無気力ぐらし!?   作:蚤ー

7 / 8
 ぶっちゃけ、小説書くよりタイトル考える方がムズイです

 前書きで言うのもなんだけど、今回はネタ多めです。悠里さんがボケます。胡桃さんもボケます。桃髪の二人は余り出ません。


さいたに、ふくぶちょうやめるってよ

 「作ってワクワク遊んでワクワク作ってワクワク遊んでワクワクゥ!」

 

 割れ窓から覗く曇り空を尻目に筋金入りの遊び人、才谷都梅が放送が終了して久しい懐かしのテーマソングを声高らかに歌い上げる。Eテレに何も言われないよね?

 

 「ワックワックワ・・・・よし出来た!」

 

 都梅はそう言うと、手元にある工作、もとい作品を持ち上げる。

 

 「あとは白と赤でカラーリングすれば・・・・一人クララごっこは痛いかなぁ・・・・」

 

 「次は機甲戦記か・・・・」

 

 「ありゃ?貴依さん見てました?」

 

 2-A教室の入り口から都梅の作品、ドラグナーマスクを見た貴依の口から驚きにも呆れにも似た声が漏れる。都梅は前回のテラフォーマスクの一件でマスク造りというガンプラに変わる新たな手慰みを見つけ、暇つぶしと称して悠里の許可を取り袋を貰っては様々なマスクを作り続けている。前までは前回のテラフォーマーのようなものを『人類の天敵シリーズ』と称してパラサイト、プレデター、エイリアン、エージェントスミス、ゾンビ、巨人、深海棲艦、虚(ホロウ)などを作り続けていたが、今では『ロボシリーズ』と称し、ザブングル、レイズナー、ガリアン、ダンバイン、ファフナー、マクロス、ゼオライマー、エトセトラ、などを作っている。

 

 「・・・・・お前は何も思わないのか」

 

 「え?何がですか?お!誠助君から写真が・・・あらかわいい♪わんちゃんと・・・女子生徒?パールホワイトのショートヘア・・・誠助君はこういう娘が好みかぁ・・・ニヤニヤしちゃうな~♪」(D-2とD-3どうしようかな・・・・)

 

 「・・・・」

 

 「ああ!?D-1が!?」

 

 貴依は都梅の持っているドラグナー1型をはたき落とすと、都梅の胸ぐらをつかみながら怒りの声を上げる。

 

 「あのめぐねえの反応だよ!お前も見ただろ!?マニュアルのあった棚を慌てて探すめぐねえの姿を!」

 

 「・・・・それはそうですけど・・・・今のとこ問題は無いから大丈夫じゃないかな~なんて・・・ヘへw」

 

 「笑い事じゃねえ!」

 

 貴依は都梅から手を放すと、最悪だとでも言いたそうに両手で頭を覆いながら教室の中を歩き回る。暫くして落ち着いたのか、手を頭から放すと今がどんな状況かを話し始める。

 

 「・・・・少し前にあった三回目の会議の後学園生活部は何をした?」

 

 「三階の右側の探索ですね」

 

 「その時めぐねえは何をしていた?」

 

 「マニュアルのあった棚を「嘘でしょ!?」みたいな顔で泣きそうになりながら探してましたね」

 

 「めぐねえが探している物はなんだと思う?」

 

 「九割九分九厘でマニュアルですね」

 

 「結局見つかったか?」

 

 「ダメでしたね。その日の夕方に誰もいない筈の屋上でプラトーンしていたのが印象的です」

 

 「・・・そのマニュアルは今誰が持ってる?」

 

 「ユーアンドミーですね」

 

 「私達がマニュアルを持ってる事がめぐねえ・・・・それどころか学園生活部にバレたらどうなる?」

 

 「・・・・ヤヴァイ」

 

