GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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22話 繋がり続ける・・・ 後編

 

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

「はぁ、はぁ、・・っん、はぁ」

極東支部の訓練所。

任務のない時などに、ゴッドイーターが己を鍛えるために擬似戦闘を行う場所だ。そんな中で藤木コウタは、現れる標的をひたすら撃ち続け、始めてから3時間が経過しようとしていた。

そして、

 

ビィーッ!

 

訓練プログラム終了のブザーと共に、コウタは根性で支えていた足を崩し、その場に座り込む。

(ダメだ!・・・まだこんなんじゃ、皆を守れない!)

普段のおちゃらけた雰囲気とは裏腹に、彼はひたすらヤツの顔を思い出し自分を奮い立たせた。

ディアウス・ピター。

例の黒いヴァジュラ種は今だ極東近辺を徘徊している。コウタは手も足もでず、ヤツのたった一撃の攻撃でのされたのが、悔しくてたまらなかったのだ。

そして何より、親友のレンカを死の淵まで追い込み、神機を破壊したことに腹を立てていた。

共に訓練した友。共に神機を手にした感動。一緒に笑い、泣いた大事な友を、傷付けたピターを、コウタは決して許さないと心に決めたのだ。

(でも、今の俺じゃあ一撃当てるのも難しい。もっと・・、もっと早く反応出来れば!!)

そうやって、無い頭を捻りまくって考えていた時に、突然訓練所の扉が開く。

「・・・あ?」

「・・・・・・・」

コウタの最も苦手な男、ソーマである。

「てめぇも訓練か?」

「え、あっ、はいぃ!!」

「うるせぇ」

「は・・・はいぃ・・」

『返事は元気よく!!』と育てられたコウタにとって、元気が通じない恐るべき冷酷マシーン。・・・コウタの妄想の中では、そうなっている。

「終わったんなら、さっさとどけ。邪魔だ」

「あ、いや・・・ーー、その」

「・・・ちっ」

(ほらね!すぐ舌打ちする!ねっ!怖ぇよ!本当、この人〜!!)

心の中で嘆いていると、ソーマは踵を返して出て行こうとしていた。その背中に何を血迷ったのか、コウタは声をかけてしまう。

「あ、あのっ!」

「・・・・なんだ。終わってないんならさっさと済ませろ」

「いえ、あのーー、へへへっ。あのー、ですね、あっとー」

「・・・だから、なんなんだ!」

「っ!!一緒に訓練でもお一ついかがですかーーー!!!」

「・・・・・・あっ?」

言った後に物凄い勢いで汗が流れ落ちていき、口がカタカタと仕切りに音を立て、壊れたくるみ割り人形のようになっている。

「あ、あば、あばばばばば、あば」

「・・・さっさと準備しろ」

「あばばばば、ばばばばばばば・・・・はいぃぃ!!」

「うるせぇ。訓練だろうが、さっさとしろ」

「・・・・・・あのー、良いんすか?」

恐る恐る聞いてきたコウタに、ソーマは無表情で視線を送る。

「嫌なら出ていけ」

「い、嫌じゃないっすぅーーー!!!よ、よろしくお願いしまーーーーーっす!!!」

「ちっ、うるせぇ野郎だ」

そう言ってソーマはプログラムオプションのコンソールから、訓練を選び実行する。

コウタにとっては、レンカ以外とは初めての合同訓練。しかも地上最強を謳われるソーマとだから、苦手なのを忘れてワクワク気分で神機を構える。

(ソーマさんとの訓練で、大幅レベルUPだぜ!)

