お狐様とモブ子さん   作:カレータルト

4 / 10
ちなみに狐ちゃんは尻尾と髪が白で瞳は金色になりました

モブ子の髪型は最初ボブカットをイメージしてたけどロングにしようか迷う
描写じゃ出てこないけど想像するだけでモチベが段違いだぜ



戦慄の三話目

■  妖狐 

 

 

(あやかし)の中には多種多様な種族が存在することは、今更語るまでもないだろう。

 

人にとっての人種といった規模ではなく、妖にとってのそれはまさしく種族である。

妖の中には大別するだけでも六種、詳しく分ければそれだけで本書の三分の一を使ってしまえるほどだ。

 

その数は確立されたわけではなく、今も尚増加し続けているが、その中での大別六種のうち一つ――妖獣について本項で記述しようと思う。

 

妖獣とはつまり、読んで字のごとく『妖となった獣』であり、動物が長い年月を掛けて妖怪と化した姿である。

造形はその元となった動物のどこかしらをかたどった部分が特徴的であり、六種の中では最も判別が容易という特徴を持っている。

その為、大分類を選ぶ際には最初に確立された種族でもある。

 

特に出現しやすいのは尻尾と耳であり、妖力の高さに応じてその本数や大きさが増大していく。

判別がしやすい反面、実力の高さが一見するだけで分かってしまうので妖力の小さな妖獣が狙われやすくなる欠点もある。

逆に妖力が大きな妖獣はその存在自体が敵避けにもなるが、格の高い妖獣程に尊大な態度をとり、慢心しやすくなるといった報告もある。

詳しい検証はされていないが、確かに著者の知る高位な妖怪は大抵が大物の雰囲気を漂わせていた。

 

能力的な特徴としては妖力の回復速度が他の種族と比べて段違いに高いことが挙げられる。

特に霊脈上における回復力は飛び抜けており、上手く連携が組めるパートナーであるならば効果力を途切れさせることなく連発できるポテンシャルを秘めている。

逆に相性が合わない同士だとその力は二割も発揮できなくなるケースがあり、重要なのはお互いの実力よりも相性であると言ってしまっても過言ではない。

事実、二尾程度の妖獣であっても人間側から歩み寄ることで武勲二位を授与されるほどの成長を見せたケースもある。

先程の欠点、外見で油断させてからの大物食いもありうるといった点では成長性の高い種族と言えよう。

 

そして、更に特徴的なのは”野生”そのものである。

優れた動体視力と反射能力、運動神経を有し、野生の勘とも呼ばれる直観力も高い、高位になると不意打ちすらも反射で返してしまうこともあるほどだ。

戦闘スタイルはまさに天衣無縫、縦横無尽に戦場を駆け回り敵を蹴散らすことができる。

ただし中には妖術メインの妖獣もおり、そちらは身体能力を犠牲にして優れた術を扱うことができることを忘れてはならない。

 

同時にその野生は性格にも表れ、妖獣は大抵が理性よりも本能が勝るようだ。

力の大きなものほど理性の面が強くなるが、それでさえ時折危うげなものを見せることがあるらしい。

 

 

 

妖獣の中で最も高名なのが、狐の化生――妖狐である。

九尾の狐に示される通り、妖狐の特徴はその上限の高さにある。

 

通常の妖獣類の上限が五尾程度であるのに対し、九尾という上限は非常に大きい。

無論尾の数が上昇すればするほどに希少さは増していくものの、七尾以上の妖狐と良い関係を築くことができたならば武勲一位は確実ともいわれている。

その反面、尾が増えていくたびにその性格は厄介さを増していき、気に入られなければ死ぬよりもつらい目に合うという噂もある。

一長一短であるが、それは妖憑きの実力が問われるところだろう。

 

現在確認されている妖狐の最高峰は京都学府に在籍している”万仙丹”神楽坂陽明(かぐらざかようめい)とその同胞たる七尾、金鶏(きんけい)である。

我が国においても屈指の戦力であるが、それでもまだ八尾に届いていない。

 

もしも九尾が、そして九尾に認められた人間が居たとしたら――どのような事態になるのか、想像もつかないだろう。

 

 

 

――――――京明文庫『楽しい妖の歴史』 4章『妖の大別六種』5頁より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃ、こんなことになるなんて想像もできないよね」

「ふぬ? どうしたのじゃお主様」

「何でもないよ」

 

 

 

学校に遅れちゃう、その言葉が彼女のわずかに残っていたらしい理性に届いて本当に良かったと思う。

そうでなければ私は入学初日だというのに休学する羽目になっていただろうし、ベッドに赤いものが滴り落ちることになっていたかもしれないと思えば冗談じゃなかった。

 

彼女は本能的ではあるけれど、本能が優先されることは案外少ない。

昨日の夜からの言動を見れば何言ってるんだコイツってなるとは思うけれど、彼女は納得のいく理論的な説明さえすればすぐに引いてくれるのだ。

常に本能的に見えるけれど、理があればすぐさまそちらを優先してくれるのだから。

 

