GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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19話 絶望の王

 

 

「最近さー、少し任務緩くないか?」

「そうか?」

エントランスでサクヤとアリサを待っていたコウタは、隣に座っているレンカに何となしに会話をふる。

第一部隊が現在の体制になってから、1ヶ月がたった。四人編成で任務に当たりだしてから、隊長となったサクヤは慎重になっているのか、基本は小型種の掃討。もしくは極東に近付きつつある中型種の群れを早い内から強襲をかけ、後退しながら基本狙撃で削っていく戦法に徹している。

安全マージンはかなり稼いでの行動なので、よっぽどの不足の事態が起こらなければ危険に陥る事はない。

しかし慣れてしまえば刺激が欲しくなる。人間の性かもしれないのか、はたまた初任務の刺激がが強すぎたのか・・・。

コウタの意見に疑問で返したレンカも、徐々にそうではないかと考え出した。

「リンドウさんってさー、エイジスの為に新種のレア物を狩りまくってさ。多分、ユウさんとソーマさんも・・・」

「そうかもな。リンドウにソーマさん、ユウさんは間違いなく極東の精鋭だ。情報の少ない新種と、初見でやりあえるのはあの三人しかいないと、思う」

「でもさ、エイジスに回す素材はさ、何も新種だけじゃないだろ?」

その言葉に、レンカは少し思慮し答えた。

「まぁ、そう、だな」

「だろ!!」

急に飛び上がるように立ち上がったコウタに、レンカは目で追いかける。

「つまりさ、俺らにも出来ることがあるんじゃないかと思ってさ!」

「・・・どういう意味だ?」

レンカの質問に、「よくぞ」と胸を張って、コウタは自信満々に言った。

「俺らだって第一部隊なんだ!伊達に最前線で戦ってきたわけじゃないんだから、もっと他の部隊が手を出せないような荒神を、狩っていこうぜってこと!どう?」

「・・・・」

「なぁ、レンカ!」

「・・・そう、だな。俺達にも出来る事は、あるな」

その答えに、コウタは跳び上がりながら、腕を掲げる。

「よーっし!!副隊長がその気になってくれたし、早速今日からサクヤさんに頼んでみようぜ!!」

「あぁ、そうだな!」

そう言って二人は結束を固め、サクヤとアリサの到着を待った。

 

 

「本日は、グボログボロ6体か。まぁ、お前達なら問題ないだろう。サクヤ、後はヒバリに申請しろ」

「ちょっと待ったー!!」

サクヤが返事をする前に、コウタが声を上げストップをかけた。

「・・・なんだ、コウタ。今は仕事中だぞ。遊びは任務から戻ってからにしろ」

「違いますよー。あの、サクヤさん。俺は別の任務が良いなーって思うんですけど・・」

「別の任務?何かあるの?」

聞かれたからにはと、コウタは事前にヒバリから貰ってきた申請書を出した。それをサクヤが受け取り、ツバキもそれを覗き込む。

「ヴァジュラ、4体の討伐・・」

「ふむ」

しばらく考慮しているサクヤに、追い打ちをかけるようレンカが口を開いた。

「俺も、そっちの任務に賛成です」

「レンカ」

「副隊長も、賛同か。どうする、サクヤ?」

「待って下さい。・・・まぁ、そうですね」

「確かにグボログボロに比べて厄介な相手だが、お前達なら問題はないと私も判断するが?」

「・・・アリサは、どう?」

判断しかねたサクヤは、まだ意見を述べていないアリサに話を振った。

「あなたの、意見も聞かせて」

「・・・私も、そちらで構いません。最近、少し楽な任務に感じていたので・・・」

「・・・そう」

自分が隊長として任務を選ぶ際に、かなり慎重になっていたのを見透かされていたようで、サクヤは皆を信用できてなかったように感じて反省する。

なので、三人の意見を優先して上げようという気になり、自分の取った申請書を半分に畳み、コウタの持ってきた方をツバキに再提出する。

「私も、隊長として問題ないと判断します。こちらに、サインをお願いします」

「・・・良いだろう。では、第一部隊!任務に当たれ!」

《了解!!》

 

 

川の近くの荒廃地。

かろうじて立つ幾つかの建物に隠れ、サクヤは標的を待つ。

天候は強い雨で、少し視界が悪いが問題はない。スコープに皆の位置を確認しながら、戦闘の開始を静かに待つ。

 

暫く変化のない状況が続いた後、サクヤのスコープに標的が姿を表す。

「レンカ、侵入確認!見えてる?」

『確認しました!交戦します!』

「バックアップは私が!」

『サクヤさん!こちらコウタ!こっちにも1体確認!アリサが接触!応戦します!』

「了解!無理はせずにね!レンカ!撃ち込むわよ!」

『退がります!』

標的をロックし、サクヤは引鉄を引く。

 

ドォンッ!!!

