艦これやりたい放題   作:世紀末バスケットボール部員

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別名:ゆめにっき編

艦これやってから寝た際に見た夢が余りにも衝撃だったから、居ても立っても居られずSSに書き落してしまった。


説教編 艦娘は大切に

「畜生! 青葉ぁ!!」

 

 声を荒げずにはいられない。

 4-3レベリング。通称リランカクルージングで木曾の育成をしていたが、編成に入れていた護衛兼育成中のLv9の青葉が敵エリート駆逐にワンパン大破させられ、夜中であることを忘れて怒鳴ってしまう。

 

「中破ならまだしも、なんでワンパン大破なんだよ。仮にも重巡だろ?」

 

 レベルが低いため回避能力含め、全体的に低性能であることを棚に上げて愚痴を吐いてしまう。その戦闘自体は青葉を除いて目立った損傷も無く終了した。

 

「Jマス突破したのに、これじゃあ木曾のレベリングが出来ないな……」

 

 4-3レベリングは潜水艦中心の編成がスタート直後に2連続で踏めるため、軽巡や駆逐艦などの対潜水艦能力のある艦のレベリングにはうってつけだった。しかし4-3レベリングにおいて最大の難関はスタートから南方向にあるJマス。そこでは敵のフラグシップも登場し、特に戦艦タ級フラグシップにワンパン大破させられ事故を起こすことも珍しくはない。

 もし青葉がタ級にやられたのであれば理解したが、生き延びていた駆逐艦にやられたからこそ夜中であることも重なって怒りを抑えられなかった。

 

「このまま前進してもいいかな?」

 

 画面に映る撤退と進撃のボタン。

 

 3周年を迎えた艦これは研究も進み、現在では中破までの前進ならば轟沈することは無いと言われている。しかし、もし大破した状態で進撃すれば轟沈する可能性は非常に高くなってくる。

 この場合レベルの低い青葉が次のマスに出てくる潜水艦による先制雷撃、もしくは随伴艦による砲撃を回避できるかと言う話になってくる。

 

 画面に映る、進撃のボタンの上にマウスを合わせた。

 

(青葉だからな……雪風建造レシピやレベリング中に回収できるだろ)

 

 効率を求めるなら進撃を押しても問題ない。もし轟沈しても装備は全て自分の元に帰ってくるのだから。

 

それでも自分はボタンを押せなかった。

 

 今編成に入れている青葉は中々出現せず編成任務を消化できなかった所に、ドロップ艦としてやって来た艦だった。その時の嬉しさは友人に思わず報告してしまうほどだった。

 しかし時は過ぎ、司令部レベルが上がった影響か建造でもドロップでも青葉が頻発して出現するようになると、彼女に対する特別意識は薄れていった。いつの間にかただの重巡(・・・・・)としか思えなくなっていた。

 

 本当にいいのか? 自分の艦隊に来てくれた時はあんなに嬉しかったのに。

 

 ただのブラウザゲームだというのに、何を戸惑う必要があるのかと考えてしまう。マウスを置きながら、冷静に考え直す。

 レベリングならば別に無理して進撃する必要もない。今回轟沈させて、本当に次直ぐに出現するのか? 今まで轟沈0で進めると決めていたのに、それを簡単に破っていいのか?

 

(仕方ない……)

 

 木曾のレベルは改造可能なLv65まで残り2にまで迫っていた。明日になれば演習でガッポリもらえるわけだし何も急ぐ必要はないと考え直すと、進撃に合わせていたポインターを隣の撤退のボタンへと向け押した。

 

≪艦隊が帰ってきたな≫

 

 スピーカーから流れる木曾の帰投ボイス。それを意識して聞く暇もなく改装ボタンを押して、青葉から装備させていた武装を全て剥ぎ取る。そしてすかさず入渠ボタンを押してドッグを選択すると、大破している青葉にカーソールを合わせた。

 

「修理に必要な資源なんて、遠征で直ぐに手に入る」

 

 必要な鉄鋼と燃料を見てそう呟きながらドッグを稼働させる。

 

≪ちょおっと深入りしすぎたようです≫

 

 深入りするも何も、考えてみれば随伴させたこと自体が無茶だったと自省する。おとなしく育っている重巡を艦隊に編成すればよかったと思った。

 するとフツフツと別の感情が沸いてくる。

 

「こうなるものだと思えば別にイラつくこともないな。期待しすぎるのも良くない」

 

 艦これはあの任天堂が出したRPG『MOTHER2』以上のお祈りゲーだと認識していることを思い出した。

 欲しい装備や艦娘が出なくても、ツチノコの類だと思えば出たときの嬉しさが跳ね上がる。

 羅針盤が行きたい方向を指さなかったら、それはその方向に最悪の結末が待っているか。

 戦闘が思い通りにいかなかったら、そういうこともあると割り切ってやればいい。

 

 それがいつも艦これをプレイしている時の自分の姿勢だという事を思い出す。疲れが溜まって深夜だから冷静に判断できず、感情に任せたプレイをしてしまいそうになった。

 

「やっぱり、轟沈者は出したくねえしな」

 

 夜も遅くなって判断もまともにできない以上プレイを続けても良いことはないと思うと、第1艦隊以外の全ての艦隊を遠征に出してブラウザを閉じ、パソコンの電源を落とした。

 

「どうせ明日になれば木曾さんは改二になるさ」

 

 そう思いながらベッドの掛け布団を覆った。

 

 

 

 

 はて、これはどういう事だろうか?

