やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
「ヒキタニ君、少しいいかな?」
C級のために仮想訓練室で戦って、小町の質問攻めにあったがなんとか乗り越える事出来た。
しかし『スーパーボール』をしたのは間違っていたようだ。やってみた所、C級隊員に引かれてしまった。
小町にも引かれたのは八幡にとって大ダメージだ。HPの半分を持っていかれてしまった。
……って俺は何をやっているんだか……。
「ヒキタニ君。ちょっといいかな?」
ああ……ホント、何で俺はこの仕事を受けてしまったんだか……。
「お兄ちゃん!」
「どうした?小町。お前も早く戦ってこいよ。そういえば、今のポイントってどの位だ?」
「小町は2590だよ。それで沙希さんが2230位で、留美ちゃんが2450位だよ」
川崎と鶴見も順調なようだな。まあ、川崎は俺が鶴見はシノンが師匠をしているからな。順調なら問題ないか。
「そうか。それなら十月下旬までに部隊を作る事が出来るかもな」
「ホント!!お兄ちゃん!」
「ああ、九月は文化祭の準備とかで忙しくて無理かもしれないけど、十月は特に行事はないから十分可能性はあるぞ」
九月は総武高校で文化祭があるので無理だが、それが終われば修学旅行まで特に何もないのでポイントを稼ぐ事が出来るからな。修学旅行前には出来るだろう。
「……ヒキタニ君……もういいかな?」
「それじゃお兄ちゃん、小町も行ってくるね」
「おう、頑張ってこい。でも落ち着いてやれ。戦いは冷静でやらないとすぐに足元を掬われるな」
「小町。了解!」
小町は敬礼して仮想訓練室に並んで自分の順番を待っていた。俺は他のC級の様子でも見ておくかな。
「ヒキタニ君!!」
さっきから俺の近くで大声を出している人物が俺の肩を思いっきり掴んだ。『絶対に離さないぞ』と言わんばかりに強くだ。
「……何か用か?葉山」
「どうして、今まで無視したんだ……!」
「え?俺って呼ばれていたのか?気付かなかったなー」
我ながら棒読みにならないようにしたいな。
「な!?……ヒキタニ君!!君は―――!?!?」
葉山は俺を強引に振り向かせようとしたが、それを夜架と雪菜によって止められた。しかも夜架と雪菜は弧月を葉山に首にギリギリ当たらないように添えていた。
「これ以上、主様の苗字をわざと間違えるようなら……その首、ここで切り落としますよ?」
「八幡先輩は優しいから怒りませんけど。私達は怒っているんですよ」
夜架がこれ程怒りを露にした事は今までなかったから、ちょっと新鮮だな。って俺は何を考えているんだ。
雪菜も夜架に負けない位怒っている。自分の武器を誰かに向けるなんて、あの雪菜からは想像もつかなかった。
そもそも俺はそんなに優しくないからな、雪菜。
「夜架、雪菜。2人ともそこまでにしておきなさいよ」
浅葱がすかさず止めに入った。流石は比企谷隊の姉的ポジションな事だけはあるな。
「そいつはまだC級でしょ。B級に上がったら個人戦でボコボコしてポイント枯渇させてやりなさい」
俺の期待を斜め上を行く発言だった!浅葱も完全にお怒りのようだ。まあ、俺も逆の立場なら怒っていたかもしれない。
自分の恋人の苗字をわざと間違っていたら、それはキレるよな。
「まあ、3人とも落ち着け……俺はそんなに気にしていないから。とりあえずお前らは向こうの様子でも見てきてくれ」
夜架と雪菜が葉山に切りかかる前に2人を引き離す事にしたが、浅葱を含めた3人が葉山の事をもの凄い怖い顔で睨んでいた。
これが三浦の耳に入れば俺に文句を言ってきそうだな……学校に行きたくなくなった。
「……それで葉山、俺に何の用だ?」
「ああ、君に頼みがあるんだ……」
「頼み?お前が俺に?……一応聞いてやるから言ってみろよ」
「俺を君の弟子にしてくれ!!」
「あ、あたしも!あたしもヒッキーの弟子になりたい!!」
葉山が俺に頼み事をしてくると思ったら弟子入りかよ……しかも近くで聞いていた由比ヶ浜も弟子入りしようとしてくる始末だ。てか近くに居たんだな、由比ヶ浜。
