棄てられた工場跡地。
討伐任務に来ていた第二部隊は、標的からコアを回収し終わり、帰投前の報告をしていた。
「こちらタツミ!ヒバリちゃん、任務完了したぜ。今から帰投するよ」
『了解しました。例の新種の事もありますので、気を付けて下さい』
「あっ!心配してくれてんの?嬉しいな〜」
『・・・無事の帰還を・・』
プツッ!
無理矢理切られた無線を見つめながら、溜息を吐くタツミ。そんな何時もの様子に、ブレンダンとカノンは苦笑しながら近寄る。
「相変わらずだな」
「うるせぇよ!」
「まぁまぁ、タツミさん落ち着いて」
「・・・・お前に言われたくありません」
変わらぬやり取りに、最終的に笑顔を交わし、タツミは神機を肩に担ぎ改めて周りを見回す。倒れた荒神の残骸も、コアを回収された為、身体が霧散し始めている。
やり残した事はないと確認を終えてから、タツミは二人へと振り返る。
「よし!そいじゃ、帰る・・」
ドォォンッ!!!
「・・・・・マジかよ〜」
嫌な予感に首を振り、音の方向へと目を向ける。そんなタツミに習い、ブレンダンとカノンもそちらへと視線を向ける。
「っ!!・・これって⁉︎」
「タツミ!」
「わかってるよ・・」
二人が身構える前へと足を進めながら、タツミは頭をかきながら神機を振り下ろし、それから中段へと構える。
第二部隊の視線の先には、極東支部で今もっとも危険視される相手がこちらを睨んでいる。
「・・・ハンニバル!」
グゥオォォォォ!!!
身体中に炎を纏いながら、その名を呼んだタツミに応える。
頬を伝う嫌な汗を感じながら、タツミは無線を本部へと繋ぐ。
「ヒバリちゃん・・・、聞こえてる?」
『タツミさん!新たなオラクル反応・・これは!」
「あぁ、目の前にいるよ。・・・・・援軍、頼む・・よ!!」
そう叫び、タツミはハンニバルへと走り出す。それに続き、ブレンダンとカノンも戦闘へと足を運ぶ。ハンニバルは、向かってくる敵へと大きく吠えた。
第二部隊がハンニバルと接触したと連絡が入って間もなく、ヒバリは緊急警報を鳴らす。
『緊急連絡!雨宮三佐!!至急、作戦司令室へとお願いします!』
「至急、作戦司令室へ・・・!」
「ヒバリ!出たのか⁉︎」
警報を聴いてか、ツバキが司令室へと飛び込んでくる。ツバキの言葉に深く頷き、ヒバリはスクリーンへとオラクルレーダーを呼び出す。そこには、第二部隊の面々のビーコン反応と、大型荒神のオラクル反応が映し出されていた。
「間違いないか⁉︎」
「はい!連絡してきたタツミさんの反応から察するに、間違いありません!援軍の要請も!三佐!」
「わかった!直ぐに極東内に残っている者を集めろ!それと、第一部隊に連絡をとれ!」
「わかりました!」
指示を終えると、ツバキは無線の回線を神機保管庫へと繋ぐ。暫くのコールの後に、リッカが出る。
『はい、保管庫です!』
「リッカか⁉︎そこにユウはいるな⁉︎」
『えっ?は、はい。代わりますか?』
「頼む!・・いや、待て!先に聞くが、ユウの神機の修理は終わってるな?」
『えぇ、直ってます』
「上出来だ!代わってくれ!」
少しだけホッと胸を撫で下ろし、ツバキはユウの声を待った。
リッカに送受信機を渡されてから、ユウは回線の向こうのツバキへと話しかける。
「はい、こちらユウです。ツバキさんどうしました?」
『ユウ!ハンニバルだ!第二部隊が接触し交戦中!神機が直って早々悪いが、いけるな?』
ツバキの言葉に身体中に鳥肌が駆け巡るのを感じ、そして空いた手で拳を握り、ユウは強い眼差しで答える。
「行きます!場所は?」
『廃工場跡地だ!後で第一部隊を応援に向かわせる!頼んだぞ!』
