GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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24話 戦場への道筋

 

 

『極東支部が考案し進めている、エイジス計画。君達の日々の働きによってかなり進める事が出来た。しかし今だ完成への道は遠い。日々の暮らしのリソースの維持と同時並行では、これ以上のスピードは望めないのも現実。だからこそ、私は本部と掛け合い、大々的な計画に踏み込む事を決意した。オペレーション・メテオライト!』

極東の全ゴッドイーターが集められた大会議室。その壇上に立つシックザール支部長は、熱弁をふるっている。その熱意を込めた振る舞いは、ユウの目には演技がかって見えた。

『無数に散らばる荒神を、本部協力のもと開発したこちらの装置によって集結させ、そこを一気に叩く!この作戦を各支部の協力の元、明後日結構する!全人類の未来の為に、立ち上がれ!ゴッドイーターよ!』

 

 

比較的平らな面が続く荒地。

メテオライト作戦の作戦予定地。そこを視察に来ていたユウとソーマは、マップとの食い違いがないかチェックしている。

「気に入らねぇ」

「は?」

急にソーマがそんな言葉を言うものだから、ユウは自分に言われたのかと首を傾げる。その仕草に察したのか、ソーマは「ちっ」と舌打ちをする。

「お前じゃない。あの野郎の事だ」

「・・・あー、支部長」

それに合点がいったのか、ユウは思わず苦笑してしまう。

ソーマ・シックザールにとって、支部長のヨハネス・フォン・シックザールは、実の父親である。しかしソーマは、彼を『父』と呼ぶ事はない。人類の希望という名目で、母親の命と引き換えに産まれた、荒神と人間のハイブリッド。ゴッドイーターが生まれたのも彼あっての事だが、その道のりの中で、小さな子供にはとても耐えられない仕打ちを受けてきたソーマ。それを強要してきた父を、どうして父と思えよう。

だからこその決別の意を込めて、彼は支部長を父とは呼ばない。

「俺達はまた、あいつの都合に振り回されて死地に赴く。何が楽に一掃だ。何がエイジスだ。あんなモノに、命を賭ける程の価値があるのか」

「・・・そうだね」

否定し叱咤して来るかと思ったユウの意外な反応に、ソーマは珍しく驚く。

「・・・ユウ、あいつと何かあったのか?」

「ん?どうして?」

「・・・いや、何でもない」

口ではそう言っても、二人で動く事が多いユウの微妙な変化を悟ったソーマは、遠くの極東支部を睨みつける。

(・・・野郎。いつか、必ず・・・)

その時ソーマは、他人の事で怒りを覚えたのは初めてかも知れないと思い、ユウは自分にとってリンドウのいう『マブダチ』なのだと、認識したのだった。

 

 

神機開発局に来たレンカは、リッカに自分の神機の進捗状況を聞きにきていた。

リッカは明後日に迫ったメテオライト作戦に向けて、各支部から来たゴッドイーターも含めて、神機の調整に奮戦していて、中々時間が取れないでいた。しかしレンカの姿を確認すると、局員に指示を出してからレンカの元へと走ってきた。

「ごめんごめん!急に人数集めちゃうもんだから、神機の調整追いつかなくって!」

「いえ、忙しいのにお邪魔してすいません」

「良いよー。レンカ君も出撃するんだから、自分の神機の事気になるよね?」

そういったものの、リッカは頭をかきながらすまなそうに苦笑する。

「でも、ごめんねレンカ君。君の神機、正直作戦当日ギリギリまでかかっちゃうんだよね」

「・・・そうですか。なんか、無理させてませんか?」

逆に気を使われて、リッカは可笑しくなって笑い出す。

「えっ?リッカさん?」

「ごめんごめん!そんなことレンカ君が気にすることじゃないよ!私達は私達の仕事をする、レンカ君達ゴッドイーターはゴッドイーターの仕事をする。そうやってバランスを取ってるんだから、誰が忙しくて大変なんてことは無いよ」

