やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷小町③

浅葱との関係が小町と母ちゃんに知られてしまい、その日の晩ご飯は赤飯でお祝いされてしまった。

その際に母ちゃんはガチ泣きで嬉しそうにしていた。てか、泣きすぎだ!!

そんな家族にバレて祝って貰う事になった、俺と浅葱の関係を比企谷隊の他の3人にも早めに言いたいが、中々切り出すことが出来ずにいる。

とりあえずは夏休み中には言う事にした。

 

そして今日は小町が正式入隊まで仮入隊してポイントを稼いでいる事だろう。今日の防衛任務も何事もなく終わったので小町にアドバイスをしてやろうと思っている。

前々から雪菜が色々と教えているので俺が教える事は殆んど無いかもしれないけどな。

 

「小町はちゃんと出来てるか?」

 

俺はC級ブースに来て、小町が今どの位の実力を持っているかを確かめにきた。

ブースに入るとC級隊員が何人かが俺の方を見ていた。まあ、A級隊員が今更C級ブースに何の用だと思っているのだろう。

もしくは先に来ていた雪菜と同じ隊服なので見ているだけかもしれないが。

しかし、目立ってしょうがないな、これは。比企谷隊の隊服の色は黒色だから白い服のC級の中では人目を惹くな。

 

「あ、比企谷……」

 

「よお、川崎」

 

小町の様子を見にきて、川崎に出会った。川崎も仮入隊して正式入隊までにポイントを稼ぎに来ているようだった。

 

「川崎もポイントを稼ぎに来たのか?」

 

「う、うん。今日は塾に行く日じゃないから。それに早いとこB級になっておきたいから……比企谷はどうしてここに?」

 

「小町の様子を少し見に来たんだよ」

 

「そう言えば、あんたと同じ服の子と話してるの見たけど。知り合い?」

 

「それは雪菜だな。そいつは俺の隊のアタッカーだよ」

 

「そっか……」

 

川崎と少し話していると個人ブースから小町と雪菜が話をしながら歩いているのが見えた。

 

「あ!お兄ちゃん~それに沙希さん~!……2人は何で一緒に?」

 

小町は俺と川崎が一緒にいるのが気になっているようで聞いてきた。それにしてもさっきから雪菜が俺を見る目が鋭くまるで剣のようだった。

俺、何かしたかな?

 

「川崎とはさっき会って少し話してただけだ」

 

「そうなんだ……あ、雪菜ちゃん。この人は小町がチームを組む人で隊長をしてくれる。川崎沙希さんだよ」

 

「この人がそうなんだ。あ、初めまして比企谷隊アタッカーの姫柊雪菜です」

 

小町は川崎を紹介してから雪菜も名乗って、頭を下げて挨拶をした。さすがは雪菜だな。礼儀正しい。

 

「は、初めまして、川崎沙希、です……」

 

雪菜とは対象的に川崎は結構緊張している様子だった。まあ、しかたないよな。クラスじゃ川崎はボッチだったし。

それにしても歳下相手に緊張しすぎだろうに……。

 

「沙希さんも小町と同じで入隊するまでポイント貯めに来たんですよね?」

 

「まあ、そんなところかな……訓練は一通り終わった所かな」

 

「でしたら沙希さん。よかったら、小町とソロ戦しませんか?」

 

「ソロ戦を……」

 

小町の提案に川崎は悩んでいる様子だった。訓練もいいがB級に上がればソロ戦もそうだが、チームで行うB級ランク戦がある。

ボーダー隊員はトリオン兵より隊員同士での戦いの方が多い。

 

「やった方がいいぞ。どの道、B級に上がればソロ戦でポイントを稼ぐ事の方が多くなるからな」

 

「まあ、比企谷が言うなら……それじゃお願い」

 

「はい!それじゃ雪菜ちゃんとお兄ちゃんも入れて4人で替わりばんこでソロ戦開始だー!!」

 

うん?小町は今、何と言った?俺の聞き間違いじゃないよな?

