GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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33話 新たな可能性

 

一面、白く埋もれた寺院跡。降り積もった雪を掻き分けて、ユウは表へ這い出てくる。標的のシユウが飛んでいるところに上から刺し貫いたら、そのまま壁に激突し、落ちてきた雪に埋まっていたのだ。

「ふぅ。えっと・・・ソーマは・・、あ」

辺りを見回し、コンビであるソーマを探していたところ、彼は仕留めたシユウを蹴飛ばし、刺さった神機を引き抜いているところだった。

「ちっ。面倒かけやがって・・」

「ははっ、お疲れ」

近付いてきたユウを確認すると、ソーマはシユウに捕食を仕掛けながら口を開く。

「こんな事に、意味なんてあるのか?」

「さぁね。榊博士の考えることは突飛すぎて、僕もよくわからないよ」

「・・・ふん」

コアを回収したのを確認し、ソーマは神機を担ぎユウの側へと移動する。ユウも携帯端末で簡易レーダーを立ち上げる。

「・・・うん。この辺りはもう良いみたいだね」

「だったらとっとと帰投するぞ」

「ヤケに急ぐね、ソーマ。実は寒いのが苦手とか?」

「・・・・・」

「・・・・・嘘」

ソーマは何も言わずに踵を返すと、そのまま移動用に乗ってきた車を停めてある方向へ歩き出す。そんな反応が面白いのか、ユウは少し悪い笑みを浮かべて後に続く。

「へぇ〜〜。かの地上最強も、寒いのが苦手なんだ〜」

「・・・うるせぇ。・・・・・別に、苦手じゃねぇ」

「そう?じゃあ・・・、そいや!」

「ぬぁっ!!!」

足下の雪を拾い上げ、ユウが背中に雪を突っ込んできたものだから、ソーマは珍しい声を上げて飛び退く。それを満足気に、ユウは笑いながら足を進める。

「ユウ!!てめぇは!!」

「やっぱり苦手なんじゃない。ソーマの苦手を発見〜♪」

「・・・・・ふんっ!!」

「あだっ!!」

ご立腹なソーマは、仕返しにと雪を丸めてユウにぶつける。ユウが仰け反ったのを見て、ソーマも少し笑いながら歩き出す。

「ソーマ!!雪玉は良いけど、あんな硬く握る事ないんじゃない?なにあれ?もう氷じゃないか⁉︎」

「自業自得だ」

「このっ!!・・・じゃあ、仕返し!!」

「なっ⁉︎やめろ!バカ!」

そのまま二人はちょっとした雪合戦に興じながら、極東への帰路を辿る。その様子を、寺院の柱の影から見つめる瞳があった。

 

 

司令室に集められた第一部隊は、ツバキから緊急の任務のため呼び出されている。と言っても、ユウとソーマは別の任務に出ている。

「本日は東に位置する旧寺院跡にて、クアドリガの討伐となる。榊博士から直々の指名だ。皆不備なく遂行するように!」

「「「了解!!」」」

「・・・あの〜」

皆が返事を返す中で一人、コウタはおずおずと手を挙げる。

「どうした、コウタ?」

「クアドリガって、あの超デカい奴ですよね?四人で平気かな〜って・・・」

それを聞いたツバキとサクヤは、口を押さえて笑い出す。

「安心しろ。以前相手したのは異例だ。あんなバカデカい奴など、そういてたまるか」

「そ、そうですか。良かった〜」

「常識です。勉強が足りないんじゃないんですか?」

皮肉を言いながらほくそ笑むアリサに、コウタはバタバタと抗議する。

「なんだよーー!勉強してるよー!・・・たまに!!」

「コウタ・・・」

「・・・・・ドン引きです」

「うふふふっ」

場が和んだところで、ツバキは咳払いをしてから、改めて第一部隊に命を言い渡す。

「では第一部隊!早々に現場に向かい、標的を排除せよ!」

《了解!!!》

 

 

「レンカ!そっちに行ったわ!」

「了解!」

サクヤから受けたバレットに怯んだクアドリガは、逃げ出すように走り出す。しかしそちらに回っていたレンカが、神機をプレデターフォームにし、待ち構える。

「はぁっ!!」

ガブュッ!!

正面の装甲を噛み千切り、すれ違いざまにに足を斬りつける。そこに後方で狙っていたコウタが拡散弾を撃ち込み目を眩ませる。

「アリサ!」

「はあぁぁっ!!!」

コウタの合図に合わせて壁の上から飛び上がり、アリサはプレデターフォームで背中に食い込ませる。そして・・。

 

ガシュゥッ!!!

