「どうかね、新型の調子は?」
支部長室には、ツバキ、榊博士、そしてシックザール支部長が集まっている。
「はい、神薙ユウは目覚ましい成長を遂げています。ハッキリいって、単純な戦闘能力でいえばリンドウ、ソーマに全く引けを取らず、下手をすれば、」
「ふむ、凌駕していると?」
「・・・はい」
「そうか。非常に喜ばしいね」
そう言いながら、支部長はソファーに背をもたれる。初の新型ゴッドイーターとして、多少強引な手段で手に入れたのが功をきす。彼に取ってこれ程都合の良いことはない。そんな様子を見ていた榊博士が、軽く咳をし口を開く。
「彼はかなり特殊なのだろうね。彼のオラクルの適合率はソーマ君と同等だよ。そして、ソーマ君同様、安定している。ある意味、共存していると言った方が良いのかな?」
「素晴らしいじゃないか、ペイラー。君も良い観察対象が出来て、さぞかし満足ではないのかい?」
少し皮肉掛かった言葉にも、特に心乱さず、榊博士は続けた。
「そうだね。彼は非常に興味深いよ。だから、無茶して簡単に壊してくれないでおくれよ、ヨハン」
「ふっ、肝に命じておこう」
そんな二人のやり取りに、ツバキは不快感を覚えていた。
彼女にとっては、どんな存在であろうとも大切な部下であり、こんな物扱いされることに苛立ちが収まりきらなくなる。でも、ここで反発しても、自分の立場を悪くし、結果的には死地に赴く部下達を最大限守る事が出来なくなるだけ。
自分の気持ちを抑えつけ、今はただ冷静にと、歯を食い縛ることしかできないのだった。
「ユウ」
「あ、サクヤさん」
訓練所での汗を流し、一人ジュースを飲んでいたユウにサクヤが声をかけてきた。
「どう?少しはここの生活にはなれた?」
「はい。皆良くしてくれますんで、なんとか」
「そう。良かった」
自販機でジュースを買ってから、サクヤはユウの隣に腰を下ろす。プルタブ開けて半分くらい一気に流し込み、フーと息をつく。
「サクヤさん、疲れてます?」
「え?・・・そうかしら。そう、見える?」
少し気になったのか、頬に手を当て軽く熱を計るそぶりを見せる。
「んー、なんていうか、最近第一部隊は出ずっぱりだから。サクヤさん、女性だし、疲れてるかな〜って」
「あら、それって男女差別?」
「いえ、そんなんじゃ!」
「ふふ、冗談よ」
少しユウをからかってから缶を口につけ一口、それから足下を眺めながらゆっくりと喋りだす。
「実はね、最近リンドウが一人での任務増えて来てるでしょ?ちょっと、気にかかっちゃって」
「あ、あーー、確かに。リンドウさんたまにふらっと一人で行っちゃいますよね」
「そうなの。私は、リンドウを守る為にゴッドイーターになったところあるから、離れると不安になるのよね」
「・・・なんか、大人な感じですね」
少し赤くなったユウに、微笑みかけ、そのまま話を続けた。
「別に隠してないからね、私とリンドウの事。でも、これってやっぱり、リンドウにとっては重いかしら」
話していて少しばかりネガティヴになったのか、サクヤが目を細めて寂しげになったのを見て、ユウは笑顔で立ち上がった。
「大丈夫ですよ!きっと、リンドウさんもわかってくれてますよ、サクヤさんのこと」
「ユウ」
「今は任務の関係上すれ違ってますけど、きっと落ち着いたら悩んでた事がバカバカしくなる。そんな感じになりますよ!」
そんなユウの笑顔につられてか、自然と頬が綻んでゆくのを感じ、サクヤも声を明るくする。
「そうね、そうよね!もう、何悩んでんだか。ありがとう、ユウ!なんかお姉さん、元気貰っちゃったな!」
「良かったです」
二人で笑い合い、空き缶をゴミ箱に押し込む。サクヤも晴々とした表情で、大きく背伸びをしユウに向き直る。
「ところでさ、ユウにはイイ人、いないの?」
「え?僕ですか?ここに来てまだ3ケ月程度ですよ?まだそんな・・」
特に動揺した様子が無いところから、その言葉が真実だとわかると、途端にサクヤは面白くなさそうに詰め寄る。
「えー、本当にいないのー?私、協力しちゃうけど?」
「そんなこと言われても・・、参ったなぁ」
「もしかして、ソーマ?最近1番の急接近!ソーマ!・・・美男と美男。BL・・・・・・、ありだわ!」
「それ、ここだけの冗談にして下さいね」
ふふふっと、不敵な笑いを浮かべるサクヤと割とマジで困ってるユウは、そのままエントランスにエレベーターで降りた。
ちょっとした日常です!