無気力ぐらし!?   作:蚤ー

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ドジこいたーーーーーッ!ハイレベルの小説書いて読者からお褒めの言葉をもらうつもりが、こいつはいかァーーーん!ただでさえ貴重な閲覧者が減ってしまう!

 時間がかかってスイマセン


 あ、あと今回「ょうじょ」でゲシュタルト崩壊する可能性があります。ご注意下さい


かせいよりあい(哀)をこめて

 ~混乱発生から七日後 P.M15:00~

 

 

心地良い日照りが眠気を誘う爽やかな平日、閉めた筈の窓から入り込む淀みを含んだ風、外から聞こえる鳥の囀り、『奴ら』の呻き、百人いれば百人がミスマッチと答えるであろう合唱にうんざりしながら、都梅は慣れぬ左手でツナ缶を口に運ぶ。窓をやっていない窓から外の様子を見れば、話した事もない学友達が風に転がるボールを追い掛けていた。

 

 (『奴ら』が一人・・・『奴ら』が二人・・・腕が無いのはパス・・・『奴ら』が三人・・・)

 

 パンデミック発生から7日が過ぎ、自衛隊からの救助が来る様子もなく、相変わらず誠助以外との連絡が取れることもない。都梅は一度だけ学校に設置されている公衆電話を使い、警察に連絡をかけた。が、それでも出る事は無く、完全に姉との連絡が取れなくなってしまう。都梅は思う、電話が繋がるという今の状況でさえきっと奇跡に近い事なのだろう。しかし、それもいつまで続くか分からない。電話以外の連絡手段を作らなくては、と。だが都梅が心配している事はそれだけではなく、特に心配しているのが『佐倉慈がマニュアルの事を知っているのか』という事、もし知っていたのだとしたら自分はあの人を疑わなければいけない。その思いが都梅の肩に重くのしかかっていた。

 

 「おォーい・・・プラムくゥーん・・・」

 

 だというのにこの人は・・・それから先の言葉は都梅の心の中で霧散し、やがて消えた。

 

 「・・・・前からその呼び方やめてって言ってるでしょ貴依さん」

 

 「仕方なぁだろ・・・・外は『奴ら』でいっぱいいっぱいだし・・・・うちの方もバリケード補強するか『奴ら』を倒すしかないし・・・・暇なんだよ・・・邪魔させろよ・・・」

 

 「勘弁して下さいよ・・・屋上でかなり叫んでたらいいじゃないですか」

 

 都梅の目の前で机に突っ伏しながら、貴依は都梅を茶化す為に作ったアダ名で呼ぶ。都梅は都梅で暇だからという理由で邪魔されるのも困るので、適当な提案を貴依にするが貴依の方はこの提案に不満があるらしく、段々といちゃもんをつけ始めた。

 

 「・・・・それってアレでしょ?『元気でーす』とか言うんでしょ?そんなん由紀にやらせろよ」

 

 「別にそれだけじゃなくてもいいですよ?『大好き!』とか『ガンバレー!』とかありますよ?」

 

 「好きって言ってみたい気分じゃないし・・・人にやさしくする気分でもないし・・・もうアレやる?『生か死か!?スパイラルジャンケンサドンデスアタック!』する?」

 

 「嫌ですよ・・・貴依さんの三十三勝四敗二引き分けだし・・・・しかも負けると腕がしばらく使えないんですよアレ」

 

 「・・・・何の会話だ」

 

 唐突に聞こえた何者かの声に驚いて、都梅と貴依は立ち上がる。二人が声のした方を見てみたら、そこには呆れたような表情をした胡桃が扉を開けて立っていた。突然に現れた胡桃に動揺しながらも、都梅は胡桃に話し掛ける。

 

 「胡桃さん・・・・いったいいつからそこに?」

 

 「大体『邪魔させろ』辺りからかな」

 

 「・・・・結構前から聞いてましたね」

 

 「ああ・・・・胡桃じゃん・・・どうよ?スパジャンする?」

 

 「危なそうだからいいよ・・・・そうだ、都梅」

 

 胡桃は貴依からの遊びの誘いを断ると、都梅を手招きしながら呼ぶ。都梅はワケもわからずに扉に近づくと、何故か貴依まで一緒について来た。都梅は貴依についてきた理由を聞くと『邪魔したいから』との事だった。都梅もどうでもよくなってきたのか、貴依のその言葉に『邪魔にならない程度ならばついてきていい』と答える。貴依はその条件を快く承諾し、そのまま都梅についていく事になった。

 

 「何の用事ですか?」

 

 「・・・・学園生活部の話だ」(邪魔しない程度に邪魔する?どういう事?)