 

 

沈黙したクアドリガに、全員息を吐く。

「お疲れ様!それじゃあアリサ、コアの回収を・・」

「それは待って貰っていいかな?」

サクヤの話に割って入ってきたのは、意外にも榊博士だった。その後ろには、ユウとソーマが控えている。

「榊博士⁉︎どうしてこんなところに・・・」

驚きの表情を浮かべるサクヤを制してから、榊博士は話を進める。

「申し訳ないが質問は後で受け付けよう。まずはみんな、ここから離れてくれるかな?こいつはこのままでね」

「は、はぁ。それは・・・」

戸惑うサクヤは、ユウとソーマに視線を移す。ユウは苦笑しながら肩を竦め、ソーマはそっぽを向いて黙っている。つまり、二人もよくわかっていないのだ。

「さぁ、みんな早く。ここを監視できる位置に隠れよう。今日あたり、食い付いてくれる筈だ」

「わ、かりました・・」

自分と同じく、理解できない様子の三人をサクヤは促し、皆影に潜む為に移動する。

 

数分後に、1番前で見ていた榊博士が、急に目を輝かせる。その先に見えたのは、

「え?・・・人・・?」

捨てられたクアドリガの死骸に一人の女の子が近付いてくる。

ボロボロの布を上からかぶっただけの服に、肌は雪と遜色ない程真っ白だ。

女の子がクアドリガに顔を寄せて匂いを嗅ぎだしたところで、榊博士は皆に合図し、第一部隊はそれを取り囲む。

取り囲まれた女の子は特に逃げる素振りを見せずに、顔を上げる。その顔には、クアドリガの体液がべっとりと付着している。

「ひぃっ!!」

それに驚いたコウタが、反射的に神機をその子に向ける。その瞬間、女の子が少し光った様に思った時、全員が異変に気付く。

「あ、あれっ?」

「・・神機が・・・」

急に神機の反応が無くなっのだ。持ち主に応えてくれなくなった神機に慌てる皆の後ろから、榊博士がゆっくり近付いてくる。

「対話・・・したのか?それとも、制御できるのか?・・どちらにしても、素晴らしい」

「あの・・、博士?」

一人感激している榊博士に、サクヤが自分の疑問に答えてくれるよう訴える。そこでやっと、意識をこちらに戻した榊博士が口を開く。

「いや、これはすまない。この中じゃ、ユウ君とソーマ君以外は、これが何か、今何が起こったのか、わからないことだらけだよね?」

「は、はい。ユウさん達は、把握、してるんですか?」

レンカの質問に、唯一驚いてなかったユウとソーマは顔を向ける。

「そうだね。全部・・・は、わからないけど。粗方、ね」

「・・・あぁ」

その返しに皆は更に驚くが、榊博士は気にせず話を続ける。

「まぁとにかく、ここではなんだから私の部屋で話すことにしよう。・・・君も、来てくれるかな?」

そう聞かれた女の子は、首を何度か傾げた後、大きく首を縦に振る。

「よかった!それじゃあみんな、早速極東に戻ろうか?」

「は、はい・・・・・」

驚き過ぎて榊博士の行動に口出しも出来ず、一同極東支部へと帰投した。

 

 

