「・・・う〜ん」
「どうだろうか、リンドウ君」
「結構、リスク高いっすね〜」
榊博士の研究室。
リンドウは内密に博士に呼び出されていた。少し悩みながら、目を閉じるリンドウ。榊博士は手を前に組み、もう一度説明した。
「明日、明後日にかけて、支部長は大掛かりな作戦の打診の為、本部に出向く事になっている。この期に乗じて、君のその目で直接確かめて欲しい。・・・エイジスを」
「ん〜・・・」
頭をかきながら、リンドウは顔を上げて榊博士に意思を伝えた。
「わっかりやした。乗りかかった船っすからねー。やりますよ」
「・・・すまない。君にここまでの汚れ役をさせるつもりは、私にはなかった・・・と言ったら、言い訳がましいかな」
榊博士は苦笑しながら立ち上がり、部屋の隅に置かれた箱を開ける。それを見てリンドウは「ヒュ〜♪」と、口笛を鳴らす。
「それ、日本酒ってやつですか?珍しいですね」
その反応に、榊博士はニッコリ笑みを浮かべる。
「この極東に伝わる儀礼に『盃を交わす』と言うのがあるそうだね。私とリンドウ君の絆を結ぶ。まぁ、共犯者としての絆になってしまうけどね」
「確か〜、兄弟の契りを結ぶ・・って意味もありましたよね?嫌だな〜、博士と兄弟になるのは」
リンドウの軽口に、榊博士は「私もかな」と盃に日本酒を注ぐ。
「細かい習わしは省いていこう。本当の意味は、お酒好きのリンドウ君に、私からの細やかな贈り物とでも思ってくれればいいかな」
「あー、そういう事なら。遠慮なく」
榊博士の前に腰を下ろし、リンドウも盃を手にする。そして二人同時に掲げた盃の中身を、一気に飲み干す。
「かぁ〜、良いもんですね〜、こりゃ♪」
「喜んで貰えて、何よりだよ」
榊博士も笑顔になるが、すぐに真剣な表情を作る。
「・・・リンドウ君。君はこの極東に、この世界に必要な人間だ。決して、死なないでおくれ」
そんな榊博士に、リンドウは目を丸くしてから、照れ隠しに頬をかく。
「な〜んか、むず痒くなるっすね〜、そういうの。博士こそ、長生きして下さいよ〜?」
「ふふっ、そうするよ」
そんな言葉を交わし、榊博士はもう一杯リンドウに注ぐ。そして自分の盃に手酌をしようとしたところで、リンドウに酒瓶を奪われ、そのまま盃を満たされる。
それから二人笑い合い、もう一度一気に飲み干した。
他愛もない話を続けた後に、リンドウは盃の中の自分を見つめ、ふいに口を開く。
「博士、万が一の時は、俺の意思を託したい奴が居るんっすけど」
「・・・聞こうか」
「・・・・俺が、万が一ドジッちまった場合は・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・、・・・・お願いしても、いいっすか?」
「・・・わかった。必ず、伝えるよ」
その答えに満足したのか、リンドウは立ち上がり体を伸ばす。そしてまだ残っている日本酒に目を落とし、フッと笑顔になってからそれを手にする。
「博士、こいつ貰っちゃって良いっすか?」
「ん?あぁ、構わないけど・・・一人で晩酌かい?」
その返しに、リンドウは満面の笑みで、答えた。
「盃を交わしたい奴等が、いるんっすよ♪」
居住エリア。
フェンリルに所属し働く者には、ここで一人一部屋が宛行われる。ゴッドイーター達も例に漏れず、その中で暮らしている。
そんな居住エリアの3階。そこに上がってきたユウは、目的の部屋の前まで歩いていく。扉の前に立ち、ノックをして声をかける。
「ユウです。リンドウさん?」
『おう!入れ入れー!』
返事を聞いてから、ユウは開錠ボタンを押して扉を開く。
「失礼しま〜って、わっ!」
中にはリンドウだけではなく、サクヤ、ソーマ、レンカ、アリサ、コウタと・・・第一部隊が勢揃いしていた。
「どうしたんですか?皆集めて・・」
「まぁまぁ、良いから入れ」
「はぁ・・・」
よくわからないまま中に入ったユウは、1番事情をわかってそうなサクヤに視線を投げるが、サクヤも分からないといった感じで首を振る。そして、全員の顔を満足気に見回したリンドウは、腕を組んで立ち上がる。
「よーっし!!今日は皆、それぞれ任務だの訓練だのお疲れだったな!隊長として、俺はお前等を誇りに思う!」
「あの、リンドウさん?現隊長は、サクヤさんですけど?」
「おっ?そうだったな。すまんすまん」
「・・・馬鹿が」
ユウの突っ込みとソーマの毒舌を物ともせず、リンドウは笑いながら頭をかく。
「それで、何なの?急に私達を集めて」
「そうですね。何なんですか、いったい」
「おー、よくぞ聞いてくれた!」