 

 「ああ、佐倉先生の言っていたやつですか。それがどうしました?」

 

 「せっかくだし、部長とか決めようって話になってな。部室に来てくれないか?」

 

 「部活をする事になって二日後に話す事じゃ無い気が・・・」

 

 「邪魔しないでって言ったじゃないですか貴依さん・・・」

 

 「今のは邪魔してないだろ!問題ないレベルだ!」

 

 「もういいから二人共来てくれ・・・・ハァ、頭痛い・・・」

 

 胡桃はそう言うと、額を押さえながら部室に向かって歩き出す。貴依と都梅は胡桃についていきながら胡桃の様子を観察する。

 

 (こういう時は・・・・早めの○ブロン?)

 

 (イヤイヤ・・・・○ヒでしょ?)

 

 (それ痒み止めじゃないですか・・・・エ○カップ?)

 

 (栄養剤じゃねえか・・・アリ○ミン!)

 

 (貴依さんもじゃん・・・・あ!)

 

 (どうした?)

 

 (ヴェ○ラップですよ!)

 

 (それだ!)

 

 (なにコソコソ話してんだあいつら・・・・)

 

 

 

 ~三階 2-B教室 兼 学園生活部部室~

 

 「・・・遅いなぁ」

 

 使う人間のいなくなった教室を再利用し、新たに学園生活部の部室として生まれ変わった部屋の中で生き残りの一人、若狭悠里は胡桃の帰りを待つ。一応の安全とは言え状況が状況であるせいか、一人になると途端に心細くなる。一回だけ廊下に出て確認するべきか、だけどもし外に『奴ら』がいたら・・・・行くべきか行かざるべきかと悩んでいた時だった。

 

 「ただいま」

 

 「こんちゃーす」

 

 「失礼します」

 

 「!?」

 

 「ど・・・どうした?」

 

 「・・・・いえ・・・なんでも・・・」

 

 胡桃は貴依と都梅を連れて帰ってきた。それ自体は問題ないのだが、悠里自身が緊張し過ぎたせいで扉を開ける音だけで過剰な反応をしてしまい、胡桃に心配されてしまう。

 

 「それならいいけど・・・あ、二人はその椅子に座って」

 

 「ああどうも、ありがと」

 

 「ありがとうございます」

 

 二人はそう言うと、胡桃と悠里の向かい側の椅子に腰を下ろす。都梅も貴依も特に気を張った様子はなく、只々話が始まるのを待っていた。その二人の様子を見て、先程の自身のリアクションを思い出し悠里は少し赤くなる。それを誤魔化すように悠里は本題を話し始める。

 

 「えっと・・・部長や副部長を決めようと思うのだけれど・・・・何か質問ある?」

 

 「「「・・・・」」」

 

 「全員無いみたいね。じゃあ今から決めるわね・・・・部長をやりたい人いる?」

 

 そう言って悠里は三人を見るが、

 

 「・・・」

 

 「・・・」

 

 「・・・」

 

 「・・・・・ハァ」

 

 誰一人として手を挙げる事はなく、その様子に悠里は溜息を吐く。暫く誰かが手を上げるまで待とうかとも考えたが、それは自分にとっても三人にとっても辛い物があると判断した悠里は、仕方ないとばかりに手を上げる。

 

 「りーさんがやるの?」

 

 「待っても上げる気配がないじゃない・・・」

 

 「(ぐぅ)」

 

 「(ぐぅ)」

 

 悠里の言葉に都梅と貴依はぐうの音も出なかった為、代わりに心の中でそっと呟く。というわけで学園生活部の部長は若狭悠里に(仕方なく)決定した。そして残った副部長。既に悠里は部長に決定したため、どう足掻いても胡桃、貴依、都梅の三人の中から選ばれる。

 

 「残るは副部長か・・・・・貴依さんはする気ある?」

 

 「ぜェんぜん無い・・・あとさん付けしなくていいよ」

 

 「そうか・・・・都梅は?」

 

 「右に同じくですね。胡桃さんも多分する気はないんでしょうし・・・いっその事ジャンケンで決めます?」

 

 「お、スパジャンか?」

 

 「やりませんからね?」

 

 「・・・・・前から気になってたけどスパジャンてなに?」

 

 「簡単に言えば超次元ジャンケンです」

 

 「ムシキング的な?」

 

 「大体あってます。じゃあ普通のジャンケンで行きますよ。せーの!」

 

 都梅がそう言うと、三人は同時に手を振り上げる。そして

 

 

 

 「よし!決まったな(笑)」

 

 「宜しく頼むぞ副部長(笑)」

 

 貴依は爽やかな笑顔でそう言って、顔を両手で覆い呻きを上げる都梅の肩に手をおく。都梅は軽く溜息を吐きながら覆っていた手を外して話始める。

 

 「・・・・この度副部長に任命された才谷都梅です。宜しくお願いします」

 

 「宜しく(笑)」

 

 「・・・・・おい何笑ってんだ(笑)」

 

 「だって・・・・言い出しっぺの法則が来ると思って無かったから・・・・・(笑)」

 

 この都梅の言葉に今まで我慢していた悠里も吹き出し、張りつめた部屋の空気が多少穏やかになる。

 

 「さて、悠里さんをある程度笑わせましたから私はそろそろ食事の続きをしようと思います。それでは失敬」

 

 「そうか、じゃあな」(私・・・?)

