GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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54話 永遠の相棒

 

 

自分の為に駆け付けた仲間達。その中にリンドウは、姉と、恋人の姿を見た。

「姉上・・・・、サクヤ・・」

「・・リンドウ・・・、リンドウ!」

「馬鹿者め・・、そんな姿を晒しおって」

二人の声に、過去の思い出が駆け巡る。

走馬灯・・・。

リンドウは自分の心に、遠い日に聴いた教会の鐘の音を聴いた。

(・・・あぁ、・・・・・・呼んでんのか・・)

一人何かを納得したように笑みを浮かべてから、リンドウはもう1度、自分の愛した家族を、その目に焼き付けるよう眺める。

「・・・・・・・・・もう、いい」

「なに・・・?」

先頭に立つソーマの返事に合わせ、リンドウは再び口を開く。

「もう・・・、俺のことは、ほっとけ・・・」

「何を・・、何を言ってるの?」

「俺はもう・・・、自分を制御出来そうにねぇ。・・・・サクヤ、みんなに指示を出せ。俺を、討て」

「っ!!」

言葉の意味に縛られてしまったように、サクヤはその場に固まる。しかし、周りの仲間は、即座に反して返す。

「駄目っすよ・・・。俺まだ、リンドウさんに何も返せてないっすよ!」

「そうです!私だってリンドウさんに・・!」

「行くな、リンドウ!俺も帰ってきた!だから、おまえも・・!」

レンカ達の叫ぶ声を、心地良く感じながら、リンドウはツバキへと目を向ける。

「姉上・・・、もう持ちやせん。姉上から、命令を・・」

「くっ!・・・・・そんなこと・・・!!」

苦しそうに胸を押さえるツバキに、首を落とす形で礼をし、リンドウはその部屋の突き抜けた天井の向こうまで届くように、大きな声で叫んだ。

「お前ら!目の前にいるのは、荒神だ!!お前らは何だ?お前らの手の中のモノは何だ?迷うな!攻撃しろ!これは・・・・、命令だ!!」

それは悔しくてか、悲しくてか・・・。

今日何度目かの涙が、皆の頬を伝う。その時、

 

キィィンッ!!!!

 

「え・・・・、あれ?」

目の前で起こった現象に、リッカだけは自分の手元と、視線を行き来する。

『お待たせしました、ユウさん。僕との賭け、ここまで来たら、勝ってもらいますよ!』

それは、誰が予期したことだろう。

保管庫に安置されていたはずの、リンドウの神機が、ユウの隣に突き立った。

「・・・・・おまえ・・」

この場にいるはずのなかった人物に、リンドウは目を大きく見開く。

『久しぶり、リンドウ。悪い子には、お仕置きを受けてもらうよ』

それに対し、リンドウが返事を返すより先に、その神機の柄を、ユウが握る。

 

ブジュウウゥ!!

「っ!!んぐぃあぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」

 

その苦痛の声に、一同背筋を凍らせ、唯々、2本の神機を左右に構える、神薙ユウから、目を離せないでいた。

「ユウ・・・、おま・・」

「逃げるな!!!」

自分の言葉にかぶせてきたことよりも、その強い口調に驚いて、リンドウは口を開いたまま、止まる。

「・・・生きることから、逃げるな!これは・・・・・命令だぁ!!」

リンドウの神機から彼の心へと、ユウの感応現象から、皆の思いが流れ込む。それに触れた瞬間、リンドウは宙に浮いたような感覚を覚える。

それに影響されてか、漆黒のハンニバルの身体が、ゆっくりと地に足をつける。逆に、リンドウの肉体の方は、何かの力に引っ張られるように、重力に逆らっている。

「ふっ!・・・はあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

その隙を最後のチャンスと見て、ユウは両腕を引っ張るように、その足を力強く、速く、速く・・・、誰よりも、速く。

 

「ああぁぁぁぁっ!!!」

ザシュウッ!!!ブチブチブチッ!ザンッ!!

 

リンドウの両脇に突き立てた神機を、捩じ込んでから斬り裂く。

すると、張り付いていた荒神から、リンドウの身体が右腕を残し、今度はぶら下がるように抜ける。つながったままの右腕の部分を、ユウは思い切り薙いで、落ちるリンドウの身体を抱きかかえ、力いっぱい後ろへと飛ぶ。

ほんの数秒足らずの奇跡に、サクヤ達は出遅れた時間を埋めるように、二人の元へと走り出す。

そんな中、1番近くで見ていた褐色の少年が、その白い髪をかき上げながら、飛んでくる彼らとすれ違いに前に出る。

「後は、任せたよ。地上最強・・」

「もう寝てろ。新型最強・・」

すれ違う間に躱された約束をその刃に乗せ、ソーマは純白の神機を叩き下ろす。

「これで・・・、全部、終わりだぁーーーーー!!!」

 

チュドォォーーーーンッ!!!