 そう、この男、本当にドラグナーのマスクを造ってる場合じゃないのである。もしいま二人が例のマニュアルを持っている事が学園生活部にバレたら、『マニュアルの事を知っている=学校の秘密を知っている』可能性がある慈、自分達が助かるかもしれない情報を隠されている学園生活部、どちらにもバレてしまえば裏切り者扱い程度では済まない。村八分でも奇跡であろう。そんな中、都梅の脳裏にありとあらゆる最悪のケースが浮かび上がる。鬼気を放ちながら「誰だろうと、この学校の永遠の絶頂を脅かす者は許さない」と言って襲い掛かる慈の姿、業物の移植ごてで首から上をすっぱり散らそうとする目のハイライトが消えた悠里、「え・・・これ・・・都梅だったの?」と言われるレベルまで滅多刺しにしようとする憔悴スマイルを浮かべた胡桃、それぞれの光景が都梅の頭の中で再生され、それぞれが赤い、紅い終わりを告げる。胡桃に関しては何がとは言わないが『肉塊』であった。都梅の頭から段々と血が引いていき、意図せずに奥歯が鳴り始める。

 

 「ヤヴァイよ・・・・死んじゃうよ僕・・・・」

 

 「言っとくが死に兼ねないのは私もだからな」

 

 「・・・・かくなるうえは・・・ッ!」

 

 そう言うと都梅は立ち上がり、右腕を除いた全身に力を込める。キュワ!キュワ!と、何かが引き締まる音と共に都梅の周囲から鉄の匂いが漂い始める。

 

 「ま・・・まさか・・・!おいやめろ!早ま・・・」

 

 「隠蔽しましょう」

 

 「・・・・へ?」

 

 「僕でも貴依さんでもなく、ましてや佐倉先生でもない別の人のせいにしましょう。世の中気づかない方が良い事もあります」

 

 そう言って都梅は転がったドラグナーマスクを手に取ると、机の中に隠したマニュアル二冊を懐に納め教室を後にした。肩すかしをくらった貴依はガクリと肩を落として息を吐く。

 

 「・・・何処に隠すんだー!」

 

 「そのうち考えまーす!」

 

 「・・・・・ハァ」

 

 

 ~屋上~

 

 

 曇天の空の中、悠里は菜園で草刈りを、胡桃はシャベルを洗濯をしていた、それぞれが今にも落ちそうな曇り空を眺め不安を募らせていた頃

 

 「ヤッホ~皆さん♪セ○ムしてますか~?」

 

 一人のパッパラパーが異質な空気を纏いながら屋上に現れる。

 

 「相変わらずのマイペースだなつば・・・」

 

 「あら?どうしたのつ・・・」

 

 「ん?どうしました?まるで『知り合いだと思って話し掛けたら別人だった~』みたいな顔してますよ?」

 

 都梅はそう言って、くぐもった声で『有る意味』適確なツッコミを入れる。

 

 「・・・・ロボ?」

 

 「人ですらねぇ・・・」

 

 「ああ、コレ?新作ですよ!スゴいでしょ?」

 

 全く別機体(別人)の顔をしながら。

 

 「一瞬何がなんだか分からなくなったわ・・・・」

 

 「そういうのやめろよ・・・」

 

 「え~『由紀が毎度毎度発狂するのも大変だからマスクか何かを被れ』って言ったのは部長と胡桃さんでしょう?」

 

 「確かに言ったけど・・・」

 

 「前のでも駄目で、今のも駄目なら次はスーパー戦隊か仮面ライダー以外無いですよ?」

 

 実はあの『由紀ちゃん「窓割れてね?」』事件から暫く後に、慈と由紀を除く学園生活部の全員で話し合いをして『暫くは由紀に都梅の顔を見せない』と言う話がでた。この話に都梅は「それじゃあ悠里さんが『シンデレラ』の力で、僕の顔をドロドロに?」と言うと、悠里は「そんな事はしないわ。只何かを被って由紀ちゃんに直接顔が見えないようにすれば良いから。後、私のスタンドは『エボニーデビル』だからね」と、ネタバレでも何でも無い普通の会話をして都梅がマスクを被る事になった。が、初期のマスク(人類の天敵シリーズ)が余りにも不評だった為、今はロボシリーズを続けている。

 

 「仮面ライダーか・・・私はブレイドが印象的だったなぁ。一度『バーニングディバイド』の為に陸上部か新体操部かで悩んだんだよな~」

 

 「タグに『キャラ崩壊注意』って入れないといけなくなるからそういうのやめて下さい・・・・因みに僕が印象的だったのは電王ですね。部長は何が好きですか?」

 

 「私は「仮面ライダーシリーズ」じゃなくて「宇宙刑事シリーズ」が好きなの。赤射!