 

 胡桃はそう言って、部屋を出て行く都梅に手を振った。胡桃は都梅が部屋から出るのを確認すると、今から何をすべきか悩んでいる貴依の方を振り向き都梅と会話した際の疑問を投げ掛ける。

 

 「なあ貴依」

 

 「ン?なんだ?」

 

 「さっき都梅が自分の事を『私』って言ってたけど・・・あいつあんな言い方だっけ?」

 

 「私・・・・・?ああ、そう言えば今日は平日だったな」

 

 貴依のその答えに胡桃は一瞬混乱する。私と平日に何の関係があるのか胡桃には全く分からなかった。その胡桃の様子を察したのか、貴依は自身の発言の意味を説明する。

 

 「あいつは昔っから公私の差が激しくてな・・・・・一人称以外にも色々変わるから未だに慣れないんだ」

 

 「どんくらい違うんだ?」

 

 「休日や祝日とかの日は『優柔不断』、『問題先送り』、・・・・・万年五月病保菌者みたいな奴だ」

 

 「随分な言い様だな・・・で、平日は?」

 

 「一言で言うなら『空飛ぶ魔王』だ」

 

 「・・・・ルーデル?」

 

 「ルーデル並みに仕事好きって言った方が正しいかな。面倒臭い事があったらアイツに擦り付ければいいよ」

 

 「・・・・・勉強とかもか?」

 

 一連の話を聞いていた悠里は都梅に対する感想をふと口にする。

 

 「・・・・副部長兼召使い・・・・・」

 

 「・・・りーさんもりーさんで酷い言い様だな」

 

 「だいたいはあってるだろ」

 

 貴依のその発言に胡桃は本当にコイツは都梅の友人かと不安になるが、『友情の形は人それぞれ』という己の言葉を胡桃は思い出し、不安をかき消す。胡桃曰く別に考えるのを止めたわけではないとの事。

 

 

 ~その頃都梅は~

 

 

 

 「ラブラブラブラブハンケチ~フ♪」

 

 「そんなアイツもブル~デイズ♪」

 

 「おいどんは・・・ム~チムチしてますぞーーー!!!・・・・ん?」

 

 

 

     ジャア、タケヤサンコレワカル?        ハイ!◯◯デス!       ………。

 

 

 「・・・・・」

 

 『歌』を歌いながら都梅が廊下を歩いていると、先程までツナ缶を食べていた筈の2-A教室から声が聞こえる。

    

 「じゃあ、これは?」

 

 「・・・とうふう?」

 

 「・・・・・」

 

 都梅が扉の隙間から中の様子を観察するとそこには、『いつものように』授業をする慈と由紀の姿があった。慈の授業を受ける人間が由紀一人という事と、窓際にツナ缶が置いてある机がある事を除いて、であるが。

 

 「・・・じゃあこれ!」

 

 Q.これをなんと読む?

 

 1時雨

 

 2村雨

 

 3梅雨

 

 「はい!」

 

 1ときあめ

 

 2むらあめ

 

 3うめあめ

 

 「です!」

 

 「(泣)」

 

 少し前からここまで明るくなり始め、今では授業をする余裕も出来た。前までのしおれた生活が嘘の様に元気な声で問題に回答する姿に都梅の他学園生活部の全員も最初は安心していた。

 

 

 非安全区域に行こうとするまでは。

 

 

 「じ・・・じゃあ次の問題を・・・」

 

 「はーい♪」

 

 由紀は前にバリケードの向こうとした事があり、それを始めて見た時の悠里は焦りの余り大声を上げてしまいその声を聞いた『奴ら』の群れがバリケードを倒して来そうになった。その時は『逆にバリケードの下敷きにする』という胡桃の機転のおかげで難を逃れたが、その日以来由紀には『監視役』として慈が付く事になった。

 

 「こ・・・この問題・・・」

 

 Q.これをなんと読む?