そんなリッカを見て、レンカは自然と笑みをこぼす。

「ん?なんか変な事言った?」

「いえ。リッカさん、ユウさんみたいな事を言うなと思って」

「ふぇっ⁉︎」

途端にリッカは顔を真っ赤にして、目を泳がせる。

「いや、そんな、えっ?何で?えっ?」

「・・・リッカさん、もしかしてユウさんの事好きなんですか?」

「っ!!!!」

唐突に核心を突かれて、リッカは余計に慌て出す。そんなリッカに、レンカは目をキラキラさせて詰め寄る。

「わかります!ユウさんを尊敬する気持ち!あの人はなんて言うか、他の人にはない暖かさがありますよね!俺もあんな人に憧れます!」

「・・・・・」

「あれ?どうしました?リッカさん?」

狼狽した自分が馬鹿なのか、気付かないレンカが馬鹿なのか。リッカは溜息を吐き、ジトッとした目でレンカを見る。

「・・・君も、そうなんだね。・・ようするに、ね」

「は?はぁ・・」

リッカはもう1度大きく溜息を吐き、首を傾げるレンカを追い払った。

 

 

 

メテオライト作戦を明日に控えた司令室は、最後の確認を行っていた。本部の準備した誘導装置は各荒神ごとに惹きつけるという特性を持っているので、荒神各種に対し宛てがう班分けをギリギリまで見直しているのだ。

ツバキは明日の打ち合わせも同時にしてしまおうと、作戦本部での参謀兼連絡係のリンドウを待っていた。なかなか来ない弟に、徐々に苛立ちを覚えた頃、リンドウが顔を出した。それを叱咤しようと構えた時、ツバキは思い止まった。リンドウの後ろには、レンカと支部長が控えていたのだ。

ツバキが頭を下げると、支部長はそれを片手を上げて制した。

「支部長自ら、こんな所へ何用ですか?」

「ツバキ君。自分の仕事場を卑下するのは、感心しないな。同じ世界の平和を願うフェンリルの一員である事を誇りたまえ」

「し、失礼しました。それで、どういった御用件で?しかも空木までつれて・・」

ツバキの質問に「ふむ」と頷き、支部長は話を始める。

「今回、リンドウ君を現場での作戦参謀を任じたようだが、まずはその理由を聞こうか?」

「はい。雨宮リンドウはこの極東支部でも古参のゴッドイーターです。あらゆる任務をこなし、あらゆる不測の事態にも対応しうると判断し、部下の安全と作戦の成功確率を鑑みて、彼に任命致しました」

「成る程。納得のいく答えだな」

しかし、言葉とは裏腹に納得していないのか、支部長は別の意見を述べる。

「しかし、リンドウ君は君の言った通り数多くの任務をこなし、あらゆる不測の事態を潜り抜けてきた猛者だ。そんな彼の戦力を前線に置かない方が、作戦成功の効率を落とすのではないのかね?」

「そ、それは・・・」

さらに畳み掛けるように、支部長は続ける。

「それに彼、空木レンカ君は作戦当日ギリギリまで神機の使用は不可とされている。ならば彼に連絡の任を与え、リンドウ君を前線へ、参謀に関してはツバキ君が現場の状況を把握しつつこなせば良いと、私は考えるのだが?」

「・・・・・はい」

ツバキが頷いたのを確認し、支部長は軽く笑みを浮かべる。

「君の采配に間違いがあるとは思わないが、優秀な人材を遊ばせて置くのは私としても心許ない。納得して貰えたのなら、その様な配置に切り替え進めてくれたまえ」

「・・・わかりました。貴重な御意見、ありがとうございます」

「うむ。では、後は君に任せるよ」

そう言って、支部長は去っていく。暫く沈黙が続く中、レンカが口を開く。

「あの、雨宮三佐。すいません。こんな事になって・・」

そんなレンカにツバキはフッと笑い、頭を上げさせる。

「お前が謝る事はない。支部長の判断は正しい。お前を遊ばせて置く方が作戦効率が下がる。当日はしっかり、皆をサポートしてくれ」

「了解!」

そのレンカの様子に微笑み、それからリンドウの方に目を向ける。するとリンドウは肩を竦めて苦笑する。

「・・・少し休憩を貰う。空木、ヒバリの所へ行って、明日の連絡経路の手順を聞いておけ。後程打ち合わせをする」

「はい!」

「リンドウ、付き合え」

レンカがヒバリの元へ行ったのを確認し、ツバキは司令室から出て行く。リンドウも、「やれやれ」と後に続いて出る。

 

