GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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40話 別れの唄

 

極東支部の監視塔から、リッカは海の向こうのエイジスを見つめる。胸の前に組んだ手を握り直し、遠くで戦うユウの身を案じる。

「・・・・ユウ君」

呟いた名を噛み締めるように目を閉じ、数日前に話した内容を思い出す。

 

『ピターに吹き飛ばされた後、結構ヤバくて・・・。もうダメかなって時に握った物が何なのかを思い出してさ』

 

『それを咄嗟に齧り付いて・・・・、それで助かったんだ。ある意味、賭けだったけどね』

 

 

ゆっくりと目を開いて、再びエイジスを視界に入れる。そして、ギリギリに完成させた物を思い浮かべ、自分の想い人へと呟く。

「負けないで・・・!勝って!!」

 

 

ザンッ!!

『な、んだと⁉︎』

レンカへと振り下ろされたアルダノーヴァの腕は、行き着く前に斬り飛ばされていた。それに驚いたのはアルダノーヴァの中の支部長だけではなく、他の仲間達も同様だった。

「・・・もう、誰もやらせない」

その荒技を成したユウは、振り抜いたその構えのまま、アルダノーヴァへゆっくりと顔を上げる。

「今度こそ・・・、守ってみせる!!」

『ば、馬鹿な⁉︎・・・貴様ーー!!』

動かないユウに対し、支部長は反撃に転じようとしたが・・。

『なっ!ど、どうした⁉︎何故動かない⁉︎」

アルダノーヴァはカタカタと音を鳴らしながら動かない。それどころか支部長の意思に反して、ゆっくりと後退りを始める。

『何故だ⁉︎どういうことだ⁉︎』

「・・・・怖いから、でしょ?」

その疑問に答えたユウは、構えをといてからアルダノーヴァへと足を進める。

「殺されると思ったら、誰だって怖い。人も、動物も、・・・荒神さえも」

『なん、だと⁉︎』

 

ソーマは片足を引きずりながらレンカの元へと行き、そこからユウの背中に目を向ける。

「ユウ、さん・・?」

「てめぇはいいから、横になってろ。もう・・・ケリはつく」

そこへ遅れながら、サクヤとアリサ、コウタが辿り着く。そして、自分達が手こずった強敵をビビらせる、最強の仲間を見つめる。

「これで、俺達の勝ちだ!」

「そうよ。あの子に睨まれたら、誰も逃げられないわ!」

「私達新型の、最強!」

「俺達の・・・希望!」

「いけ・・・・・・・、世界最強!」

そして全員が声を揃えて叫ぶ。

《荒神を、喰らい尽くせーー!!》

 

皆の思いを背負い、ユウはアルダノーヴァを睨みつける。後退りを止めれない支部長は、自分が恐れる者へと話しかける。

『何故だ⁉︎君はもう、立てなかった筈だ!なのにどうして・・それは?』

質問に答えるように、ユウは首にかかった小さなオブジェを手に取り、相手に見えるよう前に出す。

「これは・・・、リッカがギリギリで手渡してくれた、僕の切り札だ」

『切り札、だと?』

「そうさ。・・・これには、普通よりも倍の濃度の『偏食因子』が入ってる。・・・・・それを、打ち込んだのさ」

『な、なんだと⁉︎』

支部長が驚くのも無理はない。偏食因子の過剰な投与は、暴走を引き起こす引鉄となりかねない。適合の資格があるといっても、元々体内に存在しない細胞を組み込むのだ。その分量を軽々しく増やして良いものではない。

なのでゴッドイーター達の偏食因子の投与の際は、細心の注意の元行われる。

『倍ということは、軽く二人分以上体内に取り込んだことになる!普通の人間なら、とっくに荒神化して・・・』

「しないよ・・・僕は。既に、1度試したしね」

『まさか・・・、ディアウス・ピターの時に⁉︎聞いてないぞ!そんな報告!』

「切り札を・・・、安易にバラす人なんていないよ」

1度大きく神機を振ってから、ユウは構える。

「もう、いいだろう?僕は・・・あんたを許さない!!」

そう言って飛び込んだ瞬間、アルダノーヴァの片脚が吹き飛ぶ。後ろに回ったユウは飛び上がり、銃形態に切り替え銃口を後方の荒神へと刺しこむ。そして・・。

ドドドドッ!!!