 

 1白雨

 

 2暴雨

 

 3春雨

 

 「・・・・・うん?」

 

 1しろあめ

 

 2あばれあめ

 

 3はるあめ

 

 「かなぁ・・・?」

 

 「・・・・」(^p^)

 

 慈は最初『監視役』という言葉に強い抵抗を持っていたが、由紀の為と言われると何も言えなかった。それ以来、由紀には慈がそばに付くようになったが現状は変わらず、由紀は段々とその元気を取り戻し、段々とその精神を幼くしていった。

 

 「それじゃあ・・・ヒ!?」

 

 慈は新たに問題を由紀に出そうとすると、扉からの視線を感じて扉に目を向ける。そしてそこで、扉の隙間からの恐るべき眼光と目があってしまい、恐怖で体を強張らせて短い悲鳴を上げる。

 

 「つ・・・都梅君!?なんで覗いて!?」

 

 「いや・・・あの・・・・昼食の続きをと思ったんですけど・・・・授業中でしたね」

 

 都梅はそう言うと、扉を開けてそそくさと教室の中に入る。由紀のテンションの高さに不審さを感じながらもツナ缶を取り、教室を出ようとした時だった。

 

 「都梅君久しぶり!」

 

 「・・・・・!?」

 

 由紀の方から挨拶をされたのは。

 

 「・・・・今・・・・由紀さん・・・なんて?」

 

 「え?久しぶりって言ったけど?」

 

 都梅は余りのショックに手に持っていたツナ缶を落としてしまい、食べかけのツナを廊下にぶちまける。どうしていいのかわからずに都梅は慈の方を向くが、慈にとってもこの事がショックだったらしく、両手を口に当てて目を見開いている。

 

 「う・・・ウソ・・・」

 

 (・・・由紀さんが私に怯えているっていう話・・・・佐倉先生も知ってたんだ・・・・)

 

 由紀の挨拶とはまた別のショックを受けながらも、驚愕の目線を由紀に向ける。

 

 「どうしたの二人共?何に驚い・・・・て・・・」

 

 「ゆ・・・・由紀・・・さん?」

 

 (・・・・・?)

 

 そこまで言って由紀は突然に黙り、都梅と目線を合わせる。今までが嘘のような目に、都梅は戸惑いを通り越して恐怖を感じる。いっその事睨んで強制的に怖がらせようかと思い始めた時

 

 「・・・・・!」

 

 由紀の目が

 

 「・・・・・ヒ!」

 

 戻った

 

 「う・・・・うわあ!」

 

 「由紀さん!?」

 

 (あ・・・・・いつもの『ゴキブリが飛んできた時の様な目』だ・・・)

 

 由紀は悲鳴をあげると、椅子を倒して立ち上がり都梅との距離を取る。都梅は距離を取られた事に再びショックを受けるも、由紀の目がいつもの目に戻った事に気づく。そして、由紀は何かを『思い出した』ように、何かを『探す』ように辺りを見渡す。

 

 「あ・・・・・ああ・・・あああああ!!!?」

 

 「由紀さん!」

 

 「うああああ!!うああああぁぁぁぁぁ!?」

 

 (エ・・・エラい事になったな・・・)

 

 「おい都梅!」

 

 「ん?貴依さん?」

 

 都梅がどうしていいのか悩んでいると、由紀の叫びを聞いたのか部室の方から貴依達がやって来た。三人とも何がなんだか分からない様子で、教室の中を覗く。

 

 「・・・・都梅、お前何かやらかしたか?」

 

 「やらかすも何も、あの人私を恐れてるんですよ?何も出来ませんよ」

 

 貴依の問いかけに都梅はそう答えると、慈が扉から顔を出して扉の前にいる四人に声を掛ける。

 

 「私がなんとかするから、皆は部室に・・・あと都梅君」

 

 「え?」

 

 「貴方はここで待ってて?」

 

 「・・・・・ゑ"?」

 

 都梅がそう言うと、慈は都梅の返事を聞かずに教室に顔を引っ込めてしまった。都梅が呆然としていると、気まずくなったのか他の三人はそそくさと部室の方に戻って行く。途中、貴依が振り返って都梅に言葉を掛ける。

 

 「・・・もう一回聞くけど、何もしてないんだよな?」

 

 「・・・・・してないですって!」

 

 

 ~三十分後 部室内~

 

 由紀の絶叫から幾らかの時間が過ぎ、室内にいる胡桃、悠里、貴依の三人もそれぞれの時間の過ごし気を紛らわしていた頃、貴依は流石に心配になり、外の様子を確認しようとした。

 

 「・・・・?」

 

 貴依は試しに顔を出してみた物の外には慈も都梅の姿も無く、只々血染めの廊下が続くばかりだった。誰もいない事を不審に思い、貴依は外に出て様子を確認する。

 

 「待ってなくていいのか?」

 

 「待ち人が不在なんだから待ってても意味が無いよ」

 

 話掛けた胡桃にそう返すと、貴依は教室に向かって歩き出す。ちょうど中央階段に差し掛かった時、

 

 

      ツバイクーン!    デテキテー!

