一陣の風が、砂を巻いて荒野を吹き抜ける。
これから始まる、大規模な戦闘を演出するかのように・・・。
本日行われるメテオライト作戦の概要はこうだ。
まず楕円状に50メートル間隔に設置された5つの誘導装置を作動させ、荒神を強制的に集結させる。ある程度集まった所に、作戦名にも使われた特殊バレット、『メテオライト』をヘリに乗った銃型神機のゴッドイーターが発砲。命中確認後、ヘリに控える第一陣が空から強襲。第一陣投入5分後に、地上から第二陣を投入し応戦。そして、不測にも突破を図った荒神を、ユウが赴きそれを排除・・という、三重構えで挑む作戦だ。
それを踏まえて、各担当のゴッドイーター達は、開戦の連絡を今か今かと緊張を走らせていた。
『各配置、完了しました』
司令室に、作戦本部からレンカの連絡が入る。それをツバキも巨大モニターにて確認する。
「わかった、ヒバリ」
「はい!誘導装置、作動!」
その声と共に、モニターに映し出された装置が紫色に発光しだす。ツバキはモニターを切り替え、装置の誤作動がないかチェックをし、再びモニターを現場映像へと切り替える。
ヒバリは手元の画面でオラクル反応を確認する。前回、レンカとアリサの位置確認が出来なかった事を反省に、榊博士が新たに腕輪のビーコンを別ポインタでチェックできる様に改良したので、今は荒神の動きしか察知してないことが見て取れる。
オラクル反応が徐々に各誘導装置に集まってきた頃を見計らって、ヒバリはツバキに目で合図を送る。ツバキもそれを受け取り、無線の回線を繋ぐ。
「これより、オペレーション・メテオライトを発動する!『メテオライト』、構え!」
それと同時にモニターをオラクルレーダーへと切り替える。
(・・・4・・・3・・・2・・・1・・っ!!)
「撃てーーーっ!!!」
ダァァーーーンッ!!!
ヘリから打ち上げられた『メテオライト』は、ある程度の高度で止まり、そこで大きく発光し・・・、
パァーーーン!!!
弾け、拡散し、地上の荒神へと降り注ぐ。
ドドドドドドドドォーーーーン!!!!
大きく煙を巻き上げ、暫くの沈黙。
「す、すげぇ・・」
自分で撃っておきながら、コウタはその威力に驚いて息を飲む。
そして無線から、ツバキの声が入る。
『着弾確認!第一陣、降下!』
ヘリのゴッドイーター達は一斉に飛び降りる。右からコンゴウ種を第五、第六部隊、シユウ種をイタリア、グラスゴー支部、ボルグカムラン種をマルセイユ、シンガポール支部、サリエル種を第二、第三部隊の防衛班、そしてヴァジュラ種担当は第一部隊。
着地と同時に、再びツバキの声が耳に響く。
『第一陣、戦闘開始!荒神を殲滅しろ!!』
《了解!!!!》
第一陣の戦闘開始を遠目で確認してから、ユウは後ろに控える第二陣の仲間達に声をかける。
「今から5分後に、皆さんにも突撃してもらいます!皆さんはここ極東への進入を防ぐ壁の役割も含めていますが、決して無理をせず、自分の命、仲間の命を優先して下さい!」
《了解!!!》
返事に頷くと、ユウは再び戦場の様子を伺おうと前を向こうとする。そこでふと、おどおどしながら手を挙げる女の子の姿を見て、視線を戻す。