 

 宇宙刑事シャリバンは、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する。では、赤射プロセスをもう一度見てみよう。

 

      赤射ぁッ!!

 

 灼熱の太陽エネルギーが、グランドバースの増幅システムにスパークする。増幅された太陽エネルギーは、赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ!」

 

 「ああ!ナレーションのフリして自分で喋ってます!」

 

 「あ本当だ!一行空けについ騙される所だった・・・・!」

 

 「言わないでよ!・・・・で、都梅君はなんでここに?」

 

 「進行上よくぞ聞いてくれました・・・・実は雨が降りそうな気がしたのでその事を屋上にいる部長に言いに来たんです」

 

 「雨?なんでそんな事が分かるんだ?」

 

 「こういった日は"ここ"がよく痛むんですよ」

 

 都梅はそう言うと、顔に刻みついた傷跡に手を当てる。『雨になると古傷が痛む』という人がいるが、どうやら都梅もそういった人らしい。

 

 「その傷ってどうしてついたの?貴依さんと遊んだから?」

 

 「貴依さんは全く関係ないですよ。元はと言えば千鶴さんがですね・・・」

 

 「千鶴さん?」

 

 「ん?ああ、言ってませんでしたね。千鶴さんは僕の・・・」

 

 その言葉は突然に響いたバイブ音に邪魔をされ、最後まで続く事はなかった。胡桃と悠里がその音に驚いていると、唐突に音が止み、それと同時に都梅の声が胡桃と悠里の耳に届く。

 

 「もしもし・・・貴依さん?どうやって電話を?」

 

 「「!?」」

 

 『公衆電話だよ。丁度よく目の前にあったから掛けてみたんだ。金ならお前が払ってるから心配するな』

 

 「そうで・・・えええ!?ちょっ!貴依さんなんで僕の財布持ってるんですか!?そしてなんで使ってるんですか!?」

 

 『金を入れないと公衆電話は動かないだろ?私は財布持ってないからお前から借りてんだよ』

 

 「ち

  ょ

   っ

    待

     っ   あ   あ

          ぁ   ぁ

           \   \

            ッ!  ッ!

              !   ?」

 

 『wwwwwwww』

 

 そんな事を言っている内にも、携帯の向こうから小銭がカラカラと音を立てて消えて逝き、その音を聞いた都梅は悲鳴を挙げてあたふたと動きまわる。そしてその様子が電話を通じて伝わったのか貴依が笑う声が携帯から聞こえる。

 

 「ちょっと!?笑いごっちゃねえとよ!?人ん金でなんしちょっとか!?」

 

 『お!都梅の方言久しぶりに聞いたなぁ・・・儲けか?』

 

 「知らんが!そんげなんことはどげんでんいいかい言いたい事言わんね!」

 

 『段々訛りが酷くなるな・・・ほら、職員室の方のバリケードがまだちゃんと出来て無いだろ?その補強をしようと思ってるんだ。めぐねえと由紀も手伝ってるんだが如何せん進みが遅くてな。お前も手伝ってくれないか?』

 

 「・・・ハァ、分かりましたよ・・・だから電話を切ってください」

 

 『おう、ありがとな。私もそろそろ目の前で驚いてるめぐねえに電話が繋がる事を説明してやらなきゃいけないからな。後で会おう』

 

 その言葉を最後に都梅の携帯から通話終了の合図が鳴る。都梅は溜息を吐いて携帯をポケットに戻すと、胡桃と悠里の方を向く。二人共『ドギモを抜かれた』と言いたげな顔で都梅を穴が空く程凝視していた。