『がぁぁーーーっ!!』

撃ち込まれたバレットが地面へと突き抜け、後方の1体は地面へと落ちる。引き抜いた神機を捕食形態にし、女性型の頭に噛みつかせそのまま・・、

ガジュッ!!

引き千切って投げ飛ばす。

そして剣形態へと移行し、女性型の胴体を刺し貫く。

ドシュッ!!ブバッ!!

その勢いから体液が吹き出し、ユウの顔へと付着する。それを拭ってから、ユウは大きな声で叫ぶ。

「ソーーーーマーーーー!!!」

「・・・うるせぇ」

それに答えたソーマは、神機を後方へ大きく振りかぶり刃に黒いオーラを溜めて、倒れ伏した父親へと狙いを定める。

「親父ぃぃぃっ!!!!」

『・・・ソーマ』

 

ドォーーーンッ!!!

 

完全に動かなくなったのを確認し、ユウとソーマは神機を振る。

支部長の計画は、完全に敗れた。

 

 

 

「ぐぅ・・くっ、・・・な、ぜだ。わた、しは・・・、神じゃなかった、のか?」

倒れたアルダノーヴァから上半身を引きずり出した支部長は、自分の計画の破綻に疑問を嘆いていた。そこへ、第一部隊が歩み寄る。

「・・・あなたは、神だったかもしれない」

ユウの口にした言葉に、支部長は怒気を込めて叫ぶ。

「ならば何故負けたー⁉︎ぐふっ・・・わ、私が神だったなら、何故負けなければならない!!」

叫び狂う支部長に、サクヤが悲しげな表情をしながら答える。

「あなたが・・・、作ったのでしょ。・・・私達を」

「・・・何?」

サクヤの言葉に続けて、アリサに肩を借りて立つレンカが口を開く。

「俺達は・・・、ゴッドイーターだ」

「神を・・・喰らう者、です」

アリサの言葉にハッとさせられたのか、支部長は目を大きく開く。

「私が・・・・、作った・・。人類の・・・・・救世主」

「例えあなたが、神だったとしても・・・、僕達は、負けない」

地に立てていた神機を肩に担ぎ、ユウは続ける。

「生き残る為なら、神だろうと喰らい尽くす。僕達に喧嘩を売ったことが・・・、あなたの敗因だ」

そんな現実の重さに耐えきれないのか、支部長は顔を伏せる。その肩は少し震え、泣いているように見えた。

 

戦闘を終えた皆は、シオの周りへと集まる。

抜け殻となってしまったシオは、ただ眠っているかのように見える。それが辛くなったのか、アリサは顔を手で覆う。

「シオ・・・」

「ちくしょう。何で・・・こうなっちまうんだよ」

コウタが肩を震わせ歯を食い縛るのを見て、サクヤはそれを慰めるように背中を摩る。その時・・。

 

ドォーンッ!!ズズッズズズズッ!!!

 

突然地面が揺れ、大きな音が周りを包む。

「な、なんだ!」

「これは・・・いったい⁉︎」

レンカとアリサが驚きを口にしていると、コウタが目の前を指さし叫ぶ。

「あ、あれっ!!動いてないか⁉︎」

そのさす方に目を向けた時、皆は起こっていることに驚愕する。シオを取り込んでいた巨大荒神が動き始めたのだ。

「どういうこと⁉︎・・・まさか、終末捕食が⁉︎」

「そ、そんな⁉︎」

皆が狼狽える中、ユウは神機を構え飛び上がる。

「ユウ⁉︎」

「はあぁぁぁぁっ!!!」

勢いに身を委ね、そのまま思い切り斬りつける。

カィンッ!!

「くっ、そ!」

神機は弾かれ、ユウはそのまま着地する。

なす術もないこちらをあざ笑うかのように、巨大荒神はその体を反転させようと、前へ倒れ出す。

「くそーっ!!どうにもなんないのかよー!!」

「こんなの、どうしろって言うですか⁉︎」

「くそっ!・・力が、入らない!」

「ここまで・・なの?」

「・・・くそが!」

「くっ!・・・流石に、無理か、な」

皆が諦めかけた・・・その時、

 

『・・・大丈夫、だよ!』

 

《えっ⁉︎》

 

その声が皆に届いた時、巨大荒神は動きを止めた。

 

 