「「「「えええぇぇぇっ!!!」」」」

「はははっ・・」

「・・・・ふん」

驚く者、その反応に苦笑する者、特に興味を示さない者。そんな中、榊博士は改めて同じ台詞を口にする。

「そう。この子は、荒神だ」

次には沈黙が部屋に張り詰める。その状況を作り出した当人は、皆に囲まれる形で足を伸ばして座り込み、一人一人の表情に興味深に顔を動かす。

「あの、・・・博士?・・・この子が・・、あの、荒神ですか?」

やっと口を開いたサクヤに笑顔を浮かべ、榊博士は話し始める。

「そう。この子はある進化の終着点、と言うべきかな?」

「・・・進化の、終着点・・」

レンカが口にした言葉に、榊博士はズイッと顔を近付ける。

「そうだよ、レンカ君!進化を重ねたオラクル細胞が導き出した1つの答え!それによって産まれたのが、この子なんだ!」

「そ、そうなんですか」

「博士、顔近いです」

それの対応に慣れているユウが、榊博士を諌めると、榊博士は「失敬」と顔を引く。そして再び人型の荒神の女の子に、視線を移す。

「あの〜、博士?・・・質問が、あるんですけど?」

「ん?なんだい、コウタ君?」

恐る恐る手を挙げたコウタに、榊博士は質問を返す。

「こいつ・・・いや、この子なんですけど、・・・荒神ってことは、もしかして・・・俺達、喰われたり、しないですかね?」

「ン〜・・・ゴハン!」

「ちょっと洒落にならない事叫びましたけど⁉︎」

暫く辺りを見渡していた荒神の女の子の言葉に、コウタは驚き飛び退く。

「それは、大丈夫。彼女は君達を捕食対象にはしないよ」

「どうして、そう言い切れるんですか?」

アリサが女の子に近付きながら榊博士に問うと、榊博士はデスクに戻りながらそれに答える。

「荒神には特殊な傾向があってね、『同族種の捕食はしない』というものがあるんだよ。勿論、以前君達が倒したディアウス・ピターのような変食なモノも存在はするが・・・」

1度息継ぎしてから、榊博士は続ける。

「だが、基本は同じだ。現にここに来た彼女は、興味は持っても襲いかかってはこない。人間も人間は食べたりしないだろう?それと一緒さ。勿論それにも過去に異例は存在したがね」

「な、な〜んだ。じゃあ、危険はないんじゃん」

ホッとしたコウタも女の子に近付く。それを見計らい、榊博士は面白がって冗談を言う。

「でもよっぽどお腹が空いたら、コウタ君もご馳走に見えるかも、しれないね〜♪」

「うえぇ⁉︎マジっすか⁉︎」

「イタダキマス!!」

「なんでこのタイミングで言うかなー!!あんたー!」

慌てて更に後ろに退がってきたコウタを、自分にぶつかると思ってかソーマが前に蹴り飛ばす。そのせいでコウタは前につんのめり、持ち上げた顔の前に荒神の女の子の笑顔を認めると、すごい速さでユウの後ろに隠れる。

その様子に満足なのか、榊博士は声を殺して笑ってから話に戻る。

「まぁ、当面の心配はいらないよ。とにかく、この子の事は他言無用で頼むよ」

「えっ?もしかして、この子のこと、ここに住まわせるんですか?」

「そうだよ。彼女には、ここにいて貰う」

サクヤの問いに悪びれもなく言ったものだから、ユウとソーマ以外の皆は、再度驚きに声を上げる。

それが治まるのを待ってから、榊博士は女の子に視線を落とす。

「私はね、この子に1つの可能性を見てるのだよ。私の研究・・・、私の理想とする答えには、この子が必要不可欠なんだよ」

「この子が・・・、博士の理想の・・」

レンカの視線の先の女の子は、相変わらず珍しそうに周りを見回している。

「そういう訳で、晴れて共犯者になって貰った君達に、私からのお願いを聞いて欲しい」

「共犯者って・・・。それで、博士はこれ以上僕達にどうして欲しいんですか?」

ユウの質問に榊博士はデスクから女の子の側でしゃがみ込み、皆に視線を巡らせてから口を開く。

「君達には、この子と仲良くして欲しい」

「はぁ⁉︎仲良くって・・・ええぇぇ⁉︎」

「この・・荒神、と」

コウタとレンカが声を発する中、榊博士は女の子の手を取り子供をあやすように縦に振る。

「見ての通り、この子は産まれたばかり子供に等しい。誰かが面倒を見てくれるのが望ましい。私も勿論彼女の知識欲を満たす手伝いをしようと思うが、豊かな感情を育てるには歳の近い子と仲良くするのが1番だ。まぁ、産まれてからの年月で比べるなら、君達とも随分離れている事になるが」

榊博士がかまってくれるのに喜ぶ女の子から、優しく手を離して立ち上がり、改めて皆を見回す。

「どうだろう?協力してくれないかい?」

その言葉に、どうしたものかと顔を見合わす面々の間を通り抜け、ユウは女の子に微笑んで見る。それが嬉しいのか、女の子は頭をかきながら照れ笑いする。その反応に答えを決めたのか、ユウは榊博士に視線を向けて喋り出す。

