これもスパロボOGMDが面白いのが悪い!
と、言い訳は簡潔に
※今回はデュエル無し回です
とある朝、閑静な住宅街をすさまじいスピードで走り抜ける影が一つ
「―――――はあっ・・・はあっ・・・遅刻しちゃうよぉ!!!!」
セミロングの茶髪を靡かせ走る少女は、時折すれ違うご近所さんに挨拶をしながらも走るスピードを上げていく
「あたし、高倉水穂!花も恥じらう16歳☆ 今日から新学期で、学年も一つ上がって新しいスタートだって言うのに、寝坊しちゃってもう大変!だけど、こんな天気のいい日にはきっといいことあると信じて―――」
「いい加減にしろっ!!!このどアホっ!!!」
「痛ぁっ!?」
スパコーン!と快音を響かせ、水穂の頭にハリセンが叩き込まれる
ハリセンを振り下ろした黒髪の青年はハリセンを肩で担ぐと、やれやれとでも言いたげに溜息をつく
「な~にが“花も恥じらう16歳☆”だよ・・・いつの時代の少女漫画だ、お前そんなキャラじゃねえだろ。そもそも遅刻するような時間じゃないし、寝坊すらしてねえだろうが。つーか誰に説明してんだ」
「あたしのボケをことごとく拾ってくれる統夜さんマジパねえっす!」
「おう、もっと褒めろ褒めろー」
歩を止める事無く、気の抜けた応対をする黒髪の青年
彼の名は“南部統夜”、やや貧弱そうな細身の体に、藍色のフレームのメガネが特徴である
そんな彼ら二人は世間一般では幼馴染といわれる間柄であり、小中高と、こうして二人肩を並べて登校するのがいつもの光景である
「――――そういやさぁ、あたしら学年が変わるわけだけど、クラス分けってどうなってると思う?」
「クラス分けねえ・・・」
ちなみに彼らはこれまでの小中高の10年間、一度も違うクラスになったことが無かったりする
神の悪戯か気まぐれか、はたまた何者かの陰謀かと疑いたくなる
「あたし、もし統夜と違うクラスになっちゃったら・・・」
そう言って顔を俯かせる水穂を一瞥する統夜だったが、何かを察したようにすぐ視線を前に戻す
「統夜と離れちゃったら・・・・・あたし・・・・」
「宿題写させてもらえなくなる、か?」
「そうそう、あと授業中に寝た時のノートとかもね」
「・・・・なんかこう“寂しい”とか、もっと可愛らしい理由は無いもんですかねえ・・・」
「あたしに何を期待してんですかねえ・・・」
そう言ってフッとわざとらしく肩を竦める
ああそうだ、こいつはこんな感じの女だ・・・と、どこか遠い目をしている統夜
とはいっても、こんな風にふざけあえる幼馴染の存在は大事なんだとつい最近理解していたりする
「ま、今気にしても、しゃーないわよね。早く行こっか」
「言いだしたのお前だろ」
まだ一日が始まって大した時間もたっていないというのに疲労まで感じていた
―――――
――――――――――
―――――――――――――――
結論から言うと統夜と水穂は同じクラスだった
水穂は「ぃよっし!記録更新!」と言っていたが、こんなの雑談の小ネタにしかならないだろう
とは言っても、統夜自身どこか安心を感じていたりするのもまた事実だ
清桜学園
それが統夜達の通う学び舎である
全国でも上位に入るデュエリストの育成校であり、それ以外にもスポーツや勉学など様々な分野で優秀な人材が集まってくる学校だ。それに伴って生徒数も多く、部活動や委員会活動、校外への奉仕活動などもとても盛んである
敷地もとても広く、一年間通った統夜や水穂でも把握しきれていない部分が多々ある
自分達の教室を確認した統夜と水穂は2年1組の教室にたどり着く
席は黒板に張り出されていた。見たところ、あいうえお順でもなければ、出席番号順でもない。無作為に選ばれたのだろう
統夜の席は最後尾、水穂はその隣に腰を掛ける
席まで隣同士とは出来過ぎだろう、と彼が思うのも何度目だろう
「よう!統夜、水穂、また同じクラスだな」
前の方から歩み寄ってくる一人の男子生徒
髪は黒のショートウルフ、快活な笑顔を浮かべている少年である
「ああ、一人」
孤空一人(こぞら かずと)。一年の時、統夜達と同じクラスだった男子生徒であり、其の時以来何かと懇意にしている、気の置けない友人の一人だったりする
ポジション的にはそう、ギャルゲだったら女の子の評価を教えてくれる友達ポジションとでも言えるだろうか
教えてもらうほど親しい女子も多くないが
「うぇっへっへ、それにしてもこれまた夫婦で同じクラスとは、羨ましいもんですなあ」
