じいさんからもらった能力に、どうにも殺伐とした未来しか想像できない俺だったが、とりあえずそれは今考えることでもないだろうと思い直し考えを保留することにした。
……今後もどんどん保留する事柄が増えてきそうな予感もあるがそれも保留することにする。
気を取り直し箱を開けると、中に入っていたのは某林檎製の――転生前には存在していなかったはずの青い――携帯電話だった。
一緒に入っていた説明書を読むとこれがデバイスらしい。
携帯電話型のデバイスなのか、デバイス機能付の携帯電話なのか悩ましいところだが、5分ほど考えたところでどっちでも同じだということに思い至った。
さてこのデバイスなのだが、自己修復、自己進化、解析機能、通話料無料、パケ放題、通信速度1Gbpsな上にどこでも通話可能となんとも高性能。
魔法まじ万能。
そんな訳で早速説明書に従い起動してみることにした。
「マスター認証棚橋誠。デバイスに個体名称を登録。名称バルムンク」
〈認証完了。棚橋誠をマスターとして登録。バルムンク起動します〉
さて、起動したわけだが説明書に書いてあったのはここまで。
説明書といっても起動方法とセールスポイントが書いてあるだけのやけにインクの薄いコピー用紙1枚だったし。
「つーかこれどうやって使うんだ?」
〈とりあえずセットアップって言ってみてよ〉
「こいつ……しゃべるぞ……」
〈インテリジェントデバイスだからそりゃー喋るよ。あ、別に喋らなくても念話って言って考えるだけでも通信できるからね。今は家の中だから平気だけど、外でやると独り言で妄想全開な痛い人って思われちゃうから念話使ったほうがいいと思うよ〉
自称神のじいさんからもらった訳だし、まあ喋ったところでおかしくはないのだが、このフランクな話し方はなんなのだろう。
デバイスってみんなこんなもんなのか?
「デバイスってみんなお前みたいな話し方なのか?」
〈神様製の特注品だからねー、他の子たちとは訳がちがうんだよ〉
えっへんと、無い胸をはる幼女を幻視した。
「まいっか。とりあえずセットアップ」
〈バルムンク、セットアップ〉
バルムンクの言葉とともに光に包まれる俺。
光が晴れるといつの間にやら青い学ランを着ており、手には青色の刀身をしたナイフのようなものを持っていた。
「なんだこの格好? 学ランアーマーか? それにこのナイフなんだよ?」
〈学ランアーマーが何かわからないけどその服はバリアジャケットって言って、分かりやすく言うと魔力耐性持ちの装備ってとこかなー。ナイフは戦闘態勢でのあたしの本体だよ」
学ランアーマーじゃないならなぜ青い学ランなのか小一時間。
〈バリアジャケットは基本的に本人の意識によって形が変わるから、マスターの意識にその学ランアーマーってのがあったんじゃないのかな?〉
ってことは1秒間に100発のパンチを繰り出せるあれになる可能性もあったわけか。
ちなみにあれの1秒間に100発っていうのは、青銅の拳の速さをマッハ1、マッハ1=約300m/s、相手との距離が1.5mと考えたときに繰り出せるパンチの数っていう考え方らしい。
どうでもいいけど。
「バリアジャケットについては分かった。んで他に何ができるんだ?」
〈えっとね――〉
バルムンクから語られる魔法の数々は俺の想像通り殺伐としたものだった。
射撃、砲撃などの遠距離魔法に始まり魔力を固めて刃にした近接魔法、拘束魔法に戦場をつくる結界魔法。
他にもいろいろあったわけだがどう考えても何かと戦う未来しか見えてこない。
「なあ、魔法って戦うためだけのものなのか?」
〈んー違うよー。お話合いのためのものって王様が言ってた〉
その王様ってのは確実に頭に魔がつくな。
「まあいいや。んで俺は今言った魔法全部つかえるのか?」
〈ちょっとまって、今調べてみるね。――んっと一応全部使えるみたいだけど、使えるってだけみたいだね〉
「分かりやすくいうと?」
〈集団で射撃魔法つかうのが精々ってレベルかな。何の策も無しに一人で戦ったらすぐ死んじゃうね〉
「……まじか」
そんなレベルでがんばれとかあのじいさんマジなんなの?
〈大丈夫だよマスター。そんなその他大勢が精々なマスターのための機能もあたしにはちゃんとついてるから〉
その他大勢とか地味に傷つく。
「その他大勢な俺でもがんばれる素敵な機能ってなによ?」
〈カートリッジシステムって言って、魔力を込めた特殊な弾丸を炸裂させて魔力をブーストする機能だよ。リスクはあるんだけどマスターならつかいこなせるよ!〉
俺なら使いこなせるリスクとか嫌な予感しかしない。
「そりゃすごいな。んでそのリスクってどんなの?」
〈マスターぐらいの魔力を精鋭レベルまでブーストすると高濃度の魔力がオーバーフローして身体に影響を与える恐れがあるってとこかな」
「具体的には?」
〈すっごい痛い〉
確かに俺のじいさんからもらった能力的にその程度のリスクならギリギリ許容範囲だろう。
むしろ相手から攻撃を受けて予測不能なダメージをうけるよりは実害は少ないのかもしれない。
「えっと……、それ以外に方法はないのか? 例えば修行すると魔力が多くなるとかさ」
〈一応大魔導師養成ギプスっていう魔力的負荷を絶えずかける機能はあるよ。ついでに言えばマスター自身の魔力が増えれば必然的にオーバーフローも減るから戦闘中の負担も減るはずだよ〉
「お、それいいじゃん。それでいこう!」
〈まあ魔力的な負荷って言っても身体に影響が無いわけじゃないんだけどね。割と痛いぐらいのレベルかな〉
神死ね。
「つまり戦闘時だけすっごい痛いのを我慢して戦うか、普通に生活してるときも痛いけどいつかは楽になる日が来るかの二択ってことでいいのか?」
〈その認識で間違ってないよー。まああたしにはサポートしかできないわけだし、どうするかはマスターが決めてね〉
「まあ、その二択なら負荷を選ぶしかないだろ。いつの日か、そういつの日かリスク無しで戦える日が来ることを信じて!」
〈了解マスター。んじゃ早速大魔導師養成ギプスを起動するね。まずはレベル1からねー〉
「よっしどんとこい!」
……レベル1はタンスの角に足の小指をぶつける程度の痛みでした。