GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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34話 子育ては戦争

 

「ソーマ!そっち!」

「ちっ!ちょこまかと!」

ユウの斬撃から逃れるように、シユウの亜種セクメトは後ろへと大きく跳ねる。それを逃すまいと、ソーマはタイミングを合わせ斬り上げる。

ガアァァッ!!

翼が破れてバランスを崩したセクメトが地面に落ちたのを見計らい、ユウは神機を大きく振りかぶり突進する。

「これで、終わりだ!」

ザシュッ!

体が半分にずり落ち、セクメトは完全に沈黙した。それを確認しユウは息を吐いてから、瓦礫の上で足をパタパタさせて待っていたシオに声をかける。

「シオ!お待たせ!」

「おぉ?ご飯の時間か?いいのか?食べていいのか?」

「うん、良いよ!」

「おぉー、ユウ!良いやつだなー!」

そう言ってシオはセクメトに向かって走って来る。そして死骸に手を合わせて、大きな声で宣言する。

「イタダキマス!だなー!!」

 

 

数時間前。榊博士の研究室には、第一部隊が集合していた。

「おっす!」

「おっすー!」

コウタが手を挙げて声をかけると、シオはそれを真似て返事を返す。

「よーし!シオ!これが友達同士の挨拶だ!ばっちり覚えろよー」

「おぉ、これ挨拶か?コウタ、ありがとな!」

「ちょっと!変な言葉教えないで下さい!シオちゃん、今のは忘れていいからね?」

「そっかー。今の、駄目なやつだったかー」

シオが頭に指を当て、首を傾げる。そんなシオをアリサは優しく撫でる。

「別に良いじゃん!間違ってないっしょ?」

「駄目です!なんですか、『おっす』って!シオちゃん、コウタみたいに馬鹿になりたくなかったら、使っちゃ駄目よ」

「おぉ!コウタ、バカなんだなぁ!覚えたぞ!」

「うん!良い子ね〜、シオちゃん♪」

「あんたこそ、ろくでもないこと教えてませんか⁉︎」

「そっかー!シオ、偉かったかー!」

「偉くねぇよ!」

最近はこういった感じで、皆がこぞってシオに言葉や知識を与えている。シオも生まれたてで、色々なことに興味が尽きないのか、数週間でまともな会話が出来る程に成長していた。

コウタとアリサが歪みあっているのを苦笑しながら、サクヤは榊博士に話しかける。

「シオも随分と色んな事を覚えましたね」

「そうだね。ここまでの急成長は、私にも予測出来なかったよ。みんなのおかげで、シオもより人間らしくなって来たね」

そう。シオはあくまでも『荒神』。人の姿をし、皆と会話し、考え、学び、感情を表現できるが、世界を喰らい尽くそうと外を練り歩く、荒神に間違いないのだ。

しかし、皆それを忘れたかのように、シオと接している。それは人と遜色ない姿以上に、シオの純粋さにあると言って良いだろう。

そんな中、サクヤと榊博士の話に割って入るように、ソーマが口を開く。

「そんなことはいい。今日俺達を呼んだのには、他に理由があるんじゃないか?」

その言葉に一同榊博士に目を向ける。視線の集まった榊博士は、それに応えるよう笑みを浮かべる。

「そうだったね。今日みんなに集まって貰ったのは、ある問題の解決を手伝って欲しくて呼んだんだ」

「ある問題?」

ユウの問いに1度頷いてから、榊博士は話し始める。

「まず1つは、シオの食料事情だ」

「食料?」

「うん。実は彼女は結構なグルメでね、レア物の荒神しか食さないことがわかったんだ。それで、私の備蓄していた研究材料から与えていたんだが・・・これが、もう底をついてね」

「要するに、レア物の荒神を狩ってこいって、ことですか?」

レンカの返しに、榊博士は微笑む。

「そういう事だね。これはユウ君とソーマ君に私からの任務という事で、シオを連れて行ってきて貰おうと思うんだ」

「え?私達では駄目なんですか?」

疑問を投げてくるサクヤに、榊博士はその答えを返す。

「あの子に荒神を食い尽くされたら、持って帰るコアや素材がなくなってしまう。そうなると流石に誤魔化しきれないからね。その点、彼等は元々私に非公式な流通を作っているから、誤魔化しはいくらでもできる」

