無気力ぐらし!?   作:蚤ー

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 今回は設定だのなんだの、横の話を書く予定でした。

 色々あって次話投稿のところで書いていた小説がブッ飛んでしまいました。初めて『執筆中小説から投稿する』をやって見たけど、間違ってないか心配です


べつのはなし

 ~巡ヶ丘市内警察署~

 

 

 爽やかな晴天、荒れ果てた街、そこら一帯を蠢く全滅した筈の警察隊。そして、何かを捜すように歩き回る『奴ら』の仲間入りを果たした警官隊に囲まれた施設、警察署。一階と二階を『奴ら』占領され、そこから先の三階から五階に生き残りの警官達が籠城している。そして、数名の警察官が二階を奪還するべく、『奴ら』となった先輩、後輩、同僚達との戦いを繰り広げている中、『署長室』では、

 

 「明確な意図をもってエッジを・・・ッ」

 

 「・・・しかし主張し過ぎず・・・ッ」

 

 二十代程の女性が『HGUCザク』とのコンマ数ミリの戦いを繰り広げていた。密閉された空間内で、ヤスリの荒さを変えながら丹念に表面処理を繰り返す。

 

 「400・・・600・・・1000・・・」

 

 「・・・不健全の頂です。」

 

 何時の間にか、その女性の後ろには服をボロボロにした若い警官が立っていた。この状況下で『いつもの』性格でいる女性に対して驚き半分呆れ半分の眼差しを向ける。

 

 「ぅえエ!?威君!?ダメだよ勝手に入って来たらぁ!一本の毛埃が限り無い絶望を・・・」

 

 「・・・」

 

 威と呼ばれた警官は、唐突に説教を始めた女性に呆れる。威は不安になり、女性に今がどういう状況かを問いただす。

 

 「・・・署長」

 

 「・・・それで、ん?何?」

 

 「何?じゃなくて、今がどういった状況か分かってます?」

 

 「今の状況?そりゃあ勿論。生物災害(バイオハザード)の真っ只中でしょ?」

 

 署長と呼ばれた女性は当然とばかりに威の質問をサラリとうけながす。流石に威はカチンときた為、前よりもキツ目に聞き返す。

 

 「ならなぜ動かないんですか?人の命より玩具の方がよっぽど大切ですか?」

 

 「段々口が悪くなるなぁ・・・。一つづつ答えると、『動かない』んじゃなくて、『動く必要がない』んだよね。」

 

 「・・・?」

 

 署長の言葉に威は眉をひそめる。署長は威に、言葉の意味を伝える。

 

 「うちの署ってさ~、意外と優秀な人ばっかなんだ~。リーダーの私がなんやかんや言わなくても自分で何とかしちゃうし、私が何か助けようとしても揃いも揃って『今はいい』って言うし。」

 

 「・・・」

 

 「こういう時、偉い人ってやる事ないんだね。」

 

 そう言った署長の目には、今回の混乱の発生から今に至るまでの自分の行動が映る。暴徒が署の中に入り込み、他の職員が次々と襲われる中、自分はその職員に連れられて安全な場所に行き、一時的に暴徒を鎮圧した後で皆に指示を出す自分の姿が署長の眼を通り、頭の中に入り込む。

 

 (・・・私が何もしなかったから・・・・・)

 

 「・・・そう落ち込まないでください。」

 

 「!」

 

 今まで静かに話を聞いていた威が突然に話始める。署長が驚くのを無視して威は話を続ける。

 

 「今は自分を責めても意味がありません。署長は署長らしく一般市民の平和でも願っていてください。じゃないとこっちのやる気に関わります。」

 

 「それに、今何人かの生存者がいるのはあなたに指示をされて階段の前に即席のバリケードを作ったからです。このおかげで下から逃げてきた人、もとから三階から五階にいた人・・・下の階を奪還するのに必要な人材を大量に確保出来ました」

 

 (・・・威君)

 

 署長は途端に目頭が熱くなり、涙が頬を伝いそうになる。それを堪えて、いつもの飄々とした態度を繕い、威に話し掛ける。

 