 

 

 「!?」

 

 階段の上、屋上入り口辺りから慈の困った様な声が聞こえた。何事かと思い、貴依は階段を上がり屋上の入り口を見ると

 

 「傷付ける気は無かったのー!」

 

 「・・・どうしたのめぐねえ」

 

 「ふえ!?貴依さんいつの間に!?」

 

 おそらく、否確実に扉の向こうにいるであろう都梅に向かい説得をする涙目の慈の姿があった。室内にいる筈の貴依に突然話し掛けられた慈は驚いて間の抜けた声を上げる。その声に癒やしを憶えつつも、貴依は都梅に何があったのかを聞く。

 

 「・・・・都梅がどうかした?」

 

 「え・・・・えっと・・・」

 

 「・・・扉開いてる?」

 

 「え?え、ええ。開いてるけど・・・・」

 

 言いづらい事なのか、慈は言葉を濁して言い淀む。このまま慈を待つのも気が引けるため、貴依は慈ではなく都梅に聞く事にした。貴依は慈に扉が開いているかを聞くと、扉の前に立ち扉に向かって話し始める。

 

 「おい都梅!聞こえてるか!」

 

 『・・・』

 

 「何があったんだ!めぐねえが半泣きしてんぞ!」

 

 「めぐねえじゃなk・・・「お前めぐねえになにかしたのか!」

 

 『・・・・・』

 

 慈の訂正を無視して貴依は都梅に話し掛ける。が、その都梅の方は会話をする気がないのか、一向に言葉を発しない。段々と苛立ち始めたのか、貴依はドアノブに手を掛けて都梅に話し掛ける。

 

 「入って大丈夫だよな!?開けるぞ!」

 

 「け、怪我させないでね!?」

 

 「手加減する!」

 

 「そうじゃなくて!」

 

 貴依はまたも慈を無視すると、扉を開けて屋上に上がる。貴依は目の前に広がる菜園を横目に都梅を探すと、フェンス越しに街を眺める体育座りの都梅を見つける。

 

 「都梅!」

 

 「・・・・」

 

 「いったいなにが・・・・・・・・・ッ!!?」

 

 貴依は都梅に話し掛けながら都梅のいるフェンスへと近づく。が、貴依が都梅の隣に立った瞬間、貴依は驚きの余り言葉を失う。

 

 「・・・・・・・一体どうした・・・?あからさまに落ち込んでる(?)様だけど・・・そして何故火星ゴキブリ?」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 (葉を食ってやがる・・・)

 

 貴依は自分の隣にいるテラフォーマー・・・・のマスクを被った都梅に何があったのかを問う。だが都梅にはその声が聞こえないのか、火星ゴキブリ特有の無機質な目で街を眺めながら、マスクの隙間から菜園に生えていたであろう雑草を食べていた。その証拠にマスクの中から葉や茎の折れる音、それを咀嚼する音、食べれずに咽る都梅の声が聞こえる。

 

 「・・・・ウッ・・・・ゲホッホッホォゥ!」

 

 「ほら、それは苔じゃない・・・というかお前ゴキブリですらないだろ・・・・無理するな・・・・」(咽るなら最初から食べなきゃいいのに・・・・・)

 

 貴依はそう言うと、苦しそうに咳をする都梅の背を擦る。そこでやっと貴依に気付いたのか、都梅は貴依の方にゆっくりと首を向ける・・・マスクを被ったままで。

 

 「・・・・」

 

 「なんだ?話す気になったか?」

 

 「・・・・・じょうじ」

 

 「・・・・は?」

 

 「じょうじ・・・じじょうじじょう・・・じ・・・じょうじょうじじょうじじじょうじょじょじじょう・・・じょうじ」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「じょう・・・じょうじじじじー・・・じょうじーじょうじょじょ・・・・じょう『じょうじょじょ』」

 

 「・・・・・フン!」

 

 「じ!?」

 

 「戻って来い!火星から戻って来い!MO手術受ける前に戻って来い!」

 

 「じょうじじょおぎぎぎがぎじじぎきー!?」

 

 事態を重く見た貴依は、都梅を火星人にしているマスクを引き剥がす為に都梅にヘッドロックを掛ける。都梅の方も理由は分からないが地球人に戻りたくないらしく、必死の抵抗を繰り返す。

 

 「じ・・・じぃぃぃじゃじゃじじゃじゃじゃ!じじゃぎが!」

 

 「抵抗してもムダだ!私のM.A.R.Sランキングは第0位だ!」

 

