GOD EATER 〜神無き世界〜   作:死姫

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60話 虐殺のクリスマス

 

 

「ばかやろうーー!!何の為に、俺達がいる!あわてんじゃねー!」

「そ、そうだ。俺達が、家族を守るんだ!」

「あぁ!そうだ!武器庫を開けろ!」

正嗣に叱咤されてから我に返った自警団は、武器庫に向かって走り出す。それを見届けてから、正嗣は見張り台にいる優へと叫ぶ。

「優!数と接触までの時間は!?」

「数は・・・、小型が10体!時間は、5・・いや、3分!」

「早いな。優はみんなに避難を!後は任せろ!」

「はい!」

優と一緒に移動を始めてから、正嗣はギリッと歯を噛みしめる。

「絶対に・・・、生きてやる・・」

 

武器庫の前で、旧式のスタングレネードを3つ受け取ってから、ミコは腰に差している対荒神アーミーナイフを抜く。少しくたびれているが、小型ぐらいなら当たり所良ければ殺せる。

相棒を握りしめ、準備の出来た数人へと目を向け、頷き合って走り出す。そこへ、

 

ガラッ

グルルルッ!

 

2体のオウガテイルが顔を覗かせる。

「くそっ!もう来やがったのか。上を取られるんじゃないよ!?」

《おうよ!!》

住民には近付かせないと、ミコ達は散り散りに、敵へと駆け出した。

 

住民を先導しながら、優は隠れれそうなビルを探す。

そこへ、カケルの母親が駈け寄ってくる。

「優ちゃん!家の息子が、カケルがいないの!」

「っ!!まさか・・。おばさん!僕が連れてくる!」

「あ、優ちゃん!待って!」

走り出してしまえば止める声は耳に入らず、優は戦場となった故郷へと戻る。

 

畑の端で、カケルは必死にリュックへとあるモノを詰めていた。それはナズナが自分に寄越してきた、スイカの苗だ。せめて、一つだけでもと、非難する前に取りに来たのだ。

「あんた、何やってんの!?」

「っ!!ナズナちゃん!?」

「ナズナちゃんじゃない!!」

一早く気付いたナズナが、カケルを探して戻ってきたのだ。走り寄ってくるナズナに、反射的に殴られると構えたカケルの手を、ナズナは掴んで引っ張り起こす。

「早くして!逃げないと、殺されちゃう!」

「で、でも、ナズナちゃんのスイカが・・」

「そんなもの、どうだっていい!カケルの命の方が大事だもん!」

「ナズナちゃん・・」

思いもよらなかったのか、カケルはつい呆けてしまう。そんなことはお構いなしにと、ナズナは必死にカケルを引っ張り走る。

だが、少し遅かった。

 

ガシャァーーンッ!!

 

アクリルの壁をぶち抜いて、オウガテイルが1体飛び込んできたのだ。隠れる場所のない畑で、恐怖に立ち尽くしてしまった二人を、オウガテイルはその目に捉え、そこへと走り出す。

「あ、あ・・・・あ・・」

「ど、どどどうし・・・」

二人ともペタンと、尻もちをつく。

後数歩で噛みつかれるというところで、二人一緒に目を閉じたその時、

 

パッァァン!!

 

強い光が辺りを包む。

そして二人同時に、宙に浮いた感覚を覚えてゆっくり目を開くと、優が二人を抱えて走っていた。

「せん、せい?」

「先生!」

「しっ!音にも反応するから、ここを抜けるまで黙ってて」

その言葉に、カケルもナズナも口を手で塞いでから、何度も頷く。二人に笑顔を向けてから、優は渾身の力で農業エリアから飛び出る。

着地してから顔を上げて、優は安心の表情から血の気が一気に引いてしまう。

「そん、な・・」

小型だけだと思っていた浅い考えを嘲笑うかのように、彼らの前にヴァジュラが喉を鳴らしながらこちらを睨みつけている。

ゆっくりとこちらへ距離を詰めてくるヴァジュラに目を向けながら、優は抱えていた二人を下ろしてから声を掛ける。

「二人とも・・。僕が合図をしたら、僕の指さす方に走って。絶対に、振り返っちゃだめだよ」

「・・・先生」

カケルが袖を握って怯えた声を上げるが、ナズナの方は優の指さす方向を確認する。優は手を下ろしてから、カケルの頭を撫でる。

「いいね?みんなとの合流は考えなくていいから、どこか狭い場所にでも隠れるんだよ」

「はい、先生!」

ナズナの返事に頷いてから、カケルの手を離させ、優は庇うように前へ出る。

「先生・・」

「カケル。いざという時は、ナズナを守ってあげるんだよ」

「・・・・・・はい!」

やっと力強く返事をしたカケルに笑顔で応え、優は腰に下げてたスタングレネードのピンを抜き、足元にあった鉄パイプを拾う。そしてグッと足に力を入れてから、ヴァジュラに駆け出してスタングレネードを投げる。

「走れーーー!!!」

「「っ!!」」

優の叫びに合わせて二人は駆け出し、優は目を伏せながらヴァジュラの死角へ入り、脚へと鉄パイプを突き刺す。

 

ギャアオォ!!