「あ、例の・・・」

「非公式?」

「あ、いえ!何でもないの!」

ツバキと作り上げた裏工作を知らない三人が首を傾げるのを、サクヤは必死に誤魔化す。それを気にも留めず、榊博士は話しを続ける。

「それに残った四人には、別の用事を頼みたい」

「別の用事、ですか?」

アリサがシオを抱っこしながら聞いてくる。

「そうさ。その子の服、どう思うかね?」

「どうって・・」

言われてみればと皆の視線は、シオの着ている布に目を向ける。ただ布に頭を突っ込んだだけの布、とても服とは言えない代物に、皆は苦笑し博士に目を戻す。

「私も改善すべく色々服を着せようとしたんだが・・・、どうも肌に合わないらしくてね」

その時の事を思い返してか、榊博士は頬をかきながら苦笑する。何の話か気付いたのか、シオは足をバタつかせ頬を膨らませる。

「チクチクやだーー!」

「・・だ、そうなんだよ」

「服、かぁ」

サクヤも同じ女として不憫に思え、顎に手を当てる。

「おそらくは人間に合った素材に問題があると思ってね。なので荒神の素材を使えば改善されるのではと考えたのだよ」

「荒神の素材で、服をですか?」

「あぁ、そうだよ。それを四人に集めてきて欲しい」

成る程と頷く皆が口にする前に、アリサがシオに向かい合い、真剣な眼差しで見つめる。

「シオちゃん、私達に任せて!あなたにピッタリの可愛い服を、私達が用意してあげる!」

「おぉ?チクチクしないやつか?アリサ、ありがとな!!」

期待の眼差しを向けられ、アリサは喜びを露わにシオを抱き締める。サクヤもその様子に肩を竦め、榊博士に答えを返す。

「わかりました。アリサもやる気ですし、私も同じ女ですから。必要な素材を、任務に合わせて余分に回収して来ます」

「助かるよ。ついでにデザインの方も君達に任せるよ。制作の方は・・・そうだね。協力者にはユウ君から頼んで貰おうかな?」

「え?僕ですか?誰に・・・」

そう言ったユウに、榊博士は笑顔のみ投げかけ、紙を手渡した。

 

 

「はあぁぁっ!!!」

気合いの一閃で荒神が沈黙すると、アリサはプレデタースタイルに移行し嚙みつかせる。

「アリサ、気合い入ってますね」

「あの子も意外に単純ね」

討伐を完了した事を確認する為集まったサクヤとレンカは、アリサの気合いの入った戦闘に苦笑する。コウタは余分に荒神を狩って疲れたのか、離れた場所で倒れていた。

「この辺りのオラクル反応は無いみたいだけど・・・、ヒバリちゃん?こちらサクヤ。この地域にオラクル反応はもう無いのかしら?」

『サクヤさんですか?少々お待ち下さい。えっと〜、・・・あっ!』

「どうしたの?」

『近くに中型種が1体いますね。そちらとの接触まで、想定5分!どうされますか?』

「そうね〜」

空返事のままサクヤはアリサに視線を移動させると、無線を繋いでいたのか神機を握り直し、侵入予定の荒神に備えている。それを見てから苦笑し、サクヤはヒバリに返事を返す。

「わかったわ。時間も余裕だし、ついでに討伐して帰るわ」

『わかりました。何かありましたらご連絡を!』

通信を終わらせてから、倒れているコウタに声をかける。

「コウター!予定外にもう1体来るから、準備してー!」

「えぇ⁉︎マジっすか⁉︎もうほっといて帰投しましょうよ〜」

1度起こした体を再び倒してから、コウタは駄々をこねる。そんなコウタの側にレンカは駆け寄り、手を差し出す。

「ほら、コウタ起きろ」

「ヤダよ〜。もう無理だって〜」

「それは俺にじゃなく、アリサに言った方が良い。・・・・言えるんならな」

「えぇ〜?」

文句を垂れながらレンカからアリサに視線を移すと、背中に阿修羅を纏ったアリサが睨みつけていた。コウタはすぐさま立ち上がり、屈伸を始める。

「いや!ウソウソ!俺まだ全然いけるっす!!」

「・・・さっさと構えて下さい」

冷たく言い捨てたアリサが正面に向き直ると、コウタはガクッと肩を落とし俯く。レンカはその背中を軽く2回叩き、サクヤはクスクスと笑っていた。

 

 

「ゴチソウサマ!だな!」

セクメトを綺麗に食したシオは、食べる時同様合掌し頭を下げる。周りを警戒していたユウとソーマは、食事の終わりを確認すると、シオへと近寄る。

「もう大丈夫?お腹いっぱい?」

「おぉ!もういらないぞ!いっぱいだな!」

「そう」

ユウが優しく頭を撫でると、シオは照れながら目を細める。

「もう良いんなら帰るぞ。何処にあの野郎の目があるとも知れねぇからな」

「そうだね、帰ろう」

ソーマの言う"あの野郎"、支部長の目的もシオと分かっている二人は、荒神だけではなく、そちらも警戒しているのだ。もし知れれば、シオを奪還しにかかってくるであろう。だからこそ、榊博士の組んだプラン通りに動いている。

