極東支部の大会議室。
滅多に使われる事のないそこに、各部隊の隊長とユウにソーマが集まっている。事前に連絡を受けていた訳でなく、急な召集だったので、皆何事かと内心落ち着かないでいた。
皆が揃って数分後、榊博士とツバキが入って来る。二人は全員の顔を確認しながら壇上へ移動し、1つ息をし口を開く。
「皆揃っているようなので、始めさせてもらう。・・皆に集まってもらったのは、新たな問題が起きた事を伝えねばならなかったからだ」
「新たな問題?そりゃー、何ですか?雨宮三佐」
タツミが手を挙げて質問すると、ツバキは榊博士に目で合図を送り1歩下がる。場所を譲られた榊博士は、1つ咳込んでから話を始める。
「今回君達の報告から、周辺のオラクル反応をこの1週間調べてみたんだ。その結果、非常に興味深い・・・おっと失礼。非常に危険な事が判明した」
「興味深い」の口癖に睨みをきかせてきたツバキに苦笑しながら、榊博士は顔を引き締めて再開する。
「君達の報告では『荒神の数が減っている』というものや、『任務対象の荒神が消失した』という事だったね?」
「あぁ、そうですね。俺らが行った先にも、何もいなかったし・・」
「私達も、何度かそういった事が・・。原因が分かったんですか?」
サクヤとタツミの返答に頷いた榊博士は、背後のスクリーンに"ある映像"を映し出す。それはオラクルレーダーを記録したモノなのか、荒神を表すポインタとゴッドイーターを表すビーコンポインタが確認できる。それを怪訝そうに眺めるソーマが、視線をそのまま話しかける。
「・・・・これがどうだっていうんだ?」
「もうすぐだ。皆、見ていてくれたまえ」
皆首を傾げながら、全体を見渡す。その中の1か所に、大型らしき荒神のポインタが確認できる。そこにはゴッドイーターの反応はなく、放置されたか唐突に出現したのかと気にしたその時、
《っ!!!》
皆の顔色が一気に変わる。
大型オラクル反応の近くにもう1つ大型が現れたかと思った瞬間、元々その場所にいた大型荒神が消失したのだ。少しの沈黙の間があってから、前に進み出てきたユウが口を開く。
「・・もしかして、荒神が荒神を倒したんですか?」
「なっ⁉︎おいおいおい、マジかよユウ?それって・・」
タツミの声に合わせて、周囲が騒めき始める。それをツバキが大きく咳払いをして黙らせ、榊博士に話の続きを促す。
「今迄の話から、君達も想像出来たと思う。つまりこれは、"荒神を殺す荒神"だ。しかも種族を選ばないあたり、ディアウス・ピターよりもタチが悪いと言っていい」
「『種族を選ばない』ということは、他にも事例があるということですね?」
確信をもって質問を投げてくるサクヤに、榊博士は目を閉じて頷き応える。
「その通りだよ。1週間の間に似たような事が5回あった。24時間態勢で1週間という期間にこの程度という事から、全て同一個体が起こしたと見て間違い無いだろう」
「ということは、1体で多数の荒神を・・」
「倒したという事になるね」
ユウの呟きに答えてから、榊博士は説明をツバキへと、今度は自分が後ろへと下がる。入れ替わりで前に出たツバキは、集まった者達に視線を走らせながら喋りだす。
「いいか!今回出現した荒神は、特性も何もわからない相手だ。手を出すなとは言わんが、危険と思えば即撤退しろ!情報よりもお前達の命の方が重いと知れ!わかったな⁉︎」
《はい!!!》
返事を受け取ってから、ツバキは念押しに声を張る。
「各部隊にはお前達から伝えるように!くれぐれも、命を粗末にするな!これは命令だ!いいな!!」
《了解!!!》
皆が去った会議室に残されたユウとソーマは、改めて榊博士とツバキから話を受ける。
「お前達二人は、コレをどう思う?」
ツバキの質問に少し考えてから、ユウは口を開く。
「この荒神・・・、相当強いですね。あんな短時間で対象を消失させるなんて・・」
「・・・俺達でも難しいな」
その答えに苦笑しながら、榊博士は話しかける。
「謙遜することはないよ。例え1対1であっても、君達なら引けを取らないだろう」
「いえ、そんな事は・・」
「問題は・・・、この個体がお前達と同等、もしくはそれ以上の戦闘力を持っていることだ」
ユウの謙遜を遮り、ツバキは1番の懸念点を口にする。その言葉に、場は沈黙へと変わる。
極東支部でもっとも戦闘力の高いと言われている、神薙ユウとソーマ・シックザール。この二人と対を張る個体、ディアウス・ピターやアルダノーヴァ級の荒神。そんなヤツが近辺を闊歩している程危険な事はない。
「・・・・俺達に、こいつを殺してこいってことか?」
静けさを破るソーマの言葉に、ツバキは小さく首を振る。
「そこまでは言わん。ただ・・・最終的には、またお前達の力を借りる事になるだろうと、思ってな」
「それで、僕達を残したんですね?」
「そうだ・・・」
眉間に皺を寄せながら目を閉じ、ツバキは俯く。その肩に優しく手を置き、榊博士は二人へと目を向ける。
「君達にばかり危険な事を頼む大人を、許してくれとは言わない。しかし私達には、希望にすがるより道がない。・・・お願いしても、いいかな?」
肩を落とす大人二人に、ユウとソーマは顔を見合わしてから、真っ直ぐな瞳で応える。
「いつものことだ。今更何言ってやがる」
「僕達ゴッドイーターの使命を、真っ当するだけですよ」
そう伝えてから、二人は踵を返し会議室を後にする。