そんなこんなで訓練プログラムが作動し、コウタとソーマの前に標的が現れる。その姿が映し出されていくのにあわせて、コウタの顔は青くなっていく。

「・・・・あの、ソーマ、さん?・・これ、なんですか?」

「ボルグカムランだ。後ろのはそれの堕天種で、火に特化した奴と、雷に特化した奴だ」

「・・・・あの、俺、まだ出会った事ないっていうか、存在自体、今知ったんですけど〜」

「そうか。じゃあ勉強になったな。行くぞ」

素知らぬ態度で構えるソーマにコウタは必死に自分の気持ちを訴える。

「ちょ、ちょちょちょ、ちょーちょー、ちょ・・・・っと待って下さいよ!!俺、こいつらの特性全然分からないんですけど!!」

「やりながら覚えろ」

「いや、いやいやいやいやいや、死にますってこれ!すぐ死にますって!!」

「大丈夫だ。訓練だ、これは」

「でもでもでも、俺死んじゃったら、プログラム終了しちゃいますけど!」

「そうか、じゃあ死ぬな」

「えええぇぇぇ!!!無茶っすよーー!!」

「死んだら・・・殺す」

そう言ってソーマは、ボルグカムランに向かい突撃する。

残されたコウタは手に持っている神機を震わせながら、ヤケ糞に叫んだ。

「あんたは鬼かーーーーー!!!!!」

 

それからの1時間は、コウタにとって、とても素敵な地獄だった。

 

 

 

 

ここは医療棟のとある一室。

そこでアリサは、担当医の大車を待っていた。ここに来たのも、あの時何も出来なかった自分を呪ったからだ。確かに、安定剤を所持してなかった。しかし、そんな事は戦場では言い訳にもならない。

(私は・・・もっと強くならなきゃ。ピターを倒して、それから・・・それから・・)

はやる気持ちを抑えながら待つ事5分、大車が部屋へと入ってくる。

「やぁ、待たせたねアリサ。気分はどうかな?」

「今は、・・・良いです」

「そうか!それは良かった!」

大車はアリサの正面に座り、持ってきたカルテを眺めながら会話を始める。

「この前の任務、大変だったそうだね。薬を持って行かないと駄目じゃないか。いつ精神が揺さぶられるかは、わからないんだからね」

「はい。すいません。・・・先生、ピターを見つけました」

その言葉に大車は深く頷き、カルテを閉じる。

「報告は受けているよ。かなり強力な荒神だったそうだね。でも、大丈夫!君なら必ず倒すことが・・」

「先生!!」

大車が喋り終わる前に、アリサは身を乗り出して訴えた。

「今のままじゃ駄目なんです!今のままじゃ、ピターに勝てない。守りたいものを、守る事が出来ない!!」

「・・・アリサ」

彼女の剣幕に、大車は一つ咳をし答えた。

「わかった。じゃあ、いつもの治療、始めようか?」

「・・・はい、お願いします」

そして大車は、部屋の明かりを落とした。

 

 

「いいか〜い?これが、君が倒すべき人類の敵、荒神だ〜」

「・・・荒神」

暗い部屋で行われる"おまじない"と称した催眠療法。大車は、心に深く突き刺さったアリサのトラウマを、催眠によって記憶の中の恐怖を怒りに変換し、荒神に立ち向かう勇気として、彼女を治療しようとしている。

・・・・だが、それは建前だ。

本当の目的は・・・。

「さぁ、引鉄を引いてごら〜ん。大丈夫!君には、恐怖を克服するとっても素敵な、おまじないがあるからね〜」

「・・・おまじない」

「そうだよ〜。さぁ、一緒に言ってみようか?」

「・・・はい」

スクリーンにはありとあらゆる荒神が映し出される。それに向かって、トランス状態のアリサはゆっくり右手を上げる。引鉄を引くように構えて・・・。

「アジン・・」

「・・・ドゥヴァ」

そして、最後の言葉の前に映し出された映像は、

・・・雨宮リンドウの映像だった。

「「トゥリー」」

 

「よく出来たね〜、アリサ!君は、本当に、良い子だ!」

 

闇の儀式の仕上げが、迫っている。

 

 

 

 

珍しく非番を言い渡され、フェンリル内をぶらぶらと歩くユウ。ここに所属するようになってから結構たったが、ユウにも行った事のない場所はまだまだ多く、こういった非番の日を利用しては散策するのが日課になっていた。