支部長の動きに合わせてのタイムスケジュール。その辺りは、榊博士も抜かりは無い。

「シオ、帰るよ」

「帰るのか?じゃあ手を繋がないとな!」

「あ?・・・なんでだよ」

シオの言葉に、ソーマはいつもの調子で聞き返す。

「仲良しが一緒に、家に帰る時は、手を繋ぐって!コウタがー!」

「ちっ・・・、あいつは。本当にロクでも無い事を・・・」

「ははっ、コウタらしいね」

そう笑ったユウは、シオの左手を取る。それにテンションを上げたシオは、ソーマに向かって手を突き出す。

「ソーマ!」

「・・・・・」

それを見ないように横を向くソーマに、ユウも追い打ちをかける。

「ソーマ、良いでしょ?」

「お前な・・・」

「ソーマ、嫌か?ソーマ、シオと仲良くなかったか?」

「・・・・くそ」

シオに懇願され、結局ソーマもシオの手を取る。するとシオは大喜びではしゃぎながら、歩き出す。

「仲良しだな!ソーマ!ユウ!」

「そうだね。僕達は仲良しだよ、シオ。ソーマもね♪」

「・・・・ふん、言ってろ」

そうして三人は、車まで手を繋ぎ、並んで歩みを進めた。

 

 

極東の外壁門が見えてきた時、ソーマは「ちっ」と舌打ちをする。

「ユウ・・・」

「わかってる。見えてるよ」

門番を任されてる衛兵と並んで、シックザール支部長が門の前に見えたのだ。

「ん?どうしたんだ?」

「いいからてめぇは隠れてろ。ユウ、どうするんだ?」

ユウは少しだけ考えてから、ソーマに答える。

「雨避け用のシートをシオに被せて。妙な動きを見せるより、堂々と通ろう」

「・・・わかった。おい、こいつの中に入れ」

ソーマはシートを引っ張り出し、シオの上に被せる。

「おぉ?なんだ?カクレンボってやつか?」

「いいから中に入って黙ってろ」

「わかった!」

シオが隠れたのをバックミラーで確認し、ユウはそのまま門の前へと進み、車を停める。

「ご苦労様です!パスの提示を!」

「はい、これを」

「少々お待ち下さい!」

衛兵が確認の為に去ると、支部長が近付いてくる。

「やぁ。今日も任務御苦労。日々の任務にわたしからの特務、博士からの依頼までこなすとは・・・。君にはもう、頭が上がらないな」

「いえ、僕は極東のゴッドイーターとして、当然の事をしているまでです」

いつも通りの淡白な返しに、支部長も変わらず笑みを絶やさず話す。

「ふふっ、最近では君のその対応も心地良く感じだしたよ。態度とは関係なく、君は任務を全うしてくれるからね」

「・・・どうも」

それから支部長の目は荷台に座るソーマに向く。視線を感じてか、ソーマも睨むように視線を返す。

「私の息子とも仲良くしてくれているようだね。・・・迷惑では、ないかな?」

「・・・どういう意味だ」

癇に障ったのか、ソーマはつい口から言葉を洩らす。

「彼の命は、安全かという意味だよ。ソーマ」

「てめぇ・・・!」

必要以上の煽りにソーマが立ち上がろうとするのを、ユウは手を出して止め、支部長を冷たい目で見据える。

「・・・僕は、死にませんから。御心配には及びません。・・・・それと、」

「ん?」

「ソーマは・・・、僕の友達ですから。・・親だからって、友達を悪く言わないでもらえますか?」

「ほぅ。友達、か」

それからしばらくの睨み合いの間に、衛兵が確認を終えてくる。

「遅くなりました!大丈夫です!今門を開けます!」

「・・・ありがとうございます」

支部長から正面に前を向け、ユウはエンジンをかけ直す。そんなユウに、支部長は笑みを崩さず言葉を発する。

「明日、また君に頼みたい任務がある。9:00分に出頭してくれたまえ」

「・・・・了解」

そういってユウは車を走らせる。すれ違いざま、支部長とソーマは互いの想いを目で語り、伝わらぬまま車は走り去り、門は閉まった。

 