 

「……俺もやるのか?」

 

「当たり前じゃん!この4人の中で一番強いお兄ちゃんにも相手してもらって、小町の実力が雪菜ちゃんの特訓でどの程度付いたのか知りたいしさ」

 

俺としてもそれは知りたかった。この所、雪菜が小町に色々と教えていたからな。

 

「いいぞ。相手になってやるよ小町。ただし加減はしないぞ?」

 

「望む所だよ!お兄ちゃん!!小町の全力を以て倒してみせる!!」

 

小町は多分、カッコ良くポーズを決めているが、俺からすれば材木座を思い出すから辞めて欲しかった。

小町には加減はしないと言ったが、俺が小町相手に加減するに決まっている。小町が傷付くのは、例えトリオン体でも見たくは無いからな。

 

「……ただしお兄ちゃん。相手が小町だからと言って手を抜いたら、もう二度と口を聞いてあげないからね」

 

「え!?……マジで……?」

 

「マジだよ!」

 

俺は小町の言葉に前のめりに倒れて両手を床に付いてショックを受けていた。俺が小町相手に手加減したら二度と口を聞いてもらえないだと……それは最早この世の終わりと言ってもいい位の事だ。俺にとってはだが……。

 

「……分かった……手は抜かない……」

 

「うんうん。それじゃ行くよー!」

 

こうして俺と小町の初のソロ戦が始まった。小町はC級トリガーなので俺は弧月一本で戦う事にした。そうしないと対等ではないからだ。

 

 

 

 

 

「それじゃ行くよ。お兄ちゃん!!」

 

「ああ、かかってこい!」

 

転送されて小町は俺にスコーピオンを出して切りかかってきたが、俺はそれを弧月で受け流してカウンターで小町の首を切りつけたが、小町は体を捻り回避した。

 

「中々やるな。小町」

 

「えっへん!!雪菜ちゃんとの特訓はすごかったんだからね!!」

 

小町を見れば雪菜の特訓は相当のものだったのは分かる。動きにそれなりのキレがあるからだ。

これは舐めては掛かれないなと思わせされる。

だが、素人の動きだ。それでも短い期間でこれほどの動きをするとは驚いた。

俺としても小町が相手でも全力で当たるつもりだ。それは大人げなかったと思うが、手を抜いて小町に口を聞いてもらえなくなるよりかはマシだ。

 

「だろうな。雪菜は真面目だからな……特訓でも手を抜かないと思うからな」

 

「うん……ホント、厳しかったよ……」

 

あの小町が少しだけ元気が無くなっている様子から雪菜の特訓を思い出しているのだろう。

よほど酷だったんだろうな。顔が少しだけ青ざめている所を見ると雪菜のスパルタ具合が軽く想像出来る。小町、よく頑張ったな……今度好きなものを食べに行こうな。

 

「よく頑張ったな、小町」

 

「うん。小町、すごく頑張ったんだから……」

 

これは軽いトラウマになってるな……。ソロ戦が終わったら何かいいものでも食べに連れて行こう。

小町と軽く話した後の攻防はそれは凄かった。小町はそれなりに運動神経は良い方なのでトリオン体での戦闘が向いているようだ。

 

それに小町は直感型だと俺は思う。普段は計算して入る感じはあるが、戦闘の場合は自身の直感に頼った戦い方をしている。

俺の攻撃をギリギリで回避するなどから見ても小町は直感型だ。

ちなみに俺は計算型だ。戦うイメージを固めてから相手に攻撃を仕掛ける。直感型はアタッカーに多く。計算型はシューターなどが多い。

 

俺と小町の成績は10本中10勝0敗で俺の勝ちで終わった。ブースから出て小町は近くの椅子に座り込んでだらけていた。

さすがにやりすぎたか?

 

「お兄ちゃん強すぎ……小町全然歯が立たなかったよ……」

 

「まあ、経験の差ってヤツだな。俺が見た感じ筋は中々良かったからしっかりと経験を積めば、俺に追いつくのも夢ではないな」

 

「お兄ちゃん!それ、ホント!?」

 

「ホントだ。だけど、俺だって強くなるから追いつかせないけどな」

 

「小町的にそっちの方がよりやる気が出るよ。お兄ちゃんを超えて見せるからね」

 

小町との戦闘の後でアドバイスをした所、やる気をもの凄く出したのはよかった。やり過ぎて入隊前に辞める事になれば、さすがに俺としても申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「それじゃ次は沙希さんの番ですね」

 

「う、うん。よろしく比企谷」

 

「おう。そういえば、川崎はソロ戦ははじめてだったな」

 

川崎は訓練は一通りしたと言っていたが、ソロ戦はした事があるんだろうか?

 

「まあ、仮入隊してからは訓練しかしていないしソロ戦は初めて」

 

「そうか。まあ、落ち着いてと言っても無理かもしれんが自分のペースで戦ってみろ」

 

「分かった。やってみる」

 

川崎としても緊張している様子だ。ガチガチでは自身の実力は出せないからな。ここは落ち着かないと駄目だと俺が思ったからだ。

 


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