 「ハッハッハ!言われてしまいましたな~。威君時々ホントにスポ魂物の主人公に見えちゃうよ~。」

 

 「・・・こういった時にいつものフリをするのもいつも通りですね。『千鶴』さん」

 

 「・・・その呼ばれ方は懐かしいな~。学校を思い出すね。」

 

 威は、署長と同じ警察学校にいた時と同じ呼び方で署長を呼ぶ。二人は互いに、学校(地獄)での訓練の日々を思い出す。

 

 「・・・」

 

 「・・・」

 

 「・・・(思い出す)必要なかったね」

 

 「・・・ですね」

 

 「兎に角、署長は時と場を選んでいつも通りでいてくれれば結構です。自分は自分の持ち場に戻ります。それでは」

 

 威はそう言うと、署長室を後にした。部屋の中には、署長が一人残される。

 

 (・・・『何時も通り』、か・・・・)

 

 署長は威に言われた言葉を頭の中で反芻する。そして、目の前のザクに目をやるが流石に組み立てを再開する気にはなれなかった。ふと、今日が週末である事を思い出す。

 

 「本当なら、今日はあの子は休みなんだっけ?」

 

 署長はそう言うと、後ろの窓の向こうを椅子に座りながら見つめる。遠くにある為、肉眼ではわからないが方向が正しければ、署長は巡ヶ丘学院高等学校を見ている事になる。署長の脳裏に『顔に傷のある青年』と『首にチョーカーを巻いた女の子』の姿が揺らめく。

 

 「・・・マイブラザー君とフレンズオブブラザーちゃんは大丈夫かなぁ。」

 

 特に心配をしていない様子で署長、才谷千鶴(サイタニチヅル)は弟と弟の友人の安否を気にする言葉を呟く、そんな心配も杞憂に思えてしまう程、千鶴の見上げる空は爽やかに晴れていた。

 

 

 

 

 ~巡ヶ丘学院高等学校~

 

 

 「・・・・?」

 

 所変わって、巡ヶ丘学院の三階、2-A教室の中央。そこでは特に心配されていない署長の弟であり、二千文字当たりでやっと登場した本作の『主人公』、才谷都梅が自分の顔面に張り付く傷跡に違和感を感じて、傷のある頬を撫でていた。

 

 「どうした?」

 

 そして同じく、特に心配されていない弟の友人、柚村貴依は都梅の様子の変化に気づく。

 

 「いや、何でも。ただ・・・ジムが作りたくなって。」

 

 「・・・ガンプラ?」

 

 「はい。HGUCのを。」

 

 二人が何の変哲もない会話をしていると、都梅の耳に何者かの階段を降りる音が入り込む。それは貴依も同じらしく、貴依は音に近い方の扉を開けて外の様子を見る。そこには、

 

 「うお!?・・・何だ・・・貴依さんか。」

 

 「・・・えっと、私の知り合い?」

 

 上の屋上でへばっていた筈の胡桃がいた。後ろには、こちらを警戒して構える悠里もいる。貴依の方は、胡桃達の名前を知らないが胡桃達が自分の名前を知っている事に驚く。

 

 「いや、都梅に教えて貰ったんだ。私は胡桃。それでこっちは悠里だ。」

 

 胡桃は自分達の名前を貴依に教える。苗字?何それ?

 

 「そうか、胡桃と悠里だな。よろしく。私は・・・いいか。」

 

 貴依は自分の名前を胡桃達に教えようとするが、都梅に教えて貰っていることを思い出す。

 

 「・・・それはともかく、教室に入っていいか?いつ襲われるか分かんないし。」

 

 「そうだな、都梅。椅子と机もう二つ用意して。」

 

 「分かりました。」

 

 そう言うと都梅は『教室の外』に出た。

 

 「ゥエ!?ちょっと!?」

 

 「いやぁ、机と椅子がもう足りないし。」

 

 そこまで言うと、都梅は貴依の返事を聞かずそのまま別の教室に行ってしまった。

 

 「・・・・行っちゃった」

 

 「・・・パワフルな人ね」

 

 貴依と悠里はその背中を見て、互いに呟いた。その様子を見て、胡桃は前々からの疑問を口にする。

 