 

ツバキを追って休憩室に入ると、ツバキは煙草を吸い小窓から外を眺めていた。それに習い、リンドウも煙草に火をつけ煙を吸い込む。

「やめたんじゃなかったんですか?姉上」

「・・・たまにだ、許せ」

そう言ってから灰皿に押し付け、またしばらく外を眺める。

「リンドウ。今回の作戦、お前はどう思っている」

「どうもこうも、俺達ゴッドイーターは上から言われた通り荒神を倒すだけですよ」

「茶化すな」

そう言ったツバキにリンドウは苦笑しながら頭をかく。

「私は、今回の作戦をキナ臭いと思っている。危険を承知で各支部のゴッドイーターを招集、貴重な誘導装置を5台も投入、こんな異例だらけの作戦を本部直轄の作戦だと?支部長が上の人間の弱味でも握ってるのか、それとももっと大きなものが裏で動いているのか・・」

「そうですね〜」

2本目の煙草に火をつけるリンドウに、微妙な違和感を覚えたツバキは踏み込んで質問する。

「リンドウ、エイジスで何を見た」

「・・姉上」

「大丈夫だ。傍受している」

ふぅっと煙を吐き出し、リンドウは笑って答える。

「何も。だだっ広いダンスフロアぐらいならありましたがね」

「リンドウ!」

「そういう事にしときましょうや。触らぬ神に何とやらですよ。姉上」

「くっ!」

胸ぐらを掴まれたリンドウは「おっと」と手を前に出してツバキを制する。そこまでしても変わらない態度をとるリンドウに毒気を抜かれたのか、ツバキは勢いよく手を離す。

「なる様になりますって。それに、俺は退屈なのは苦手なんでね、良い運動が出来そうですよ」

「・・・馬鹿者が」

苦言を吐き捨て、ツバキはリンドウの煙草を奪って火をつける。

「キツイのを吸うな。早死にするぞ」

「ゴッドイーターでも、煙草は毒ですかね〜」

「・・・ふん」

ツバキは煙草を早々に押し消し、休憩室を出ようとしたが、背中越しに口を開く。

「リンドウ、息災でいろ」

 

 

 

明日の事を考えていると、何となく眠れなくなったユウは、廊下に出て配給ビールを飲んでいた。居住エリアの2階からでも、エイジスはよく見える。

(将来的には、僕もあそこに入って生活するのかな・・・)

ユウは今の生活に満足している。なので、これ以上を望むのが怖い。しかし、エイジスが完成し、荒神の世界と完全に断絶出来れば、それは本当に幸せなのだろう。

(全人類を幸せに導くことが出来るはずなのに、どうしてこんなにも受け容れられないんだろう)

それは外で生きてきたからだろうか?

(違う・・・)

その上でここで生活をしてきたからだろうか?

(そうじゃない・・)