まあ、理論的な説明というのが難点でる。

私程度の頭の回転で、彼女を納得させられる理論――もとい詭弁(言い逃れ)が考えつくはずもないのだ。

だからこうして、もっともな理由があるとき以外に彼女を抑えることができない。

 

 

 

「逆に言うと、ちゃんとした理由があるなら引いてくれるだけありがたいのかなぁ……」

「ぬぅ、それはわっちの抑えが利かずお主様を遅刻させそうになったことかの。申し訳ない、ただお主様からいい匂いがしたのも悪い!」

「そんな浮気がばれた女みたいなことは聞きたくないんだけど!」

「わっちが浮気と!? そんな冗談夢にも思ったことはないぞ、お主様以外にわっちの(つがい)は務まらん!」

 

 

 

話を聞いているようで全然聞いていないのは慣れた。

相も変わらず私のことを眷属でも協力者でもなく夫婦(めおと)と呼ぶのも慣れた。

私は主従関係を強要されたとしても文句はなかったからそちらがよかったけれど、今更どうともできないだろうし。

 

ただやっぱり、無理なことを言ってしまえば。

妖憑きになるならせめて、九尾じゃないほうが数倍精神的に良かったと思ってしまうのだ。

せめても二尾とか三尾なら仲良くできたかもしれないのに、妖獣の中でも癖が最も強い九尾なんて――――

 

 

 

「どうかしたかの? お主様っ♪ ……もしかしてわっちに見惚れていたのかの!? 大丈夫じゃ、わっちはいつだってお主様に見惚れておるからの!」

 

 

 

そんな風に、見つめているだけで飛び跳ねんばかりに喜ばれると。

両耳をぴょこぴょこと元気に動かせば、嬉しい気持ちが伝わってきて。

今は5尾まで減らした尻尾ですら9尾と同じようなボリュームを感じさせるほどにうねらされると。

 

全面的な、無償の親愛。

悪く思えるわけがなく、すべてを許してしまえる気がして。

 

 

チョロイなぁって、ため息をついた。

 

 

彼女が卑怯なのだ、外見は幼女であるのにも関わらず女性ですらも魅了しかねない美貌が。

幼い可愛らしさと同時に、長い年月に精錬された可憐さも、時折見せる魔性の表情も、何もかもが彼女の力となっている。

 

私はそんな、どこぞのラノベのような鈍感主人公じゃない。

人の好意には敏感な方だし、感性だって人並みにある。

綺麗なものは好きだし、それが自分のことを好きと言ってくれる人ならば悪い気はしない。

 

 

 

 

 

だから

 

例え同性であっても

 

人と妖であろうとも

 

恋をしてしまうかもしれないから

 

 

 

 

 

流石にそれは突拍子もなさ過ぎて、極論だとはわかっているけれど。

それでもあり得ない話じゃないって思っている。

そうなってしまったら仕方がないけれど、できるだけ遠慮しておきたいから。

少なくとも、今はまだ。

 

 

 

(ぶっ飛んでいるようで、節度というか場所は弁えてるからなぁ……部屋を出てからは接触してこないし)

 

 

 

チラリと彼女の方を見れば、私より最低二歩程離れた距離をキープし続けている。

ニコニコとした笑顔は二人きりの時と同じだけど、こちらから近づかない限りは決して近寄ってこない。

常に付かず離れずの距離を維持するのは、きっと無意識にでも勘でもなく、彼女が意識してやっていることなのだろう。

 

本能に支配されているようで、理性を働かせるべきところではきっちりと本能を押さえつけている。

まるで普段は思う存分甘やかしているけれど、躾るべきところでは頭を踏みつけてでも従わせている愛玩動物のようで。

そう考えると真顔の彼女が、冷たい目で見下しながら狐の化物の頭を踏みつけているところを想像してしまった。

 

 

 

 

……ありえない情景ではないのが何とも言えない。

 

 

 

 

 

私に対してはいつだって甘いけれど、それでも時折恐ろしい程の眼光を浮かべている彼女を見ることがあるのだ。

彼女は頭がいい、頭がいいからこそ明確な表と裏が存在するし、それを使い分けることができる。

ましてや権謀術数に長ける妖狐、その頂点(九尾)がその内心で何を思っていても、裏でどんな行動をしても、私にはその欠片も思い描くことができないから。

 

でも、それで本当に良かったと思う。

きっといつも盛ったように甘えてこられたら、私が参ってしまっただろうから。

私の前でそんな凄惨な一面を見せられ続けたら、きっと彼女を信用できなくなってしまうから。

 

オンオフがきっちりとしているからこそ、私は彼女のことを嫌いにはなれない。

普段は二人きりの時の態度が嘘のようにきっちりとしているのは、流石九尾と言ったところなのかもしれない。

 