「どうしたの?」
「あの、・・・壁になれって言っても、後ろに通しちゃったら、どうしたら・・・」
「っ!!馬鹿!始める前から、そんな気構えで挑むな!」
「で、でも・・・私、トロいから、もし後ろに通して、ここが襲われたら・・・お母さんが・・」
そういって縮こまる女の子に、隣で叱った同じ部隊であろう男性が厳しい声を再びあげる。
「それを守るのが俺達の仕事だろ!それをはなっから駄目と!・・ユウさん、本当にすみません!」
「いいんですよ」
謝ってくる男性を手で制してから、女の子の肩をポンッと叩く。
「大丈夫だよ、心配はいらない」
「ど、どうして・・・」
その返しに、ユウは笑顔で答える。
「その為に、僕がいるんだよ」
「あっ・・・」
そんなユウの笑顔にキュンッときたのか、女の子は顔赤らめポーッと見つめ、それを見た隣の男性は苦い顔をする。
それからユウはもう一度皆を見回し、声をかける。
「皆さんも余裕がない時は後ろを振り返らず、目の前の荒神に集中して下さい!例え後ろに逃したとしても、僕がこの壁を越えさせません!」
その言葉に、他にも同じ事を気にしていた人がいたのか、歓喜の声があがる。
それを見て胸を撫で下ろしたユウは、手元の時計を確認し改めて戦場を確認する。そして、ツバキから第二陣に無線が入る。
『第二陣、突入!荒神を一歩も通すな!極東を守れ!!』
《了解!!!》
第二陣が戦場に向かっていくのを見つめるユウに、個人回線でツバキから話しかけられる。
『さっきの演説、なかなかのものだったぞ。ユウ』
「うぇっ!聞いてたんですか?」
『迂闊だったな。お前の回線、皆に繋がっていたぞ』
「ええぇ!!」
焦り無線を確認すると、回線ボタンが「ALL」の照明を照らしていた。急に恥ずかしくなって顔を赤らめるユウに、リンドウからも無線が入る。
『いやー、実に男前な発言だったぜ〜、ユウ。流石は第一部隊のエースだな〜』
「リ、リンドウさん!・・勘弁して下さいよ」
リンドウが無線越しに笑っていると、ツバキが叱咤する。
『リンドウ!いいからお前は戦闘に集中しろ!』
『おぉー、怖い怖い。了解です』
「まったく」と呟きながら、ツバキは改めてユウに話しかける。
『ユウ。今の所作戦は順調だが、必ずしも予定通りは存在しない。もしもの時は、お前が頼りだ。頼んだぞ』
「了解です。一応『眼』で確認してますが、不測の事態はすぐ連絡下さい」
『あぁ。その際は私か、作戦本部の空木から連絡が行くと思う。なので、回線はそのまま繋いでおけ。ただ、マイクは必要な時まで切っておけ。ではな。武運を祈る』
ツバキの回線が切れてから、ユウは溜息混じりにマイクをオフにして、遠くの戦場に目を向ける。
ザシュッ!
「・・・ふぅ」
突き刺した刃を引き抜き、リンドウは加え煙草の煙を吐き出す。群がってくる荒神を薙ぎ倒しては、捕食。もう数えるのも面倒になる程狩った事により、徐々に攻めてくる荒神は減ってきている。他の誘導装置に目を向け、問題ないと判断し改めて自分の持ち場に目を戻す。
そこへまた一体、ヴァジュラが突っ込んでくる。
「あらら・・」
呑気に声を洩らしてから、神機を構え直したところ、
グシャァッ!!
