倒れた荒神からコアを摘出し、レンカは離れた場所にいるサクヤへと声をかける。
「サクヤさん!回収終わりました!」
「了解よ!今から本部に連絡するわ!」
サクヤが連絡をとっている間、レンカは神機を地面へ突き立て、近くの瓦礫に腰を下ろす。
(・・・俺は・・、残された時間を使う時が、来たのかもしれない)
もう長手袋では隠し切れない痣を眺めながら、自分の使命を決める。いずれ朽ち果て荒神となる体を、労わるようにソッと撫でる。
しばらく続けたところで顔を上げると、サクヤが血相を変えて走って来る。即座に何かあったのかと、レンカは立ち上がり神機を引き抜く。
「どうしました?サクヤさん!」
「レンカ!急いで!今、本部から緊急の追加任務が入ったの!」
「緊急の、任務ですか?」
サクヤは息を落ち着けながら、真剣な顔でレンカへと伝える。
「ユウ達が未確認のオラクル反応と接触したみたいなの!おそらくは、例の新種!」
「っ!!」
その言葉を聞いてから、レンカは一気に体中を熱くする。自分の命の使い道を、再確認しながら走り出す。
「くそっ!」
「急ぐわよ!」
後をついて走り出すサクヤは、仲間の安否に心穏やかではいられずにいた。
「はぁぁっ!!」
ザンッ!!
ユウの放つ1撃に、白い荒神左腕を斬り裂く。そこへアリサが銃形態から剣形態へと変形させ、喉元から腹へと斬りつける。
グギャァァッ!
痛みに仰け反った荒神の背中に、待ち構えていたコウタが炸裂弾を撃ち込む。
その反動で倒れ伏したところに、ソーマが大きく振りかぶった刃を顔面へと叩きつける。
「くたばれぇ!!」
ゴシャァァッ!!!
軽くバウンドしてから、白い荒神は動きを止めて静かになる。それを皆は確認し、大きく息を吐いた。
ガリュウッ!!
沈黙した荒神の背中から喰い込ませ、ソーマがコアを回収する。
「・・・・レア物か。やはり、新種か」
「思った程じゃなかったかな」
「そうですね」
回収を済ませたソーマの周りに、ユウとアリサも集まって確認する。コウタは物珍しいのか、神機の銃口で倒れた荒神を突ついていた。
「うり、うり♪ウチの最強コンビに、敵うわけな〜いじゃん!」
子供じみた行動に、アリサは溜息を吐いてから声をかける。
「そんな遊んでないで、帰りますよ⁉︎」
「えぇ〜、良いじゃんよ〜。もう少しだけさ〜」
そんな姿にユウは苦笑するが、アリサとソーマは冷たい目を向ける。付き合いきれなくなったのか、ソーマは神機を肩に担ぎ歩き出す。
「さっさと行くぞ」
「ほらっ、行きますよ!」
ソーマに次いで歩き出すアリサに、ユウも後から付いて行く。それに流石に焦ってか、コウタも慌てて立ち上がり後を追う。
「わかったってー。待って下さいよ〜、ユウさんまで」
笑いながら走って来るコウタに視線を向けて、アリサが愚痴を零す。
「まったく・・・っ!!コウタ!!」
そんなアリサが突然叫んだのに驚き、ユウとソーマも背後へと振り返る。
「なんだよ〜。今更脅かそうって・・」
軽口を叩きながらコウタも振り返る。そこには、
ググ、ググガガ、グオォォォッ!!!
起きるはずのない白い荒神が、背中に炎の翼を背負い浮いていた。
「バカなっ!コアは回収したんだぞ⁉︎」
その言葉には皆が同意する。本来コアを摘出、もしくは破壊された荒神はその体を霧散し、一時的ではあるが『死』を迎える。だが目の前の荒神は死んだのは嘘の如く、悠々その身体を浮かせている。
「うわ・・、うわぁぁぁあ!!」
突然の事に足が縺れたコウタは、情けなく声を上げてその場に転がってしまう。そんな目の前の敵に、白い荒神の容赦なき一撃が襲いかかる。
「コウタ!伏せて!!」
その声に従って伏せるコウタの前に、飛び込んできたユウが盾を展開して代わりに攻撃を受ける。その瞬間、
バキィンッ!!
「しまっ・・ぐぅっ!!!」
ドッ!ザザザザァッ!!