 

「アリサ!!」

「わかってます!!」

コウタの合図にアリサは飛び退き、コウタの仕掛けていた罠が作動する。瞬間ヴァジュラは毛を逆立て、その場に倒れる。それをタイミングにコウタが炸裂弾で頭部に撃ち込み、割れた頭に向かってアリサがプレデターフォームで喰いつかせる。そして、

「はあぁ!!」

 

ガリュウゥッ!!!

 

コアを引き千切り、回収する。確認した、アリサはコウタに手持ちの照明具で合図を送る。

アリサの合図に、「ふぅ」と息を吐き緊張を解き、アリサの元に走る。

「お疲れー!マジで楽勝でしょ!」

「調子に乗らないで下さい。まだ1体ですよ」

コウタの軽口に、アリサは毒突くが、コウタは相変わらず明るく振る舞う。

「まぁまぁー、取り敢えずサクヤさんと連絡とって・・・」

 

ピーッピーッ

 

急に無線の信号が鳴りだす。即座に無線の回線を繋ぐアリサとコウタの耳に、本部のヒバリから緊急連絡が入る。

 

 

「はぁっ!!」

 

ガシュッ!!

 

レンカの一撃で、ヴァジュラがその巨体を崩す。そのまま開いた口にプレデターフォームで喰い込ませ、

「捕らえた」

言葉と同時に引き抜く。コアを収めて、確認をし、回線をサクヤへと繋げる。

「サクヤさん、回収終わりました。次の標的は?」

『ちょっと待っててね。視認できなければ、本部と連絡を取るから。レンカも周囲の警戒、怠らないでね』

「了解!」

1度無線を切り、レンカは近くの岩に背を預け待機する。雨の日は、体にまとわりつく雨水が、体力を徐々に奪っていく。ゴッドイーターになってもこういった事象は、人間らしいところと言えるだろう。

2、3分程経ったであろうか。サクヤからの連絡が遅すぎると思い、サクヤが狙撃ポイントとして腰を据えてる場所を見上げた。その時、

 

ガーーンッ!!

 

「なっ!!」

サクヤがいたであろう建物は、一瞬にして粉々になった。即座に神機を握り直し走り出したところに、空からの人影に気付き、足を止める。

 

ザザザザッ!!

 

飛んできたサクヤが地面に着地し、自分が飛んできた先を睨みつける。

「やってくれるわね!」

「サクヤさん!」

すぐにサクヤの隣で構えながら、レンカが声をかける。

「ごめんね、レンカ。連絡できなくて。ちょっと急なお客さんがあったから・・」

「いえ、どうしたんですか?」

「アレよ!」

サクヤが顎で刺す先には、ヴァジュラが2体土煙から姿を表す。

「私の死角に入ってたらしくてね、ヒバリちゃんに知らせて貰えなかったら、あの中でペチャンコだったわ」

「無事でなによりです!今コウタに連絡して、応援を・・・」

 

ピーッピーッ

 

レンカが無線の回線をコウタに繋ごうとした矢先に、信号がなったので、二人はすぐさま回線を本部に繋ぐ。

「本部?どうした・・・」

『緊急連絡!!サクヤさんと空木さんの近くに、強力なオラクル反応!!ヴァジュラの真後ろです!!』

「ヴァジュラの、真後ろ・・」

そう言ったレンカに合わせ、サクヤが顔を向けたその時、

 

バシューーッ!!

 

1体のヴァジュラが黒い足に踏まれ、押し潰されていたのだ。吹き出す体液の向こうに、不敵に笑みを浮かべる何かが、いた。

「なっ、なんなの、あれ・・」

「・・・黒い、ヴァジュラ?」

啞然とする二人を他所に、その黒いヴァジュラは隣にいたヴァジュラもその鋭い爪で引っ掻き、頭を吹き飛ばす。そして、

 

バリュッ!ガリュッ!パキッ!パキュッ!