 

痛みよりも刺されたことに驚いたのか、ヴァジュラは声を上げる。それで自分に注意を引け、ナズナとカケルの逃げる時間を稼げると思った優。

だが、実際は見通しが甘かった。

優の1撃に怒ったのか、ヴァジュラは体を青白く発行させる。

多数の本で知識を深めた優でも、荒神のことはよく知らなかったのが、敗因だった。

 

ドドゥオーーーンッ!!!

 

無数の稲妻がヴァジュラの周りを包み、咄嗟に後ろに跳んだ優も捉え、優は体を走る電流に痙攣を起こし、瓦礫の壁に叩きつけられる。

「ぐあっ!・・・かはっ・・・!!」

痺れる体を必死に動かそうとするが、彼はその場で動けないでいる。それより動いているものに興味があるのか、ヴァジュラはその視線を走るカケルとナズナへと向ける。

その行動に、最悪の事態を理解した優は、より一層体を動かそうと、その場でもがく。

「あ・・・、う・・あ・・・。うあ・・!!」

痺れは叫ぶ言葉も奪い、優の声は二人に届かない。

やがて、世界がスローモーションになったようにコマ送りとなり、ヴァジュラの爪は、走るナズナへと振り下ろされる。

そしてそれを庇う様に間に入ったカケルに驚くナズナ。それを最後に、二人の姿は、優の前から消えた。

 

ザシュッ!!

 

「う・・ううぅぅぅあ、ああぁぁぁっ!!」

苦悶の叫びは無常に響き渡り、優の大切な生徒の未来は、あっけなく潰えた。

そして優の方も、そのショックか稲妻のせいか、胸を押さえて声を2,3度洩らしてから、気絶した。

 

オウガテイルが霧散していくのを確認してから、正嗣は口に溜まっていた血の塊を吐き出す。

「はぁ・・はぁ・・、げっ・・ほ!!・・・・・・くっそぅ・・」

膝に手をついて震える体を支えながら、血溜まりになってしまった仲間達を一人ずつ確認していく。

「はぁ・・はぁ・・うっ!こんな・・・・、ことなら、早く・・・ゴッドイーターになっとくん・・・、だった」

目をギュッと瞑って悔やんでいると、また新たな敵が顔を出す。

グルルルッ!

「・・・・・ちったぁ、休ませろよ・・・」

そういって手に持ったナイフを構える。しかし折れて刃がなくなっているのを目にしてから、つい笑いが出てしまう。

「ははは・・・。待った、無しだよな?」

グリュアァ!!

ガァンッ!!

無抵抗に吹っ飛ばされた正嗣は、突き出ていた配管に背中から抉られ、腹から血を吹き出す。

「かはっ・・あっ・・・・・・!!・・・・・あぁ、く・・・そ・・」

貪ろうと近付いてくるオウガテイル。その口が大きく開き、正嗣の右腕を喰い千切る。その痛みに、少しだけ苦悶の表情を見せたが、その後壊れたように笑いをこぼす。

「はっ・・ははっ・・・ははははははっ!」

感情のない目で見てくるオウガテイルに、口の端を浮かせてから、正嗣は最後の言葉を放つ。

「地獄に・・・・・、付き合ってもらうぜ・・・」

そして、

 

ドゥオオォォォォォンッ!!!

 

オウガテイルの口の中が破裂し、その巻き添えとなった正嗣も、下半身を置いて吹っ飛び、意識を空へと奪われた。

(・・・・・・・・・渚・・・・・)

 

生き残ったトレーラーの荷台を、数匹のオウガテイルがこじ開ける。その暗がりの中に、益恵が黙って座っている。

息を荒げながら近付いてくる敵に、益恵はゆっくりと立ち上がり口を開く。

「あんた方神にとって、わしらは不必要になった異物かもしれん。じゃが・・・わしらにも、人間にも抗う権利は・・・ある!」

その気迫に驚いてか、少しだけ後ろへ下がるオウガテイルを見回してから、フッと笑んでから、何かを握った右手を上げる。

「子供たちだけを逝かせる訳にはいかん。・・・・あんたらも、本当に神か、閻魔さんに判断してもらおうぞ!」

カチッ

手元のボタンを押してから、ゆっくりと目を閉じる益恵は、優とミコが、小さな子供を抱いてやってくるのを想像する。そして、一筋の涙を流す。

「優や、ミコや・・・。約束を守れん・・・・婆を、許しておくれ・・」

 

ズガァーーーーーーーーーーンッ!!!!!