「・・・・・どう思う?」
「はなっから負けるつもりかよ?」
「いや〜、そんなつもりは無いけど・・・一人じゃキツイかなって」
「ちっ、言ってろ。今迄もお前がケリつけてきたろうが」
「でも、ソーマがいてくれなきゃ絶対負けてるし♪」
「・・・・ふん」
会議室を出てから、二人は拳を合わせながら歩いて行った。
「新種ーー⁉︎マジっすかーー⁉︎」
サクヤの伝えた報告に、コウタは派手に驚く。
エントランスに集まった第一部隊。今日はユウとソーマもその場におり、全員揃ったのは約1ヶ月振りである。
「つまり・・・今迄任務対象を失っていたのは、そいつの仕業って事ですか?」
「そういうことね」
レンカの言葉に頷きながら、サクヤは手を前に組んで溜息を吐く。
「同族種どころか、他種族まで・・・。ピターの様に、力を得る為でしょうか?」
「そこまではちょっと・・・。どんな荒神かもわからない状況だから」
疑問を口にするアリサに答えれず、サクヤが戸惑っていると、ユウが横から助け船を出す。
「とにかく、今の所情報が少ないんだよ。だから戦闘になっても危険と判断したら即撤退してね」
「上からのお達しだ。命が大事なら、従っとくんだな」
ソーマのフォローらしからぬアシストに苦笑しながら、ユウは頷く。皆も納得したのか、静かに頷き返す。が、レンカだけは黙って俯いている。
「・・レンカ?わかったの?」
「え?あ、・・・は、はい!」
遅れて返事を返すレンカに若干の違和感を感じたが、サクヤは話を終わらせる為に口を開く。
「話がわかったのなら、今日は解散にするわ。明日から編成が日によって変わるらしいから、そのつもりでね」
《了解!!》
皆がそれぞれの目的の為動き出す中、レンカはしばらくの間その場から離れようとしなかった。
翌日、第一部隊は再びエントランスへと集合する。集まった事を確認してから、サクヤは編成と任務を伝える。
「今日は2つに班わけとなるわ。1つは私とレンカの二人編成で、小型荒神の群れを一掃するわ。良い?」
「了解!」
レンカのいつも通りの返事に頷き、サクヤは話を続ける。
「もう1つは残った四人で、ヴァジュラ2体の討伐をお願いするわ。大型相手だから、例の新種が介入してくる可能性があるわ。気を付けてね」
《了解!!》
「えっ?・・新種・・・」
話の中に『新種』という言葉があったのに反応し、レンカは思わず声を上げる。それに皆が視線を移すと、サクヤが代表して声をかける。
「レンカ?どうしたの?」
「い、いえ!・・・なんでもないです」
「そう。・・・・・それじゃあ」
少し不安を残しつつも、任務の時間が迫っていたので、サクヤは皆に視線を巡らせ気合をいれる。
「今日も誰一人欠ける事なく帰投すること!これは、命令よ!」
《了解!!!》
神機保管庫へと移動中、アリサがサクヤへと声をかける。
「サクヤさん。昨日からレンカの様子、おかしくないですか?」
「・・・・そうね。何かを・・・焦ってる感じがする、かしら」
その言葉に納得したように頷いてから、アリサは少し俯き話を続ける。
「"新種"に過剰に反応してましたよね。・・・私のように、因縁でもあるんでしょうか?」
「それは・・・・ないと、思うけど。あの子の過去も、かなり酷なものだったから・・・・・私達の知らない何かが、あるのかも知れないわね」
「そう、ですか・・」
俯いた顔に影を落とすアリサに、サクヤは微笑みながら背中を軽く叩く。
「心配なら、声かけてみなさい。何もしないで後悔するよりは、行動を起こしてから後悔する方が、きっといいわよ」
「・・・サクヤさん」
視線の先にある笑顔に励まされてか、アリサは顔を軽く横に振ってから笑顔を作る。
「はい!そうします!」
「うん。良い笑顔よ」
二人は軽く笑い合ってから、先に歩く仲間の元へと足を速めた。
嘆きの平原。
中心に渦巻く竜巻を中心に、周りは多少の人工物と岩以外は平らな広場が続く場所。中央にある竜巻から、荒神が生まれるという迷信もあるそこに、ユウとソーマ、アリサとコウタが標的を探しに来ていた。
「んーーーー、いないっすねーー」
「はぁ。もっと真面目に探して下さい」
アリサが溜息交じりに文句を言うと、「なんだよーー」とコウタが反論する。その様子に、「ちっ」と舌打ちをしながら、ソーマはユウの隣へと歩み寄る。
「おい、お前が『眼』を使って探してこい。ガキ共がうるさい」
「ははっ、そうしようか・・・待った!」
急に大声を出したユウに、アリサとコウタもビクッとなり目を向ける。ソーマもユウの視線の先を目を細めて見ようとする。
そこには標的のヴァジュラらしき足が転がっていた。
「・・・おい、当たりか?」
「・・・うん、多分ね」
二人の会話に、アリサとコウタが首を横にしたその時、
ダァァーンッ!!
グオォォォオンッ!!!
目の前に炎を纏った白い荒神が現れた。
「な、なな、な!」
「これは・・・まさか、新種⁉︎」
「だろうね」
的確に推理したアリサに、神機を構えたユウが答える。隣に立つソーマも構えたところで、アリサとコウタも慌てて戦闘体勢をとる。
「ふん。昨日の今日で当たるたぁ、運が良いな」
「そうかもね。・・・この場で倒せたらの、話だけど!!」
一撃目を貰ったと言わんばかりに、ユウは構えた刃を白い荒神へと斬りつける。
話の筋的にまだ名前を明かせない荒神、登場!!
ゲームやってる時に、こいつ張っ倒すの大好きでした!(笑)