やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
比企谷八幡①
ゴールデンウィーク明けの放課後。
俺は今、現国で生徒指導の平塚先生に職員室に呼び出されていた。
「比企谷……これはいったいなんだ?」
作文用紙を俺へと見せながら、自分はイラついていますよ、と言いたそうな雰囲気を醸し出している平塚先生。
「作文用紙ですよね。見ればそんなのわかりますよ。それで、なんですか?」
「はぁ……。私が言っているのは作文の内容だ。何だ? 君はリア充に何か怨みでもあるのか?」
「そうですね。数に物を言わせて、悪ですら正義に変えてしまう。彼らのやり方はとても嫌いですね」
「あれだな。君は性格は捻くれているし、目も魚のように腐っているな」
何をいきなり失礼なことを言っているんだ、この教師は。それでもあんた教育者かよ。
「それ、とても栄養がありそうですね」
「小僧、屁理屈を言っているんじゃない。真面目に聞いているのか?」
「小僧って……それは先生の年齢から「黙れ」――で気に入らないと殴りつけるんですか?」
いきなり平塚先生から拳が翔んできた。無論、この程度裁けない訳ない。ボーダーでレイジさんや風間さんとトレーニングをしているので余裕で対処できる。
「生徒に暴力とか、教師としてどうなんですか?」
「うっ。……それより君は友達はいるのか?」
「いますよ。それなりにたくさん」
ボーダーB級以上の隊員とは、隊を作ってから合同で防衛任務に当たっているので組んだことのある隊員とはケータイの番号を交換したりして、たまにランク戦や防衛任務の助っ人として呼ばれている。
「比企谷、嘘を吐くな。お前みたいに目の腐った奴に友達がいる訳がない」
「平塚先生は――――やっぱりいいです」
「なんだ?中途半端に言うな。……それで、彼女はいるのか?」
「いえ、いません。あ、でも幼馴染はいます」
「比企谷……。そんな嘘を吐かなくてもいいんだぞ。いくらいないからといって、そんな嘘を吐くとは先生悲しいぞ」
ウゼェー。何なんだ。この教師は失礼にもほどがあるだろ。そう言う自分には彼氏がいるのかよ」
「比企谷、聞こえているぞ。……よし、君は私を傷付けた。そこで奉仕活動を言い渡す。異論、反論などは一切受け付けない」
「いや。そんな勝手が許される訳ないですよ。あんたそれでも教師かよ」
「いいのか三年で卒業できなくても、いいんだな?」
「したければどうぞ。それで教師人生を終わらせたいのなら。それに学年主席をどんな理由で留年させるんです?」
「うっ……。と、とにかく、ついてきたまえ」
仕方ない。黙って付いていくしかないか。今日は、材木座に呼ばれて新型の試作トリガーの実験に付き合うことになっているが……これは少し遅れるな。一応、電話いれておくか。
「……材木座、比企谷だ。今日の実験なんだが、少し遅れるかもしれない」
『うむ、どうしたのだ、八幡よ?』
「学校の教師に捕まって、一時間ほど遅れる」
『うむ。承知したぞ、八幡。出来るだけ早めに来てくれ。説明もしておきたいのだ』
「わかった。出来るかぎり、早めに向かう」
返事をしてケータイを仕舞い平塚先生を見てみると、俺を睨みつけていた。
大方、さっさとついて来いとか思っているのだろう。
俺が黙ってついて行くと、しばらくして目的の場所に着いたようだ。連れてこられたのは特別棟にある一つの教室だった。
そこで止まり、そのまま無造作に扉を開けた。
そこには、椅子に座って本を読んでいる一人の少女がいた。