 

轟音と共に、その辺り一帯を巻き込んで、爆発が起こる。益恵の長い長い人生が、幕を閉じた瞬間だった。

 

虚ろな意識の中、ゆっくり目を動かすと、自分の隣に動かなくなったカケルを確認してから、ナズナは自然と涙を零す。

「・・・・・ばかぁ・・・。あたしなん・・か、か・・ばって・・・・。しん、じゃ・・う・・・・・なんて・・」

ほとんど力が入らなくなった手を、そっと伸ばして、数分かかってから、カケルの投げ出された手に重ねる。

「あたし・・・・・・・・・・・、すき・・・だっ・・・たよ?・・・・・・カケ・・る・・・・・・」

例え届かない言葉でも、言ったことに満足したのか、ナズナは笑顔を作る。そして、その瞳から、光が消えていった。

 

ズリッ・・ズリッ・・

意識の戻らない優を引きずりながら、多くの仲間達の屍を踏み越えて、ミコは自分の傷も疲れも無視して、前へと進む。

おそらく、自分たち以外誰も生き残っていない。それに気付いていても、考えないようにしているミコ。ナズナとカケルの死体を見て、十分すぎる程に絶望はした。今は最愛の人と生き残るためだけに、足を止めるわけにはいかない。

「はぁ・・はぁ・・。・・・ちょっと・・・休んで、いいかい?」

「・・・・」

返事の返ってこない優に笑いかけ、目の前に見えた廃ビルへと入っていく。

適当な部屋を選んでから、ミコは担いでいた優を寝かせる。それから、だらんと垂れ下がった自分の左腕を見つめ、大きく深呼吸する。

(左腕はもう使えない。・・切り落とすか・・?だけど肩から上は動くし・・)

ふと優の顔を見つめてから、優しく微笑んでみる。

「片腕の嫁なんて、嫌だよな?優・・」

そう言ってから、腰のバックから新しい包帯を取り出し、口と右手を使ってきつく縛るように巻く。

一段落してから息を吐き、再び移動の為に立ち上がるミコ。抱きかかえるために優の手を取ったところで、

 

ガガァーンッ!

 

「なっ!?」

部屋の壁が壊れたかと思ったら、そこからヴァジュラがゆっくりと顔を出す。首を振ってから砂埃をはらい、ゆっくりとミコに目を向ける。

「くっそー。元々大型なんかと、戦えるわけねぇってのに・・・・」

咄嗟に引き寄せた優を後ろに隠し、廊下への出口を一瞬だけ視線を流して確認する。

「遠いか・・・。じゃあっ!!」

咄嗟に落ちていたものを蹴り飛ばし注意を引いてから、優を抱いたまま背中越しに窓を割って、飛び出る。すぐさま起き上がって走り出すが、部屋の中が発光したのに気付いた時、

 

ギャァァーーンッ!!ドォォーーーーーーーーーンッ!!!!

 

廃ビルを二分する程の巨大な稲妻で吹き飛ばされ、ビルは倒壊した。

 

瓦礫の中の空間で、ザリッザリッという音に、ミコはゆっくり目を開く。周りに視線を巡らすと、瓦礫に埋もれた中に閉じ込められたと理解する。

そして、音の正体に目を向けてから、顔をしかめる。

空いた隙間の中を確認するように、ヴァジュラが手を突っ込んできていたのだ。

「あんた・・・・・、随分としつこいんだねぇ・・・・・、っ痛!」

文句を言ってから気付く。彼女の右足が、大きな瓦礫の下敷きになり、痛みだけ残して感覚を失っていた。

「くっそ・・・、はっ!優は!?」

自分のことに気を取られて忘れていた存在を、ミコは慌てて探す。そしてそれはすぐ隣にいたと見ると、ホッと胸を撫で下ろす。

「優・・・・・、良かった。あんたは、無事みたいだね・・」

ミコが盾となってか、優は特にケガもなく、今だ意識を失ったまま眠っている。

それでも、まだ事態はよろしくない。

どうあっても逃がさないと、ヴァジュラはすぐそこにいるのだ。

だが、ミコは腰に仕込んだナイフを抜いてから、不敵に笑って見せる。

「よう!荒神!!あたし達はまだ、生きてるよ!」

わざとらしく大きな声を上げると、それを確かめるように1度手を引いてから、ヴァジュラが目を隙間に押し付け覗いてくる。

「バーカ!そいつを・・・・・・・、待ってたよ!!」

そう言ってミコは大きく右手を振りかぶり、ヴァジュラの目に向かって、ナイフを投げつける。それは真っ直ぐヴァジュラの目に吸い込まれていき、鈍い音を立て突き刺さる。

 

ギャアァァッ!!!

 

旧式であっても、対荒神兵器。まさかの痛みに驚いてか、ヴァジュラは暫くその場を暴れまわってから、どこかへと走り去った。

「は、はは・・・。弱者が、黙ってやられると思うなよ・・・」

そんな自分の声をかき消すように、遠くから徐々に近づいてくるヘリの音。いつの間にやら夜だったのだろう。瓦礫の隙間から入ってくるいくつもの光に、ミコは大きく息を吸って声を張り上げる。

「誰か・・・、助けてくれーーーー!!!」

 

 

 

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