 「アイツ・・・慣れ過ぎじゃないか?」

 

 「慣れ過ぎ?」

 

 胡桃の言葉に二人は振り向く。胡桃は二人の無言の催促に押されて疑問を詳しく話始める。

 

 「何か・・・アイツはこういった『危険』に慣れてる気がするんだ。」

 

 「・・・・・『危険』ねぇ・・・」

 

 胡桃の言葉に悠里は今までの都梅の行動を思い返す。屋上に着いた途端に自分達に行った指揮。胡桃が扉を開けたことによって現れた『奴ら』への対応。どれを思い出しても訓練を受けているとしか思えなかった。

 

 「・・・貴依さんは何かs・・・・て・・・・」

 

 「・・・・・・」

 

 「・・・大丈夫?」

 

 「ヱ?アァ、ウン。全然。」

 

 悠里は、貴依は何か知っていないかと思い、貴依の方を向く。すると、貴依は顔中から冷や汗を流してどこか遠い目をしていた。よく見ると手足も小さく揺れている。その様子に胡桃と悠里は『貴依が何かを知っている』と確信を得る。だが、それよりも貴依の異常の方に意識が行き、二人共それどころではなくなった。

 

 「とっ取り敢えず深呼吸をしよう!恐怖を我が物にするんだ!」

 

 「それは波紋の呼吸なんじゃ・・・」

 

 「何でもいいよ!呼吸をすれば落ち着くのはどっちも同じだ!」

 

 胡桃と悠里は、人間の素晴らしさについて話し合いをしながら貴依の処置を始める。暫くして、貴依は正気を取り戻した。それを胡桃が確認すると、胡桃は悠里が貴依に向けて言った先程の質問をもう一度投げかける。

 

 「・・・あのぅ。」

 

 「・・・・何?」

 

 「さっきの質問何だけど・・・」

 

 そう言うと、貴依は腕を組み苦虫を噛み潰した様な顔をする。それだけの嫌な思い出が貴依の中にあると二人は悟る。

 

 「・・・やっぱいいよ。その気になったら話してくれ。」

 

 「・・・話すよ」

 

 「え・・・・」

 

 貴依はそう言うと、覚悟を決めた様に目を瞑る。そして、目を開けるとその思いを口にする。

 

 「・・・・今の混乱が起こる前から思っていたことでもあるし、聞かれたら話そうとも思っていたよ。さっきのは心の準備が済んでいなかっただけ。」

 

 「それで、見ていて分かったと思うけど主な原因は私なんだ。」

 

 そこまで貴依は言うと、心なしか淋しげな目で都梅の過去を話し始めた。

 

 

 

 

 七年前

 

 

 貴依の話によれば、都梅は昔、人よりも体の弱い奴だったという。何時も同級生から遅れをとり、体育の授業を休む事や、給食を独りで食べる事はザラであった。

 

 内気ではなかったが、どうやって話しかけても生まれながらの目つきで皆、寄り付かず友達ができる事はなかった。時には、気の荒い生徒に睨んだ睨んでないで絡まれた事もあったという。

 

 地方からの転校生という事もあり、周りの話題に着いて行けず、気づけば誰の目にも留まらなくなっていた。

 

 そんなある日、

 

 「・・・・」

 

 都梅はいつもの様に、家に帰って行く同級生達の背中を見つめていた。嬉々と話し合うその輪の中に入りたいとも思っていた。

 

 「・・・・!」

 

 一歩だけ、足を進めた。それっきり、体は動かず目の前を行く輪の群れに追いつく事はなかった。フラッシュバックで思い出す皆の『目』。いじめっ子にも、クラスのアイドルの目の中にも自分への恐れがあった。また、あの『目』をされたら。そう思うと、体の自由が効かなくなる。

 

 「・・・ッ」

 

 そうする内に、クラスメイト達の背はどんどん小さくなり、やがて消えた。これがいつもの日常だった。

 

 (・・・)

 

 (・・・また・・・・)

 

 「ねぇ。」

 

 「!?」

 

