GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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51話 もう一人の英雄

 

 

それは・・・

再び触れた・・・

彼の、記憶・・・。

 

 

寂し気な雰囲気に包まれる寺院跡。

リンドウは自分の呻き声に起こされ、ジクジクと痛む右腕を撫でる。

「・・ん・・あぁ・・はぁ、くっそ・・!こりゃぁ、もうダメかもな・・」

ピターから逃げ切ったものの、迫りくる荒神からの猛攻に、激しい戦闘の繰り返し。やっとの思いで逃げ込んだ崩れかけの寺の中で、進行する荒神化した右腕を目にする度に、決まって自虐的な声をもらしてしまう。

「くっ・・、う・・・・あぁ・・」

少しでも楽になろうと、体をひねっては良い体制を探しているのだ。

だが、それが逆に良くなかったのか、右手の甲に光る玉のようなものが発光しだし、更なる激痛が体全体へと走り出す。

「ぐうぅ・・・う、ぬぅあぁぁぁ!!」

必死にその場で暴れぬよう、右腕を床へと押さえつける。そこへ、

「っ!!・・・っ!!!」

「な、んだ・・・」

 

キイィィィィン!!

 

突然駆け寄ってきた、透き通るように真っ白な少女がやってきて、痛む右腕に何をしたのか、痛みが嘘のように治まっていったのだ。

「はぁ・・んぁ・・。こい、つは・・」

「・・・・」

徐々に力が抜けてきたリンドウの顔を、白い少女は首をかしげながら覗き込んでくる。

リンドウの方も、久しぶりに接触した人に感謝の意を込めて、フッと笑みを作る。

「・・おまえ・・・・、ありがと、な・・」

「・・・・!!」

決して声を出さない少女だが、リンドウの言葉を理解してか、ニッコリと笑顔を見せた。

 

 

暫く見なくなった少女のことが気にかかってか、それとももっと別の理由からか・・。

気付けばリンドウは、廃寺の外へと足を引きずっていた。

ゆっくり、ゆっくり前へと足を進める。虚ろな目は、自分と共に動く影を追うのがやっとで、その影が徐々に歪に変化していくのにも気づけないほどに・・・。

そんな中、彼の目に最後に移ったのは、1体のヴァジュラ。

それを殲滅せんと走り出したその瞬間から、

「荒神ぃーーーー!!!!」

リンドウは人間の姿をしていなかった。

 

 

「はあぁぁぁっ!!」

グゥアァァァァッ!!

 

ギィン!ガンッ!ギリィン!!

 

まだ開戦間もないというのに、ユウとリンドウの攻防は、初っ端から相手を仕留めるが如く、全力で斬り込んでいく。

これまでディアウス・ピター、アルダノーヴァなどの強敵からさえも、早々に攻撃を受けることのなかったユウだが、リンドウの変化した漆黒のハンニバルの攻撃には、早すぎて躱しきれていないのだ。

「くっ!」

ギャリィィ!!

1度呼吸を整えようと、リンドウの突き出してきた爪を受け流し、ユウは後方へと大きく距離をとる。

相手も様子を見ていると判断してから、ユウは大きく深呼吸する。そこへどこから現れたのか、レンがクスクス笑いながら、隣へとしゃがみ込む。

「流石ですね。この場合、リンドウの方も褒めるべきでしょうか?」

「・・・ふぅ。そうだね。例え意識がなくとも、リンドウさんの体に染みついている戦闘術は、健在のようだしね」

「それで?・・・勝算はあるんですか?」

急に真面目な顔になって質問してくるレンに、今度はユウの方が口の端を浮かせる。

「どうかな・・。ちょっと安く見積もりすぎたかもね」

「正直ですね。どうしてもって時には、僕を呼んで下さいね」

そう言い残してから、レンは姿を消す。ユウの方も呼吸が落ち着いたのを確認してから、両足に力を籠め、一気に間を詰めて斬り付ける。

そこから、二人の第2ラウンドの開始となった。

 

 

崩れる天井をその身に受けながら、再び荒神化したレンカの咆哮に、アリサは近くの壁にもたれかかって涙していた。

(このままじゃ・・・、レンカが・・・)

震える肩を抱きながら、俯いているところへ、

「があぁっ!!」

レンカが飛び込んできた。

「レンカ・・・」

ゆっくり目を閉じてから、その攻撃を受けよとしたその時・・。

 

ガァンッ!!