「了解!!」
無線を切ってから、ユウはリッカへと顔を向ける。それに応えるよう頷きながら、リッカは作業台に置かれていた神機を指差す。そこに置かれた神機は、今迄のオレンジ色の刃に、黒いラインが走っている。持ち手を握り、腕輪とリンクさせると、オレンジ色の部分が濃く変色し緋色となる。
「・・・これは・・」
ユウがそれを驚き眺めていると、リッカが横から説明しだす。
「今迄よりも神機との適合率を引き上げたんだよ。レンカ君の時と似た感じで、ユウ君の偏食因子の適合率に耐えれてなかったみたいだからさ。・・・後、ユウ君は癖みたいに偏食因子を取り込むから、その力にも耐えられる様にしなきゃだしね」
「・・・何だか、面目ない」
苦笑しながら頭を下げるユウに、大きく息を吐き、リッカは真面目な顔をして想いを伝える。
「今度は・・・負けないでね!」
その言葉に笑顔を向けてから、ユウは神機を肩に担ぐ。
「了解!」
ユウが極東を発った頃、第一部隊として出ていたサクヤ、レンカ、アリサ、コウタの四人は、廃工場跡地まで車を飛ばして向かっていた。
「ユウよりも先に現場に着きそうね。いい、みんな!無理は禁物よ⁉︎今回に限っては例外だから、動けるゴッドイーターは全員来るわ。確実に叩くためにね!だから、個人プレーは出来るだけ避けなさい!いいわね⁉︎」
《了解!!》
返事を確認したサクヤは、再び運転に集中する。廃工場ももう目に見える距離。後はタツミ達、第二部隊と合流するだけだと思ったっ時、
「サクヤさん!!上!!」
「えっ?・・・っ!!」
何処からかタツミの声が聞こえたかと思い、言われた通り上を見上げた時には、大きな影が降って来ていた。
「こっ・・のぉ!!」
サクヤがアクセルをふかせねがら、ギアをトップからオーバートップへと切り替え直進する。そこへ、
ドオォンッ!!
ゴオォォォォッ!!!
標的であるハンニバルが降り立ち、ワンテンポ遅れて第二部隊が着地する。
バックミラーで確認してから、ハンドルを切りつつギアを3rdへと落としブレーキをかける。車が横滑りに止まったと同時に、荷台に乗っていたレンカとコウタは神機を持って飛び降りる。サクヤとアリサも、座席を降りてから手早く神機を固定台から取り外し、標的へと駆け出す。
「タツミ!大丈夫⁉︎」
「そっちも無事ですか⁉︎」
「あなたの、お陰でね!!」
第二部隊と合流したところで、サクヤ達も武器を構えて、ハンニバルを睨む。
「タツミ。指揮権を貰うわね」
「どうぞどうぞ。さぁどうしますか?第一部隊隊長殿♪」
タツミがからかう様に笑うと、サクヤも笑みを浮かべながら言葉を返し、皆へと指示を伝える。
「茶化さないの。じゃあ行くわよ!第1波はタツミとレンカ!相手の気を逸らしながら、隙を見つけて切り抜いて!第2波にアリサとブレンダン!気を削がれてるところを攻撃!前衛はこれを波状に繰り返して!コウタとカレンちゃんは私とバックアップ!カノンちゃんは・・・取り敢えず落ち着いてね!みんな、わかった⁉︎」
《了解!!》
「・・・・・」
皆が役割を理解し返事を返す中、一人レンカは相手に向かって構えたまま、黙って俯いている。気にかかったタツミが、ハンニバルに警戒しつつレンカの隣へと立ち、肩へと手を置く。
「おい、レンカ?どうしたんだよ?」
「・・・・・っ・・」
何か呟いた気がしてか、タツミは肩を揺すりながら、再び声をかける。
「おい、レンカ⁉︎」
「・・・・こいつは・・・俺が!!」
その言葉に首を傾げたタツミを振り払い、レンカは猛烈なスピードでハンニバルの前に移動し、振り上げた刃を手に叫ぶ。
「おおぉぉぉっ!!」
ザシュッ!