ユウの盾は真っ二つに割れ、伸びてきた拳で地面へと吹っ飛ばされる。
「ユウ!!」
「あぁ・・ユウさん!」
「ちっ!!クソが!!」
慌てて駆け寄るコウタを隠すように、ソーマとアリサが神機を構える。
「おい!そいつを抱えて後ろへ退がれ!撤退するぞ!」
「コウタ!早く!!」
「わ、わかった!!」
コウタがユウを抱えて走り出したのを確かめてから、ソーマはポケットに手を突っ込み、閃光弾を取り出しピンを噛み抜く。
「いいか⁉︎やるぞ⁉︎」
「いつでも大丈夫です!!」
その言葉を合図にソーマは閃光弾を投げ、それと同時に二人は一気に後ろへと駆け出す。そして、
パァァンッ!!
グァオォォォ!!!
相手が怯んだことを前提に、ソーマとアリサは足を止めない。そのままコウタへと追いつき、三人は後退し続ける。
そこへ、一台の車が滑り込んでくる。
「みんな、無事⁉︎」
「サクヤさん!!レンカ!!」
本部からの連絡で駆け付けた仲間の車の荷台に、ソーマ達は飛び乗ってからユウを寝かせる。
「ったく。神機を握ったまま気絶しやがって。そんなに働きたいのかよ」
「サクヤさん、出して下さい!」
「わかったわ!とばすから振り落とされないでよ!!」
バックミラーで1度確認してから、サクヤはアクセルを踏み込み急発進する。追っ手がないかを気にしつつ、車は極東へと向かった。
『私は、花になりたいかな・・』
「花?」
『そう!そんで、あんたにずっと大事に見守ってもらうの!』
「なんか、ミコのイメージとは全然違うね」
『いいんだよ!今と違った感じに、なりたいんだよ!・・・だけどさ』
「ん?」
『ユウは、ずっとそのままでいてくれよな!』
「・・・・・あ・・」
目が覚めたら天井・・・というありがちなパターンで、ユウは意識が回復する。
「あぁ、良かった。気が付いたんですね・・」
「ユウさん・・・良かった」
ベッドの横に座っていたアリサとレンカが、ユウに気付き声をかけてくる。出入口あたりの壁にすがって腕組みをしていたソーマも、目覚めたユウの顔を見てから、フッと笑みを浮かべる。
「・・ふん、生きてたか」
「・・・・心配したとか?」
「言ってろ」
ユウの軽口を流してから、ソーマは腕を解いて歩き出す。
「ソーマ、ありがとう」
「・・・おまえは、もうちょっと自分の身体を大事にしろ」
そう言ってソーマは部屋を出て行く。何気なしに視線を近場へと戻したユウの目に、寝ているコウタが入ってくる。
ユウが庇ったお蔭か、当人はいたって健康である。
たまに寝言も交えながら、豪快にいびきをかきだすコウタに、アリサが「ちょっと待って下さい」とユウとレンカに断ってから、左手を大きく振り降ろす。
「何時まで眠ってるんですか!」
バシッ!!
「あたっ!!え?え?えぇ?・・・あぁ、俺、寝てた?って、ユウさん⁉︎目ぇ覚めたんっすか⁉︎」
叩かれてバタバタ騒ぎ立てるコウタに、ユウは優しく微笑む。その笑顔に落ち着いたのか、コウタはもち上がった腰を再び椅子へと下ろす。
「良かった。俺の代わりにブン殴られてから動かなくなったんで、すげぇ心配したっすよ」
「あぁ、ごめんね心配かけて」
「折角なんで、貸しにでもしたらどうですか?」
「すぐに余計な事言うのやめてもらえますかーー⁉︎」
少し和んだ空気の中、皆で笑いあう。ユウ自身も手を何度か握っては開き、生きているという実感を得る。
『ご連絡します。新種の荒神の対策会議を行います。各部隊のゴッドイーターは、至急大会議室に集まって下さい。繰り返します。新種の荒神の・・』
放送を聴いてから、レンカ達は順に立ち上がる。
「すいません。俺達はそろそろ・・」
「ユウはゆっくり休んで下さいね」
「俺、お気に入りのアニメ全巻持ってきますよ!」
それぞれが気にかけるよう声をかけてから、医務室から出て行く。三人が去った後、ユウは浮かべていた笑みから真剣な表情へと切り替え、ちょうどレンカが座っていた隣へと視線を動かし口を開く。
「ところで・・・、君は誰?」
「あれ?気付いてました?」
誰も触れなかった存在。黒髪に飴色の瞳の女の子が、満面の笑みを浮かべてユウに答えた。
「初めまして。僕はレンっていいます。よろしくお願いします、神薙ユウさん」
タイミング的には早めにレンを登場させました。
これにもそれなりの意味を含ませてみます!