「これは・・・」

戦いの終わりを見計らいやってきた榊博士が、起こっている状況に困惑する。そのタイミングで、辺りに響き渡る声が再び口火を切る。

『みんな・・・もう、大丈夫!』

「この声・・・、シオ⁉︎」

ユウの言葉に納得したように、皆は巨大荒神へと視線を向ける。

「シオ?シオなの⁉︎」

『うん!シオ、この大きいのに、入っちゃったみたい』

「なら!すぐにこっちに戻ってこいよ!!」

『それは・・・無理』

「どうして⁉︎」

アリサの嘆きに、シオは優しく答える。

『これ、もう止まらないみたいだから・・・』

「そんな・・・」

『これ、食べたいって。全部食べたいって・・・みんなに迷惑かけるから、シオが、遠くへ連れて行く』

「遠くって・・・」

その言葉に呼応するように、巨大荒神は上へと浮かび上がる。

『お空のまぁるい、白いアレ。あっちの方が、美味しそうだし!』

「何言ってんだよ・・・、戻って来いよ!シオ!!」

コウタの叫びに首を振ったかのように、シオはゆっくり語りだす。

 

『シオ、みんなといて、いっぱい学んだ!嬉しいことや、悲しいこと、楽しいこと、苦しいことも。それは誰かと一緒に笑ったり、誰かの為に怒ったり、誰かと一緒に悩んだり、誰かの為に泣いたり・・。色んなことを知って、シオは、みんなの事が、凄く好きになった!それで、凄く好きなみんなを、悲しませたく、ないから・・・。だから、みんなの為に、コレ、遠くへ連れて行く!なぁ、シオ、偉いか?』

 

シオの言葉1つ1つに、皆それぞれに思い出を振り返り、その輝かしさに涙が止まらなくなる。

「偉くなんか・・・ないわよぅ」

アリサの絞り出した声に、シオは「へへへ」と笑う。

『そっかー。、偉くなかったか』

上りゆく巨大荒神が何かに引っ掛かったように止まると、シオは小さく息を吐く。

『・・・もう、行かないと。だから、その離れたがらないやつ。・・お気に入りだったけど、・・・・ソーマ、食べて』

「・・・・」

ただ黙っているソーマに、シオは続ける。

『あんまり、美味しくないかもだけど・・・ソーマに、食べて欲しい。・・・・・お願い、ソーマ』

「・・・・・・・・・・・・ちっ」

いつものように舌打ちをし、ソーマは皆より少しだけ前に出る。

「最後の最後まで・・・、勝手なこと言いやがって」

『ごめんな、ソーマ。・・・・・・うぅ』

「シオ?」

ユウが問いかけると、シオは急に嗚咽をかきだし、一気に想いを吐き出す。

『本当は!シオ、もっとみんなといたかった!!もっといっぱい、遊びたかった!!いっぱい笑って!!いっぱい悩んで!!・・・もっといっぱい、みんなと『仲良し』したかった!!!』

《っ!!!》

沢山の我慢が声となり、シオは泣き叫ぶ。それを聞いた皆も、悔しそうに拳を握り締める。

しばらく続いた泣き声が落ち着いた頃に、流すことの出来ない涙を拭って、シオがソーマに話しかける。

『ソーマ・・・、本当に、もう行かないと・・。だから・・・、お願い!!』

「・・・くそっ!・・・・シオ・・」

そして、

ソーマは、

神機を捕食形態にし、

大きく開いた口を、

「っ!!シオーーーっ!!!」

ガブュッ!!!

シオだった者へと、喰いつかせた。

そして、

 

 

『・・・ありがとな・・』

 

 

巨大荒神はその体を大きくバウンドさせ、空へと一直線に飛び去る。白く広げた体は、一瞬花のように咲き、その開いた大きな手で月を包み込んだ。

 

 

屋根を失ったエイジスに、空から雪のように白く輝くものが降り注ぐ。

それは、シオが愛した雪のように、触れた先から儚く消える。

積もる事のないシオからの贈り物を、皆は涙を流しながら手に集めようとする。

そんな中、俯いていたソーマは、ゆっくりと顔を上げ空を仰ぐ。無数に散らばる光の欠片の中、ふと目にとまった1つに視線を追う。いつも被っているフードを取り払い、それへと手を伸ばす。そして素早くその手に収めた時、

『ソーマ!大好き!』

シオの声を確かに受け取る。

そして、目を閉じて涙を流し、口の端を浮かせて呟く。

「・・・ふん。うるせぇ」

 

優しい光は、皆の涙が枯れるまで、降り続いた。

 

 

 




決着です!
次がゴッドイーター編最後となります!
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