・・・・そう。この計画を、ヨハネス・フォン・シックザールが考えたものだからである。

決して悪い人間とは思わない。でも、それでも・・・

「眠れないのかね?」

「っ!!あ、支部長!」

噂をすればというタイミングで支部長が現れたので驚き、ユウは内心落ち着かなくなる。

「隣に座っても?」

「どうぞ。僕はもう戻るんで・・」

「ふふっ、嫌われたものだね」

そんな軽口に、思わず足を止める。また前の様に自分の過去に踏み込んで来るのかと、構えたのだ。しかし、うって変わって支部長は頭を下げて来た。

「・・支部長?」

「この間は済まなかったね。ずっと君に謝罪しようと思っていたのだが、何分私も忙しい身でね。こんなタイミングがあるまで先延ばしにしてしまった。本当に、申し訳ない」

「い、いえ」

急に謝られたのに驚き、ユウは少しだけ警戒を解くと、支部長は遠くのエイジスを見ながら話し出す。

「私はね、ソーマが生まれる前は単なる一研究者だった。ペイラー・榊博士と私の妻、アイーシャと共にね」

「それって、ソーマの母親って事ですよね?」

「そうだ。ここまで言えば、察しているのではないかね?」

ユウは1度息を飲んでから口にする。

「あなたが、あなた達が、オラクル細胞の発見者・・」

「ふっ。流石に君は鋭い。その通りだ。もっとも、初めからゴッドイーターや装甲壁、神機なんてものを作る為に研究はしていなかったがね」

「・・・・・」

立ち上がっていたユウは、黙って支部長の隣に座り直す。

「私達は枯渇しつつあるエネルギー資源に代わる、新たな資源としてオラクル細胞を利用出来ないか研究をしていたのさ。それがある時を境に、その細胞を持った生物が産まれた。荒神だ」

「・・・荒神」

「私達は発見者としてフェンリルの要請の元、荒神に対抗すべく研究するよう要請を受け、研究を重ねた。しかし、目覚ましい成果が出せず、最後の頼みの綱として、妻のアイーシャのお腹の中に宿った子供とオラクル細胞の結合を試みた。その結果産まれたのが、ソーマだ。ゴッドイーターの原初だ」

支部長は1度息を吐いてから、話を続ける。

「妻はソーマを産んだ際に死亡した。こうなる事を予想してか、博士は最後まで反対を押し通し、離れていっていた。結果的に言うなら、博士の方が正しかったと言える。だが私もこのまま、妻を無駄死にさせれない意地があった。だからこそ、フェンリルでのし上がり、再び博士に研究を頼み、結果生まれたのが、装甲壁、そして神機、そしてそれを使う君達ゴッドイーターだ」

「・・・・・」

「そして今回、君達ゴッドイーターの協力の元、エイジスの建造が進んでいる。あれが完成すれば、世界中の人たちを救える。・・・もう、君達ゴッドイーターが戦う事は無いんだ」

「・・・そうですか」

ずっと黙って聞いていたユウは、そう言うと立ち上がり頭を下げ、踵を返す。それに合わせて支部長も立ち上がり、背中に声をかける。

「明日、作戦の際に、君には別に頼みたい事がある。それでここに来たのだよ」

「・・・何でしょうか?」

支部長は少し厳しい顔つきで、ユウと向かい合う。

「誘導装置に不備は無いと思うが、途中経路を変更し、不確定な動きをする荒神が出てくるかもしれない。その為に、君にはそれらの排除をお願いしたい」

「僕一人で、ですか?」

その答えにフッと笑みを浮かべてから、支部長は続ける。

「君だからこそ、頼んでいるのだよ。君の実力はここ極東でリンドウ君、ソーマに並ぶ程だ。少々の不確定要素など、君の敵では無いだろう?」

「・・・それは、命令ですか?」

「ふむ。君が望むなら、その様に受け取ってくれて構わないが・・」

それはつまり、『断るな』ということだろうとユウは判断し、踵をつけ直立してから敬礼をする。

「・・・了解」

「よろしく頼むよ。それでは、私も失礼しよう」

去っていく支部長を確認してから、ユウも去ろうとした時、再度支部長に声をかけられる。

「一つ良いかね?」

「・・・何でしょう?」

「君が中々友好的になってくれないのには、理由はあるかと思ってね」

暫くの沈黙の後、ユウは振り返り質問の答えを口にする。

「あなたの話は、とても辛く苦しい思いをしてきた"あなた"の事はよくわかりました。共感する部分も多いです。けど父親のあなたの話の中に"息子"を労わる言葉が出てきませんでした。・・・今の話の中で、苦しんだのはあなただけじゃない。それでは」

そう言い残し、ユウは部屋へと入っていった。

残された支部長は、低い声で笑いながらその場を立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 






書いててどんどん支部長とユウの関係が悪くなってきてるきがしますが、別に良いですよね?(笑)
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