 

直立立ちになってた漆黒のハンニバルは、その中心をコアごと綺麗に、真っ二つに分かれて霧散していく。

 

悪夢は、終焉を迎えた。

 

 

オラクル細胞が宙に溶け込むように、キラキラと風に流される。長い1日の終わりを知らせる事象に目を奪われながら、ユウはその身をゆっくり地面へと落とす。

ドサッ

「ユウ!リンドウ!!」

音のない世界から解放されたように、静かなエイジス島は動き始める。

「リンドウ!!・・・うっ、・・リンドウぅ・・」

最初に駆け付けたサクヤが、リンドウの身体を抱き起す。右腕は今だ荒神化の名残が残っているが、その他は綺麗に変わらぬままだ。

「・・っ痛ぅ・・。あぁ、助かっちまったか・・、はは」

「本当に・・・・・・、もう・・・」

涙ぐむサクヤの頬を、左手でゆっくり拭う。触れる感覚、人の温もり。リンドウは、口の端を浮かせて、大きく深呼吸をする。そこへ、

「馬鹿者!!」

ツバキが声を荒げて、近付いてくる。さしものリンドウも、今回ばかりは、苦笑するしかなくなっている。

「姉上・・、あのー・・・」

「黙れ!大馬鹿者が!!・・・・・一生分の心配をさせおって・・・」

「・・・姉上」

「馬鹿者が・・」

隠すことなく涙顔を晒しながらも、ツバキは満面の笑みを浮かべてリンドウを見つめた。それをくすぐったく感じるのか、リンドウは頬を掻きながら、視線を落とす。

その光景に、皆満足してから、倒れたユウへと目を向ける。

「ユウさん・・・・、寝ちまってるな」

「あぁ。どこか、笑ってるみたいだ」

何気ない会話に、コウタとレンカは顔を見合わせ、笑い合う。しかし、何か気になったのか、もう1度ユウの方を見る。

「・・・・・まさか、死んで・・」

「なっ!?まさか・・」

コウタの発言に、レンカだけでなく、皆がそちらへと目をやる。

「勝手にこいつを殺すな」

「あ、ソーマさん」

コアを回収し終わったソーマが、倒れたユウの前に座り込む。軽く脈をとってから、「ふん」と鼻を鳴らし、何でもないことを皆に伝える。

「はぁー、そっかぁ・・。良かっ・・ばえふぅ!」

コウタが胸をなでおろした瞬間、その顔面に、リッカの右フックが炸裂していた。

「り、、リッカさん?」

《紛らわしい!!》

殴ったのはリッカだけでも、罵声は全員に浴びせられ、コウタは縮こまって反省した。

 

皆が落ち着いてきたころに、リンドウはゆっくり立ち上がってから、ユウの隣に突き立った、自分の神機の前へと足を運ぶ。

それから、フッと微笑んでから、それへと優しく話しかける。

「また・・・、助けられちまったな」

『・・・そうだね、リンドウ』

《っ!!》

まさか返事が返ってくるとは思わなかったのか、リンドウとリッカ以外の面々は、驚きを隠せないでいる。

更には、そこから漏れ出した光の靄が集まって、人の形へと変わっていったのだ。

「これ、って・・・、神機、なんですか?」

「私も・・・・・、初めてだ」

アリサの疑問に同調して、ツバキも思わず1歩前へと出る。

『リンドウ。君が初めて僕を握ってからずっと、僕は君を見続けてきた。こうやって話せるのを、ずっと夢見てきたよ』

「はは・・。そこまで思ってもらえるってのは、男冥利に尽きるって感じか?」

『ふふ、そううだね。でも、これ以上サクヤさんを泣かしちゃいけないよ』

「あなたは・・・」

サクヤの複雑そうな顔に、レンはにっこりと笑顔を向けてから、隣に倒れている、ユウへと顔を向ける。

『ユウさんとも、もっと色んなことを話したかったな・・・。でも、僕の時間も、もうすぐみたいだ』

「何言って・・・・・っ!・・おまえ」

冗談を返そうとしたリンドウの目に、レンの透けた体の向こうの本体に、大きな穴が3つ穿たれていた。

『ユウさんのお陰で、君を救うこともできたし、君と話すこともできた。これで行けるんだから、僕は「幸せ者」ってやつなんだろうね』

「・・・・名残惜しいぜ」

『僕もだよ』

二人は恥ずかしそうに、切なげに笑い合う。

徐々に消えていく自分の身体を確かめてから、レンはリッカへと視線を向ける。

『リッカさん。今日まで、僕をずっと大事にしてくれて、ありがとう。次にまた神機になるなら、またリッカさんに管理してほしいな』

「うん。私で良ければ、喜んで」

嬉しさに頬を緩めて応えてくれるリッカから、再びリンドウと向き合うレン。その目はもう、別れを見つめていた。

 

「いくのか?・・」

『うん。ちょっと、粘りすぎたぐらいだしね』

「そうか。・・・・・ずっと、ありがとうな」

『それは、僕の方も同じだよ。ありがとう、リンドウ。君と共に戦えたことを、僕は誇りに思うよ』

「あぁ、俺もだ。・・・なぁ、最後にお前の名前ってあったら、教えてくれねぇか?」

『また面白いことを。僕は神機だよ?そんな僕の名前を聞いて、どうするの?』

「どうもしねぇよ。ただ、俺の大事な相棒の名前を、覚えときたいだけだ。・・・ダメか?」

『ふふふ。本当に、君達ゴッドイーターは面白いよ。・・・ユウさんにも、ありがとうって・・・、賭けは僕の負けだって、伝えてよ』

「あぁ、伝えとく。今回は、俺も負けちまったしな」

『こればっかりは、ここにいる誰もが譲らないよ。・・生きて、幸せにね。リンドウ』

「あぁ、またな」

『うん。またね』

 

『レン。君の相棒の、名前だよ』

 

空へと散っていくレンの魂は、あの時シオがくれたものに似ていた。

暖かく、

儚い、

綺麗な、

彼女の思いであった。

 

 




決着です!!

少し簡素な感じもしますが、原作にもきちんと沿ってますので、アリということでw
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