ギャッ!!
鼻先を斬り裂かれた痛みに声を上げ、ハンニバルは顔を手で覆い後づ去る。
「おいおいおいおい・・・。レンカも強くなったなぁ、おい」
「確かにな」
関心するタツミとブレンダンの言葉に流されてか、レンカは更なる追い打ちをかけて、攻め込んで行く。
「はあぁぁっ!はぁっ!!」
ザシュッ!ズシュゥッ!!
グガッ!ググガガァァッ!!
レンカの刃が1つ、2つと敵を斬り刻む。徐々に追い込まれて行ったハンニバルは、頭を抱えて踞る。
「これ、レンカ一人で行けるんじゃね?」
「タツミ!ブレンダン!アリサ!捕食は全員で行いなさい!コアは1つじゃないのよ?」
「そうですね!タツミさん!ブレンダンさん!」
「わかった!行こう!・・・ん?」
走り出そうとした足を止めたブレンダンが、ある一点を見て目を見開く。その方向に嫌な予感が働いたアリサも、視線をゆっくり動かす。
「・・・・・・レン、カ?」
「・・・・ぐぅ・・・ぅぅぐぐっ・・!」
さっきまで優勢に戦っていたレンカが、目の前のハンニバル同様、膝をついている。そんな彼の服の隙間から見える肌という肌が、オラクル細胞暴走時の痣に侵されていた。
「これ・・・どういう・・ことだよ。レンカ!お前体が!」
タツミの叫びと同時に、
バリリッ!ブシャァッ!!
「んぅ・・・・っ!!ぐ・・があぁぁぁぉあぁっ!!!」
レンカの肩口から、黒く歪な突起が飛び出し、レンカはその苦痛に叫びをあげて転がり回った。
そして、その姿を最も恐れていたアリサは、顔を歪ませて、手の中の神機を落とす。
「いやぁぁぁぁっ!!レンカーー!!」
「くそぉ!!こんな時に!!」
駆け寄るアリサに続いて、コウタも陣形を崩し走り出す。しかし、十分に休めたハンニバルが、その身体をゆっくりと起こし、右腕に炎の刃を形成し中腰に構える。
「コウタ!止まりなさい!アリサ!くっ・・!このっ!!」
聞く耳を持たないアリサとコウタに見切りを付け、サクヤは凍結バレットに切り替え、ハンニバルの顔面に射つ。
バキィィン!!
それを左手の甲羅で受けてから、ハンニバルは大きく上へと飛び上がる。構えた右腕を後ろへ引き、標的に捉えたレンカへと飛び込む。
その光景に、"あの雨の日"の出来事が蘇る。思わず手を伸ばし、叫びそうになった時、
ドォォォーーンッ!!!
炎の刃がレンカ達へ届く前に、ハンニバルはその体を後方へと吹き飛ばされていた。
転がってもがくハンニバルを睨みながら、「ちっ」と舌打ちをして、吹き飛ばした当人がレンカ達の前に立つ。
「・・・生きてるな。退がれ」
「・・・・・ソー・・マ、さん」
苦しみに耐えながら、絞り出すように声を出すレンカと、彼を庇うように抱いているアリサ。そんな二人から視線を正面へと直し、ソーマはハンニバルへと刃を突きさす。
「俺の仲間が世話になったな。・・・こっからは、俺が相手をしてやる。・・・・・・いくぞ」
言葉に合わせて前へと走り出す。そして、踏み込みに合わせて飛び込み、純白の神機を振り下ろす。
今回は早めに!
なまえの『ハンニバル』という荒神の名前の由来を勝手に考えたんですが、実際はどうなんでしょうね?
やっぱり第二次ポエミ戦争起こした、ハンニバル・バルカからなんでしょうか?
でもこれだと、どこらへんにこじ付けを?ってなるし・・・。
まぁ、良いか。
きっと、ハンニバル・レクターですよ!(笑)