GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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53話 荒ぶる神と抗う人

 

 

車を飛ばして20分。

リッカは、エイジス島の駐車場跡から、最短で中心部に迎えるゲートの前に急停止する。

運転席から飛び降りてから、荷台に固定していた神機のケースを掴み、中へと走り込む。

「はぁ・・はぁ・・、まったく、もう!これで、嘘だったら・・はぁ・・、いくら君でも許さないからね!」

傍目には独り言を言っているように見えるが、実際はレンと話しているリッカ。この事態に、ユウ以外に姿を見せれる可能性として選んだのが、神機に深く関わっている、リッカだったのだ。

「僕は嘘を言ったりしませんよ。リッカさんなら、この突飛なことを信じてくれると思ったので」

「本音は?」

「手ごろに手が空いてるのが、リッカさんだったので」

「神機の精霊じゃなかったら、はっ倒してるところだよ!」

「あはは、怖い怖い」

軽口で躱しながら、ユウの元へと、リッカを誘導した。

 

 

急に訪れた沈黙を破るように、ソーマはギリッと歯を鳴らしてから、踵を返し駆け出そうとする。

「待て!ソーマ!」

「待てるか!」

ツバキの呼びかけに足を止めたものの、ソーマは即座に反論する。

ユウとリンドウ。二つの名前が出ただけで、その状況をこの場で理解できるのは、ツバキ以外に彼だけで、その事態に焦っていたからだ。

「あいつがリンドウと戦ってるとわかって、何を待つんだ?」

「落ち着け。お前一人で行くなと、言っているだけだ。私も行く。だが・・・・、もう少し待て」

「ちっ・・・」

ソーマが舌打ちして俯くのを確認してから、ツバキは今だ理解が追い付けないでいる仲間達へと口を開く。

「・・・現在、神薙ユウは、雨宮リンドウが荒神化した、漆黒のハンニバルと戦っている」

「どうして・・・・、リンドウが・・・。どうして、私達に教えてくれなかったんですか!教えてくれたら・・」

「教えたらどうだというんだ!」

サクヤが食って掛かろうと声を荒げたところで、ツバキがそれを諫めるように、更に大声で怒声を浴びせる。

「サクヤ!お前にこの事実を知らせたとして、お前にリンドウを殺せるのか!」

「っ!!・・・それは・・」

「ユウは、最悪リンドウを殺す覚悟を持って、リンドウのところへ単身向かったのだ。サクヤだけではない。ここにいるお前たち全員、変貌を遂げていようと、相手がリンドウとわかってなお、武器を向けることが出来るのか!」