「わかりました。この子の面倒を見ます」

「ええぇっ⁉︎マジですか?ユウさん!!」

「うん」

躊躇いもなくコウタに返事を返してから、ユウは膝を屈めてから、女の子の頭を撫でる。

「元々ソーマと僕は関わってた事だからね。だから、最後まで博士に付き合っても良いと思ってるよ」

「・・・ユウ。あなた・・」

「良いよね?ソーマ?」

「・・・・・勝手にしろ。俺は仲良くなれるかは、知らないがな」

ソーマの答えに笑顔で応えてから、ユウは他の第一部隊に目を向ける。

「みんなはどうする?黙っててくれるなら、無理に付き合わなくて良いよ。でも、出来るなら・・・。どうですか、サクヤさん?」

サクヤは暫く黙って考えてから、フッと苦笑し顔を上げる。

「わかったわ。隊員にやらせといて、隊長が逃げる訳にもいかないでしょう」

「ありがとうございます」

そのサクヤの言葉に、迷っていた他の者も後に続く。

「・・俺も、手伝います。まだ、全部納得した訳じゃないですけど、ユウさん達がのるなら、この話にのります!」

「お、俺も!レンカがやるなら!・・・ヤバい時には、ユウさんかソーマさんが助けてくれますよね?」

「何弱腰になってるんですか?・・・私も、隊長や副隊長が決めたのなら、それに従います」

「みんな・・・」

全員が受け容れてくれたのに頷きながら、博士は微笑む。

「決まりだね。じゃあ早速頼みたい事が、1つあるんだが・・、いいかな?」

「はぁ、なんでしょう?」

サクヤが首を傾げると、榊博士は女の子の手を取り立ち上がらせる。

「この子の名前を、決めて欲しいんだよ」

「名前・・・、ですか?」

「ナ、マ、エ・・?」

アリサの疑問に頷き、榊博士は続ける。女の子は意味がわからないのか、首を横にする。

「これから仲良くするのに、『彼女』とか『この子』というのは、些か味気ない。折角だから、彼女に名前をプレゼントして、より良い関係を結べればと考えるのだが・・・、どうだろう?」

「博士がつけたのでは、ダメなんですか?」

サクヤの最もな質問に、榊博士は頭をかきながら答える。

「私はどうも、こういう事には向いてなくてね・・・。だから君達のセンスに任せるよ」

「センス・・・・ふっ!」

その言葉に反応してか、コウタが低く笑い出す。

「どうした、コウタ?」

「俺、実はこういうのに自信あるんだよね♪」

「・・・嫌な予感しか、しないんですけど」

アリサが怪訝そうな表情を浮かべる隣で、コウタは胸を張って大声で発表する。

「ノラミ!!!」

「・・・?・・ノ、ラ、ミ?」

皆の時間が凍りついた中、女の子だけは確認するようにその名を口にする。

「そう!ノラミ!!どうよー!ぴったりじゃね?」

「・・・・・ドン引きです」

ノリノリのコウタの動きを止めたのは、アリサの一言だった。それにゆっくり顔を向けたコウタは、猛烈な勢いで抗議する。

「なんだよーー!!良いじゃんノラミーー!!」

「良くないですよ!なんですか、ノラミって?馬鹿にしてるんですか、女の子の事!」

「んだよー!じゃあアリサはこれっていう名前、思いついたのかよ!」

「そ、それは・・・!」

発言に迷ったアリサを見て、コウタは指を指して煽り出す。

「ほら、見ろーー!!別に浮かんで無いんじゃん⁉︎」

「い、今!今考えてます!!」

「絶対浮かびっこないね〜。はい!ノラミ決定ー!」

「それは絶対にダメです!最低です!!」

「そこまで言いますーー⁉︎」

「二人共、その辺に・・・」

二人の言い合いにレンカが止めに入り、サクヤとユウは苦笑を浮かべる。そんな中、黙って成り行きを見ていたソーマが、「ちっ」と舌打ちをしてから、ボソッと呟く。

「・・・シオ」

「ん?」

それにユウだけが反応したかと思いきや、荒神の女の子もその声に気付き、ふらふらっとソーマの前まで歩いていく。

そんな事態の変化に気付いたのか、皆の視線はソーマと女の子に集まる。

「・・・シ、オ?」

「・・・・ふん。気に入らないなら名乗るな」

「シオ・・・、ナマエ?」

「・・・・・ちっ」

そんな様子にユウは笑いながら近付き、シオの肩に手を置いてから優しく諭す。

「そうだよ、シオ。君の名前、君の事だよ。シオ」

「シオ・・・。コレ、シオ?」

「うん、シオ!」

自分を指さしてから尋ねる女の子に、ユウは笑顔で応える。

「この人が・・・ソーマがつけてくれた、大事な名前。わかる?」

「・・シオ、・・ナマエ、・・・クレタノハ、ソーマ!」

喜んだ"シオ"は、ソーマを指さしその名を呼ぶ。それから、自分とソーマを交互に指さし、その名前を確認する。

「ソーマ!・・シオ!・・・ソーマ!・・シオ!!」

「ちっ・・・、うるせぇぞ。荒神」

相変わらずの口の悪さに苦笑しつつも、皆はその名に納得したように目の前の光景に優しい目を向ける。

 

 

 

「な、なぁ。やっぱ、ノラミの方が良くね?」

「・・・・ヤダ」

「なんでそんな言葉を、早々に覚えてるんだよ⁉︎」

「シオちゃん、良く言えました♪」

「アリサーー⁉︎」

「・・・テヘヘ」

「あんたも照れてんじゃないよっ!!」

 

 

 

 




シオ、登場!
原作の捉え方によっては、リンドウが名付け親の可能性も見られますが、ここではソーマにしてみました!
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