何気なくぶらついて辿り着いた場所で、意外な人物と遭遇する。

「・・やぁ。調子はどうかね?神薙ユウ君」

「どうも、シックザール支部長」

ヨハネス・フォン・シックザール、ここフェンリル極東支部の支部長だ。

普段接触があまりない為、ユウはほとんど会話をした事がない。1番新しい記憶でも、巨大クアドリガとの戦闘後に見舞いに来た時ぐらいだった。

(あの時は場が凍ったなー。ソーマは、明らさまに不機嫌になるし)

そんな事を思い出しながら、そのまますれ違ってしまおうとした時に、

「少々、良いかな?」

呼び止められてしまい、ユウも律儀に足を止めてしまった。

「君の活躍を報告書で拝見させてもらっているが、実に素晴らしい。本部の方も、君を高く評価しているよ」

「は、はぁ、そうですか。ありがとうございます」

若干素っ気ない態度になって、「やばっ」と思ったが、支部長は機嫌良く笑みを浮かべる。

「地位や名誉には興味がないタイプなのかな、君は。時には欲深くなって、相応の対価を求めるのも大切だぞ」

「・・・いえ、僕はそこまでは。ここで充分過ぎる程の生活をさせて貰ってますし」

「ふむ、そうか」

ユウの受け答えに、少しだけ考える素振りを見せてから、視線を再びユウに戻す。

「君は、外の出身だったね。失敬。君にとってはここで暮らす事そのものが恩賞に値するのかもしれないね」

「・・・どういう・・」

「神楽ミコ・・」

「っ!!!」

その名前にその空間全てに圧力かけたかと思う程の重圧、殺気のようなものを支部長は感じた。

目の前の、神薙ユウから・・。

「ふふっ。心地よい殺気だよ、ユウ君。だが、確かフェンリルで暮らすのは彼女の望みではなかったかな?」

「・・・黙れ」

「ふふふっ。隠す事はないじゃないか。君は彼女にとって実に誇らしい存在だと思うよ。そんな君だからこそ、私は必要としている」

「・・・やめろ」

「・・・実に、良いね。今ここで、私を殺してみるかい?」

「っ!!!」

そのままユウが掴み掛かるかという所で、

「あっれーー!ユウ君、こんな所にいたの?捜しちゃったよ〜♪」

「・・・リッカ」

リッカがギリギリ滑り込んだお陰で、ユウは頭に上った血が下がってくるのを感じた。それすらも満足なのか、支部長はエレベーターへと歩き出した。

「では後日、改めて君との会席を準備しよう。その時は、私の昔話でも聞いて貰おうかな?」

「・・・了解」

完全に治りきってない心を落ち着かせながら、一言返したユウを見てから、支部長はエレベーターに乗り、去っていった。

 

 

「・・・あの、ユウ、君?」

「・・あっ。・・」

沈黙の中でリッカが絞り出した声に、ユウはまずいものを見られた気分になり、いつものように「ははっ」と軽く笑う。その態度にホッとしたのか、リッカもまた笑顔になる。

「さっきは、ありがとね。僕はお偉いさんと話すの苦手だからさ」

「うん!だと思った!実は私も、支部長が苦手なんだよね〜」

「だよね!」

「ねっ!」

そういって二人は笑い合った。お互いがさっき見せたもの、見たものをなかった事にするかのように。

「ねぇ、ユウ君!ヒバリちゃんから聞いてきたんだけど、今日非番なんでしょ?」

「え?うん、非番だけど、なに?」

「じゃあ、私とお茶しない?」

「良いよ!」

「・・・・・」

リッカ的には精一杯の勇気であって、ユウに慌てて欲しいわけであって、決してあっけらかんと受けてほしい話ではなかった。

「?なに?」

「なんでもない〜」

「じゃあ、行こうか?」

「・・・は〜い」

多少の不満はあれど、ユウが自分の誘いを受けてくれた事は嬉しいリッカは、少しだけ足取り軽くユウの隣を歩いた。

 

 

 




嬉しかったり、悲しかったり、怒ったり、悩んだり。
極東の人達の、『人間』を描けていればいいな〜という話でした。

後ユウの過去に少しだけ触れてみました!
まっ、勝手に考えてるんですけどね!(笑)
かなり終盤に書くと思います!
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