その言葉に、再びその場は凍り付く。ユウとリンドウが戦っているだけでも大事なのに、ユウを助けに行く=リンドウと戦うという覚悟が、持てないでいるのだ。

そんな時間に終わりを告げるようにか、カレルがポツリ呟く。

「・・・・俺は、無理だ」

「カレル、てめぇ!!」

「喚くなよ、シュン。お前だって、リンドウさんには借りがあんだろ?」

「そ、それは・・・」

口ごもったシュンを無視して、普段無口なカレルは、珍しく話を続ける。

「空木を助けるのに、かなり神経使ったってのもあるが、今このタイミングでリンドウさんと戦う覚悟を持てっていうのは、無理がある」

それに同調したように、ジーナも口を開く。

「そうね。例え時間があったとしても、私にもリンドウさんに銃口を向ける自信はないわ」

「わ、私もですぅ・・」

カノンも神機を下して頷く。

皆下を向いて黙っている中、サクヤだけはその手に力を込めて、真っ直ぐツバキを見つめる。

「いえ、私は行きます。私には、愛する人の最後を見届ける義務があります!」

「サクヤ・・・」

その目から、一筋の涙を流しながら、決意を口にするサクヤに、ツバキは胸を締め付けられる思いに襲われる。

その後ろに控えていたソーマが、「ふん」と鼻を鳴らしてから、言葉を発する。

「所詮俺たちがやることなんて、変わらねぇ。荒神を殺すことと、世話のかかる仲間を助けることだけだ」

「ソーマ・・、お前・・」

タツミの投げる疑問に、ソーマは応えるように顔を向ける。

「ユウの奴は、きっと諦めてねぇ。何もしてない俺達があきらめてどうする。そうだろ?空木」

急に話を振られたレンカだったが、ソーマの笑顔に伝染されたように、口の端を浮かせる。

「そう、ですね。ユウさんなら、絶対に諦めない!俺をみんなが救ってくれたように、ユウさんもリンドウを・・・」

「そうですね。感応現象で荒神化したレンカを助けるって足がかりも、ユウが諦めずに出した答えです」

「そうだよ!ユウさんなら、リンドウさんを・・・・。ツバキさん!」

アリサやコウタも希望を捨ててない。その表情に打たれたのか、タツミが頭を掻きながら、レンカの肩に手を置く。

「そうだよな。あいつはいつでも、ピンチを好転させてきたんだからな。雨宮三佐、第1部隊だけでも連れてってやれないですか?ここの後始末は、俺達でやっときますんで」

「タツミ・・・。・・・・・・、まだ終わっていなかったな。わかった。第1部隊は私と来い!タツミ、後を任せるぞ!」

「了解!」

《了解!!》

第1部隊のみ引き連れ、ツバキは走り出した。

「ツバキさん!ユウ達はどこで!」

「エイジス島だ!!」

 

 

走り出したユウは、下から斬り上げる。それを上半身を後ろに反らして、漆黒のハンニバルは躱す。

「遅い!」

ガシャンッ ドドンッ!!

それを読んでいたように、ユウは空中で変形させ、顔面へと氷結バレットを打ち込む。

ガガァァ!!

目を抑えながら首を振る相手を蹴り、後ろに下がってから低く上体を落とし、ユウは勢いよく斬り抜ける。

ザンッ!

「まだだ・・」

そう言いながら踏ん張り、ユウは同じように斬り抜く。

ザンッ!ザンッ!ザンッ!

それは、2度、3度、4度・・・・。

ザンザンザンザンッ!!!

そのスピードから、何度斬り付けたのか数えられない程に・・。

そして、何度目かにその足を止め、ユウは相手の前に立つ。

グッウッウッ!グアァァァァ!!

片膝をつきながらも、漆黒のハンニバルは今だ戦闘の意志は消さず、こちらへと叫ぶ。

「やるね・・・、リンドウさん・・・・ゴフッ」

一見ユウの方が有利に攻撃していたようであったが、その間に相手も何発か攻撃を加えていたのだ。どこか内臓をやられたのか、ユウは血の塊を吐き出した。

「はぁ・・はぁ・・、あっ・・・ぐふっ・・・・ふぅ」

ググウゥゥ!ガアァァッ!!

「ははは・・・、でも、見えたよ・・・。リンドウさん」

お互い傷だらけながらも、ユウの1撃が、ハンニバルの胸の傷の隙間から、気を失ったリンドウの上半身が、だらりとはみ出ていた。

「これで、やっと5分だ!」

グゥゴオォォォォォ!!!

自分の弱点を見せたと焦ったのか、漆黒のハンニバルは黒炎の輪を吐き出す。その行為よりも早く、ユウは相手の後ろに回り、背中へと刃を立てる。

(僕の神機の刃渡り105cm。この荒神の背中から胸の幅、約150cm。リンドウさんの幅、約17cm。計算上、全部突き刺しても・・)

「リンドウさんには、当たらない!!」

 

ザシュッ!!

ギュアアァァァァァッ!!!

 

確かな感触をその手に確かめ、力任せに神機を捻る。

グリュッパキンッ!

何かが割れるような音がして、声を上げていた漆黒のハンニバルは、両腕から力が抜け、その場へと倒れ込む。

突き立てた刃を引き抜き、ユウはすぐさまリンドウの腕を握る。

そして、感応現象を発動する。

「よし!・・・」

キイィィィィィィィンッ!!

いろんな感情、思い、記憶が、ユウへと一気に流れ込んでくる。その辛さに耐えながら、徐々に見えてきたリンドウへと触れる。

「くっ・・・、リンドウさーーーーん!!」

キイィィンッ!