 「じっじゃじぎぎがぁぁぁ!」

 

 

 ~KI WIN!!~

 

 「顔が原因で由紀が正気に戻った?」

 

 「・・・・・ショック療法に似たものらしいです」

 

 長く険しい泥試合を制した貴依は、人類反撃の鍵となるであろうテラフォーマーの頭部・・・・・ではなく、都梅を火星人にしていた原因のテラフォーマスクを片手に持ちながら、屋上に這いつくばる都梅の話を聞く。

 

 「確かにお前は『カポネ』だの何だのといろんなアダ名はついてるがそんなに怖いのか?」

 

 「佐倉先生はあくまで仮説だって言ってましたけど・・・・もしそれが本当だとしても喜ぶ気になれなくて・・・」

 

 「それで『どうせゴキブリの様に見られるなら、只のゴキブリを超えてやろう』と・・・努力すべきものを間違えたという訳・・・ねぇ」

 

 「急にグラグラと揺れだして・・・心配になって話し掛けた途端にさっき見たいに『ジョージ!ジョージ!』って言ったかと思うといきなり走りだして・・・追いかけようと思ったけど速いうえに、階段を五段飛びで上がるのを見たら追いつける気がしなくて・・・」

 

 いつの間にか貴依の横にいた慈が、途切れ途切れに状況の始まりを語る。

 

 「うお!?めぐねえいたの!?」

 

 「ヒド過ぎる・・・そんな言い方しなくたって・・・」

 

 「ゴメン・・・・それにしても・・・」

 

 貴依はそう言って、手に持った火星人マスクをまじまじと見つめる。無機質な瞳、感情の篭もらぬ表情、テラフォーマーの特徴の全てがハイクオリティで再現されていた。それどころか先程の取っ組み合いの際に出来たマスクの傷みが、本物らしさを尚の事引き立てている。

 

 「・・・・・よく出来たマスクだな。お前が作ったのか?」

 

 「・・・菜園用の肥料が入った袋を使いました。半分に切ってマジックペンとハサミで・・・・・」

 

 「随分と器用だな・・・もう半分はどうした?」(○クワクさんかよ・・・)

 

 貴依にそう聞かれると、口で言うのが面倒臭くなったのか都梅は腕を持ち上げてある方向を指さす。そこには半分に切られた肥料袋と・・・山の様に積まれた土があった。

 

 「・・・・あの土はなんだ」

 

 「・・・・・肥料袋の中身です」

 

 「りーさんにはその事言ったか?」

 

 その事を聞かれると、都梅はバツが悪そうに顔を屋上に擦り付ける。それを無言の肯定と見た貴依は、もう一度土を一瞥すると深く息を吐き項垂れる。

 

 「・・・・ほら、土片付けるぞ。そしてりーさんに謝ろう」

 

 「・・・はい」

 

 「めぐねえはこの事を皆に報告して・・・良い報告か悪い報告かはめぐねえが決めてね」

 

 「良いとも悪いとも言えない・・・・あと、めぐねえじゃなくて佐倉先生でしょ」

 

 そう言うと、慈は貴依達に背を向けて三階へと戻って行った。貴依は慈の背を見送ると、肥料の土に顔を向ける。先程まで貴依との争いに敗れて横たわっていた都梅はいつの間にか起き上がっていたらしく、片手に塵取り、もう片方に小箒を持って『身から出た土』の後始末をつけていた。相当に疲れたらしく、腰を曲げて土を掃くその後ろ姿には年に似合わぬ哀愁が漂っている。

 

 「・・・・疲れたなら今日の『会議』は休むか?」

 

 都梅は貴依のその言葉を聞くと、土を掃く手を止めて立ち止まる。息を一つ吐くと、曲げた腰を伸ばしながら後ろにいる貴依に語り掛ける。

 

 「・・・大丈夫です。それに自分から始めた事を休むわけには行きません。『会議』はやります」

 

 「・・・無理はするなよ?」

 

 「ええ」

 

 都梅はそう言って、また土を掃き始める。その後貴依も加わり都梅は屋上の掃除を済ませて部室に戻るが、慈からの報告(菜園用の肥料も含む)を聞き、世界一恐ろしい笑顔になった悠里にたっぷりと説教をくらった事は言うまでもない。

 

 (耳が痛い・・・中耳炎になりそうだ・・・)

 

 「なんで私まで説教受けてるんだ・・・・」

 

 「私語厳禁!!」

 

 「「押忍!」」

 

 「やかましい!!」

 

 「「(押忍!)」」

 

 

 ~混乱発生から八日後 AM2:00~

 

 