「どっちとも却下だ」
「ちょっ!?何でだし!理由を言うし!!」
「……結衣の言う通りだ。どうしてなんだ?」
こいつらは自分達が何を言っているのか理解しているのか?一々説明しないといけないのが面倒だ。
「……分からないのか?だから無理なんだよ……」
「そんなの理由になってないし!!」
「ああ、それだけじゃ納得がいかない。しっかり説明してくれ、ヒキタニ君」
こいつらは絶対に手を引かないらしい。だから俺はこいつらが嫌いだ。
「何か面白そうな話しているね?比企谷君」
「……雪ノ下さん。貴女も受けていたんですね」
俺の目の前に現れたの雪ノ下雪乃の姉で加古さんの友人の雪ノ下陽乃さんだ。これまた面倒な人が現れたな。この人も試験受けて合格していたのか。
「あれ?小町ちゃんから聞いていなかったの?」
「小町から由比ヶ浜達としか聞いていなかったので……それであいつは……貴女の妹は受けなかったんですか?」
姉や由比ヶ浜が受けているのにあの女が受けないはずがない。だけど、周りを一通り見てみたが姿は見えなった。
「それが雪乃ちゃんは落ちたんだよね。その後で、試験官の所にどうして自分が落ちたのかを聞いたら、試験官の人が『君は周りとの協調性がない。そんな人間をボーダーに入れるわけにはいかない』って言われちゃってね。もうそれからはかなり不機嫌であの顔は笑っちゃったよ」
雪ノ下は余程笑える顔をしていたんだな。それなら見て見たかったな。
そこで俺が『どうだ?お前がバカにしていた俺より協調性がないと言われた感想は?』とバカにしてやりたかった。
「それで雪ノ下さんも俺に何か用ですか?」
「隼人達の話が少し聞こえてきてね。私も比企谷君の弟子にしてほしいな~って思ってさ」
また厄介な……ここは断るのが無難だよな。
「俺よりも加古さんの弟子になったらどうですか?友人なんでしょ?」
「その事なら入隊前に相談したらポジションを聞かれてね。私はオールラウンダーって言ったら、望が『それだったら、比企谷君がいいわよ。彼、№1 オールラウンダーだから私より彼に弟子入りした方がいいわ』って言っていたんだ~」
加古さんは俺に面倒事を押し付けるきか?そんなのゴメンだ。しかし何かいい回避方法はないだろうかと考え込んでいると、ふと川崎が見えた。
その時、ある事を思いついた。弟子入りを回避してその上川崎のポイントが溜まる方法が浮かんだ。
「……分かりました。ただし俺の弟子になるには条件があります。それをクリアしてからです」
「ふ~ん……条件、ね。それでその条件って?」
「俺には3人の弟子がいます。その3人の誰でもいいんで一ヶ月以内に百本中六十勝以上が俺に弟子入りする条件です。ただし一日同じ人間は1回までです」
「……つまり、その日の内に同じ弟子の子と戦う事は出来ないって事だね」
「流石に理解が早いですね、雪ノ下さん」
「えっと……どう言う事ですか?」
雪ノ下さんはすぐに分かったのに何で由比ヶ浜はまったくと言って理解出来ないんだ?これでよく総武高に入学できたな。
「つまり、ガハマちゃん。例えば私が比企谷君の弟子一号と今日戦ったら今日はもうその子とは戦う事が出来ないって事なの。だから、戦うとしたら弟子二号と三号としか戦えないの。分かった?」
「は、はい……多分………分かりました!!」
雪ノ下さんが分かり易く説明したのにそれでも分からないようだった由比ヶ浜は。
本当にどうやって進学校である総武高に入学したんだよ。後、多分を小声で言うくらいならはっきり言えよ。
「もし一ヶ月以内に六十勝以上できなったら?」
「その時はリセットで最初からだ。それと言っておくが俺の弟子はそれなりに強いぞ。入りたてのお前らじゃ勝てないと思うけどな」
「そんなのやってみないと分からないじゃん!!絶対ヒッキーの弟子になってやるんだから!!」
由比ヶ浜はやる気十分だが、気力だけで勝てる程ボーダー隊員は弱くはない。それをこいつは分かっているのか?
