魔法ってこんな殺伐としたものだったっけ?   作:納豆坂

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ep1

 ふと気づくと真っ白な部屋にいた。

 見覚えなんてあるはずもなく、そもそもこんなところに来た記憶もない。

 

「おぬしは死んだんじゃよ」

 

 突然聞こえてきた声に振り返ると髭面に貫頭衣を着た、いかにも神らしいじいさんが立っていた。

 

「そーなのかー。で?」

「仮にも神であるわしに対して、で?とはなんじゃで?とは。まあわしは忙しい身じゃからの、今回は不問にしてやるわい。さて、お前の現状を簡単に説明してやる。適当な能力をやるからどっか転生しろ」

 

 わかりやすいが適当すぎる説明だな、おい。

 威厳とかなさすぎだろ。

 

「じいさんなんかやらかしたのか? 転生っていったら神のミスで死んだうんぬんがテンプレだろ?」

「神がミスなんぞするわけないじゃろ。まあ理由は簡単じゃ、単なる暇つぶしじゃよ」

 

 それもまたテンプレなんだがな。

 

「仲間を集めて塔でも登ってじいさんをバラバラにすればいいのか?」

「それをやっていたのは斜向かいの世界の神じゃ。わしはそんなことはせん。まあ、お前の新しい人生を面白おかしく観察はさせてもらうがな」

 

 変なじいさんに人生を観察される。

 どんなプレイだよいったい。

 俺の業界ではそれはご褒美とは言わんぞ。

 

 ……まあ自称神に観察されたところでどうとも思わんが。

 

「まあ大体のところは理解できた。んで俺はいったいどこに転生するんだ?」

「話がはやくて助かるの。お前が転生するのは魔法が存在する世界じゃ」

 

 魔法ね。中世系のファンタジーな世界なのか?

 

「了解。んじゃさっさと転生でもなんでもしてくれ」

「気の早いやつじゃのぉ。まだおぬしにやる能力がなんなのかいっとらんじゃろうが」

「気にならないといったら嘘になるが、回りの白が眩しくて目がチカチカする。とりあえずもうここからには居たくない。能力の説明はあとで文書で送ってくれ」

「まあいいじゃろう。それでは送るぞ。精々わしを楽しませるんじゃぞ」

 

 そんなじいさんの言葉と共に俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 意識を取り戻すと、自分の部屋にいた。

 住み慣れた我が家。

 ただ一つ、窓から見える景色が今までとはまったく違うということを除けば。

 

「夢じゃないんだな」

 

 ベッドから降りると目線がやけに低いことに気がつく。

 部屋の片隅にある姿見を覗くと小学1年生ぐらいの俺がいた。

 

「なんで縮んでるんだよ……」

 

 それは高校生探偵の専売特許であって、単なるフリーターであった俺の仕事ではない。

 いや、高校生探偵の彼も別に縮むのが仕事というわけではないが。

 

 まあ考えようによっては、生まれてくるところから人生のやり直しをするなど、20歳を過ぎた俺にとって罰ゲーム以外の何物でもない状況に陥るよりは、現状のほうがまだましであるとも言える。

 

 転生先が住み慣れたワンルームであることからも家族などはいないのだろう。

 見知らぬ世界に一人というのは不安だが、それはそれである種のメリットがあるわけだからまあ問題ないだろう。

 生活費やらの諸問題さえ解決すればメリットのほうが大きいかもしれないしな。

 

 

 現状に納得したところで部屋の中を見回す。

 窓から見える景色など以外にも色々と変わったことがあるようだ。

 

 まず本棚からラノベや漫画がごそっとなくなっている。

 微妙に残っているものもあるから、ここはかつて暮らしていた日本の所謂パラレルワールドという扱いなのだろう。

 なくなった本はこの世界には存在していないと考えれば納得できる。

 

 そしてクローゼットの中身。

 ものは同じなのだがサイズが今の体にあわせたものになっていた。

 なんというか、割と親切設計なやつだなあのじいさん。

 

 最後に、テーブルの上に封筒と箱。

 わりと分厚い封筒を開けると、中からは私立聖祥大附属小学校の入学案内、通帳とキャッシュカード、住所が変わった転生前の俺の免許証、そしてじいさんからの手紙が入っていた。

 

 転生前の俺の免許証が入っている理由は分からないが、まあ親切設計なじいさんのことだからなにかしらの意味があるのだろう。

 まあ手紙を読めば分かるだろうと思いとりあえず考えを保留して手紙を読むことにした。

 

 

 

「なるほどね……」

 

 とりあえず衣住食に困らないだけの金が用意してあること。

 俺は兄弟二人で暮らしいるという設定になっていること。

 箱の中にはデバイスという魔法を使うための補助具というものがはいってるということ。

 そして最後に俺に与えた能力について書かれていた。

 ちなみに転生前の俺の免許証というのは、今の俺の保護者という設定であり魔法を使えばその姿に変身できるらしい。

 小学生じゃ買い物とか大変だろうから車とバイクを用意してあるから適当に使えと書いてあった。

 

 ……。

 

 じいさんまじ親切。

 

 

 

 さて、俺のもらった能力――生か死か〈デッドオアアライブ〉――は簡単に言えば心が折れない限りは死なないというもので、腕が吹き飛ぼうがどうなろうが心が折れない限りは戦闘が継続できるというものだ。

 ちなみに生きている限りは――それなりに時間を必要とするし痛みはきっちりあるが――怪我などは完全に治癒するらしい。

 痛みで気絶すると致命傷なら普通に死ぬので、死にたくなかったら痛みに耐えてがんばれ!とも書いてあった。

 

 

 ……。

 

 いや、確かに魔法が存在する世界だとはじいさんが言ってたから知ってたよ。

 だけどさ、転生してみたら小学生で、住環境も転生前とほとんどかわらないんだからもっとほのぼのとしたものだと思うじゃん。

 ご近所のトラブルをこっそり魔法で解決――みたいなさ。

 なにこの戦闘前提の能力。

 魔法で戦争でもしてるんですか?この世界は。

 あれか、今までの親切設計はこの殺伐とした世界でじいさんの暇つぶしが少しでも長引くようにするためのものなのか。

 

 先行きの怪しさにすでに心が折れかける俺であった。

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