 草木も眠る丑三つ時、この時間帯には化け物や幽霊が現れるという話を聞くがもしそれが真実なら、この街は永遠の午前二時の中にいるのだろう。そうおもいながら、都梅は重い体を2-C教室まで運ぶ。

 

 「・・・・やっぱ休もうかな」

 

 混乱の発生から一週間を過ぎ、再び休日に心を委ねた都梅の精神は貴依の言った様に優柔不断な正確になり、自分の言った『会議はやる』という言葉さえ曲げようとしている。それでも『せっかくだから』という、どこぞの越前の如き考えで嫌々ながらも会議に行く事にした都梅は辿り着いた2-C教室の扉を音を立てぬようにゆっくりと開けるとそこには

 

 「・・・・やあ貴依さん。月は出てますか?」

 

 「生憎だけどうちの学校にはサテライトシステムは無いんだ、太陽光で我慢してくれ」

 

 『そもそも今は月出てねぇじゃん』

 

 貴依と一台の携帯が椅子に座っていた。携帯の方は机の上で箱の中に入れられており、箱にはローマ字で

 

                0\(^o^)/

 

                SAUNNDO

 

                ONNRII

 

 と彫られており、彫った人の適当ぐあいがよく分かる出来になっている。

 

 「随分と遅かったね。ざっと十分近く誠助と暇を潰したよ」

 

 「ゴメンゴメン。ちょっと斬魄刀(象牙刀)の名前考えるのに時間が掛かっちゃって」

 

 「アホかお前は」

 

 『で、どんな名前?』

 

 電話の向こうから『電波くん』こと石川誠助が三話ぶりの声を出す。誠助にその事を聞かれると、都梅は恥ずかしそうに頬を掻きながら喋り出す。

 

 「えっと、象牙って英語で『アイヴォリー』っていうじゃないですか。アイヴォリー→アイヴォー→アイボー→AIBO→A✩I✩BO→相棒、という訳で『相棒』が象牙刀の名前です」

 

 「それ名前じゃねえよ」

 

 『もうちょっとまともな名前考えて下さいよ杉下さん』

 

 「それは別の相棒です冠城さん・・・じゃねえや誠助君。それに僕はどっちかと言うと神戸じゃないですか?」

 

 「相棒はいいから話を進めろよ」

 

 「それもそうですね。さて・・・些か心許なくはありますが・・・」

 

 そう言うと、都梅と貴依はどこにあったかも分からぬペンライトを顔の下に構えて、都梅は箱の中にまで伝うコードの先端にあるボタンを目の前の机に置く。

 

 「これより第三回『裏』秘密会議を始めようと思いま~す」

 

 都梅がそう言うと、二人は同時に顔の下にあるペンライトに光を灯す。顔の彫りに合わせて影が都梅と貴依の顔に照らしだされると、それに合わせて都梅は目の前のボタンを押す。するとコードの先にある箱に彫られたエセサウンドオンリーの字が赤く輝く。貴依曰く、『字が先だろ』との事だった。

 

 「もう待ち疲れたよ・・・・」

 

 『主な原因はこの会議の主催者だな』

 

 「それはともかく、前回と前々回はこの会議の今のとこの方針と最終的な目標を決めましたよね。一つ目の方針は『誠助君達の生き残り組と学園生活部の合流』。最終目標は『絶対安全圏到達』。今回から会議らしい会議を始めま~す」

 

 『有耶無耶にしたなこいつ・・・まぁ、今のとこ出来る事は状況確認と情報交換ぐらいだな』

 

 「なら状況のおさらいでもしますか。じゃあ街の状況、ラクーンシティ、この一言ですね。原因はランダルコーポレーション、又はそれに関係する何か。偶発的なものか人為的は未だ分からず、可能性としては前者の方が高いかと思われます」

 

 「なんで?」

 

 「あのマニュアルの中には『予期せぬ事態への対応』という項目があります。今があの内容通りの状況なのだとしたら、この状況はランダル側にとっても望まれた物では無い筈です。もっとも、前者だけに限った話ですけど」

 

 『後者だった場合、街全体を使った兵器の実験ということも考えられる。この地域一帯の開発を進めたのもランダルだ。弾やミサイルを売るのにも宣伝をしないといけないように、街一つを使って『これ程の被害を出せる』とどこかに宣伝してるのかもな』

 

 「どちらにしろ、この混乱に姉さんが関わっていて欲しくないな・・・・」

 

 「大丈夫ですよ。千鶴さんはそんな事をする人じゃありませんから」

 

 『あの人のこと"まだ"姉さんって言えないんだな』

 

 「・・・・・相変わらず一言多い男ですね、君は。とりあえず、状況確認はこんなんですね。次は情報交換ですか」

 