サクヤとアリサに聞かれてから、リンドウは棚に入れておいたそれを取り、テーブルにドンッと置いた。
「なんっすか?これ?何か父ちゃんが昔こんなの飲んでた気がしますけど」
「こいつはな、日本酒って代物だ。最近じゃあまり見かけないだろうが、ここ極東の伝統的な酒って言えばいいか?」
自慢気に胸を張るリンドウの置いた瓶を、皆物珍しそうに眺める。
「珍しいのはわかったが、リンドウ。これどうしたんだ?」
「いや〜、ちょっと榊博士の部屋から・・・ちょちょっとな♪」
「また、あなたは・・・」
レンカの質問に悪戯告白したリンドウに、サクヤは溜息を吐く。そんなことも気にせず、リンドウは話を進める。
「でな、榊博士の話じゃ〜、こう〜、絆を結ぶ際には、これを酌み交わすってことらしいんだよ」
「絆・・・、ですか?」
「俺知ってるー!確かこう盃っての?丸いお椀の薄っぺらいやつに注いで、グゥッて感じで飲むやつっすよね?」
「おうー、珍しく博識だなー、コウタ!それだよ、それ!」
リンドウに褒められ、「てへへ」と照れるコウタは、ふと疑問に思う。
「あれ・・・・、盃は?」
その言葉に皆、リンドウに目を向ける。向けられた当のリンドウは、頭を掻きながら苦笑する。
「悪い。忘れてきた」
皆一斉に肩を落とす。ソーマだけは変わらず、冷静であるが。
「良いんだよ〜、ノリだよ、ノリ。こういうのは、雰囲気が大事と知りたまえ〜」
「ならそんな大層な前置きいらなかったんじゃない?」
「た、確かに・・」
「いや、前置きはいる」
そうはっきり言ってから、リンドウは今一度、皆の顔を確かめるように見ながら話し出す。
「俺はな、この第一部隊を一つの家族の様に思ってる。まぁ本当の家族みたいに、親だー兄弟だーとかそういうんじゃない。そのぐらい大事だってことを、言いたいわけだ」
「・・・リンドウさん」
呟きに近い声を出したユウに笑いかけながら、リンドウは続ける。
「最初は俺とソーマと姉上から始まった極東第一部隊。それからサクヤが入り、姉上が前線から退いてからユウが来た。半年ちょっとでレンカにコウタ、ロシアからアリサが入って来た。初めに比べて、こんな大所帯になって・・・皆が皆を守ろうと必死に足掻きながら、今日まで誰一人欠けることなく生き抜いて来れた。俺はそれを誇りに思い、嬉しく思う」
「・・・リンドウさんが真面目なこといってる」
「黙ってて下さい」
コウタの耳打ちにアリサが横腹に拳をねじ込む姿を見て、リンドウはまた一層微笑む。
「そんなお前等だからこそ、俺は絆っていうものを結んでおきたくなってな・・。だから、今日は皆に集まって貰った。・・・長くなっちまったがー、なんだ。俺と盃、交わしてくれねぇか?」
皆黙ったまま顔を見合わせる中、サクヤがスッと立ち上がり、慣れた手つきでグラスを7つ並べる。それに合わせて、リンドウは栓を抜き、一つずつ3分程注いでいく。
「俺からの、愛と思って、受けとってくれ!」
その言葉にしばしの沈黙の後、アリサが急に吹き出した。
「な、何真面目な顔して・・・恥ずかしい事を・・ふくっ」
その瞬間リンドウとソーマ以外の全員が一気に笑い出す。
「ア、アリサ・・くくっ、いくらなんでも、このタイミングで笑うなよ・・くくくっ」
「だって、・・ふふっ。空木さんだって笑ってるじゃないですか!」
「あーっはっはっは!!リンドウさん、マジで愛とか!はっはっは!マジでー・・・っ!!」
「ふふふっ!もう、リンドウったら、なんなの?もう〜、ふふふっ!」
「皆、リンドウさんに悪い、ぷふーっ、ははっ!」
皆が笑い転げてる中、リンドウは頭をかきながらソーマを見る。
「俺〜、なんか可笑しな事、言ったか?」
「・・・自覚してないところが、可笑しいんじゃないか?」
ソーマの発言にさらに皆笑い転げる。そんな中、弱冠不機嫌そうに頭をかくリンドウを見て、少しずつ息を整えた皆は、一つずつグラスを手に取る。それを見て、リンドウもフッと笑いながらグラスを手にする。そして、一つ残ったグラスとソーマを交互に見てから、リンドウは声をかける。
「ソーマ」
「・・・・ふん」
それだけ言ってから、ソーマもようやくグラスを手にする。その姿を目に焼き付けてから、リンドウは喋り出す。
「俺達の絆は、決して折れない。この世界に屈さない。次に盃を手にする時は、大きな勝利の後だ。その為に俺からの命令は3つだ。死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ、隙を見つけてぶっ殺せ」
その言葉を今一度噛み締めながら、皆グラスを掲げる。
「この世界に、負けるな」
チィーンッ!!!