「なんだよその笑い方、つーか夫婦じゃねえし。ただの幼馴染だ」
「今までどれだけの漫画や小説、ギャルゲでその台詞が使われてきたと思ってんだ!そういうのは最終的にくっ付く可能性が滅茶苦茶高いんだよ!」
ビシィッ!と勢いよく指を突き出し力説する一人に、統夜はため息交じりに
「――――よく考えてみろ・・・あの、水穂だぞ」
「・・・・・・ああ、すまん」
何かを察したかのように徐に謝る一人
「本当にすまん・・・お前の苦労も知らずに・・・俺はッ!!」
「いいんだ一人、分かってさえくれれば」
「統夜・・・」
「―――――随分と好き勝手言ってくれるじゃない・・・?」
「「っ!?」」
「ちょ~っと痛い目見てもらおっかな~?」
ゴキッ、と拳を鳴らし、笑顔で統夜達に向き合う水穂
「ま、まて水穂!」
「話せば分かる!だから――――」
「分かったわ、話し合いましょうか――――
―――――拳で♪」
「「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」
爽やかな朝の学園に、男二人の野太い悲鳴が響いたという
「酷い目にあったな・・・・」
「お前が夫婦とか言い出すからだぞ」
「お前が水穂の事言い出すからだろ」
あの後、学園でも五本の指に入るリアルファイト能力を持つと言われる水穂にボコボコにされた、二人は同時に深いため息をつく
「そもそも、夫婦って言うならオレらよりよっぽど相応しい連中がいらっしゃるでしょうに」
「ん?ああ、あいつ等か・・・」
「―――――なんの話してるの?」
後ろから声を掛けられ、振り返るとそこに立っていたのは、オレンジ色の髪からピンとアホ毛を立てた、一見すると女の子のようにも見える少年が、そしてその斜め後ろでは金髪ロングヘアの少女が不機嫌そうな表情で立っていた
「お!シンとルリルリじゃん。丁度お前らの噂してたんだよ」
「噂?何のこと?」
「お前らがまるでhへぶっ!!!!」
喋ってる途中、統夜の顔面に少女が投げた分厚いハードカバーがぶつけられる
「ルリルリ言うなって、いつも言ってんでしょうが!何?アンタは人の言葉も分かんないバカなの?死ぬの?」
「相変わらずキツイなぁ、ニックネームなんてちょっとしたスキンシップの一環だろ?ルリルリ」
「アンタねえ・・・」
「ちょっ!?ルリちゃん抑えて!」
怒りの形相で今のも殴り掛かりそうになる少女を必死に宥める少年
少年の名は高槻真(たかつき しん)、少女は天海琉璃(あまみ るり)
この二人も幼馴染といわれる間柄ではあるが、その形態は統夜達のそれとはまったく異なっており・・・
「つーかお前らもか!お前らも夫婦仲睦まじく同じクラスか!?この現在恋愛46連敗中の俺へのあてつけかよ!」
「なっ!?だ、だだ誰がふ、夫婦よ!!!バッカじゃないの!!!」
途端に顔を真っ赤に染めて目をそらすルリ
意識しまくりである
「夫婦ってどういうこと?ルリちゃん」
「う、うっさい!ばかっ!!」
「???」
一方のシンは訳が分からないとでも言わんばかりに、首を傾げるだけである
「見ろ、統夜!この初々しいリアクションを見せる女子に鈍感な男子!これこそが王道ってもんだろ!」
「ああ、そうだな」
「こういう関係って正直羨ましいよな」
「ああ」
「爆発すればいいのにな」
「ああ」
「フラレマンコンビが妬んでも、惨めなだけよ」
「「ぐはっ!!!」」
水穂が放ったその一言がクリティカルヒットとなったのか、二人はその場にガックリと膝をついて黒いオーラを放出し始める
まあ、すぐに立ち直るのだが
「――――そういや聞いたか?俺らのクラス、転校生が来るらしいぜ?」
「女子か?」
「女子だ」
それを聞いた途端、まるで何かに勝利したかのようにハイタッチを交わす統夜と一人
「その情報は確かなんだろうな?」
「ああ、情報通として有名な新聞部の奴が言いふらしてたんだ、間違いねえ」
「容姿とか、その他の情報は?」
「さすがにそこまでは分からん」
「二人とも、なんでさっきからそんなに嬉しそうなの?」
シンのその一言を聞いた二人は
「なんで・・・だと?」
「ああ、お前には分かるまい。常日頃から付き合っていない、と言っているくせに可愛い幼馴染とイチャイチャイチャイチャ・・・」
「そんなお前に、オレ達のようなモテない男が謎の美少女転校生にどれほどの期待を抱いているかなど・・・」
「「分かってたまるかぁ!!!!!」」
「うっさい!!!!!」