 

 「電話・・・・・繋がったんだな・・・」

 

 「・・・・・全然知らなかったわ・・・」

 

 「あれ?言いませんでしたっけ?」

 

 「「・・・・・・・・」」

 

 カチ#

 

 「ちょちょちょちょっと待ってててください!!すいませんでした!すいませんでした!!あああ!ああのお!あのお、二人共エクスカリシャベルとごてディウスを下ろしていただだけないでしょうか!?説明します!すいませせん!!説明します!!ごめんなさい!!!」

 

 都梅のその言葉を聞いた瞬間、胡桃はシャベルを、悠里は移植ごてを逆手に構える。どこからどう見ても突き刺す気満々のその姿に都梅はつい先程に想起した『最悪の瞬間』を思い出す。ふと気がつくと、二人はゆらりとした動きで都梅に迫っていた。それに都梅が気付いた瞬間、都梅は土下座と同時に後退りを始める。自分の右手が折れている事も忘れて両手を地面に貼り付けて、額を擦り付けながらバックステップで下がり続ける。腕が痛いだの何だのと気にしていられなかった。このままだと体中が血だるまになって骨が叩き折れる事になる。たとえ人の体に215本の骨があったとしても、これでは1本どころでは済まないだろう。

 

 全身の骨が折れた・・・!

 

 人間には215本の骨があるのよ!215本くらいなによ!

 

 「ゆっ!許して下さい部長様胡桃様!あの!一発芸とか何でもしますから!鼻から鯖の味噌煮とか食べたり、左腕を自力で折ったりしますんで!あと、『奴ら』と一緒に写真に写ったりしますんで!ピース一緒にしますんで!」

 

 右腕の包帯には既に赤い物が滲み、何度も額を叩きつけた地面には血が点々と付いていた。身を震わせ、声を震わせ、只々土下座を繰り返すその姿は、『無様』としか言い様がない。それを見た胡桃と悠里は段々と哀れに思えてしまい、二人は持っていたエクスカリシャベルとごてディウスを下ろすと都梅にゆっくりと話し掛ける。

 

 「・・・・おいオッサン」

 

 「はい!何でしょう胡桃様!」

 

 「『様』はやめろ。とりあえず、事を二十字で説明しろ」

 

 「つながらなかったとおもったらつながってた」

 

 「本当に二十字で説明しやがった・・・・」

 

 「とりあえず・・・・説教と処分はバリケードの補強を済ませてからにしましょう。勿論死ぬような危ない物じゃないから()()()()()

 

 「はい!何なりと!どのようにしても構いません!」

 

 もはや舎弟か子分同然の分際に成り下がった都梅であった。もしこの状況で生きている人間がいたら『今あそこで土下座してる奴部活の副部長なんだ』なんて言っても誰も信じないだろう。

 

 「えっと、バリケードの補強だっけか?私達は後で行くから、都梅は先に行っててくれ」

 

 「はい!」

 

 この時をもって、都梅は公式に「副部長」から「下僕」にチェンジしたという。

 

 

 ~下僕移動中~

 

 

 「ふざけんなよ・・・・!もう・・・なんだよ・・・・!怖かった・・・・本ッ当に・・・恐かった・・・!」

 

 余りにも、余りにも見苦しい先程の己の様と悠里という名の夜叉、胡桃という名の羅刹の殺る気スイッチインの瞬間を思い出し、都梅は涙を流しながら聞く人のいない懺悔を口にする。自分の惨めさと右腕の痛みでイライラしているせいで若干いつもの口調より荒っぽくなっている事に自分で気付き、深呼吸を軽く十回して心を落ち着かせようとすると、廊下の奥から都梅がこうなってしまった原因が走って来た。

 

 「おい都梅大変だ!」

 

 「今まででも十分大変でしたよ!金は勝手に使われるわ電話が使える事がバレるわそのせいで菜園のこやしになりかけるわ!今月一番死にかけましたよ!しかも『他殺』ですよ『他殺』!!貴依さんにも何回か殺されかけた事はありましたけどツインテと涙ボクロに殺されかけるのは初めてですよ!謝って下さいよ!」