 気が付くと自分は電車に乗っていた。乗客は他に見当たらない。窓を見れば暗いがそれは太陽が沈んだ空の色ではなく、太陽の光の届かない地下だということに気が付いた。その証拠に窓の外に一瞬見える蛍光灯の光が見えた。

 

(俺、寝たんじゃなかったっけ?)

 

 何故電車に乗っているのか。

 少し混乱するが見慣れた地下鉄だったためそうだった(・・・・・)と変に納得してしまう。立ち続けるのも何ではあるので、車両の継ぎ目付近の小さな座席部分に腰を掛けた。

 駅に到着するが車掌のアナウンスは無い。それでもそういうものだと納得してしまう自分が居る。駅のホームには待っている乗客もおらず、ただ空しく電車のドアが閉じた。

 

 再び走り出す電車。丁度腕を置ける部分があるのでそこに肘をつき、頬杖を突きながら窓の外を眺める。別に何の変化もなく、ただ蛍光灯の光が一瞬見えては去って往く。その繰り返しに飽きてきて一つ大きな欠伸をした。

 

「すみません、お隣よろしいでしょうか?」

 

 突然女性に声を掛けられたことに驚く。他に乗客がいる雰囲気もなく、いきなり他の乗客が現れたのだ。

 

(他に席は余っているだろうに)

 

 律儀に問いかけてきたはいいが、別に混雑もしていなければ旅行で使う長距離電車でもない普通の地下鉄だというのに、何故わざわざ自分の隣に座ろうとするのか?

 気になって問いかけてきた女性に目をやる。

 

 何が起きたのか、理解することが出来なかった。

 

 その女性の服装は我々が日常で着る洋服ではなく、かといって縁日で着るような浴衣でもなく、祝祭で着る豪華な袴でもなかった。

 それは歴史の教科書でしか見たことのない戦前の女性が普段着として着ていた、えんじ色と紺色の袴姿。長い髪を後頭部の登頂部で結んでいる。

 余りにも浮いている姿なのに、自分はその姿に見覚えがあった。

 

「ほ、鳳翔!?」

「はい、提督」

 

 あり得るはずがない。自分に声を掛けてきた目の前の女性が、艦これに出てくる軽空母『鳳翔』だなんて。ここで漸く違和感を覚えるがそんなことはお構いなしに鳳翔は自分の隣に座ってくる。良妻賢母の愛称を持つだけあってその動作ですら上品さを感じさせられた。

 

「えーっと……」

「驚きになられましたか? 提督には、少し申し上げたいことがありまして」

 

 そう言われるやいなや、自分は鳳翔から何を言われるのか薄々感付いてしまう。

 

「多分、言いたいことは分かります」

「ですけれど、申し上げてはおきたいのです」

 

 隣に座る鳳翔がこちらに目を合わせて真剣な顔つきになる。この感覚、親に怒られるのが分かっている子供の気持ちのそれ(・・)だ。

 

「提督、あまりあの子たちに暴言は吐かないでください」

「はい。それは、分かっています……」

 

 まさかブラウザゲーのキャラクターに叱られることになるとは、異常事態ではあるが日本の空母の母と言われる彼女の言葉の重みが、聞く耳を塞ぐことを良しとはさせなかった。

 

何卒(なにとぞ)宜しくお願い申し上げます。皆、提督の期待に応えようと必死に頑張っています。もっともっと役に立ちたいと思っている子たちも居ます」

「そんなに、ですか?」

 

 たかがブラウザゲーのキャラが、果たして本当にそう思っているのか?