文句の付けどころがないという意味では厄介極まりないのだけど。

そもそも文句をつける気がないのであれば、問題はないのかもしれない。

 

 

 

(まあ、二人きりの時の狼藉ぐらいは我慢できるよね、問題ないよね)

 

 

 

問題ない、問題ないから。

段々と毒されて行っているわけではなくて、私が明確に許容と拒絶の境界線を決められている証だから。

 

彼女がいくら強いとはいえ、普段は抑えている本能をいつまでも押さえつけられるわけがない。

だから私は、私が許容できるときにそれを受け入れる、一線を越えていないのは私の我儘だけど。

 

 

 

 

 

私は彼女と契約を結んだ

 

 

 

その過程がどうであろうと

私がどんな考えであっても

彼女がどんな思いであっても

 

 

 

私は彼女と契約を結んだ

彼女は私を眷属とした

 

 

 

それが全て

 

それが結果

 

変えようのない事実

 

 

 

 

 

だから私は、その事実を否定しない

彼女を、彼女との契約を受け入れよう

精一杯、私にできることなんてタカが知れているけれど。

彼女との絆を断ち切らないように、彼女を無碍にしないように。

 

形成されてしまった事実を受け入れないことほど、愚かしいことはないのだから。

 

 

 

 

「お主様っ! 今、何か難しいことを考えていたであろう?」

「あ、分かっちゃったかな」

「耳がの、こう……ピコピコしている時は難しいことを考えている時であろうぞ!」

 

 

 

この耳も、その一つだった。

正直言ってこれは彼女の我儘というか身勝手で与えられたものであり、調べれば調べる程欠点しか出てこない。

 

例えば私がどの種族の、どの種類の眷属であるかがばれると対策を取られやすくなるし。

私はポーカーフェイスを取得していないけれど、もしそれを武器にしていたのだったら致命傷だ。

隠れていたのだとしたら人間だと意識しづらい耳のせいで居場所がばれてしまう危険性がある。

 

流石にそれは妖獣側も分かっているのか、危険性を理解しているのか、人間に与える『対価』は獣耳か尻尾以外が普通だ。

『獣耳』なんて萌え要素しかない、ゲームで言うバッド・ステータスを協力者にわざわざ付与したいとは思わないだろう。

 

 

その例外が、私に憑いてるんだけど。

 

 

これも私は受け入れようと思う。

嫌だとか思っていたら、いつまでたっても嫌なまま。

 

それに獣耳はそんなに悪いものじゃない、最前線とかに居ない限り危険性もあってないようなもの。

どうせ日常生活では少し邪魔な程度で、せいぜいお風呂に入った後乾きづらいぐらいで。

 

だから私は、彼女とお揃いのこれをそれほど悪くは思っていなかった。

 

 

 

ピコピコと、彼女の耳が嬉しそうに揺れる。

 

 

 

「ふふ、うふふふふ」

 

 

 

ピコッと、その笑い声に私が反応して。

 

 

 

「なにかな、いきなり笑って」

 

 

 

ピコッ、ピコッと彼女がキラキラした目で私を見つめれば。

 

 

 

 

「お主様のそれ、よく似合っておるぞ」

 

 

 

我慢してたけど、ピコッと耳がか弱げな反応をしてしまう。

ほんのちょっと、注意していなければわからないぐらいの反応なのに。

 

ピコピコピコピコッと、彼女はこれ以上ない程盛んに耳を動かした。

 

 

 

「えへ、えへへ……お主様も嬉しいみたいで何よりじゃ」

 

 

 

……感情を隠すことが難しくなったけど。

耳は口ほどにものをいうのかもしれない。

 

 

 

 

「のぉ、お主様よぅ」

「なにかな、話があるならリビングに行く前に聞いておきたいけど」

 

 

 

そう聞けば、彼女はテレテレと頬を赤らめて見上げてくる。

あれほど容赦も遠慮もないのに、照れることはあるらしくて不思議に思う。

 

 

 

「今日はまだ、お主様にわっちの名前を呼んでもらっておらぬのじゃ……だから、一度呼んでくれたもう?」

 

 

 

数秒悩んで言われた頼みが、名前を読んでほしいだなんて。

ただそれだけのことにどれほど悩むのか、不思議でならないけれど。

 

けれど、それが彼女の頼みならば。

私に好意を向けてくる、お狐様のお願いならば。

 

私は、彼女の名前を呼ぼう。

ただ呼ぶだけではなく、一杯の感情を込めて。

朝の息を一杯に吸ってから。

 

 

 

 

 

 

 

「コハク、おはよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の耳が、ピコリと起立してからへにょりと垂れた。

どうやら嬉しすぎると動かなくなるらしい。




やっと名前が出てきた

このSSに物語性はないです
書きたい設定を詰め込んでるだけだし!
趣味100%だし!!
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