 

 「あ、ああ。スマン(?)・・・じゃねえ!バリケードが!」

 

 貴依がそういった瞬間、貴依の後ろ、職員室の奥にある階段の方から何かが弾けるような音、大きな物が倒れるような音が数回する。そして、いつの日か由紀が都梅に聞かせた世界の終わりだと思わせる様な凄まじい絶叫が響き渡る。

 

 「・・・そんな!あの壁は・・・50メートルだぞ!?」

 

 「今やるネタじゃねえよ!!なんだ!?私はそれに「奴だ・・・『奴ら』だ」とでも言えばいいのか!?」

 

 「一応やるんですね」

 

 変な所で持ち前の芸人魂が騒いでしまい、同じ部活の顧問と部員が死にそうな時であってもボケとツッコミを入れてしまう都梅と貴依、そこに先程の絶叫を聞きつけた胡桃と悠里が慌てた様子で屋上から降りて来た。

 

 「また!?また都梅君顔を見せたの!?」

 

 「お前もういい加減にしろ!!ほら!マスク!」

 

 「別件ですよ今回は!・・・・マスクは貰いますけど!」

 

 都梅はそう言うと、胡桃からドラグナーマスクを返してもらい、いそいそとマスクを被る。

 

 「別件?」

 

 「バリケードが破れた。まだ由紀とめぐねえがバリケードの近くにいる」

 

 「・・・・は?」

 

 「・・・・貴依さんは僕と来てください。胡桃さんは由紀さんと佐倉先生の救助。救助の間は僕と貴依さんが守ります。悠里さんは・・・・」

 

 「・・・・私は?」

 

 「・・・・」

 

 「・・・・」

 

 都梅のその言葉を貴依、胡桃、悠里の三人は息を呑んで待つ。都梅は悠里をマスク越しにひたと見据え、そして

 

 「・・・・・」

 

 「「「・・・・・・・・」」」

 

 やっちまったと言いたげに頭を抱え、後ろを向く。三人はその姿を見て、直感する。考えてなかったのだ、と。一話目で見せた『出来る奴』はどこに行ったのかと思わせる副部長(笑)の背中に貴依は呆れ、胡桃も呆れ、悠里は自分の扱いの悪さもあって本気でキレていた。

 

 「都梅君やっぱり左腕自分で折りなさい!いや、私が折るわ!」

 

 「ま、待ってりーさん!後から!後から折って!今折ったらいけない!」

 

 「・・・行くぞ都梅」

 

 「・・・・はい」

 

 「じっじゃありーさん!帰ってきたら!帰ってきたら折ろう!一緒に折ろう!バキバキに!」

 

 胡桃はそう言って悠里をなだめると、先に走り出した都梅と貴依を追って走りだす。その背を見届ける悠里の、憔悴顔が窓に残った大ぶりのガラスに写り込む。その顔に気付いた悠里は窓ガラスをマジマジと見つめる。

 

 「・・・・・もう!」

 

           バ

            チ

             ン

 

 プロ顔負けの掌底が窓ガラスを捉え、遥か彼方のグラウンドに弾き出される。乱回転を繰り返しながら重量に捕われ落下し続けるガラス片に写った悠里の顔は、幾分かスッとした面持ちだったという。

 

 

 ~バリケード手前~

 

 

 ガガア"・・・          イ"イ"イ"・・・・             オ"オ"・・・

 

 

        ヅア"ア"ア"・・・!         ヴヴヴヴヴゥゥゥ・・・・!