 

「はい。ですが私心を述べさせてもらいますが、肝心の強くなる機会がなかなか訪れず、いきなり戦場に出されて暴言を吐かれては、余りにも可哀想です」

 

 これは先程の青葉のことを……否、それ以前のレベリングに随伴させた艦たちのことを言っているのだろう。

 心当たりは充分にある。碌に育てずいきなり投入して事故要因になる彼女らに、心無い言葉を吐いてしまった。電には『味方殺し』と最上に『オウンゴーラー』と。最近では2-5報酬で明石を狙った際にゲットした江風には『偽物明石』と。

 

「泣かせてしまったという事ですか?」

「……悔し涙を流していました」

 

 その後自省こそしたが、どのみち泣かせてしまったことには変わりはないのか……

 

「酷いことをしてしまったんですね」

「そう思っていただけるだけでも幸いです」

 

 鳳翔にそう言われて、考えてみればそうだと思う。ここでゲームと現実を割り切っていれば『別にゲームだからいいじゃないか』とか『好きなようにプレイングさせろ』とか言い返せるはずだ。

 じゃあ、何故鳳翔に言い返せないのだろう……

 

「皆には会うことは出来ませんか?」

「残念ですが……ただこれは、私心で提督に申し上げようと思っただけです」

 

 つまり他の艦娘は会うことが出来ず、暴言を吐かれて悔し涙を流す彼女らの姿を見た鳳翔が居た堪れなくなって直接会いに来たという事か。

 流石は『お艦』と言われることだけはある。まだ敬語を使ているが本当は怒っているのだろう。

 

「それでしたら、皆には『いつも暴言を吐いて済まない』と伝えてもらえませんか?」

 

 もし断られたとしてもそれは自分の落ち度だという事で納得は出来る。

 

「ふふ、分かりました。皆にはちゃんと提督がお詫びを言っていたと伝えておきますね」

 

 先程までの真剣な一転、何時もの柔らかい微笑みを鳳翔は浮かべた。だがそれは、その場しのぎの詫びではないと釘を刺すものにも感じた。

 

「よろしくお願いします」

 

 座りながらだが、頭を下げてお願いする。

 

「それと、提督」

 

 また声を掛けられ自分は顔を上げた。

 

「あの時も、進撃を踏みとどまってくださって、ありがとうございます」

 

 あの時も……見ていたのか。彼女は、全部の戦闘を。

 

「提督がこれからも変わらず轟沈者を出さないよう心掛けてくださるのであれば、私は、とても嬉しいです」

 

 その微笑みはどこか寂しさを感じさせる。

 轟沈者か……史実の彼女は自分の娘である空母を次々と喪いながら、終戦まで生き延びたことを思い出す。娘たちを喪うという体験を、二度も味わいたくはないだろう。それは空母だけではなく、他の艦種の艦娘たちもその対象に入っていることに今気が付いた。

 

 ならば、これからも一人たりとも轟沈させるわけにはいかないな。

 

 そう強く誓うと電車の速度が落ち始める。隣に座っていた鳳翔は立ち上がり、降車する準備を始めていた。それと同時に自分の意識もおぼろげになり始めた。

 せてめその前に別れの挨拶は告げないと、と思い右手を差し出す。

 

「轟沈者は出さないようにしますよ。それと、艦娘たちは鳳翔さんに言われた通り、大切に育てていくよう心がけます」

 

 それに応えるように鳳翔さんも右手を出し握手してくれた。

 

「重ねてよろしくお願いします。私共々、これからも頑張らせていただきます」

 

 電車が止まり、ドアが開く。鳳翔さんは人の居ないホームへと降りて行った。自分は追いかけようとはせず、縛られたかのように椅子から動けない身体を振り向かせて、動き出した電車の窓から見える鳳翔さんの姿がトンネルに入って見えなくなるまで見続けた。最後に手を振ると鳳翔さんも微笑みながら手を振って応えてくれた。

 

 トンネルに入ると、意識は深い闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 鳴り響く電子アラームの音。

 少しずつ瞼を開けるとそこは見慣れた自室の天井だった。

 カーテンが閉じられた窓から朝日が漏れ出している。

 

(なんだったんだ?)

 

 あの強烈な出来事は全て夢だったのか?

 寝起きで意識がハッキリしていないため判断出来ずにいる。

 鳴り響く電子アラームにいい加減うんざりしながらスイッチを切り、表示されている時刻を見る。壊れてはいないし、スヌーズボタンを押してもいないことだけは分かった。

 

「お艦に説教されるとか……なんちゅう夢だよ」

 

 しかし悪い気はしない。

 

「艦娘は大切に育てる、か」

 

 ある動画がきっかけで艦これを始めた頃を思い出す。

 初期艦は吹雪を選択して、初めての建造で綾波と白雪を仲間にして、出撃した彼女らを画面の前で見守るだけという心臓に悪い光景。

 思い返せば、最初は損傷すること、それ以上に出撃させることすら躊躇っていた。しかし戦果を上げて喜ぶ彼女らの姿に、何時しか愛着を持ち始めてしまった。

 今となっては出撃は当たり前、損傷しても当たり前。愛着は最初だけでただの駒としか見なくなっていた。

 

「効率は悪いけれど、初心に帰るのも悪くはないな」

 

 あの夢の中の電車で出会ったお艦(鳳翔)との約束を破らぬためにも、そう思いながらベッドから立ち上がった。

 




夢で鳳翔さんに説教されるって何事よ…

でもこのおかげで艦これを初心に帰って楽しくプレイしているのだから訳が分からない。
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