それに由比ヶ浜が先ほど言った『やってみないと分からない』と言う言葉は俺は嫌いだ。自分の力も相手の実力もまったく理解していないバカの発言だ。
あ、由比ヶ浜はバカだった。すっかり忘れていた。
「それで比企谷君。君の弟子の名前を聞かせてよ。私達は誰も知らないしさ」
「分かりました。まずB級那須隊隊長那須玲。A級加古隊アタッカー黒江双葉。C級川崎沙希。以上が俺の弟子の名前ですよ」
「え?サキサキはヒッキーの弟子なの?!じゃああたしも弟子にしてよ!」
「川崎の弟子入りは小町におど……お願いされたからだ。俺は出来ればこれ以上弟子は増やしたくないんだ。弟子になりたかったらさっき言った条件をクリアすることだな」
由比ヶ浜にそれだけ言い残して俺はその場を離れた。これ以上居たら他にも何か言ってきそうだったからだ。
俺は葉山達から離れた後、仮想訓練室を見てあ然としていた。中で戦っている隊員が他の誰よりも苦戦していたからだ。
しかも時間切れで終了して出てきたのを見てまたしても驚いた。
あの訓練で時間切れを始めてみたからだ。それもメインがレイガストも驚いた。
『モグワイ。あの訓練生の経歴を見てくれるか?』
『どうしたんだ?旦那。あのメガネが気になるのか?』
『ああ、どうも気になってな。あいつのトリオン量は平均より低い。でなければ仮想トリオン兵にダメージを与えられないのはおかしい』
俺は先ほど仮想訓練を時間切れで終わってしまった人物をモグワイに調べるように言った。それも通信で誰にも聞かれないようにしてだ。
あいつのトリオン量はあまりにも低い。あれで試験に合格出来たとは思えない。
『了解だ。ちょっと待ってくれ。…………見つけたぜ。名前はミクモオサム。十五の中坊だな。こいつは……一回落ちて推薦で入隊しているな』
『推薦?誰がそんな事をしたんだ?』
『推薦者の名前は迅悠一になっているな。ケケッ』
「……マジか……」
思わず声にでしまった。周りを見渡したが誰にも聞かれてはいないな。
それにしてもまさか迅さんがあいつの推薦者とはこれはまた驚いた。それと同時に嫌な予感がした。あの人が何の理由もなくあんなトリオン量が少ない奴をボーダーに……それも推薦まで使って入れただ?
あの人の事だから暗躍しているんだろうな。関わりたくないな。
とりあえず、他のC級の様子を見る事にした。あいつの事は気になるが迅さんが絡んでいるのにここにいないという事はまだ迅さんは動かない事かもしれない。
しばらくは様子見だな。と俺は結論付ける事にした。
しかし俺はこの時、気付くべきだった。あのミクモオサムと言う少年が鳩原さんの失踪に関わっている事に。
もっと注意しておくべきだった。あいつは迅さんが推薦までしてボーダーに入れた事に。迅さんが関わっていたので俺は関わりたくない一心で目を背けていた。
この事がまさか近い将来、俺にとっても重大な事になるとはこの時俺は知るよしもなかった。