何かに弾かれるように、ユウは握っていた手を離す。すると、

「・・・・・うっ・・・・、くぅっ・・・くっ・・・・」

「・・・り、リンドウさん!!」

声が洩れたところに、ユウが声かけると、リンドウは閉じていたその目を、ゆっくりと開く。

「う・・・・、く・・・ユウ、か?」

「リンドウさん・・・、よかった・・」

会話が成立したことに、ユウは安堵の気持ちに力を抜く。しかし、

「っ!!ユウ!逃げろ!!」

「え・・・?」

その一瞬を、敵は見逃さなかった。なにより、相手はハンニバル。自らの体内で、コアの再構築できる荒神。

リンドウに気を取られたのが、ユウの誤算だった。

「しまっ・・・!!!」

グアオォォォォォッ!!!

 

ズゴォォォォォンッ!!!

 

「ユウーーーー!!」

その場一帯を大きな炎が包み、ユウの姿が完全に飲まれた頃を見計らって、

 

ドォォーーーーンッ!!!!

 

爆発を起こし、火柱が天へ上った。

 

 

「わっ!熱ッ!」

突然熱風が通り抜け、リッカは咄嗟に顔を覆う。

しばらく続いたそれが収まったころに、目を開くと、目の前にレンが手を広げて立っていた。

「流石に今のは、普通の人間にはきついですね」

「あ・・・、ありがとう」

「いえ。急ぎましょう。僕の予想通りなら、ゴッドイーターでも平気ではいられない」

険しい顔つきで、進む先を見据えるレン。その意味にハッとしたリッカは、残り僅かの道を一気に走り抜け、扉の解錠ボタンを押す。

そこには、足を震わせながら、何とか立っているユウと、それを見つめるリンドウを胸にはめ込んでいる、漆黒のハンニバルが炎の翼を広げ、飛んでいた。

「ユウ君!!」

「・・・・ふぅ・・ふぅ・・」

リッカの声がその耳に届かないのか、ユウは肩を揺らすだけで、返事を返しては来ない。

代わりに聞こえてきた声は、リッカにはずいぶんと懐かしく聞こえた。

「リッカ!ユウを連れて逃げろ!」

「っ!!リンドウさん?」

「そうだ!いいから・・っ!?くっそ!逃げろー!」

「えっ・・」

リンドウの思惑とは反対に、漆黒のハンニバルは標的をリッカに切り替え、口を大きく開き、炎を吐き出す。

「まずい!」

レンの声を遠くに感じ、リッカは目を閉じる。そして、

 

ドォーンッ!!

 

爆音が響き、煙が巻き上がる。リッカの姿が見えないのを、リンドウは目を反らし閉じる。しかし、耳に届いたのは、

「まだ・・・、終わってないですよ!リンドウさん!」

「っ!!」

かつて共に戦った、仲間の声だった。

そして、煙は晴れる。

「アリサ!」

「良かった。ちゃんと、意識はあるんですね」

後ろで目を閉じていたリッカも、声が聞こえるのに目を開き、目の前のアリサを確認する。

「アリサ、ちゃん・・・」

「リッカさん、無事ですか?」

アリサの笑顔に、力が抜けて座り込むリッカ。その頭をクシャっと撫でられ、顔を上げる。久しく見なかった神機を持つ姿の、ツバキが立っていた。

「ツバキさん・・、どうして・・」

「馬鹿者が」

優しく笑んでから前を向いたその先に、一人、二人、三人と、人が降ってくる。コウタ、レンカ、サクヤ、そして、

「よぉ、生きてるか?親友」

「・・ふぅ・・ふぅ・・・、ははは。何とか、ね」

ユウの隣に降り立ったソーマが、担いでいた神機を振り下ろし、リンドウを見る。

「くぅ・・・、ソーマ・・」

「ふん・・・、迎えに来てやったぞ。リンドウ」

今、新旧合わせ、総勢8名の第1部隊が、集結した。

 

 

 

 




ゴッドイーターだよ、全員集合!!


次、行ってみよう!!
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