魔法ってこんな殺伐としたものだったっけ?   作:納豆坂

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ep9

 捕捉していた石は月村邸の庭にて極々あっさりと見つかった。

 夜の一族の屋敷ということで変な念とか有りそうだし、また昨日のような犬がでてくることもありうると考えていたのだが杞憂だったようだ。

 

 まあ問題があったほうが良い訳ではなく、なにもないならそれに越したことはないわけで、ちゃっちゃか回収した訳だが……。

 

「ジュエルシードを渡して」

 

 草むらから野生の幼女が現れた!

 

  どうする?

 

    たたかう

    どうぐ

 ニア はなす

    にげる

 

「いや、渡すことは吝かでも無いんだが、そっちの目的にもよるかな」

 

 正直平穏のためってのが主目的であり、回収した石がなにやらいろいろと使い道がありそうなのはあくまで偶然の産物だ。

 そんな訳なので、少女の目的次第ではぶっちゃけ渡してもいいとは思っている。

 

 ……こんな露出度の高い美少女に恩を売れる機会なんてあんまり無いだろうし。

 

 とまあこんな感じで目的を聞き出そうとした俺だったのだが、彼女の返答は魔力弾だった。

 

「渡してくれないのなら、力ずくでも……」

 

 あの、俺あげてもいいって言ったよね?

 日本語わかりますかー?

 殺してでも奪い取るが許されるのはロマンシングなあれの中だけですよ。

 

「まったく……。人の話ちゃんと聞けよ! バルムンク、封時結界展開!」

〈オッケーマスター〉

 

 こんな風に始まった初めての対人戦な訳だが……。

 これだけははっきりと言える。俺は無力だ。

 

「なあ、俺とあの子の魔力量の差ってほとんどないはずだよな? そういう風になるよう色々と耐えてきた訳だし」

 

 カシャンカシャンカシャンカシャン――

 

〈そうだよー。魔力量だぇならほぼ同じ。むしろマスターの方が多いぐらいかな〉

 

 カシャンカシャンカシャンカシャン――

 

「じゃあなんで俺耐えてるだけなの? つーか電気っぽいのは魔法ってことで理解できるけど、俺の知ってる魔法と違うんだけどあの子の」

 

 カシャンカシャンカシャンカシャン――

 

〈だってマスター所詮その他大勢だもん。全ての魔法を使えるってだけで使いこなす才能なんてないんだからしかたないよ〉

 

 え?

 

〈あの子と同じ魔法を同じ魔力量で使ったとして、マスターとあの子じゃ多分何倍も威力に差が出ると思うよ〉

 

 え? え?

 

〈才能ってやだねー〉

 

 ネー。

 

「俺頑張ったじゃん! すげぇ頑張ったじゃん! 何? 全部無駄? 無駄だったの?」

 

〈現実は厳しいんだよマスター。マスターの努力はすっごい無理すればってのが無理すればってなったぐらいだからね〉

 

 カシャンカシャンカシャンカシャン――

 

 ああそうですか。

 だからさっきからカシャンカシャンってずっとリロードしてるのね。

 俺の才能じゃ絶えずカートリッジ使って防御しないといけないってことね。

 

 ……泣いていいよな。

 

〈でもマスター、あの子魔力が切れたみたいだよ! チャンスチャンス!〉

 

 チャンスっていうけど、多分どう考えても俺の方が満身創痍だぞ?

 全身に痛みを感じるし、正直左腕はさっきから感覚が無い。

 全部カートリッジのオーバーフローでのダメージだけどな。

 

 ……まあ動けるんだけど。

 

「バルムンク、バリアジャケット解除」

〈え?〉

 

 バルムンクを待機状態に戻し、肩で息をする少女へと近寄る。

 

「君じゃ俺には勝てないよ。とりあえず話をしようか」

「……どういうこと?」

「さっきも言ったけど、俺は別にこの石を集めているわけじゃないからね。危険そうだから回収しているだけだ。つまり欲しい人がいるなら譲ってあげてもいいってことだよ」

「じゃあなんで渡してくれないの?」

「どうして必要なのか聞きたかったからだよ。危険だから集めていたものを、欲しいってだけ聞いて渡したら危ないだろ?」

「……ジュエルシードを母さんが欲しがってるから」

 

 こんな石を集める理由が母さんが欲しがっているからね。

 それだけしか言えないのは、それだけしか「言えない」からなのか、それともそれだけしか「知らない」からなのか。

 

 まあ後者だろうな。

 

 こんな危険なものの回収に少女を向かわせる。

 さらに言えばこの石がこの街に出現したのは昨日のことだ。

 それを「回収」ではなく「欲しがっている」という彼女の母親は多分碌なやつじゃないだろう。

 どう考えても渡していいとは思えない。

 

「じゃあこうしよう。俺はこれから先もこのジュエルシードっていったかな?こいつを集める。さっきもいったけどこの石は危険なものだからね。んで君のお母さんと直接交渉して譲るか決めるよ。それならいいだろ?」

 

 少女は少し考えるそぶりを見せたが、やがてコクリと頷いた。

 

「まあこれからは見つけたら早い者勝ちってことでいいんじゃないかな?俺が回収しても君が回収しても結果はそんなに変わらないんだし。無駄に魔力を使う必要もないでしょ」

「……うん。それでいい」

「じゃあそれで決まりっと。俺は棚橋誠、誠って呼んでくれ。よろしくな」

 

 名前を告げ、手を差し出す。

 

「マコト……、うん。フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 

 差し出した俺の手をフェイトが握り返してくる。

 

「じゃあまたな、フェイト」

「またね、マコト」

 

 フェイトが空中へ飛び上がると姿が掻き消えた。

 

「戦闘回避!」

〈ねえマスターなんで見逃したの?〉

「フェイトが……悲しい目をしてたから……」

〈ダウト!〉

 

 チッ。

 

「本当の目的を知らされてないような捨石っぽいのの相手にしても仕方ないだろ。丸め込めるならそれに越したことはない。それにジュエルシードだっけ?あんなん正直いらねえし、単純に労働力二倍はおいしい。それにしてもちょろかったなー。まともな教育受けてきたのか心配になるレベルだぞあれは」

〈多分……受けてないだろうね。どんなに才能があっても、フェイトぐらいの年齢であの魔力技能は異常だもの〉

「つーかそれよりも、才能がないってどういうことだよ!」

〈すずかが帰ってきた気がするから結界を解くね〉

 

 確かに結構な時間フェイトと対峙していたから、帰ってきてもおかしくはないが……ごまかされないからな。

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