 

「ぐがっ!」

「・・・え?」

突然目の前から吹き飛ばされたレンカを目で追った後、視線戻した先に神機を担ぐソーマが立っていた。

「ソーマ・・さん・・・」

「簡単に命を捨てようとすんじゃねぇよ」

横目で声を掛けてから、ソーマは改めてレンカを黙視する。ゆっくり立ち上がったレンカは、息を荒立てながらソーマへと顔を上げる。

「ちっ。ケロッとしてやがる。空木の野郎」

「ソーマ!あまり無茶をしないで!戻す前に、殺しかねないわよ!」

いつの間に到着したのか、サクヤがアリサの隣に立って抗議を叫ぶ。それからへたり込んでるアリサへと目を向けてから、一喝した。

「立ちなさい、アリサ!レンカを助けたいなら、立って戦いなさい!」

「サクヤさん・・。でも、レンカは・・っ!」

「無理なんて思わないで!可能性を消さないで!あなたの力が、レンカを救えるわ!」

「私の・・、力」

言葉尻に合わせて、アリサは自分の両手を眺める。それから何かにハッとしたように目を見開いてから立ち上がり、サクヤとソーマを見る。

「おまえら新型には、それがあるだろう」

「感応現象」

「今は説明してられないの。でも、その力を、信じて!」

「・・・・はい!!」

アリサの目に希望が宿ったところで、サクヤは大きく叫ぶ。

「みんな!今は全員、私とソーマに従ってもらうわ!いいわね!」

《了解!!》

レンカの周りを囲むように集まったゴッドイーター達。

皆何かを理解しているように頷き合い、サクヤの指示を待つ。

「いい?ここで誰一人死ぬことは許さないわ!レンカも含めてね!もう少し時間がいるの。それまで持ち応えるわよ!」

《了解!!》

皆が鼓舞し、動き始めたところで、アリサの前に神機のケースが降ってくる。開けてから中身を掴み、中段に振り構える。

「行こうぜ!アリサ!」

「コウタ、ありがとう!必ず助けます。レンカ!!」

思いは声となって響き渡り、仲間を救うための戦いが始まった。

 

 

「消化班、研究棟から訓練所にまで火が回りそうです!そちらの方にも回って下さい!」

『了解しました!2班ほど回します!』

「お願いします!ジーナさん!外からの荒神の警戒、そのままお願いします!」

『了解よ。手が必要なら、連絡して頂戴』

「了解です!」

作戦指令室からの連絡を繰り返しながら、ヒバリは周辺のオラクル反応に目を走らせる。

オペレーション・メテオ以来の緊急事態に、指令室の誰もが、慌ただしく動き続けている。そんな中、ツバキは目の前のオラクルレーダーに、2つ分のウィンドウを立ち上げて注視していた。

1つは医療棟の荒神化したレンカの方。もう1つは、エイジス島のユウ達の方だ。

(見ていることが、これ程辛いとはな・・・)

握った拳を震わせながら、ツバキは唇を噛む。

焦りがより表情として顔を曇らせていると、榊博士が駆け込んでくる。

「はぁ・・はぁ・・、私も、・・・もう少し、はぁ・・・、運動、すべきかな」

「博士、大丈夫ですか?」

肩で息をする榊博士のもとに着いてから初めて、ツバキは博士の手の中にあるものに気付く。それは銃型神機の、バレットに見えた。

「・・・博士、まさか?」

「ギリギリ1発、間に合ったのはこれだけだから、絶対に外さないでくれたまえ」

「ヒバリ!サクヤと連絡をとれ!!例のワクチンを届けるとな!」

「はい!」

ヒバリに指示を出してから、改めて榊博士を見ると、彼はまだ何かあるように笑みを浮かべる。

「あの・・博士?なにか?」

呼吸を落ち着けた榊博士はゆっくり腰を起こし、眼鏡をクイッと上げてから、思いもよらない言葉を口にする。

「ツバキ君。久しぶりに、戦場を駆けてみる気はないかい?」

 