グラスを合わせて、皆は一気に飲み干した。
太陽が地平線に沈み出した頃、一台のトレーラーがエイジスへの海上道路を走りぬける。
入口前のチェックを済ませ、トレーラーはエイジスの資材倉庫前にエンジンを止める。降りた運転手は荷台を2、3、2とノックをした後、去っていった。
日が完全に落ちた後、荷台の扉がゆっくり開き、神機を持ったリンドウは軽くストレッチをしてから闇の中を動き出す。
手元の携帯端末で、榊博士から貰ったエイジスのマップを開き、資材倉庫の扉の前まで行く。セキュリティカードを通してから開け、中に進入し、天井の通気口から内部へと足を踏み入れる。
ある程度内側に進んだのをマップで確認し、適当な通路の上に降り立つ。見つからぬ様に慎重に歩みを進めた所で、榊博士が怪しいと睨んだ位置に到達する。マップ上では行き止まりとなっているが、リンドウの目の前には壁はなく、奥へと道が続いている。
(・・・こりゃ〜、いよいよきな臭くなってきたな〜)
マップの自動上書きシステムを立ち上げ、歩みを再開する。
奥に進んで行くに連れ、妙な感覚に襲われる。体の中の五感とは違う何かが、リンドウに危険を訴えているのだ。
(第六感ってやつか〜?ないぞ、そんなの)
辺りに警戒しつつ、奥へ奥へと進んだ先は・・。
「・・・行き止まりかよ」
そう呟いてから壁を色々触ってみると、右上あたりに小さな凹みを見つける。そこをゆっくり押してみると、
「ビンゴだ」
ヴィーン!
目の前の壁が開いた。
中の様子を伺い、リンドウはゆっくり踏み込む。そこは、大きく開けた場所で、古い歴史の中にあった舞踏会場のように円状のフラアが広がっている。
「ここで楽しく踊ろうってか?ダンスなんてした事ないってのに・・」
独り言を言いながら前へと進んで行くに連れ、リンドウは正面に違和感を感じだす。周りを見渡せば何やら機械やらパイプやらが埋め尽くされているのに、目の前のそれは明らかにそれらとは違う。
(柱?じゃないかー・・、壁画かなんか・・・っ!!!)
近付くに連れその姿が浮き彫りになっていく。それを認識した時、リンドウは柄にもなく、恐怖を顔に浮かべた。
「・・・・なんだ、こりゃ・・」
天井から逆さ吊りにされたそれは、女性の姿を象った巨大な像だった。いや、正確には像ではない。
「こいつ・・生きてるのか?」
その物体を形成するパイプの様なものは、動脈の様にドクンドクンと動いていたのだ。そしてリンドウは本能的に悟っていた。彼の体の中に埋め込まれた偏食因子が教えてくれたのだ。
「・・・・荒神、なのか、こいつ」
世界中の人々が心待ちにしている、全人類を救う箱舟 エイジス。その中には、驚愕な真実が隠されていた。
ピピッ
「・・・私だ」
「ご連絡いたします。鼠が、網にかかりました」
「そうか・・・、残念な知らせだ」
「残念とは異な事を。罠を張ったのは、あなたではありませんか」
「それとこれとは別だよ。彼は、失うには惜しい人物だ」
「それは、失礼しました」
「ふぅ・・・、報告ご苦労。残念だが、彼には舞台を降りて頂こう」
「では、手筈通りに」
「よろしく頼むよ。大車君」
ピッ
真実の実を食べたアダムは、楽園を追われる。
ちょっとアニメの方に偏りがちですかね?
まぁ、終着点は同じなんで、ゲーム贔屓な方は勘弁して下さい!
ゲームのシナリオも好きなんですよ!
バーストからの通算12周ぐらいやりましたし!(笑)