フェイトと別れた後は予定通り月村邸で夕食をごちそうになり、契約――正直どうでもいいので内容はちゃんと覚えていない。夜の一族とやらの不利益になるようなことをしなければいいだろうとは思っている――をした。
まあそれで終ればよかったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
今一つ俺のことが信用できなかったそうで――契約したっていうのに……――月村姉妹に血を吸われることになった。
まあそれだけならいい。正直献血と感覚的にはかわらないからな。
問題は、忍さんが俺の首筋から血を吸ったということだ。
なんか柔らかいものが当たるし、あったかいし、良い匂いするしで赤面してしまったのは言うまでもない。
まあそれも百歩譲っていいとしよう。
だがなぜかすずかが姉に対抗意識を燃やしてしまったらしく、忍さんを俺から引き剥がすと力いっぱい俺を抱きしめて血を吸い出したのだ。
……正直たまりません。
いや別に俺はロリコンというわけではない。
なんというか……前世の年齢も考えればロリコンかもしれないが、今の俺は8歳だ。
そのため女性の好みが年齢相応になっているようで、まだ二次成長も迎えてないようなすずかになにかと反応してしまうわけだ。
だから俺はロリコンではない。
ちなみにいつもは輸血パックから血を吸っていたすずかにとって、直接血を吸うというのは初めてだったそうだ。
すずかの初体験。
こういうとなかなか背徳的で卑猥だが、俺にとってはそんな甘いものではなかった。
8歳児から普段輸血パックから吸ってるのと同じ量の血を吸えばどうなるのか?
答えは簡単で、貧血になるに決まっている。
そんな顔色の悪い俺を心配した忍さんは、月村邸に宿泊することを勧めてくれた。
その時は素直にありがたいと思ったのだが、俺がおかれている状況を考えるとあれは狡猾な罠だったと言わざるをえない。
ちなみに俺の今の状況はといえば……。
すずかのベットで二人で寝てる。
一応謹んでお断りさせてもらったのだが――まあ本当に自分が夜の一族だと受け入れてくれているのか不安だったのだろうな――すずかの熱心な説得に俺が折れる形になった。
想像してみてほしい。
目に涙を浮かべ、こちらを不安そうに見つめてくるすずか。
……これを断れるのは真性の鬼畜だけだろ。
姉はにやにやこっちをみているだけで完全な役立たずだし。
ふと、寝ているであろうすずかに目を向ける。
母親の胸に抱かれる赤ん坊のような、そんな安心しきった顔で眠る少女。
血を吸われること。一緒に眠ること。
この程度のことでこの顔が見れるのであれば、貧血や俺の羞恥心など軽いものだろう。
すずかは文字通り人とは違う存在なのだから。
これはすずかがお風呂に行っている間に忍さんから聞いた話なのだが、すずかは夜の一族に生まれたという運命を呪い血を吸うという行為に忌避感をもっているそうだ。
そんなすずかが俺から直接血を吸うということは、俺の信頼をためすという以上に俺への信頼の表れだろう。
「これからもずっとそばにいるさ」
そう言葉をかけながらすずかの頭を軽く撫で、俺はすずかに背を向け目を閉じた。
「……ありがとう」
そんなすずかの言葉を聞こえないふりをしながら。