「・・・ソーマ?」

「・・・・」

シートから顔を出したシオは、ソーマの顔を伺いながら声をかける。

「ソーマ、怒ってるのか?シオ、駄目だったか?偉くなかったか?」

「・・・・そうじゃねぇ。お前は、関係ねぇ」

「そうか?じゃあシオ、偉かったか?カクレンボ、偉かったか?」

「・・・・あぁ」

「そっか〜」とシオが照れてはしゃぐので、ユウとソーマはさっきの出来事を忘れて笑みを浮かべた。

 

 

 

極東に戻ったユウは、その足で開発局に足を運ぶ。神機の整備室に赴くと、そこに目的の人物、楠リッカがいた。

「リッカ、お疲れ」

「ん?・・あれ?ユウ君?どうしたの、突然」

リッカはゴーグル目から外し、タオルで軽く顔を拭ってからユウのところへとやってくる。

「仕事中にごめんね」

「ううん、良いよ。それで、なんの用事?」

「実は榊博士からの頼み事・・って言えば、わかる?」

「あぁー、なんか荒神の素材を使った衣服を作って、ゴッドイーターの防御力を高めるとかってやつ?」

「・・・そう、聞いてますか」

「え?違うの?」

「いやいや、それであってるよ」

榊博士の適当なでっち上げに、ユウは頬をかきながら苦笑する。

「まぁ、いいや。それで?デザインとかはあるの?」

「あぁ、うん。それを届けに来たのと、それに使う素材を持って来たんだ」

「そう!じゃあ、こっちに持って来て!」

リッカに案内されて、作業台の上にデザイン画を広げる。しかしその絵を見た瞬間、ユウは顔を引き攣らせ、リッカはビシッと音を立てかのように固まる。

サクヤとアリサが懸命に描いたそのデザイン画には、モデルであるシオも綺麗に描かれていた。

「あー、えっとー、・・・」

まさか当人が忠実に描かれてるとは思っていなかったユウは、どう誤魔化そうか頭を捻っていると、リッカが良い笑顔のまま聞いてくる。

「・・・誰?この子・・」

「あ、それはね、・・・何と言いますか」

「こんな子、極東には、いないよね?」

「・・・いや、いない事は、・・・ない?」

「・・・・・・・また、女・・・!!」

ユウが誤魔化したいこととは違った角度で怒りを露わにするリッカに、ユウは慌てて言い訳する。

「これはー、・・・そう!実はコウタの妹さんの友達のお姉さん・・・じゃ、駄目?」

「・・・嘘つくなら、もう少し上手くなってからついたら?」

「あーーー、・・・・ごめんなさい」

顔から正直が溢れるユウは、素直に謝るしかなかった。

 

「ふ〜ん。人型の荒神、か〜」

「・・・はい」

結局事情を全部白状させられたユウは、怒って聞いてくるリッカに縮こまったままで、リッカの方は落ち着いたのか聞いた情報を頭で整理していた。

「それで、この子が着るための服を作るってことね」

「そ、そうです・・・」

「もう!怒ってないから、そんな態度止めてよ!・・・私の、早とちりだったんだし・・」

「は、え?」

「何でもなーい」

リッカが恥ずかしそうに笑った顔を見て、ユウもホッと胸を撫で下ろし、調子を取り戻す。

「まぁ、もう全部話しちゃったから言うけど・・。この子、シオの服を作って貰っていいかな?」

「榊博士は相変わらずとんでもないことに、サラッと巻き込むな〜。まぁでも、面白そうだし・・・、良いよ!」

「良かった。じゃあ、頼んだよリッカ!」

「で〜も〜、条件位、つけても良いよね〜?」

「いっ⁉︎条件、ですか?・・・なんか、怖いな〜」

少しだけニヤリと微笑むリッカに、去ろうとしていたユウは汗を垂らす。小さく唾を飲み込みユウが覚悟決めたところで、リッカが指を1本立ててズイッと前に出す。

「えっ?・・・1?」

「そう1回!今は上手く思い付かないからさ。1回、私のお願いを何でも聞くってことが、条件!」

暫くの無言の後、ユウは口を開く。

「それは・・・、榊博士が、ってこと?」

「違う!ユウ君が!」

「・・・やっぱり」

「・・駄目?」

ユウは頭を軽くかいてから、諦めたように両手を挙げる。

「了解。出来る範囲にしてよね」

「勿論!じゃあ、よろしくね!・・・・・よっし」

見えないようにガッツポーズを決めてから、リッカは作業台のデザイン画を見ながらも、どんな事を頼もうか夢を膨らませた。

 

 




シオの台詞って、難しいです。

でも、話はスムーズに進んでいると思います!

次あたり、エイジスも絡ませて・・・。
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