GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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49話 掴む為の見栄

 

 

吹き抜ける風を切るように、ユウは神機を振り下ろす。

そして、これから戦わなければならない仲間を見据える。

「・・・・レンカ・・」

「ぐっ・・・ががっ、がぁっ!!・・」

言葉を忘れたのか・・・、レンカは喉を震わせ吠える。敵と認識したのか、ユウへと1歩ずつ近付いてくる。

「・・・レンカ。待って、レンカ・・!!」

「いい加減にしろ!アリサ!」

「っ⁉︎」

伸ばしていた手を引きながら、アリサは声の主へと顔を向ける。ユウの後ろから移動してきたブレンダンが、唇を震わせながら睨んでくる。

「・・・あの・・」

「神薙は、覚悟を決めてるんだぞ。・・・仲間なら・・、ゴッドイーターなら、お前も覚悟を決めろ!」

「ブレンダンさん・・・」

二人の会話が途切れたその時、レンカは地面を蹴って走り出す。ユウも刃を低めに構え、標的へと一気に詰める。そして、

 

ギィィンッ!!!

 

レンカの右手と、ユウの神機が合わさり、開戦の音を響かせる。

 

 

連絡を受けてから数分後、ソーマ達はB区域へと急いでいた。

本来オラクル細胞が暴走したゴッドイーターの対処は、その部隊の隊長に命じられる。情報の隠匿、そして荒神化した隊員の介錯をだ。

「・・・っ!」

 

つまり、立場上サクヤがレンカを撃ち抜かなければならない。

 

苦い顔で俯くサクヤに、皆も釣られて顔を伏せる。

そんな中、先頭を走るソーマが「ちっ」と舌打ちをしながら、口を開く。

「おい。お前らは、もう諦めてるのか?」

「・・え?」

声を発したのをきっかけに、サクヤは顔を上げる。周りの仲間が注目するのを感じてか、ソーマは更に続ける。

「あいつは、まだ諦めてねぇぞ」

「『まだ』って・・・。ユウは助けを要請したんでしょ?」

「・・・・もし空木を殺る気なら、あいつ一人でも十分だろ」

「それは・・・・、まさか⁉︎」

ソーマが後ろにわかるように頷くと、B区域へと入る。遠目に出口が見えてくる。

「『荒神化』なんだろ?俺達が倒すのは、『荒神』だ。もう誰一人、死なせねぇ!」

語尾を強めてから地を蹴り、ソーマは出口の上を越えて外へと飛び出す。

 

 

ギィンッ!

キンッ

ガァンッ!!

「くぅっ!!」

「ぐぁっ・・あぁっ!!」

打ち合いから、お互い大きく後ろに退がる。

ユウは構えを解かずに、大きく息を吐く。

「・・・強いね、レンカ。だけど!!」

踏み込んだ勢いで右腕をはねてから、懐に入って胸を斬りつける。

ザンッ!

「がぁ・・ああ、!!」

仰け反ったレンカの上にまたがり、ユウは左手を頭へと置く。そして・・・。

 

ドクンッ!!

 

二人の体がブレた様に見えた。

「戻ってきて!レンカ!!」

「あ、あ、あ、ああ!・・・!!!」

自分の意識を溶け込ます様に、ユウは感応現象を使ってレンカに呼びかける。

振り落とそうと暴れていたレンカは徐々にその動きを止め、腕をだらんと下げた状態で膝を折る。

呼吸が落ち着いてきたその時、

 

パァンッ!!

 

侵食していたレンカの右腕が弾け、元の姿へと戻った。

「レ、レンカ!!」

「ふぅ」と息を吐いて立ち上がったユウと入れ替わりに、アリサがレンカへと駆け寄り抱き起こす。

「・・・神薙。空木は?」

「多分、大丈夫だと思います。迎えのヘリは・・・来ましたね」

丁度到着したところを見上げて、ユウは神機を担ぐ。着陸時の砂埃の中、サクヤ達も現場へと到着した。

 

 

「・・・・さて。恐れていたことが、起こり始めたようだね」

極東支部の医療棟の緊急治療室で、榊博士は息を吐きながら目の前の患者を見つめる。

1時間前に運ばれて来たレンカに偏食因子の活動を抑える特殊な鎮静剤を打ち、ユウに斬られた胸の傷の治療を丁度終えたところだ。

しかし、間に合わせにしか過ぎない。

ユウが感応現象で、人間としての意識を無理矢理引っ張りだしたからこそ落ち着いたが、もうゴットイーターとして神機を握らせる訳にはいかない状態だ。

(君なら・・・、まだ戦うと言うのだろうね)

まだ意識は戻っていないが、どうやって説得しようかと考えるばかりで、榊博士はその場から動けないでいた。

「君を・・、死なせる訳にはいかないんだよ。レンカ君」

近くのパイプ椅子に腰を下ろし、眉間を撫でながら、榊博士は再び大きな息を吐いたのだった。

 

 