 

その死体に囓りついたのだ。

「まさか、喰っているのか?ヴァジュラを!」

「なんなの、あいつ!見たこともない・・!」

「ディアウス・ピター・・・・」

はっ、として振り返ったレンカとサクヤの後ろに、アリサが俯き加減で歩いてきた。その後ろにいるコウタも、どんな状況かよくわからないといった感じで狼狽している。

「アリサ、・・・あなた、知ってるの・・?」

「アリサ・・」

「・・・・・・」

二人の質問を無視したのかと思われたが、それは違った。あまりにも小さく呟いているので、雨の音に遮られ聴き取れなかったのだ。それも、二人とすれ違う瞬間には、鮮明に耳に入ってきた。

 

「やっと、見つけた」

 

その言葉と同時に、アリサは一人ディアウス・ピターに走り出した。

「アリサ!!待ちなさい!!」

「っ!!!聞こえてません!サクヤさん!俺も応戦します!」

そう言って、レンカもアリサに続いて駆け出す。静止しても無駄と判断し、サクヤは後ろに控えるコウタに振り返る。

「コウタ!二人のバックアップに入るわ!未知の荒神だから、どんな攻撃をしてくるかわからないわ!距離を間違えないで!」

「は、はい!!」

「行くわよ!!」

その言葉を合図に、二人も戦場に向かった。

 

 

「はあぁぁあっ!!!」

 

ギィンッ!!

 

何度目かの斬りつけも、ピターの体に傷一つ付けられない。途中から参戦したレンカも、その装甲の硬さに苛立ちが募る。

「くそっ!こいつ、硬すぎる!!」

「刃がとおらなければ、撃ち殺すまで!!」

そう言って銃形態に切り替え、乱射しだした。しかし、ピターはそれを持ち前のスピードで全て交わして見せた。

「なんて、速さ・・」

「くっ!このっ!!」

それでもアリサは撃つのを止めない。それに飽いたのか、急にピターはこちらに向かって突撃し、そして、

「っ!!!きゃっ!!」

レンカの隣を風が通り抜けたと思った瞬間、アリサは後方に吹き飛ばされていた。

「くそっ!」

振り返りアリサを助けに踏み出そうとした時に、目の前にはピターがいた。

「このっ!!」

 

ザシュッ!

 

反撃に転じたつもりが、レンカの刃が届く前に、その体は宙を舞い、岩に叩きつけられた。

「がはっ!!・・ぅあっ!!」

倒れたレンカに興味を無くしたのか、別の獲物を見つけたのかピターは鼻を鳴らしながら、辺りを見回し出す。その時、

 

ガガガガッ!!!

 

「レンカ!!無事!!」

「この野郎!!」

サクヤとコウタがピターに狙撃する。それをピターはまたも素早い動きで躱していく。

「な、なんなんだよ!こいつ!」

「嘘でしょ⁉︎」

「・・・ダメ、だ。・・サクヤさん・・・コウタ」

その言葉は二人には届かず、ピターは体からヴァジュラとは比較にならない力の稲妻を纏い、それを一気に解き放った!

 

ズドドドドドーーーンッ!!!!!

 

「きゃあっ!!」

「づぁぁぁっ!!!」

巨大な放電を浴び、コウタとサクヤはその場から痺れて動けないでいる。

(このままじゃあ、二人が・・!!!)

レンカが必死に体を起こそうとしたその時、ピターはサクヤとコウタには目もくれず、河川の方に走り出した。

「ど、どうして・・」

そう口に出したところで、

『わあぁぁーー!!』

河川の方から耳馴れない声が複数聞こえてきたのだ。

(まさか、・・・くそっ!)

レンカは起こしかけていた体を無理矢理引っ張って、河川の方へと足を運ぶ。そこには、逃げ惑う人達を弄ぶ、ピターの姿があった。

「なんで、・・・なんで・・!!」

普通の人間が逃げられる訳でもなく、一人、また一人とピターの爪に引き裂かれ、その牙で噛み砕かれていく。それを黙って見ている自分に憤りを感じ、目の前で虐殺していくその化物に怒りを込めて、レンカは激情を叫んだ。

「やめろーーー!!!」

その瞬間、本人も驚きの速さでピターの目の前に降りたったレンカは、殺そうと振り上げた前足を斬りつける。その刃が自分を傷付けた事に、怒ったのか喜んだのか・・・。背中から骨組みの様な翼を広げ、レンカに向けて振り下ろした。

「くぅっ!!」

 

ギィンッ!!

 

盾を展開する暇がなく、刃で直接受けたレンカは、押し負けぬ様踏ん張る。

「くっそ!くぅ、・・・早く、逃げろーー!!」

「ひいっ、ひぃやぁー!」

「あ、りがと!!」

「へぇぇぇえっ!!」

居合わせた人達を逃がすために、レンカは踏ん張る。しかし、徐々に押されて今にも神機から手を離してしまいそうだ。だが、ここで負けられない。その想いを、身体中から力を搾り出す。

「っっ!!ぬぁぁぉぉあぁぁぁ!!!」

一気に押し戻そうと一歩踏み込んだその時、

 

バキンッ!!

