GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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29話 不平等な神

 

 

『いつまで寝てんだよ?』

「・・・・うぅ」

『ほ〜ら、早く起きろよ』

「起き、・・る?」

『そう!あんたのこと、待ってる人達がいるよ?』

「ぼ、くを・・・」

『さぁ、行こう!あたしも、一緒に行ってやるから!』

「・・・一緒、に・・。・・・・・ミコ」

『うん!ずっと一緒だよ!ユウ!』

 

 

『明日を、切り開け!』

 

 

 

サクヤは泣いていた。愛する人の形見を抱いて、ただ子供のように泣きじゃくっていた。そのあまりにも切ない嘆きは、夜の闇に虚しく響き渡る。

「なんでだよ・・、なんでだよーー!!」

「く、っそーー」

「そんな、・・・リンドウさんまで」

「・・・・・・・」

自分の中の憤りを、それぞれが口から吐き出している中で、ソーマはただ黙ってピターに向かって歩き出す。

「・・・ざけるなよ」

呟いた言葉を何度も頭の中で繰り返し、ソーマは神機を構え叫ぶ。

「ふざけるなよーーー!!!」

激昂したソーマは、普段の洗練された動きとは似つかぬ雑な動きで、子供の児戯のように神機を振り回す。

嫌になったのだ。何もかもが、だ。彼にとって、もっとも失いたくなかった二人を、同時に殺されたのだ。目の前の化物に。

そんな相手にただ当たり散らすように、ソーマは神機を振り回している。軌道もままならない刃をはじき、仰け反った隙だらけのソーマに、ピターは翼を振り下ろす。

 

ガァッ!!

 

当たる寸前に、ソーマを抱えてレンカが飛び退く。そこにコウタとアリサがバレットで牽制し、距離を引き離す。

息を荒げるレンカに、ソーマは文句を言う。

「おい、離せ」

「はな、さない」

その台詞にいらだちを覚えるソーマ。すでに怒り狂っているのに、自分の思い通りにならないから、尚腹ただしい。気持ちの勢いのまま殴りつけようとした時、ソーマはレンカの異変に気付く。

「・・・おまえ、大丈夫か?」

「はぁ、はぁ、・・、はぁ」

息切れのせいか言葉もままならないレンカの手を、無理矢理剥がした時に、ソーマはレンカの腕の痣に目を奪われる。偏食因子、オラクル細胞の暴走。体を侵食されていくと、妙な色の痣が徐々に広がっていく。やがては『死』に至るその症状を、ソーマも当然知っている。

「おまえ・・・、死ぬのか」

「・・・今じゃ、・・ない」

「あぁ?」

疑問を投げると、レンカはゆっくりと立ち上がり、ピターを睨みつける。

「あいつを、倒してからだ!」

「・・・・」

その強い意志に、ソーマは目を大きく開く。

「あんたも、今ここで死んじゃ駄目だ。俺達は、世界を変える為に、生まれたんだ」

「・・・空木」

「こんな状況、俺達なら覆せる!」

そうはなった言葉は、離れた場所で泣き崩れていたサクヤの耳にも届く。そして声の先のレンカに、またもリンドウを重ね見た。

(リンドウの・・・意思・・)

そして、最後にリンドウが言った言葉を思い出す。

『守ってくれ・・・頼む』

(・・・・・守るわ。もう誰も、死なせない!!)

足に力を込めて、サクヤは今一度戦う為に立ち上がる。そして、レンカに声をかける。

「レンカ!何か策はある?」

「・・・みんなの、力を借りれば・・・勝てる!」

「・・・ふん」

その声に撃ち続けるアリサとコウタも笑みを返す。作戦を伝えていないサクヤの元に、ソーマの肩を借りて来ると、レンカは二人に頼むことを伝える。

「・・・・・・・、・・・。・・・・どうですか?」

「・・わかったわ」

「てめぇが言い出したことだ。失敗はすんじゃねぇぞ」

「はい!」

話がまとまったと同時に、サクヤは叫ぶ。

「第一部隊!荒神を、喰い荒らせーー!!」

《了解!!!》

それに合わせ、アリサとコウタは足元を中心に乱射する。ピターも当たるまいと少し後ろに体が浮くと、

ガァーーンッ!!

