GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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ここからは、完全オリジナルになるので、あまり期待しないでくださいw


神薙ユウ編
56話 外の世界


 

 

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

少し傾いた廃ビルの中から、一人の女性が走り出る。裸足に感じる痛みを気にも止めず、何かから逃げるように走り続ける。

「・・んぅ・・・はぁ・・い、やよ。・・捕まる、・・なんて!」

一人ボヤきながらひたすら走る。遠くへ行けば、どうにかなる様希望を抱いて。

しかし、そんな彼女の願いは叶わなかった。

 

グルルルルッ!

 

「へ・・あっ!・・ひぃ!!」

目の前の瓦礫の影から1匹、そこから逃げようと振り返ったそこに2匹。逃げられないと思ってか、膝をペタンと地面につき、歯をカタカタ鳴らし涙を流す。

「お、お願い・・よ。・・・わわ、わたし、・・し、・・死にたく、ない・・」

グルルッ!!ガゥッ!!

喉を鳴らす獣からは返事は返ってこず、動けずにいる女性に1歩ずつ近付いてくる。そして、

 

「い・・・・、いや・・」

グアゥッ!!

 

グォリッ!!

 

静かな闇の中で、不快な音が響き渡る。

虚空を見つめる女性の体を、人類の敵『荒神』達は、その欲望のままに貪り喰い荒らす。

その光景を、月だけが静かに見ていた・・・。

 

「どうして・・・こうなるのかねぇ」

「代表・・・」

血溜まりの周りに落ちていた荷物から、自分の孫娘と理解してから、そっと手をつく。そこへ、

「代表ーー!こっちへ!!」

「っ!見つけたのかい⁉︎」

返事を待たずに走り出し、呼ばれた先の廃ビルの中へと入っていく。奥の暗がりへと目を向けたところに、膝をついた男性が振り返り指をさす。

「・・・・あぁ・・・」

鼻をグズグズならす赤ん坊が、体を震わせながら泣き出す。

「ふえぇぇっ!!ふえぇっ!!」

「・・・・最期の最後まで・・、あの子は・・・」

駆け込んできた『代表』と呼ばれる老婆は、涙を流しながらその子を抱き上げる。

「ごめんなぁ。・・本当に、ごめんなぁ!・・うぅ・・えぅ!!」

泣き崩れながら赤ん坊を抱きしめる老婆は、共にここまで来た者達へと振り返り、決意を宣言する。

「・・・この子は、わしが育てよう」

「えっ!?で、でも、あの娘の子ですよ!?良いんですか!?」

「大丈夫じゃ!・・・もう、間違ったりせん!お願いじゃ!この老いぼれの願いを汲んではくれぬか!?」

「・・・代表」

皆言葉にせずとも、納得したことを表情で応える。

赤ん坊を抱き上げた老婆は、次第に泣き止み、笑みを浮かべた赤ん坊に対し笑顔を作り、空いた左手でそっと頭を撫でながら、その子に名を与える。

「優しく・・強い子に、育っておくれ。・・・優」

 

これは、とあるゴッドイーターの物語。

 

 

エイジス事件から、1年が過ぎたある日・・・。

神機保管庫からエントランスへと続く廊下を、リッカはずんずんと音を立てながら歩いていた。

またしてもユウが、自分の神機の調整を、長らくさぼっていたのだ。

「もう・・・、もう!」

っと言うのは建前で、本当はまた暫く顔を出さないユウに、腹を立ててるだけだが。

文句がつい声に出ていたのか、ちょうどすれ違ったツバキに軽く咳をされ、その足を止める。

「あ・・・・の・・、ツバキ、さん・・」

「リッカ。声に出てたぞ」

拙いところを見られたと、顔を引きつらせていると、ツバキはふぅっと溜息を吐く。

「また、ユウか?」

「え?・・あっ!・・・いや・・、その」

分かりやすく狼狽えるリッカに、もう一つ溜息を吐いてから、ツバキは口を開く。

「ユウは、今日休暇だ。申請を受けたからな」

「そうで、すか・・。・・・ん?休暇?」

「そうだ」

呆れた目を向けてから去ろうとするツバキに、リッカは慌てて呼び止める。

「ちょっ、待ってください!ユウ君が休暇って、どこかに行ったんですか?」

リッカの呼び止めに、しばらく考えていたのか、ツバキは背中越しに答える。

「あいつは、古い知人に会いに行くと言っていた。それ以上は、本人から聞くんだな」

「知人に・・・」

それだけ言い残してから、ツバキは歩き出し、もう振り返らなかった。残されたリッカは、その時気付いてしまった。

自分はまだ、ユウのことをほんの少ししか知らないと・・・。

 

 

極東から走らせたバギーは、ある場所で止まる。

荒廃した世界に、緑が生き残ってる場所。

サテライト拠点、ネモス・ディアナ。

フェンリルに受け入れられなかった1部の人達が作った、世界から独立した街。

フェンリルに派遣されている技術者によって、独自のルートで手に入れた物資によって作られた、装甲壁。それを懐かしむように、神薙ユウは見つめる。

(久しぶりだな・・・。もうすぐ、時間だけど・・)