 正確には『昨日までの』日常だが。都梅が驚いて横を向くと、そこには髪が肩にかかる程伸ばした女の子がいた。女の子は、狼狽える都梅を気にも止めず話し続ける。

 

 「なんで怒ってるの?」

 

 「・・・へ?」

 

 「怒ってないの?」

 

 「ぜ、全然怒っちょらんよ!」

 

 都梅は驚きの余り、日頃から言わないように気を付けていた方言が出てしまう。都梅がしまったと思っていると、女の子は関心した様な声を出す。

 

 「へ~~本当だったんだ。別の県からきたっていうの。」

 

 「え!?噂んなっちょったと!?」

 

 「うん。イントネーションだっけ?なんか喋り方が変って言ってた。」

 

 都梅は自分の努力が取り越し苦労だと気づきショックを受ける。その様子を見て、女の子はクスクスと笑った。恥ずかしさの余り、都梅は赤面する。

 

 「ところで」

 

 「・・・?」

 

 「名前、何ていうの?」

 

 女の子に名前を聞かれ、都梅は慌て気味に自分の名前を伝える。

 

 「ツバイ・・・て言います。都「みやこ」に梅「うめ」で都梅です。」

 

 「ふ~ン。変なの。」

 

 教えた名前を変と呼ばれ、都梅は苦笑いをする。自分でも変な名前だという自覚があった為、何も言えない。

そこで都梅も女の子に名前を聞く。

 

 「あなたは?」

 

 「ん?」

 

 「あなたの名前は?」

 

 「私?私は貴依!柚村貴依!」

 

 女の子が自己紹介をした途端、後ろから女の子の名前を呼ぶ声が聞こえた。都梅が振り返って見ると、そこには何人かの同級生の姿が見えた。女の子はその声に返事をして、声のした方向に走って行く。その姿を見て、都梅は咄嗟にある事を女の子に問いかけた。

 

 「・・・・貴依さん!」

 

 「?」

 

 「・・・僕達『友達』ですよね!?」

 

 「・・・」

 

 その問いを口にして、都梅の頭は真っ白になった。もし『違う』と言われたら、それどころか答えてすらくれなかったら、その思いが都梅の中を堂々巡りする。何分、何時間にも感じられる三秒が過ぎた時、女の子が答えた。

 

 「うん!友達!」

 

 

 

 

 「・・・アレ?普通に良い話だけど?」

 

 「悪い所は特に何も・・・」

 

 ひと通りの話を聞いた胡桃と悠里がそれぞれの感想を言う。内容はどちらかと言えば『良い話』の類に入る筈である。話をした貴依も、話し始めた時の淋しい目ではなく、優しい表情になっていた。二人はどこに悪い所があるのか分からなかった。

 

 「問題は『遊び』の方なんだ。」

 

 「遊び?」

 

 「そう。『遊び』だ。」

 

 その言葉に二人は頭上に?マークを作る。遊びに問題があるとなると、危険な遊びをしていたという事なのか?その考えが胡桃と悠里の中で巡る。

 

 「・・・・どんな遊びなんだ?」

 

 「・・・そうだな。」

 

 そう言うと、貴依の目が再び淋しい表情になる。どうやら過去を思い出すとこの目になるらしい。

 

 「アレは、最早遊びじゃなくて修行だったな。」

 

 貴依はそう言うと、再び過去の話をし始めた。

 

 

 

 二度目の七年前

 

 巡ヶ丘市の郊外にあるとある公道。急なカーブと、斜度が40もあろうかという坂が続くとてつもない道だった。そして、その坂を

 

 「イイイヤッフゥゥゥ!」

 

 一台の自転車が駆け抜けて行った。しかもあろう事か、その自転車に乗っている輩は『手を離している』。迷いを捨てた自転車は尚も加速を続けていた。

 

 「・・・いさ~ん」

 

 「?」

 

 「待って~・・・貴依さ~ん・・・」

 

 「遅いぞー!都梅ー!」

 

 そして、その自転車を追う様に、もう一台の自転車が続いていた。その自転車に乗っている都梅は、手を震わし、息も絶え絶えであった。それでも都梅は自転車を漕ぎ続けた。目の前の自転車、そしてその自転車に乗っている貴依に追いつく為に。目の前がチカチカとしてきた頃、自分の乗っていた自転車が貴依の乗っている自転車に追いつき都梅は安心した。が、それもつかの間、貴依はとんでもない事を言い出す。

 

 「こっからブレーキ禁止~♪」

 

 「ええ!?」

 

 余りの提案に都梅は狼狽える。だが、貴依はそんな都梅の逃げ道を潰すかの様にある言葉を叫んだ。

 

 「破ったら絶交ね~♪」

 

 (絶交・・・・ツ!)