 

「えっ?」

 

ザシュゥッ!!!

 

「ごぼっ!!んっっんぁ!!」

 

何が起こったのかわからないと思った時には、

レンカはピターの翼に刺し貫かれ、

神機は、折れていた。

「そん、な・・」

そしてまた、倒れたレンカに興味を無くした様に、ピターは翼をレンカから引き抜くと、逃げた人達に向かって走って行く。それからは、倒れたレンカの耳に入ってくるのは、襲われる人達の断末魔だった。

『い、いやだぁぁ!!』

『助け・・ごぶぁ!!』

『お願い、お願いだから、いや、いやいや、い・・・ふゔぁ!!』

 

「やめろ・・・や、めろ・・・・もうやめてくれーー!!!」

レンカの声は化物には響かず、後に聞こえるのは死体を噛み砕く音だけだ。

 

ドンッ!!

 

突然の銃撃音にレンカが顔を上げると、岩にもたれながらもピターを撃ったアリサがいた。唯一の一発もピターに傷を負わせれなかった上に、食事を邪魔されたピターは視線をアリサへと移す。

「く、くそ、アリサ。アリサーーー!!!!」

向かって来るピターに逃げる事も出来ず、アリサはへたり込む。

(頼む!動け!今、もう一度!!)

レンカはもう一度身体に力を込めて、アリサの場所を目掛けて。

「うおおおおおおぉぉぉ!!!」

 

ゴガァァアン!!!

 

 

「レンカーー!アリサーーー!!」

「レンカーー!返事しろよーー!アリサーーー!」

ピターの攻撃に気絶していたサクヤとコウタは、敵の去った戦場で必死に仲間を探す。その惨状はあまりにも酷く、喰い荒らされた人達の死体から、雨で流れる血の川となって、辺りを赤く染めている。

「サクヤさん、あいつらも・・・まさか・・」

「最後まで諦めないで!あの子達の死体は・・・コウタ?」

「サクヤさん・・あれ・・!!」

突然走り出したコウタに続いて走り着いたそこには、

「そんな・・」

「うそ・・、嘘よ」

砕かれたレンカの神機の刃だった。

力無く座り込んだサクヤは、その場で天を仰ぎ、無情に降り続ける雨に向かって叫んだ。

 

「嘘よーーー!!!」

 

 

 

「今日は雨が酷いね」

「ふん。・・・だからヘリにしろと言ったんだ」

「いやー、すぐ止むかと思って。面目無い」

「ちっ。移動手段は今度から俺が・・・あん?」

雨ざらしのバギーをビルに突っ込んで雨宿りをしていたユウとソーマ。任務は終わっていたのでインカムを外して外を眺めながら話していたところに、バギーの無線が点滅しているのにソーマが気付く。

「無線、入ってるぞ」

「気付いたなら、出ればいいのに」

「連絡はお前の担当だ」

「はいはい」

ソーマの言葉に頷いてから、ユウは無線に近付き回線を繋ぐ。

「こちら神薙、本部応答お願いします」

『ユウさん!良かった!緊急の要請が!!あっ!!』

『ユウか?今何処にいる?』

「ツバキさんですか?今は極東から南西の、えーっとそこら辺のビルの中にいますけど。どうしました?」

焦っているツバキに珍しく思い、ユウは楽観的に答えたが、次のツバキの言葉に後ろに控えるソーマも顔を上げた。

『任務に出ていた第一部隊が未知の荒神によって分断!空木レンカ、アリサ・イリーニチナ・アミエーラが行方不明!サクヤからの報告によれば、両名共にかなり危険な状態と見られる!腕輪のビーコンは確認出来る!其処から東の河川に迎え!何としても生きて連れて帰って来い!』

「了解!ソーマ!乗って!」

「ちっ!クソが!」

二人は無線を切るとすぐにエンジンをかけ、バギーを走らせ東へと走り出した。

 

 

「うっ、うっ、うぅ・・ごめんなさい」

『泣くな、サクヤ!とにかくお前らは一旦極東に戻ってろ!姉上からの連絡で、今ソーマとユウも捜索に出た!俺も今から捜索に出る!』

「リンドウ・・・リンドウ!!あの子達を・・・、助けて!!」

『信じろ!!仲間を!!』

 

 

冷たい雨は、ただ降り続ける。

 

 

 

 

 

 

 




ディアウス・ピターって書くと、意外に長いから途中からピターに略しました。
面倒なオッさん顔め!

次はレンカとアリサです!
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