「兄さん!」

腕時計に目を落としていたところに、聞きなれた声が近付いてくる。

「ユノ、久しぶり」

葦原ユノ。ネモス・ディアナの創設者、葦原八雲の孫娘。ユウの幼馴染である。

「私には、挨拶無しですか?」

「サツキ姉さん・・」

ユノの後ろから歩いてきた女性、高峰サツキが笑顔でユウを迎える。彼女もまた、ユノと同じく、ユウの幼馴染の一人だ。

「今挨拶するところだったんだよ」

「まぁ!相変わらず、口が達者ですこと」

「サツキ」

3人はクスクスと笑いながら、再開を喜んだ。

 

木陰へと移動してから、3人は腰を落ち着ける。

そこで、サツキはわざと思い出したかのように、ユウへと悪戯な笑みを向ける。

「そういえば、フェンリルではあなたの話は有名よ。新型最強ゴッドイーターさん」

「え?・・・あはは。そういえば、サツキ姉さんはフェンリルの広報部だったね。そっちはどうなの?」

苦笑しながら言葉を返してきたユウに、フンっと素知らぬ顔で、サツキは答える。

「あんなところ・・・、もう辞めちゃったわ」

「えぇ?い、いいの?」

驚くユウの当たり前の反応に微笑みながら、ユノとサツキは目で合図してから話し始める。

「私達は、ゴッドイーターとは違った角度で、戦ってるの」

「何も、荒神を倒すだけが、戦いじゃないでしょ?」

「それは・・・、そうだけど。ちゃんと、食べていける?」

妙に所帯じみたことを言うユウに、二人は声を殺して笑う。それからサツキがユノの肩を抱き寄せてから、ユウの顔の前に指を突き出す。

「じゃあ、困ったときには、新型最強さんに養ってもらおうかな?きっとユノも、喜ぶし」

「さ、サツキ!!もう!」

からかわれたのに反論しながら、ユノはサツキに突っかかる。その光景に懐かしさを覚え、ユウはゆっくりと目を閉じる。

 

 

 

ジリリリリリンッ

時間通りになった目覚まし時計を止めてから、彼はニコッと笑う。

「じゃあ、今日は終わりにしよう。明日は移動日だから、今夜は早く寝とくようにね」

「は、はい」

「ほーい!」

二人の子供の返事を聞いてから、パンっと手を鳴らす。

「解散」

 

いくつもの大型トレーラーで囲まれた集落。人のいる場所とフェンリル支部を行き来し、物資を取り引きする移動式マーケット。それが、『カンパニー』。いくつもの家庭が身を寄せ合う、一つの大きな家族だ。

そこの学び舎で、子供に授業を行っていた少年「朝凪優」は、手元の資料を揃えて、息を吐く。

若干16歳の彼が「先生」をしているのも、この世界の秩序が狂ったからだ。

・・・・荒神によって。

「先生!明日は、ネモスでしょ?」

優のことを待っていた女の子、ナズナが笑顔で足をばたつかせている。優がマーケットで教える子供のうちの一人だ。

「そうだね。明日の午後には」

「やったー!あそこが一番好きー!」

両手を上げて元気に飛び回るナズナの頭を優しく撫でて、優は彼女と手を繋いで歩き出した。

 

「よう!優!まーた、ガキのお守りか?」

「正嗣さん。お疲れ様です」

居住テントの手前に位置する、武器倉庫に集まった集団の一人、金井正嗣が声を掛けてくる。

移動を繰り返す彼らにとっても、外ではやはり荒神が難敵。フェンリルからのバックアップは旧式の武器を回されるのみの彼らは、自分たち独自の自警団を作り、それに守られ生きている。