ヴァジュラは頭を潰され、沈黙する。その上からソーマが神機を担ぎ直し、リンドウを見下ろす。
「ボーッとしてんじゃねぇよ」
「ははっ、すまんすま〜ん」
軽く手を挙げ応えるリンドウに、「ちっ」と舌打ちをしてからソーマは飛び降りてくる。
「ソーマ、後どのぐらいで片付く?」
「・・・目に見える範囲で終わる。空木の連絡に間違いが無ければな」
その答えに、リンドウは吸っていた煙草を捨て、踏み消す。
「そうかそうか〜。案外楽な仕事だったかもな」
「ふん、言ってろ・・・っ!!!」
「ん〜?どうした、ソーマ?」
急に目を見開き緊張したソーマに、リンドウが声をかける。しかしソーマはそれに答えず、無線の回線を繋ぐ。
「こちらソーマ!空木!オラクル反応が・・!」
『ソーマさん!後方のヴァジュラが、一斉に方向転換!何故か近隣の山岳地帯に向かってる!!』
「山岳地帯だと?」
その言葉に反応し、リンドウも回線を作戦本部に繋ぐ。
「こちらリンドウ!レンカどういう事だ?何が起こってる?」
『リンドウ!後方に接近していた・・・、これは⁉︎』
「何だ⁉︎何があった⁉︎」
声色を変えたレンカに、リンドウが無線越しに詰め寄る。
『山岳地帯の一点を中心に、多数のオラクル反応を確認!いったいどうなってるだ・・・。雨宮三佐!』
『聞こえていた!何なんだ、いったい・・。あそこに何かあるのか?』
「・・・くそっ」
リンドウは山岳地帯に目をやる。持ち場のヴァジュラはサクヤ達が粗方討伐を済ましている。後方の大半が山岳地帯に向かったからだ。
(何であそこに・・・。このままじゃ、まずいな)
リンドウは歯軋りをした自分を一旦落ち着け、再び無線に向かって喋り出す。
「雨宮三佐!偵察の許可を!このままじゃ大量の荒神を逃す事になります!」
『お前一人でか?』
「はい!ここらは粗方片付いています!サクヤに指揮権を引き継ぎ、俺が様子を見てきます!」
『しかし・・!』
「な〜に、ヤバくなったらすぐ逃げやすよ」
『くっ・・・』
ツバキはしばらく黙ってから、意を決して口を開いた。
「わかった。しかし危険と見なせば即撤退するように!いいな⁉︎」
『了解!』
回線を閉じてから、ツバキは即座に対応に移る。
「ヒバリ、榊博士を呼べ。それから周辺のオラクルレーダーを最大限広げてくれ」
「はい!」
モニターにレーダーを呼び出し、状況を把握しようとした時、ツバキは驚きに声が洩れた。
「な、んだと・・・」
殆ど狩り尽くしたと思われた戦場に、再び大量のオラクル反応が出たのだ。
ツバキは即座にユウに繋ぐ。
「ユウ!応答しろ!現場はどうなっている!」
『こちら神薙!戦場から約130メートル後方に、新たに荒神を確認!しかも、これは・・・』
一瞬口籠ったユウに、ツバキはその答えを急かす。
「どうした⁉︎早く報告しろ!」
『恐らく荒神は・・・、極東支部を目指しています!』
「何だと⁉︎」
ツバキは再びモニターへと視線を移すと、ユウの言う通り誘導装置を通過したオラクル反応は、極東支部に向かって移動していた。
「そんな馬鹿な・・。誘導装置はちゃんと作動しているのか?」
「はい!異常は見られません!ですが・・!」
ヒバリの言う通り、誘導装置は変わらず正常な信号を刻んでいる。ツバキは唇を噛み、近くの椅子を蹴り飛ばす。それから呼吸を整えてから連絡回線を全てに繋ぐ。
「全ゴッドイーターに告ぐ!作戦変更!交戦中であろうから、そのまま聞け!」
それから変更した作戦を頭で構築しながら、喋り始める。
「第二陣は一旦装甲壁まで退がれ!それから壁を背に防御陣を展開しろ!少々の損壊は目を瞑ってやる!荒神を極東の中に入れるな!」
『《了解!!》』
「第一陣はそのまま交戦しつつ、第二陣との距離を50メートル程に詰めろ!お前達の判断で後方の援護も含め、荒神を駆逐しろ!」
『《了解!!》』
「ユウ!今度はお前が最前線に出ろ!少々は後ろに任せて構わん!可能な限り荒神を叩きのめせ!」
『了解!!』
作戦を伝えきり、ツバキは大きく息を吐く。そこに榊博士が駆けつける。
「榊博士!」
「ツバキ君!大体はヒバリ君から伺っている!現状況を・・」
「これはっ!ツバキさん!」
「今度は何だ!」
ヒバリの叫びにツバキが答え振り返った時、新たな不測が発生していた。
シンとした支部長室で、シックザール支部長は手を組んで戦場の様子を眺める。それからレーダーへと切り替えて、静かに目を閉じる。
「・・・アイーシャ・・」
今は亡き愛しい人の名前を口にし、ゆっくりと目を開ける。そして、あるプログラムのウィンドウを立ち上げ、モニターの真ん中に持ってくる。
(・・・君の為にも、この計画は成功させるよ)
そう改めて心に誓いをたて、キーボードのEnterキーに指を添える。そして・・・。
「さぁ、始めよう」
タンッ
ビーッビーッ!!
