促し、再びエントランスへと歩みを進みながら、ユウは話を進める。

「結果的に言えば、僕達の作戦は上手く進み、切捨てようか考慮していた支部長の腰を上げさせ、レンカは1週間の謹慎にまで、持ち込めたってわけ」

「・・・・」

黙ったままのコウタとエレベーターに乗り、階層を選択し作動させる。ゆっくりと降りていく空間の中、コウタは口を開いた。

「俺、どうレンカに接すれば良いかわからなくて、だからユウさんも同じ外の世界で生きてきた人だから、聞けばなんか、わかるかなって・・・」

「それで、さっきの質問を・・」

「・・・はい」

到着したエレベーターがドアを開いたのを確認し、すっかり縮こまっているコウタの背中を、ユウは強めに叩く。

「あたっ!!とっ、とと、・・・な、なんっすか!!」

「そう、それ!」

「え?」

突然ユウに指を指され、コウタは困惑するが、ユウは気にする事なく歩き出し話しかける。

「コウタは明るく元気がもっとう!それで、また、友達にいつも通りの日常を、与えたら良いよ」

「そう、なんですか?」

「うん!コウタの底抜けの明るさは、第一部隊の希望でしょ?」

「あ、・・・・・はい!!」

落ち込んでいる自分に、文字通り背中を押してくれたユウに、コウタもまた、尊敬の意を抱き出した。

と、エントランスに着いた頃にユウが思い出したように、コウタに聞いてきた。

「そういえばさ、最初の質問、答えてないけど今言おうか?」

「あっ、それはー、もう良いんです!」

「そう?」

「はい!充分、元気貰いましたし!っしゃー!!今日もヤルゾ!!」

「ははっ」

そんな二人が1番最後なのか、珍しくエントランスには第一部隊が全員集合していた。

「遅いぞー、二人共ー。今日は久しぶりに皆んなで遠足なんだ。遅刻してきたやつは、オヤツ抜きだぞー」

「また。リンドウはくだらない事を・・・もう」

「まったくです。仕事なんですから、少しは真面目にお願いします」

「ふん」

「だが、久しぶりに全員揃ってだから、少し気合いが入るな」

皆が待っている場所に、コウタは思い切り声を上げる。

「おーーい!!待ったーー!!真打ち、登場ー!!ってな!!!」

そんなコウタに、集結した第一部隊は、苦笑しながら任務へと向かった。

「あなたが真打ちとか・・・ドン引きです」

「えーー?何でよー?」

「お前が真打ちなら、うちの部隊は全滅だ」

「それは、言い過ぎじゃありません⁉︎」

「いや、ウチの真打ちはソーマさんかユウさんだろ」

「真面目に答えなくて、良いんだよ!!お前は!!」

「まぁー、良いじゃねぇか、コウタが真打ちで。真打ち、真打ち」

「適当なのも勘弁してもらえます⁉︎」

「ふふふっ、今日は無闇に建物壊さないでね♪」

「サクヤさんがグサッとくる事を・・・」

「まぁまぁ、今日ぐらいコウタに花持たせて上げようよ!」

「明るく振る舞ってますけど、ユウさんが1番キツイこと言ってますからねーー!!」

 

彼の明るさが、第一部隊の希望なのかも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




藤木コウタというキャラもとても好きです。

こういう明るい全力馬鹿、友達に一人は欲しいです!
でも、二人以上は入りません。
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