 

「ぐぅぅああっ!!」

「おっとー!」

レンカの右腕を寸ででしゃがんで躱してから、タツミは後ろへと飛び退く。

「おい、ふざけてんなよ」

「ふざけてないって。レンカと距離をとるのは難しいんだよ!」

タツミの文句に耳だけ向けながら、ソーマはレンカの身体の変化に注意している。レンカの身体は両腕まで浸食され、漏れるモヤがゆっくり胴体を包んでいる。

「・・・・ちっ。サクヤ!もうもたねぇぞ!」

「わかってる!でも後もう少しだけ!例のバレットが届くまで!」

周りが疲弊しているのも、サクヤはわかってる。時間の勝負の中、皆焦りで神機を握る手に汗がにじむ。

最悪は・・・・・、レンカを排除する。

「レンカ!」

「ぐうぅ!」

どうするか迷ってる中、アリサが単身前へと歩き始める。その手の神機の構えを解いて。

「おい!待て!」

「アリサ!戻りなさい!!」

皆の静止の声を聴く耳もたず、アリサは足を止めない。我を失ったレンカの瞳の中に、自分を確かめながら。

「レンカ。私が・・助けます」

「うぅ・・・ぐ、うぅぅ!」

届く距離に来たところで、アリサはゆっくり手を伸ばす。

「ユウが言ってた。新型ゴッドイーターの感応現象で、あなたの意識をひっぱりだしたって。私も新型。私にも、出来る」

「う・・うぅ」

その手にレンカの顔が近付き、アリサの手が触れそうになったところで、

「アリサ!」

 

ドォンッ!!

 

コウタが飛びつきアリサをかばったその場所に、レンカの鋭い爪が突き刺さっていた。

「何考えてんだよ!おまえは!」

「だって早くしないと、レンカが!!」

言い合いになっているところに、再びレンカの爪が襲い掛かってくる。

「がぁっ!!」

「くっ!!」

ギリィッ!!

当たるかと顔を反らした二人の前に、ソーマが剣で受け止めていた。それにホっと安心してから、コウタはもう1度アリサへと目を向ける。

「アリサ!サクヤさんの指示なしに動いて、お前もレンカも死んだらどうするんだよ!」

「でも・・・でも!!」

アリサが涙を零しながら必死に叫ぶと、レンカと鍔迫り合いをしながら、ソーマが口を開く。

「今ユウは別件で手を離せないらしい。感応現象を使えるのは後はお前しかいない。わかるか?」

「・・・それは」

「俺たちの作戦で、こいつを助けれるのは、お前しかいないんだ」

「・・・・」

口を噤んでしまったアリサの隣に、サクヤが飛び込んできて神機を構える。

「ソーマ!」

「ふっ!!」

ギャインッ!!

ドドォンッ!!

合図でソーマが爪を弾いてかがみ、サクヤが炸裂弾を撃ち込む。その勢いで、レンカは崩れた瓦礫へと吹き飛ばされる。

「アリサ!もう少しこらえなさい!もう少しだから!」

「サクヤ!」

ソーマに呼ばれてから、サクヤはレンカへと目を戻す。

そこには青白い雷を纏ったレンカが、黒い靄を撒き散らしている。浸食は、さらに体全体を覆っている。

「くそが!ここまでかよ」

声を発したソーマだけではなく、その場の誰もがあきらめかけたその時、

 

ドゥォンッ!!

 

一発の閃光が、レンカの右腕を突き抜ける。

「貴様ら!誰があきらめろといった!立て!立って戦え!これは、命令だぞ!!」

聞きなれたその声に、皆背筋を伸ばしてそちらを見る。そんな中、かつての戦友の帰還に、ソーマだけが口の端を浮かせる。

そしてその名を、口をそろえて皆が呼ぶ。

《雨宮三佐!!》

髪をかき上げながら《戦場の鬼姫》は、力強くその足を踏みしめる。

「いつまで呆けている。ここからが本番だ!」

 

 

 




パソコンで打つと、順調に打てる!

っつうわけで、思い切ってこの方を出してみました!!
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