「とっつあん、うるさい~!汗臭いおっさんより、先生の方がかっこいいもん!」

「なんだぁ、マセガキがぁ~」

「やだー!くんなー!」

 そんな彼らが、「またか」と苦笑している間に、奥の方から飛んできた物体が、正嗣の後ろ頭へと、

「げぇふぅっ!」

クリーンヒットした。

「なーにあたしの妹と幼馴染に絡んでるんだい?とっつあん!」

「あ・・ぐぐ・・。ミコ!おまえなぁ!」

呼ばれて立ち上がった少女、神楽ミコは「ふんっ」とそっぽを向いてから、優達へと笑顔を向ける。

「ミコ姉ちゃん!」

「ナズナ!良い子にしてた?またカケルを虐めてないだろうね?」

「うん!今日は虐めなかった!」

「今日はって・・」

ナズナの返事に、優は軽く顔を引きつらせ苦笑する。「カケル」とは、優の生徒の一人で、明日の移動の為に、畑仕事をしている両親の手伝いに今日は一足早く帰宅していた。

しばらく妹分と談笑してから、ミコは優へと歩み寄る。

「優、お疲れさん。いつもこの子の面倒見てくれて、ありがとね」

「いつも聞いてるよ。その言葉」

「いや・・・、だから・・さ」

優の笑顔に頭を掻きながら俯くミコ。そのいつもの光景に、周りにいた者達は、にやにやと笑いだす。

「優!そろそろ気付いてやれよ!」

「え?なにを・・」

「かーっ!これだもんな!報われないなー、ミコ嬢も!」

「う、うるさいよ!あんたら汗くさいおっさんたちと違って、優はお、『おもむき』?があるんだよ!」

「なれない言葉、使わない方がいいぞー」

「あぁ!?」

こうやってミコが、からかわれるのもいつものこと。言ってることを理解できなくとも、優にとって、この場所が全てだった。

そこへ、男が一人走ってくる。

「おーい、優。代表が話があるって」

「お婆さんが?」

優はミコと顔を見合わせて、首をかしげながら礼を言って走り出した。

 

 

居住テントの中心に位置する場所に、「代表」と呼ばれる長のような役割の人がいる。

彼女の名は、朝凪益恵。このカンパニーの創設者だ。

かつて息子夫婦と、小さな『ホームセンター』を経営していたが、息子夫婦を荒神に喰われてから、フェンリルに受け入れられなかった近隣の人達と共に、経験を生かして物資の取引をしながら、そこそこの大きさへと発展させた。

そんな彼女の肉親は、同じ姓を持つ朝凪優である。

「お婆さん、ただいま」

「おぉ、戻ったかい」

優しい声で語り掛ける益恵は、視力の薄くなった目を細めてから優を手招きをする。優もそれに従い、彼女の目の前へと腰を下ろす。

「優や。私もそろそろ長くない」

「・・・・・・急に、何を言い出すの」

少し怒気を絡めて、優は返事を返す。彼女にとってもそうであるように、彼にとっても益恵だけが肉親なのだ。

「まだ・・・、まだ僕はなにも返せてないです・・」

「えぇんじゃて。そんなに、興奮しなさんなね。体に障るよ?」

「でも・・」

思わず黙ってしまう優に、益恵は落ち着いた様子を崩さずに、話を続ける。

「わしが長くないのは本当じゃよ。優の何倍も、生きてるでな・・。それよりもじゃ、わしが呼んだんはの・・・・わしの亡き後、ここをお前さんに任せたい・・という話じゃよ」

「え?・・・・・僕が・・」

沈黙を破り、聞き返してきた優に、益恵は再び笑顔を作る。

「明日行くネモスの八雲ちゃんや、出張所の矢田先生とも、お前は良好に関係を築けとる。おまえなら、皆助けてくれるけぇ」

「・・・・でも・・・、僕なんかが、本当に・・」

迷いを口にし、目を閉じて震える優の頭を、益恵はやせ細った腕をゆっくり伸ばし、そっと撫でる。

「何も気に病まんでええ。おまえは、皆の・・・家族じゃ」

「・・・・・はい」

しばらくの間、気持ちが落ち着くまで、優は益恵に撫でられ続けた。

優は気にしていたのだ。自分が拾われた子であることを・・・。

 

 

武器庫の整理を終えた自警団は、それぞれの家へ帰る前に、自分たちの武器の整備をしていた。そんな中、優のことを気にかけてか、ミコがぽつり声を洩らす。

「優の奴・・・・、なんでわざわざ呼ばれたのかな・・」

その言葉に反応して、皆は顔を見合わせて、静かに笑いだす。

「な、なにが可笑しいのさ!あたしは別に、優のことが・・」

「いやいや、そういうんじゃなくてだな・・・なぁ?とっつあん」

話を振られた正嗣は、咥えていた煙草をつまんでから、煙を吐き出す。

「代表に呼ばれた理由なら、多分・・・カンパニーを継いでくれってことだろ?」

「えっ!?・・・でも婆様は・・・」

急なことに取り乱すミコを、正嗣は「まぁまぁ」と落ち着ける。

「今すぐってわけじゃねぇさ。でも・・・・、決めとかなきゃいけないだろ?大事なことだ」

正嗣の言葉に、誰もが頷く。

ミコも、冷静になれたのか、益恵が亡くなったその後の事を考えてから、ゆっくりと自分に納得させるように、頷く。

「そう・・・・だね。あたしらと違って、優は頭良いしね」

「ミコ嬢は、戦闘バカだしな」

「なっ!あんだって!?」

その場を和ますよう言われた言葉に、ミコは「がーっ!」と食って掛かる。それを笑いながら見ている中で、一人が静かに口にした。

「優が『代表』になっても、俺たちは変わんねぇだろうな」

綺麗な夜空は、彼等の平和を願うように、暗い世界を綺麗に彩る。

 

 

 




これ書いてたら、想像以上に長い話になりました。
一気に掲載しますんで、ゆっくり読んで上げてください!
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