「馬鹿者!!」

エントランスに響くツバキの声に、その場にいた者は思わず背筋を伸ばす。

「申し訳ありませんでした!」

「ブレンダン・バーデル!貴様に命を軽んじろと教えた覚えはない!お前だけではない!誰一人としてだ!!」

「はい!」

頭を上げることが出来ないブレンダンを怒鳴り散らしてから、拳を握り締めたまま大きく深呼吸をし、ツバキは手を開いて肩に手を置く。

「ブレンダン。お前がどんな罪を感じようとも、命を捨てる選択だけはするな。これは、命令だ」

「・・・はい」

優しい言葉に震えながら、ブレンダンはより深く頭を落とす。

「・・・もういい。お前に休暇をやる。暫く頭を冷やせ」

「あがとう・・ござい、ます」

背中を向け去っていくツバキが見えなくなるまで、ブレンダンは頭を下げたまま動かなかった。

 

エントランスを出て、作戦司令室へと移動したツバキは、待たせていた第一部隊と第二部隊を目に入れてから、フッと笑みを浮かべ前へ立つ。

「色々とゴタゴタしていてな。お前達への労いの言葉も中々言えない始末だ」

「いえ。私達は大丈夫です」

代表して口を開いたサクヤに「そうか」と漏らしてから、改めて皆へと話しかける。

「皆、御苦労だったな。お前達のお陰で、色々と片付いた。誰一人死なずに、良くやってくれた」

軽く頭を下げるツバキに誰もがあたふたする中、ソーマが立ち上がって前へと出る。

「・・空木は、大丈夫なのか?」

その言葉に皆息を飲む。目を伏せるツバキに、もう一人黙っていたユウが目を向ける。

「僕が出来たのは、レンカの人としての意思を引っ張っただけです。・・・・彼は、もう神機を握らないんじゃないんですか?」

「そっ、そんなっ!?」

アリサが前へと出ようとするのを、サクヤが制してから首を振る。それに合わせるように、ツバキが顔を上げ口を開く。

「空木レンカは・・・・・、これを機に除隊してもらう」

「ツバキさんっ・・・!!」

「そして!・・・、このまま人として目覚めぬのなら、・・・・空木を、排除してもらう」

目を閉じる者、見開き絶望する者。反応は違えど、皆ツバキの言葉を理解する。

 

空木レンカを、殺せという命令を。

 

 

 

エレベーター前の自販機前に、ユウとソーマとサクヤが缶を片手に黙っていた。

司令室を解散した後、タツミとカノンは部屋へと戻り、アリサはレンカの病室へと向かった。残った三人は打ち合わせた訳でもなく、ここへと集まっていたのだ。

「・・・・諦めるのか?」

口火を切って、ソーマが手の中の空き缶を握り潰す。

「どうしろっていうのよ」

「ちっ!何が第一部隊だ。何が極東最強だ。仲間一人守れねぇで、何がゴットイーターだ!」

ギリっと歯を鳴らし、悔しげな顔をソーマはフードの中へと隠す。

「・・・可能性だけど、手はあるよ」

「えっ?」

何気無いユウの言葉に、サクヤが顔を上げる。

「どういうことだ?」

「榊博士が言っていた、感応現象。あの時、僕は五分五分の賭けで使ったんだ。荒神化を治めたんだ。今の状態を打開する事が出来るかもしれないよ」

「・・・そう、ね。絶対じゃなくとも・・」

サクヤが口に手を当て考え、ユウとソーマへと目を向ける。

「諦めるには、早いわよね!」

「・・・ふん。らしくなったじゃねぇか」

落ち着いたのか、ソーマも希望をその目に宿す。

それを見て微笑むユウの耳に、クスクスと笑い声が聞こえてくる。

「いいんですか?安請け合いして」

黙って目だけを隣に向けると、レンがそこに立っている。悪戯を思いついたような顔を向けながら、ユウへと寄り添ってくる。

「リンドウを助ける。彼も助ける。二人共ギリギリなのに、本当に出来ると思ってるんですか?」

「出来るさ」

レンにだけ聞こえるように、小さく呟くユウ。それを面白くないのか、顔を寄せて囁く。

「あなたは、神じゃないんですよ。神は彼らを連れて行く方だ」

そんな言葉に嫌な顔とは反対に、フッと口の端を浮かせてから囁き返す。

「そうさ。僕等はゴットイーターだ。理不尽な神は、誰だろうと倒して見せる」

返ってくる言葉を予想していなかったのか、目を大きく開いて驚くレン。それから、可笑しそうに笑ってから背を向ける。

「あなたは本当に面白い人だ。リンドウが気にいる訳だよ。・・・でも、リンドウは手遅れですよ」

そう言ってからスッと消えたレンを背中に感じながら、ユウは強い眼差しで応える。

「助けて見せる。1%の確率だろうと」

 

 




久しぶりにやっと投稿しました。
ちょっと体の調子が絶好調に悪かったので、遅くなりました。

ペースがかなり落ちますが、必ず書き上げます!

出来れば2も書きたいので!(笑)
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