水穂の拳骨により「ぎゃふん!!」と言いながら床にたたきつけられた二人
「バカばっか・・・」
と、そこでチャイムが鳴った。朝のホームルーム開始のチャイムだった
周りのクラスメートが全員席に着くのとほぼ同時に教室のドアがスライドし、癖のある赤い髪が目立つスーツ姿の教師が入ってくる
「おーすッ!おはよーレディー達!ついでにヤローども」
「第一声がそれって教師としてどうなんだ・・・?」
「ゼナス先生、相変わらずね・・・」
ゼナス・ブラン。この学校の教師であり担当科目は数学
女好きで女尊男卑を地で行く男であるが、その気さくな性格から男子生徒からもあまり悪い感情は抱かれておらず、人望が厚い男でもある
「新学期初日から遅刻してるような奴はいねーな、関心関心っと。今年一年、俺がお前らの担任をすることになった、よろしくなー!」
特にレディー達、と最後に余分な一言を加えて軽快なノリで話を進めていく
統夜達は去年もこの男が担任だったので、このテンションにも慣れている。統夜が隣を見ると水穂が何処となく上機嫌に見えた
「――――さて、と。もう知ってる奴もいるだろうが、このクラスに新学期早々転校生が来ることになった!」
そんな言葉がゼナスから切り出される。するとクラスの一部がざわめきだした
知っている奴がいる、とは言ってもそこまで知れ渡ってはいなかったのだろう
「しかも、とびっきりの美少女だぞ!喜べヤローども!!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」
ゼナスの一言に教室中の男子のテンションがヒートアップする
やはりこういう事には期待してしまうというのが男の性というものだろう
「いやいや、転校生にいきなりプレッシャーかけてどうすんのよ」
正論である
「ではでは、テンションも上がってきたところで。入ってきていいぞ~」
「は、はひっ!」
そんな妙にうわずった返事と共に開かれたドアに、クラス中の視線が集中する
そこに立っていたのは、解けば腰ぐらいまでありそうな長さの髪をツインテール、どこか幼さの残る顔立ちで華奢なその体の身長は150センチ前後といった所だろうか
確かに美少女といっても過言ではないだろう
しかし、何故だかドアを開けたままの体制でビシッと固まっていた
「いつまでもそんなとこ立ってないで、こっちで自己紹介とかやってもらえる?」
「は、はいぃっ!!す、すいません!」
ぎぃぃ、と錆びついた金属が擦れるような音が聞こえるようなぎこちない動きで教卓の隣に向かう
その手足は同じ側が同時に動いており、見るからに緊張していることが分かった
その後ろでは既にゼナスが黒板に名前を書いていた
「え、えーっと・・・あ、安藤、彩音です!趣味はデュエルと、え~っと、その・・・・よ、よろしくおねがいしましゅっ!あっ・・・」
最後の一言で噛んでしまったことが余程恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして身を縮こませてしまう。その様子は小動物のようで男女問わず微笑ましい視線が送られる
特に男子からはその愛らしい様子に歓声まで上がっている
「へぇ・・・可愛い子ね~、良かったじゃない統夜。アンタああいうタイプの子、結構好み・・・・・・って、統夜?」
先程からあまりに無反応な統夜を訝しんだ水穂が隣を見ると、そこにあるのは、頬杖をついたまま、なんとも中途半端に静止したようにただ真っ直ぐ前を見据えている統夜の姿。
その視線の先にはアワアワと慌てふためいている転校生
そして水穂から見える統夜の頬は、赤い
「(これは・・・・)」
水穂の知る南部統夜という男は、何に対しても素直な反応を見せるタイプであり、自分好みの漫画やアニメのキャラクター、人気のアイドル、同じ学校の可愛い女子生徒などを見れば、普通に笑顔で反応していた
だが、少なくともこれまでの人生の中、統夜がこのような惚けた表情をしている所は見たことが無い
つまり
「(文字通り、本気で“見惚れた”ってこと、か・・・?)」
幼馴染の目新しい反応に、思わず笑みがこぼれる水穂
季節は春、新たな物語が幕を開ける
と、言う訳で終了しました第一話
今回一気に新キャラ大放出で混乱したらすみません・・・
とは言っても今回は顔見せレベルなので、再登場まで名前だけでも頭の隅っこに置いといてやってください
次はそんなに間隔が空かないと思います
感想、アドバイス等、よろしくお願いします