ヒバリにツバキが答えたと同時に、警報が鳴りだす。そして、第一部隊担当の誘導装置が、異常信号を表示しだした。
「何だと!!」
「・・・これは」
ツバキと榊博士は、その異常にそれぞれ驚きを隠せないでいる。そんな中、無線からサクヤが連絡を入れてくる。
『三佐!』
「サクヤ!!状況は⁉︎」
『突然ヴァジュラ種以外の荒神が、こちらにも集まって来てます!このままでは、私達は退がれません!』
「くそっ!こちらで新たな対策を練る!それまで交戦を続けろ!」
『了解!!』
次から次へと起こる問題に、ツバキは眉間を押さえ苦悶の表情を浮かべる。早く次の手をと、目を開いた時に、追い打ちをかけるように問題が飛び込んでくる。
「ツバキさん!リンドウさんと・・・リンドウさんと通信が途絶えました!」
「っ!!!」
こんな事がと、リンドウのビーコン反応をレーダーで確認すると、30以上のオラクル反応に囲まれている。それにさしものツバキも顔を青くし、無線をリンドウに合わせて個人回線を繋ぐ。
「リンドウ!!応答しろ!リンドウ!!」
『・・・・・』
ヒバリの報告通り、リンドウとの回線は繋がらず、ツバキはテーブルを力一杯殴りつける。
「ツバキさん!どうすれば・・・!ツバキさん!!」
泣きそうな顔で訴えてくるヒバリに、ツバキはなす術なく膝を折りそうになる。が、そんなツバキの肩を、榊博士が力強く掴む。
「ツバキ君、諦めるのは早い」
「っ!!しかし、あの数ではリンドウでも!こんな状況では、援軍も・・」
「まだ、一人いる」
その言葉に目を大きくしたツバキに、榊博士は笑みを浮かべ、レーダーのある一点を指差す。
そこは・・。
作戦本部では、レンカがレーダーの様子を拳を握りしめ見つめる。その表情は悔しさに歪み、自分の力のなさを呪っているかのようだ。そこへ、ツバキから無線が入る。
『空木!』
「三佐!」
『雨宮リンドウの救援に迎え!』
その言葉にビクッと体を震わせる。
「しかし、俺の神機は・・まだ」
整備が完了していないのか、神機はまだレンカの手元には届いていない。そうレンカが落胆していると、臨時テント入り口の幕をめくって、リッカが呼吸を乱しながら入ってくる。
「っ!!リッカさん!」
「レンカ君!お待たせ!神機、持ってきたよ!」
それを聞いた瞬間、レンカの瞳に力が宿る。
『届いたようだな』
「はい!!」
レンカの返事に応えるように、ツバキは力強くその命を下す。
『今動けるのはおまえしかいない!出撃しろ!空木!」
「っ!!!」
返事を返さずインカムを取り、現場用の無線と上着を取り、レンカはテントの外へと走り出る。
「ヘリを回してくれ!」
外に控えていた一般隊員に指示を出し、レンカは戦場に目を向けた。
(リンドウ・・・!)
いよいよアニメ編のクライマックス突入です!