サクヤがさらに後方から、狙い撃つ。流石にその程度ではピターは怯まず着地する。しかし退がったその先にレンカが待ち構え、後ろ足にプレデターフォームで噛み千切る。

グギャアッ!!

痛みを感じたのか、上を向いて口を開く。そこにアリサが降ってきて、口の中にバレットを突っ込み、

「体の中は、どうですか⁉︎」

バレットを喰らわせる。

堪らないとアリサを振り落とし正面に目を向けたピターは、目の前に銃口突きつけたコウタを見た。

「顔面、吹っ飛べーー!!」

叫びに合わせて、炸裂弾を超至近距離から叩き込み、コウタ自身もその反動で吹き飛ばされる。

眩暈の中でこれ以上のダメージを避けたいピターは、炸裂弾の煙が晴れる前に翼で体を覆う。しかし視覚を奪われていたのを隙に、ソーマが上から尻に一撃叩き込む。

反射的にピターは上体を上にあげる形になる。その真下にはブラスト砲を構えたレンカが体中に痣を広げて叫んだ。

「これが、ゴッドイーターだーー!!」

 

ズガァァンッ!!!

 

 

派手に響いた音を吸い込み、ブラスト砲で起こった煙がゆっくりと風に流される。

「やった・・・のか」

ブラスト砲の勢いに弾かれたレンカは、痣が広がった体を少し起こす。バレットに注いだ分だけ侵食され、息をするのも苦しい。が、その甲斐あって、見事に命中。皆の顔にも勝利の文字が浮かんでいる。

(・・・勝った)

そうレンカが心で呟いた時、

 

ジュパッ!!

 

「・・・ぐぅ、はぁっ!」

煙の中から触手のように伸びてきたモノが、レンカの腹を裂いた。

「レンカーー!!」

コウタが叫びながら走り寄ると、煙の中が黒く光だす。

 

ズガガガガーーーーーッン!!!!

 

放射された黒い稲妻が、全てを包み込む。

「がぁっ!」

「きゃっ!!」

「うぁぁー!!」

「きゃぁぁ!!」

四方に吹き飛ばされた仲間を気にしながら、顔を上げたレンカの前に、顔を半分失い、腹から体液を垂れ流すピターが立っている。

「くっ・・そぅ!!」

そしてピターはゆっくりレンカに近付いてくる。今まで、戦闘後にゴッドイーターに興味を示さなかったピターが、息を荒く距離を詰めてくる。

それを見たアリサは、気付く。6年前、箪笥の中から見た父と母の最後。そして、その時追いかけていたピターの目と今が重なる。

「ま、まさか・・・」

ピターはレンカを捕食するつもりなのだ。

気付いてしまうと絶望が頭を埋め尽くす。

「いや、いやいやいや!待って!駄目ーー!」

必死に体を起こそうとするが、先程受けた稲妻で痺れて、足に力が入らない。アリサの反応に異常さを感じたのか、他の者も助けに動こうとするが、やはり立ち上がる事が出来ない。

「いやよ!これ以上は・・、いや。空木さんを・・・レンカを殺さないで!・・・助けて、誰か・・・」

子供が駄々をこねるように、震える足をばたつかせ、アリサは遠くのレンカに手を伸ばす。

「いや・・、誰か、パパ・・・ママ・・助けて。レンカを助けてーーーー!!!」

アリサの叫びが響き渡り、ピターの牙がレンカに吸い込まれる。

 

ザンッ!!

 

目を閉じたアリサがゆっくり開けると、

「あ・・・あ・・あぁ!」

グガァッ!!

1本の神機がピターの眼前に刺さっていた。

「・・・随分と、好き放題やってくれたみたいだね」

その神機の主人、神薙ユウもそこに。

「あ、う・・ユウさ、ん」

レンカの声が耳に入らないのか、ユウは神機を引き抜きピターに近寄る。すると何故かピターは、恐怖でも感じたのか後退りを始める。

「・・・ユウ、本当に、・・・良かった!」

噛みしめるように、サクヤはその名を口にする。その様子を見て、ソーマは「ちっ」と舌打ちをしながら笑み、再会の言葉を贈る。

「おせぇんだよ、新型最強」

 