 

 「あああああああ!あああっうああああぁぁぁぁ・・・・!!」

 

 「竹槍さん!しっかりして!」

 

 鉄線を切り、椅子を倒して机を崩したバリケードの残骸が、虚しくも阻むべき『奴ら』の侵入を容易く許す。『奴ら』の群れ、『現実』の群れを目撃してしまった由紀は正気に戻り、その瞳を恐怖で塗りつぶし泣き叫ぶ。その由紀を抱えながら、慈は階段を上る。

 

 「大!七刀!()アアアアア()!!」

  

 「(OwO)ウェェエエエエエエイ!!」

 

 二人の人影が慈の頭上から目の前に舞い降り、今すぐにも襲わんとしていた『奴ら』の前に立ちはだかる。二人の目の前にいた『奴ら』の内の数体は首が裂け、頭が割れて赤黒く光る固形の混じった液体を撒き散らす。急所を潰され、二度目の死を向えた『奴ら』を蹴り飛ばしながら貴依は慈に話し掛ける。

 

 「めぐねえ!大丈夫か!?」

 

 「え・・・ええ・・・」

 

 「胡桃さんがもうすぐ来るので、胡桃さんと二人で由紀さんを連れて行ってください。その間は・・・」

 

 都梅はそう言うと、倒されたバリケードの向こう側、少し前に自分と胡桃が食糧を持って帰った道を見つめる。天気の影響もあってか前に来た時よりも暗く見えにくい。が、それでも「いる」とわかる程の群れが向かって来るのが都梅の目に写る。

 

 「ベタな言い回しですけど、僕達が食い止めます!」

 

 「・・・・無茶しやがって?」

 

 「本当になりそうだからやめてください!」

 

 そんな事を言う内に、『奴ら』は歩みを進め都梅と貴依に近づいて行く。常人が狂気するであろうこの状況でボケをかまし、ツッコミを決められるのも昔から続けてきた都梅との遊びの成果なのだろうと貴依は迫り来る『奴ら』を眺めながら思い、自身が『闇の二年間』と称する小学生最後の二年を思い出す。死の淵を彷徨った林間学校の森の匂い、不審者対策授業で聞いた『怪しい人』との熾烈な攻防を繰り広げた修学旅行、初めて都梅と本気で戦った運動会、その全てで必ず聞いた都梅の断末魔、原因は全ては貴依自身であり、それを救ったのも貴依自身であった。中学に入ってからはそういった事は少なくなったが、それでも全くなくなったというわけではなく、度々起こしたトラブルの影響で誠助も含め三人共にろくでもないアダ名をつけられた事もあった。

 

 「・・・・爆破拳(アームパンチ)柚村(シトロン)って・・・・・ダサいよなぁ・・・」

 

 「・・・・随分と懐かしいアダ名ですねぇ。いったい何人の人の奥歯が貴依さんの拳で飛んでいった事か・・・」

 

 「お前なんかいつも死にかけてるから『キングオブ生き地獄』なんて言われてただろ・・・構えろ、御歓談は終わりだ」

 

 貴依はそう言って、都梅が食糧と共に持ち帰った『奴ら』用の包丁を2挺、両手に構えて遠くを見据える。厚い雲の間から覗く鈍い光に『奴ら』が照らされ、その数が顕になる。

 

 「・・・・15・・・18ですかね?」

 

 「何人居ようと変わんねぇよ・・・全部倒して・・・全部守れ!」

 

 「了解!」

 

 誰が主人公なのかが分からなくなりそうな掛け合いの中都梅は左の拳を構え、軽く腰を落として息を吐く。

 

 「・・・相棒はどうした?」

 

 「・・・・」

 

 「・・・まさか・・・」

 

 「・・・・ヘヘw」

 

 「笑い事じゃねえええ!!・・・・・ほら!」

 

 「もうホントすいません・・・・」

 

 貴依は一回目の数倍近い音量で都梅に怒鳴りつけると荒々しく包丁を1挺都梅に向かって突き付ける。突き付けられた包丁を芸術的に避けると、申し訳なさそうに包丁を受け取って逆手に構える。

 

 「よし・・・行くぞ!ゾンビなんか怖くない!怖いのは部長と胡桃さんと千鶴さんと飯抜きと幽霊だけだ!」

 

 「後ろには・・・・行かせねぇ!」

 

 そう言って都梅と貴依は『奴ら』に向かって走り始めた。




遅くなってすいません。お詫びとして次回都梅君が酷い目に会います
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