 

 『絶交』。この二文字が都梅の心に浮かぶ。もしそうなってしまったら、また自分は独りになってしまう。その恐怖が都梅の足を嫌でも前に動かした。

 

 (怖いけど・・・友達だから・・・友達だから!)

 

 都梅がそう思っていると、貴依達の目の前に一本のガードレールが見えた。もしこのガードレールに衝突すれば、怪我は免れないだろう。

 

 「・・・・・ッ!?」

 

 唐突に現れたガードレールに貴依は息をつまらせる。瞬間的に冷や汗が体中から流れ、目を見開く。

 

 「やっぱり禁止なーし!!絶交なーし!!」

 

 貴依はそう叫ぶと急ブレーキをかける。タイヤの甲高い悲鳴が辺りに響き、タイヤの焦げる臭いが貴依の鼻を突く。衝突の寸前、ガードレールにぶつかる一歩手前で貴依の自転車は止まり、貴依はため息をつく。その瞬間

 

 「あ・・・」

 

 「・・・え」

 

 貴依の視界の端に都梅の顔が『逆さ』に映る。貴依が、それがどういう事かを理解したのもつかの間、都梅の体は自転車と共にガードレールの向こう側に投げ出される。そして、都梅は茂みの奥に放物線を描きながら落ちていった。

 

 「つ・・・都梅ーーーーー!!!?!」

 

 「うああああぁぁぁぁぁ・・・・・」

 

 都梅の落ちた場所から、枝の折れる音、自転車の砕ける音、サリーの断末魔等、様々な音が響いた。

 

 以下ダイジェスト

 

 

 

 プールにて

 

 「息継ぎ禁止~♪」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 懐かしの回転遊具にて

 

 「足つくの禁止~♪」

 

 「AAAAAAAAAAAAA!!?!」

 

 

 

 雲梯にて

 

 「手使うの禁止ー♪」

 

 「スゴイ・・・あの子足で雲梯してる。」

 

 「あれ?でもあの子・・・泣いてない?」

 

 

 

 どの遊びも、命を失い兼ねない危険な物ばかりであった。それでも、どんなに怖くても、どんなに苦しくても、それを断る事が出来なかった。なぜなら、断れば『絶交』だから。友達を失いたくなかったから。断る事が出来なかった。そんな境遇だったが故に、人よりも多くの生と死(デッドオアアライブ)を彷徨う経験をし続けた結果、病弱な体は鍛えられいつしか超身体能力を見につける様になっていた。

 

 

 

 

 「・・・・」

 

 「・・・・」

 

 胡桃と悠里の二人は思った以上の危険な遊びに互いに押し黙る。何も言えなかった、最早いう言葉も見つからなかった。胡桃と悠里は『友達』の意味が一瞬分からなくなった。

 

 「まあ・・・うん。友情の形は人それぞれだし・・・な?」

 

 「え?・・あぁ、うん。・・・そうね。」

 

 胡桃と悠里は、苦し紛れの会話をし始めた。何かをしなければこの空気に押し潰されそうだったからである。

 

 「いや~あの都梅がな~。」

 

 「昔は体が弱かったなんて・・・嘘みたい。」

 

 胡桃と悠里がそこまで話すと、扉の向こうから都梅がやってきた。片腕に机と椅子を二人分抱えている。

 

 「スイマセン。遅くなりました。」

 

 都梅はそう言うと、抱えていた机と椅子を降ろして並べ始める。よく見ると、都梅の服は出て行った時よりも赤く染まっていた。それを見て、胡桃と悠里は呟く

 

 「・・・ホントに嘘見たいだよな。」

 