『蛇に睨まれた蛙』のように、ピターは後退りを止めない。そんなピターが滑稽なのか、ユウは顔を歪め口を開く。

「なに?怯えてるの?ははっ、散々な目に合わせてくれたくせに、怒られるのが怖いの?」

さらに間合いを詰め、ユウは続ける。

「人を殺して、同族も喰い散らかして、自分が殺され喰われる覚悟もないんだ?はははっ・・・・・笑わせるなよ」

ユウの凄味に危険を予期してか、ピターは殺られまいと前足で攻撃に転ずる。

 

ギィンッギギッ

 

しかしユウには届かず、その手の神機に阻まれる。

「喧嘩を売る相手、間違えたね。僕達は、神様じゃない」

そのままゆっくりと顔を上げ、ユウは冷たく言い放つ。

「僕達は、ゴッドイーター。必要なら、神様だって喰らう者だ!」

その言葉と共に、受けていた神機でピターの指を斬りあげる。そのまま空いた横腹に一刺し、抜いたと同時に銃形態に切り替え、刺して開けた穴に銃口を突っ込んでバレットを乱射する。

 

ゲャァァァアーー!!

 

痛みに耐えられなくなったのか、そのまま倒れたピターに近寄り、肩に刺さったままのリンドウの神機を肉ごと削ぎ落とす。

転がった神機を見てから、ユウは苦悶の表情を浮かべる。

(・・・・・リンドウさん・・・)

そして必死に起き上がるピターの正面に立ち、ユウは最期の言葉を告げる。

「僕達の・・・・勝ちだ」

 

ザァシュッ!!!

 

 

 

首を跳ね、捕食の終わったピターを見降ろし、ユウは何かを我慢するように立ち尽くす。

戦いが終わったのに、誰も歓喜の声を上げない中、サクヤはゆっくりと立ち上がりユウの側へと歩き出す。

「・・・ユウ」

その横をもの凄い勢いでコウタが走り抜け、

「この野郎!!」

ゴッ!!

思い切り殴りつけていた。

少しふらついたが、ユウは特に抵抗する素振りも見せず、俯いたまま立っている。それに追い打ちをかけるように、コウタは掴みかかる。

「なんでだ!!あんた強いんだろ!!生きてたなら、なんでもっと早く来なかった!!寝てたのか!!」

「・・・・・」

何も言わないユウを、コウタはさらに殴りつける。

「あんたが!あんたが!とっとと来ないから!リンドウさんが!リンドウさんがーー!!」

「・・・・」

黙って殴られ続けるユウ。それを止める為、レンカが痛む身体を起こしてコウタの腕を掴む。

「よせ、コウタ!別にユウさんは・・!」

「別にって何だよ!!死んだと思わせといて、実は生きてましたっておいしいとこかっさらって・・・ヒーローにでもなったつもりかよ!あんたは!」

「コウタ!」

殴り足らないのか暴れるコウタを、必死に押さえるレンカ。ユウはただ俯いて黙っている。そこへサクヤが間に入り、コウタに平手打ちする。

「・・・え、サ、クヤさん」

叩かれた事に驚き、コウタがサクヤを見ると、目に涙をいっぱいためたサクヤが苦しそうに睨んでいた。

「もう、やめて。・・・お願いだから!」

その言葉に気が抜けたのか、レンカは足の力が抜ける。慌ててアリサが駆け寄り、肩をかしてサクヤに目を向ける。

「サクヤさん・・・帰投、しましょう」

「・・・・・えぇ」

そうして、一人、また一人と歩き出す中、ユウはリンドウの神機の前から動けないでいた。そんな姿に見かねたソーマが、ユウの横にたち肩を叩く。

「すぐにでも回収班がくる。もう俺達に出来ることは終わった。帰るぞ」

「・・・・・・・・・・・・・・・うん」

そこでようやく歩き出したユウの後ろについて、ソーマも歩き出した。

 

 

 

「そうか。報告御苦労。また何かあれば、連絡を」

『はっ!』

回線を切ってから、支部長は息を吐く。それから机の引き出しの中から、一枚の写真を取り出す。研究者時代の若かりし自分、その隣にはペイラー・榊、真ん中には妻であった人アイーシャ。1度目を閉じ、また写真を元の引き出しに戻す。

「失うことは・・・、とても辛いよ。アイーシャ・・・」

戻れない道の上に立つ自分を慰めるように、彼は愛しい人を想う。

 

 

 




戦闘終了です!

ちょっとひねりすぎた感が強いですが(笑)
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