 「なら、まずは学園生活部の事から話すか。ま、今は三階の安全圏を広げる事で手一杯だから話す事なんてそんなにないけど。あるとしたら由紀の症状緩和の糸口が見つかった事かな」

 

 貴依のその言葉を聞き、都梅は面白くないと言いたげに顔を顰める。が、誠助の方はこの話に興味を示し貴依に続きを求める。

 

 『ほう、それはいい。精神カウンセリングは俺の専門外だったからな。治せる見込みは多い方が良い』

 

 「まぁ、ショック療法見たいなものだけどね」

 

 『・・・・どういう事だ?』 

 

 そう言われ、貴依は誠助に事の次第を話し始めた。由紀が都梅の顔を見て正気に戻った事、都梅が慈からその事を伝えられて火星ゴキブリになった事、そして都梅がゴキブリになったせいで自分まで悠里に説教をくらった事、それぞれを事細かにして貴依は誠助に伝えた。

 

 『はあ~すげぇ話だぁ、中々良かったよ。特に火星ゴキブリのとことか』

 

 「だろ?」

 

 「キコエナイ、ウメさんキコエナイ」

 

 『拗ねなさんな・・・・じゃあ次はこっちだな。今はリーダー率いる生き残り共をモールから脱出させる計画をしている所だ。そのための中継点として各フロアに食糧と水を設置している場所がある。一番大きい所は三階喫煙所で俺の作った囮と武器、非常食のうんまい棒を種類別で五十種、救急箱、暇つぶし用の素敵雑誌、ティッシュも設置してある』

 

 「おいティッシュはなんだ」

 

 「そうですか・・・で、その素敵雑誌というのは・・・・・?」

 

 「やめんか!」

 

 『NTR、リョナ、SM、触手、あとは・・・・ああ、さ』

 

 「黙れ!やめろって言ってんだろうが!」

 

 「うわぁ・・・聞いた僕がいけなかった・・・・・」

 

 「何で聞いたよ・・・そういえば、その店から出た後はどうやって移動するんだ?」

 

 『生き残りの中に車の鍵を持っている奴が二、三人。それでも足りない移動の足は俺がパクった』

 

 「そういえば誠助君ピッキング得意でしたね。家に掛けた鍵をあなたに何度破られた事か・・・・」

 

 都梅が今は懐かしき日常を振り返っていると、貴依の頭にはある疑問が浮かんでいた。今誠助がいるリバーシティ・トロン・ショッピングモール。あの店はマニュアルの中に乗っていたランダル・コーポレーションの傘下に入っていたはず。だとしたらこの学校のように予めの用意がされているのではないかと。

 

 「・・・なあ誠助」

 

 『ん?』

 

 「前にあのマニュアルをお前に写真で送ったよな?」

 

 『ああ、あの薄気味悪いマニュアルだろ?この店もマニュアルにあったランダルとか言う会社の飼い犬だった事を思い出してな、俺も色々調べ回ったんだが・・・・・』

 

 「・・・調べた事だけでもありがたいよ。生きて会えたらうんまい棒やるよ」

 

 『餓鬼か俺は!?』

 

 「だって年下だし」

 

 「僕達より二年下ですし・・・」

 

 「「(´・ω・)(・ω・`)ネー」」

 

 『何がネーだ・・・ともかく、脱出計画も含めこの事はリーダーと俺しか知らない事だ。もし俺以外の奴が電話にでても教えるなよ』

 

 「大丈夫ですよ。そのためのパスワードも作ったでしょう?『らせん階段』『カブト虫』『廃墟の街』『イチジクのタルト』『カブト虫』『ドロローサへの道』『カブト虫』『特異点』『ジョット』『エンジェル』『紫陽花』『カブト虫』『特異点』『秘密の皇帝』・・・でしたっけ?」

 

 『よく覚えてるな・・・・』

 

 「スゴいでしょ。ま、とりあえずはこんな感じかな?他にも色々言いたい事聞きたい事があるかもしれないですけど、これ以上は眠いからまた次の機会という事で、明日・・・と言うより今日からは色々と本格的に動きますので」

 

 『・・・・今日からだったか?三階の職員室までの完全制圧は』

 

 「ええ、マニュアルが見つかった職員室なら何かしらの手掛かりがあるかも知れません」

 

 「・・・・あのさ・・・」

 

 「どうしました?」

 

 「・・・・・嫌、何でも無い。」

 

 「そうですか?・・・とりあえず、挨拶をして今日は終わりです。せーのっ」

 

 『「「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」」』




ノリで始めた小説だけに時系列やらなんやらを考えるのが難しい・・・と言うのは言い訳ですね。

 お詫びとして、次回は都梅君が酷い目に会います

 「!?」
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