 「・・・うん。」

 

 「さぁ、どうぞ。」

 

 都梅に言われ、胡桃と悠里はおずおずと椅子に座る。都梅も椅子に座るが、隣にいる貴依の異常に都梅が気付き、話し掛ける。

 

 「・・・貴依さん大丈夫ですか?」

 

 「・・・・うん。」

 

 (貴依さんがまた碇司令みたいに・・・)

 

 都梅がそう思っていると、胡桃が慌てたようにまくしたて、貴依に話し掛ける。

 

 「だッ大丈夫じゃないだろ!?なんか顔色悪いしさぁ!そうだ!屋上で風に当たろう!そうしよう!りーさん!貴依さんを屋上に連れて行ってくれ!」

 

 胡桃に言われ、悠里は貴依を連れて屋上へと戻って行った。足音が消えたのを確認して、胡桃は安心のため息をつく。その様子を見て、都梅は?マークを浮かべる。

 

 「ところで・・・」

 

 「ん?」

 

 「なぜここに来たんです?まだ安全でもないでしょうに」

 

 「ああ、実はな・・・」

 

 そう言うと、胡桃は腕を組み、眉をひそめた。

 

 「お前と貴依が屋上を出てからの話だけど、あの後三人で話したんだ。」

 

 その言葉に、都梅は疑問を感じる。屋上にいた人間は胡桃、悠里、由紀、慈の四人だった筈である。

 

 「三人?四人ではなくて?」

 

 「今は由紀がまともに話せる状況じゃないからな。」

 

 「由紀さんが?」

 

 「ああ。・・・少し疲れたらしくてな。」

 

 「へえ・・・それで話ってのは?」

 

 「へえって・・・で、その話何だが・・・全員で屋上にいるか三階に行くかの話なんだ。」

 

 「へえ。」

 

 「結果的に三階に行く事になったんだけど、そうなるとやっぱり『奴ら』を倒さないといけないし、どれだけ『奴ら』がいるか分からないし」

 

 「へえ。」

 

 「・・・・倒した後も、『奴ら』が来ないように階段を封鎖しなきゃいけないし、流石に今日中に出来るとは思わないけど、そうなったら屋上のプチトマトだけじゃ餓死しちまう。」

 

 「へえ。」

 

 「・・・・話聞いてる?」

 

 「聞いてますよ?」

 

 「そうか・・・でだ。今から下の購買部に行って三階を制圧するまでの食糧をってこようと思ってな。」

 

 「へえ。」

 

 「・・・・」

 

 「・・・・」

 

 「いや、へえじゃなくて。」

 

 「え?」

 

 唐突に胡桃に突っ込まれ、都梅は声が上ずる。胡桃からしたらその反応の方がおかしいものなのだが。

 

 「え?でもない!一緒に購買部に来い!」

 

 「ええええええ!?」

 

 「・・・・・」

 

 都梅は胡桃に購買部に来いと言われ、心底嫌そうな声を出す。都梅も『いずれか』は購買部に行く必要があると思っていたが、いきなり行く事になり、顔をしかめる。胡桃は胡桃で、そんな反応をされると思ってなかったので胡桃は肩を落とし、ため息をつく。

 

 「僕片腕が使えないんですよ!?役に立てる気がしません!」

 

 「その片腕が使えない状態でお前は『奴ら』を五体も蹴散らして、私達の座る分の椅子と机を持ってきただろ!?」

 

 行きたくないが為にその場凌ぎで考えた理由もあっさりとあしらわれ、都梅は唇を噛む。その様子を見て、胡桃は呆れた。

 

 「・・・ほら!早く来い!もう文字数が8000超えてる!さっさと行かねえと9000になんぞ!」

 

 「くっ・・・・嫌でござる!働きたくないでござる!」

 

 「うるさい!行けぇ!」

 

 「ちょっと!シャベルやめてください!!」

 

 そうして胡桃と都梅は、下の階の購買部を目指して(都梅は半ば強制的に)歩き始めた。後ろからシャベルをつきたてられながら、都梅は思う。次は6000字程度にしたいなと、そろそろ自分専用の武器がほしいな、と。

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